住宅施策を考える/日本建築学会東海支部都市計画委員会 住宅部会

第14回部会 「多治見市の中心市街地」   [2000.12.22]

参加者:13名

1.自己紹介・書記指名

2.田原町まちかど交流サロン「来る間座」について
12/16に防災関係の催しを行った。田原町の昔の写真を展示し、防災コーナーを設けるとともに、防災カルテ研究会のメンバーによる講演会と住民との懇話会が開かれ、住民30〜40人が集まっていただいた。今後ともこうしたイベントを不定期に開催するとともに、ニュースレターを発行し、継続していきたい。


3.多治見市の中心市街地について
●街の成り立ち
  • 多治見は陶器生産の街ではなく、もともと商業の街で、土岐市や現在準工業地域になっている市内の陶器産地からの集積地であった。かつては春日井の鳥居松などより街であったと伝えられている。
  • 昔は九州からも商人が来たそうで、下街道沿いの池田町は小さな宿場町として栄えた。多治見はおいしいところが多いという話がある。
  • 中心市街地と陶器生産地であった周辺の古い街に狭隘道路が多く、京都並みの4割が狭隘道路(4m以下)にしか面していない。
  • 市制施行は昭和15年。当時35.14km2だったが、合併で74km2になった。
●都市開発の状況
  • 多治見市は盆地の街。昭和40年代から団地開発が始まった。現在人口約106,000人。長い間都市計画線引きがされてこず、平成8年に線引きがようやく行われた。郊外の団地開発にともなって、多治見市の中心市街地の人たちも郊外団地に移った。このため、近年中心市街地の空洞化が見られるようになってきた。
  • 開発負担金を徴収していたが、平成8年線引きであり、隣接の可児市同様、規制が緩いため、人口が増えたと言われている。一時は年5000〜10000人もの人口増があった。最近は減っているが、それでも年1〜2000人と転入傾向が続いている。
  • 市税収入は、今すごく苦しい。財形再建団体に近い。主要な産業は陶器だけで、他にはほとんどない。
  • 基盤整備も駅北の区画整理が最初である。瑞浪市に比べてもかなり遅れている。
●人の状況
  • 現在は高齢化率13%(岐阜県平均15.3%)と低いが、郊外団地を中心に、将来一斉に高齢化することが危惧される。また、中心市街地では高齢単身者が増えている。
●住まいの状況
  • 多治見市の住宅の構成は、8割が戸建て持ち家である。市営住宅は1075戸あるが全部郊外に立地している。現在、これら市営住宅の建て替えが課題になっている。また、周辺の団地でも最近は新築空き家が目立ってきている。
  • 郊外団地からの公共交通機関はバスとなるが、キス・アンド・ライドも多く、慢性渋滞となっている。名古屋通勤の人はキス・アンド・ライド、市内就労者は車通勤が一般的である。郊外団地には約4万人が居住する。
  • 多治見市には居住の場はあっても、仕事の場と学習の場がないと言われる。20代の新婚ですぐ持ち家取得という場合が多い。25〜29才がニュータウンの住宅購入者の中心である。住宅の価格は、敷地60坪ぐらいの戸建て住宅で3,500万円ぐらい、マンションで2,500万円ぐらいである。中央線沿線では地価が安いと言われている。
  • ホワイトタウンは市街地から離れた県境にあるため、名古屋の飛び地とまで言われている。住民意識として定住意識が低い。また、市之倉では旧市街地の人口が減って、子供は団地の子供ばっかりになっている。
  • 借家の需要は結婚後の一時仮住まいのニーズなどが考えられる。不動産屋の話だと賃貸需要もあるとのことであった。また公営住宅の申込も多いが、結婚を機に持ち家にゆく場合も多い。
●中心市街地の状況
  • 多治見の中心市街地は古くは、土岐川の南側であった。その後、国鉄中央線の駅が土岐川の北側にできた。その当時は人気がなかったと聞いているが、現在はユニー等の大型店舗が立地している。さらにその後、高速道路のインターが北にでき、ロードサイドショップ等が多くでき繁栄している。このため、市民も市の中心がどこかわからなくなっている。
  • マンションは駅北の区画整理をはずれた地区で多く建設されている。一部では、日影問題の相談もある。瀬戸では工場跡地がマンションになっているようだが、多治見の中心部は工場が少ないため、田畑がマンションになっている。よって、大きな敷地のものは少ないと思われる。
  • 中心市街地といってもそれほど密集しているわけではない。また、陶器の街と言うがどこで陶器を売っているのかわからないとも言われる。卸商が多い街である。
  • 南側は現時点では空き家は意外に少ない。店舗だけというものも多い。空き地は多い。
  • 住宅はまだあまりつぶれてないようで、老朽化はすごく進んでいる誰か住んでいる。空き地は非住宅がつぶれたものが多い。しかし、今は過渡期で、最近つぶれだしている。その後は、駐車場になっているケースが多い。また、そうした家の子供は郊外に住んでいることが多い。
  • 住まいとしての環境は、いろいろあるが、敷地の広いのもある。
  • 川南は持ち家が多く、川北は借地が多い。
  • 祭りは集落ごとの祭りはあるが、メインとなる祭りはない。多治見祭り、陶器祭りなど新しい祭りばかりである。
  • 地元の商店街新興組合が、買い物バスの運行、かっぱ市の開催等がんばっているが、空き店舗も増えており、あまりうまくいっているとは言えない。特に、土岐川を挟む中心市街地のうち北側はかなりがんばっているが、南側は衰退している。しかし、良い建物は南側に多く、南北がつながっていないのが残念だ。
●街の整備計画
  • 現在、市では住宅マスタープランを策定中である。
  • 平成8年の線引きで市街地整備の方針を転換して中心市街地の整備に向かった。
  • 駅北の区画整理は、昨年、都市計画決定された。区域は特別工業地区が指定されている地区を中心に11.8ヘクタール。JRの種地を抱えている。用途指定は商業地域だが、現在の建物用途は住宅が中心で。350戸ほどある。今後、この区域をどう高度化するかが課題である。特別工業地区は、家内工業による絵付け作業などをやっている人が多く、卸商なども多いことから、産業対策としてかけていると思われる。
  • 街が東西に走る川と鉄道で分断されている。鉄道の南北のつながりが重要と考えるが、鉄道高架については、既に現在アンダーパスが3カ所あり、踏切が少ないことから基準にあわず、実現は難しい。現在、もう1本アンダーを抜く計画がある。
  • 土岐川南部の市役所周辺で織部ストリート構想に基づいた整備が行われている。ちなみにこれは、県の地区指定に基づき、修景・道路整備を進める事業であり、市内では市之倉を始め3ヶ所で整備を進めている。中心部では地域振興整備公団を活用して製・販一体型の施設を作っている。


3.意見交換
●中心市街地の住宅施策
  • 郊外の人が真ん中に出てくるシステムがあると何とかなるのではないか。駅に出てくれば、駅周辺で飲む人もいるだろう。そのような施策をとるとよいのではないか。
  • それでは女性が来ないのではないか。文化で引っ張る取り組みがよい。創る喜びをつくるのがよい。
  • 住宅マスタープランでは、中心市街地での住宅供給が位置づけられてはいるが、具体施策としては住宅供給事業だけか。
  • 市民意識が景観や住まいを良くするという方向になっていないので、セミナーや勉強会を開催して変えていきたいと考えている。
  • 中心市街地の住宅供給は、郊外の高齢者の子供の世帯と、中心市街地で高齢化した人をターゲットに考えている。
  • 田原で中心市街地の居住支援施策としてもまちかど交流サロンに取り組んでいるが、そのようなニーズは多治見ではあまりないのではないか。来年度、市長の特命で作ることになっているが、ボランティア育っていない。
  • 多治見には田原のような危機感はあまりないのかもしれない。
●都市整備の方向
  • 駅北で区画整理を行い、かつバスターミナルも作るということであれば、商業地も移ってしまうのではないか。もう一度南にバスを持っていくというのもあるのではないか。
  • かつては、駅南の区画整理の構想もあった。今回の区画整理は、南を見捨てるというのではなく、北から始めるということである。
  • しかし、結果的に南側を切り捨てることにつながらないか。
  • 国道19号線沿いにサンテラスができて以来、駅南のユニーも業績も芳しくはないようだ。そもそも、ユニーの商圏として鉄道より北側は期待できないのではないか。
  • 住宅地として再生するしかないのではないか。商業としてはムリである。
  • 前市長が、南も入れた区画整理を進めていたが、現市長はそれを見直すことを掲げて当選している。
  • あと10年でユニーがつぶれると大きく変わるかもしれない。
  • 地価も上がっておらず、何とか魅力的な街にして地価を上げたい。
  • 市を南北に抜けないだろうか。道路づくりが大きいと思う。
  • それは第1の課題になっている。万博関連で県が国道248号のバイパスを造ってくれることになっており、それによって南北の道路が1本抜けることにはなる。
●郊外住宅団地の問題
  • これからの若い人で名古屋につとめる人がどこに住むかが問題であると住マスで提起した。しかしその問題は、住宅だけでは解決できないということになった。
  • ニュータウンの戸建ての中古空き家の販売はほとんど不動産ルートにのらず、よくわからない。今後インターネットなどで住宅情報を交流するするというのが課題であるが、まだそんなに空き家が出ていなくて流通していないのが実状である。
  • しかし、今はそうであっても、近いうちにがたがたになるかもしれない。
  • 年取ったら、ニュータウンのような坂の多いところには住めない。その時期に、郊外の人が都心に戻るというストーリーは描けないだろうか。
●都市づくりの方向
  • 理念のないまま拡大を続けてきたような印象を受ける。この現状をどうするのだろう。
  • 市には総合計画の策定に当たり、企画課が事務局となったプロジェクトチームの他、5つのワーキンググループから成る職員委員会と、市民委員会を設置するとともに、市民集会・地区懇談会を経て草案を作成し、議会及び総合計画審議会にかけるといった厳密な手順を踏んで策定作業を進めた。市民参加と環境が市長のキャッチフレーズだが、今後は開発ではなく保全を中心に都市づくりを進める必要がある。
  • 中心市街地の活性化はこの都市にとっては必要な課題であると思う。



     市  
    2001/3/10に、多治見市の方の案内で、多治見市の中心市街地(オリベストリート他)を見学してきました。