●常滑市の状況 ・人口51600人、行政区域48.59平方キロ(南北16キロ、東西6キロ)。古くから港を中心に栄え、大正2年には名鉄が開通した。しかし近年は昭和53年以降人口も減少してきている。 ・平安時代後期から窯業(六古窯のうち一番古い)が盛んになり、INAX等を始め窯業は、近年まで、市の工業出荷額全体の51%を占めていた。現在は42%とその比率を落としている。 ・常滑焼きの人間国宝もおり、常滑焼きまつりの開催や、海外陶芸家を40日間ホームスティ(37ヶ国244名)で招き入れる国際交流イベント・IWCATなど、やきものをベースに各種のまちづくりをしている。また世界最古と言われる大野海水浴場もある。競艇場には年間100万人、常滑焼き祭りに30万人、散歩道に5万人が訪れる。 ・中心市街地は基本計画の区域で約110ha。区域内には6字あり、それぞれが山車を持ち、春祭りで並べられる。昭和30年頃はよく栄え、映画館等もあったが、昭和45年以降減少し、今は人通りも少なくなっている。 ・やきもの散歩道周辺地区(約20ha)は小高い台地にあって、工場群が住宅と混在している。廻船問屋瀧田家(江戸時代)もこの地区中にあり、「魅力ある愛知づくり」の補助を得て修復し、H12年4月にオープンした。 ● 中部国際空港(2005年3月開港予定)関連地域開発計画 ・空港開港のインパクトを地元に引き入れるよう、伝統空港から商業空港(航空収入以外の収入を期待する)への転換を提案している。 ・従来の空港とは異なり、建物の建設費やセキュリティを軽くして、賃料が安価となるような施設づくりをしている。 ・空港と地域(商業機能)をできるだけ開放的に繋げるような空間づくりをめざし、それでもまかないきれない場合には空港で整備するというコンセプトで施設計画を提案してきたが、現状は必ずしもそのように進んでいない。 【中部空港新方式としての提案】 ・空港の物流機能を利用したダイレクトマート・・・実験的にオランダから花を輸入してコンテナのまま販売したところ、物が新鮮そうに見えるという結果を得た。 ・エアポートカンファレンスセンター・・・空港で会議してそのまま移動する発想。 ・空港のインパクトを受ける受け皿づくり・・・常滑の良さを残しながら、新しい価値を世界に発信する場所として前島や空港島を使う。 ・ダイヤログ(会話)の発想・・・『古い建物の中には新しい生活が似合い、新しい生活には古い道具が似合う』という概念。新しい町を造るということは古い良さを積極的に取り込まなければ町はできないという発想を空港関連開発と旧市街地との間で考える。このためのNPOの創設も検討している。 ● 中心市街地活性化基本計画 ・昨年夏に策定委員会を設置、今年2月委員会報告書提出、本年8月を目途に計画書として国に提出する予定。 ○計画策定にあたって実施したアンケート
・駐車場がない、夜道が暗い、道が狭い、等中心市街地の商業へ否定的意見が目立つ。 【商業者 163名】 ・50歳以上が9割以上と高齢化 ・戦前からある店舗が1/3。今後も手も入れないで継続する。 ・後継者がいない 【やきもの散歩道来街者】 ・まちなみや煙突には良い印象をもっているが、飲食店の数が少ない。 【散歩道沿道の人々】 ・道路などの生活環境が不便。 ・観光客のマナーの悪さがある。(観光客が家を覗く、ゴミ等) ・来街者の増加は歓迎する。 ・アクセス道路が整備されるので広域からのアクセス性が高まる。 ・交流人口の増加により、中心市街地の活力を増進できる。 ○中心市街地の区域設定 @市役所周辺地区 A常滑駅周辺地区 Bやきもの散歩道周辺地区 C本町銀座商店街周辺地区の4地区を設定 ○中心市街地の将来像 『世界に開かれたやきものものづくりが息づく街、常滑』 ・常滑駅周辺や散歩道などのターミナル機能、交流機能を活かして賑わいを高める。 ・地場産業、歴史、文化資源を活かして町の文化性を高める。 ・全ての人が安全で快適なまちづくり、市民のやさしさを育むまちづくり。 ○活性化戦略 ・やきもの散歩道を中心市街地活性化の要として一層の底上げをはかり、集客を高める。 ・本町銀座商店街は商業立地のポテンシャルを高める。 ・都心居住中心市街地に住む人々、高齢者が安心して暮らせるような重視する。人口転出を食い止め、定住人口の増加を図り、コミュニケーション ○計画づくりをきっかけに動き出した事業例 1 まちなみ花街道事業 2 商店街看板設置事業(高校生が製作) ○その他 ・商業等の活性化事業は20事業 ・TMOについては明記していない。今後、研究する。 ・財政状況も大変苦しい中で、まずはソフト展開から進めていきたたい。 ●やきもの散歩道 ・散歩道は窯場が集中している小高い丘の上の地域にある。昔は5〜600本の煙突が立っていたが、現在は80本程度(使用中のものは20数本)となっている。 ・この地区内には、窯場の煙突のほか、焼き物のキズ品を使った土留めや家の土台、コールタール塗りの外壁を持つ工場群や住宅などが特色ある景観を形成していて、これらを保存整備をしていこうとしている。 ・来街者は公称5万人だが、実際は20万人近くいると思われる。最近はギャラリー等に加え、飲食店なども増えてきた。 ・15年前にJC(山本氏)が中心となって散歩道フェスティバルをスタートし、10年間ほど毎年秋に開いていた。当時は観光客へのもてなし方や観光客が増加すればどのような変化や課題が生ずるのかを考えるのが大きな目的だった。2年間ほど市の観光協会が主催した時期を経て、4年前から散歩道の会を結成し、会でフェスティバルを開催している。 ・新建材で、白い外壁を使った家が建ち始めている。本当は落ち着いた雰囲気を継続させたい。 ・従来の焼き物業(工場等)は減少し、観光客をターゲットに輸入品を売る店なども出てきた。 ・道路が狭く、坂が多い地域のため駐車場は作りづらく、若い世代は出てしまい、高齢化が進んでいる。高齢者も平地に住みたいと考えるものも多く、このため空家も増加している。 ・また観光客や飲食店来訪者の騒音に対する苦情も出ており、住民と観光客との折り合いづくりが課題である。 ・私案として、景観形成や観光マナーなどを規定したまちづくり協定を考えており、勉強会を始めている。 ★質疑応答 □散歩道内での店舗の状況や影響はどうか。 ●利用状況は分からないが、飲食関係が5店。6年前はゼロ。アトリエは3・4軒程度が営業している。若い陶芸作家も多い。 □散歩道の会の会員はどのような人か。 ●JC(青年会議所)のOBや商工会議所青年部、案内ボランティア等、全51名。職業はお菓子屋さんやサラリーマンなど。年齢層は30代から70代。年会費1000円 ●フェスティバル中の喫茶店売上げは1日20万円程度。 □観光地化が先行しているようだが、生活者の立場から考えて、それで良いのだろうか。 ●観光地化という言い方が正しいかどうか不明だが、お年寄りの中でも観光客との交流は楽しいと感じている面もあるし、ある一定の線をもってバランスをとる必要がある。 □後継者の養成はどうしているか。 ●陶芸研究所というINAXが設立した機関があって、年間6人の人を公募・研修させている。陶業試作訓練所もあってここでも研修できる。 □空き工場などをもっと使うことは考えていないか。 ●焼き物、ガラス、彫金などの作業場として利用する人はいる。 □散歩道の中に常滑焼き関係者を集めるという仕掛けは考えられないか。 ●大型商ではトラックが入れないなどの難があって無理。 ★意見交換 ◆この地域の焼き物をもっと高めようする方向に生活者がどれだけ寄与できているかが重要ではないか。単に見られてどうこうではなく、このまちの文化性向上との関連が生活者の誇りを育て、それを見に来るという感じの観光地でありたい。 ◆常滑が観光地化をめざしているとしても、世界遺産としてどれだけこれが誇れるというものでもない。やっぱり焼き物産業にこそ生活感があるという点から重要であって、仮に遺産に頼るにしても、今のうちに細々でもいいから食いつなげるような仕掛けを作っていかないと長くは続かない。 ■IWCATは面白い。地道に交流を続けると常滑らしさが伝えられるのはないか。 ■居住環境の充実として、朽ちていく前にリフォームする仕掛けを考えたり、細い道と災害に強いまちづくりをするなどを考えることが重要。 |