住宅施策を考える/日本建築学会東海支部都市計画委員会 住宅部会

第16回部会 「西尾市の中心市街地について」   [2001. 9. 4]

参加者:16名

1.自己紹介・書記指名

2.西尾市の中心市街地について
●西尾市の概要
・人口10万人強、世帯数約31800世帯(H13)、高齢化率は15.37%。
・名鉄西尾線が中心的な交通機関であるが、乗降客は年々減少している。西部を走る三河線は再来年の廃線が決定。
・三河湾に面し、周辺に碧南市など。矢作川の三角州に位置し、かつては農業が盛んであった。
・現在は製造業主体。デンソーやアイシン精機など、輸送機器関連が製造品出荷額の8割を占める。
・人口流動は、安城市などへの流出がわずかに多い。
・市営住宅はまだ木造のものが多く、建て替えが必要である。
○市政の状況
・H13年度予算は一般会計295億円。不交付団体であり財政的には優秀。
・S59 HOPE計画策定(全国初の3つのうちの1つ)、S60から生け垣補助制度実施(H13廃止)
・H5 古い町並み・商家・民家・社寺等の保存のための調査を実施。
・H6 老人保健福祉計画策定。住宅バリアフリー改造補助の利用は5件/年程度。
・H8 都市マス策定、第5次総合計画策定
・H10 住マス策定、人にやさしい街づくり計画策定、障害者福祉計画策定(3年ごとに見直し評価する仕組みを導入)
・H12 地域防災計画策定
・H13 西尾幡豆広域計画策定、中心市街地活性化基本計画策定
○駅西再開発
・西尾駅西の豊田一色線を直線にし、道路整備に合わせてホテル、公益施設、駅西広場等を整備する計画。
・S25都市決定。地権者の同意が得られず、H9に計画面積2haから1.6haに縮小。
・ホテルは3セクで経営する予定だったが、美濃加茂で破綻した前例があり、民間開発へ方向転換を図る。しかし、採算が取れるか世論も別れている。
・駅西再開発計画が、中心市街地活性化基本計画の元となる。

●西尾市の歴史と都市計画
・名古屋から35kmに位置する。人口は一色町・吉良町・幡豆町を合わせて広域的にみると約15万9千人。1,000人/年ほど増加しており、将来は17万人に伸びることも考えられる。
・矢作川の三角州にまちが成立。足利義氏が吉良庄東条城と対で西条城を築城。1564年西尾城となり、1590年田中吉政が三の丸を築城し入城。岩村・三好等に飛び地の3万石を加え、岡崎より大きい6万石を有する。
・大正時代頃までに、三間道路に商店や住居がつくられてきた。道路は江戸時代からあまり改善されていない。大正末期から城の東側、名鉄駅までの間が耕地整理で整備される。駅東は最近区画整理で拡大整備。
・S47、中心市街地の小学校区で事故が多発したため、道路のユニット規制を行った。高架が完成すると商店が移動した。さらに駅東と城西に大型ショッピングセンター(シャオ、ミカ・名鉄パレ)ができ、中心市街地が衰退していった。

●中心市街地活性化基本計画について
・西尾市の中心市街地には、@歴史性を有する、A人口集積をもつ、B都市機能の集積がある、という3つの特徴がある。
・商業の課題は、@ミカとシャオの二核間の間に人の流れをつくること、A消費者ニーズを見極めること、B市民への情報発信の工夫、C商店街組織の若返りを図ること、など。
・中心市街地活性化は商業関係者だけでは無理がある。主役を「市民」と考え、市民が自己実現の場として中心市街地を活用すること、つまり「市民活動と中心市街地が連携するまちづくり」を目指した。
・東西の商業軸を人の流れでつなぎ、南北の歴史軸とクロスする部分を中心市街地として活性化させる。
・駅西A地区(再開発ビル)、駅東広場、歩行者空間、駅西B地区の再開発など、駅周辺の整備を行う。
・駅西A地区の再開発ビル内に市民の交流サロンと情報発信拠点の整備。再開発ビルに入る個々の施設は小さく、相互集客効果をねらうことや、管理・運営、イベントなどソフト面からビルの魅力を高めることが必要。
・生活密着型、特価型、観光地型+修景の視点から商業を振興していく。それは商店街だけではできないので、新たな担い手が必要となる。
・大規模な拠点開発による活性化は難しいため、市民活動を支援していく。
・計画に住宅施策はほとんどない。

●まとめ
・商工会議所が、再開発ビルへの入居を、費用面の問題から断念の方向で検討している。
・計画策定では地元からのメンバーも加えワーキンググループを組織したが、継続していくための担い手がいないため活動が広がっていかない。
・旧井桁屋(大正14年建築RC造3階建て百貨店)が道路拡幅にひっかかるため取り壊しが計画されている。この問題をきっかけに、大学生が代表となって「旧井桁屋を考える会」ができ、市民活動の拠点をなっている。所有者は寄付の意向だが、市の方針は未定。
・中心市街地内の空店舗「大黒屋(米屋>パン屋)」がまちの駅「ほんちゃん工房」としてよみがえった(商工会議所が運営)。


3.意見交換
(活性化の方向)
中心市街地内には求心力をもつものがない。働くところも住むところも郊外にある中で、中心市街地に人を集めるというのは至難の業だ。
中心部には城周辺を除いて歴史的に価値のあるものはそれほどない。いまの景観を残しながら、その後ろに建て替えを進めていき、住む人にとって魅力のあるまちにしていきたい。
西尾は他の都市に比べ、商業流出が少ない。シャオも地元商業者の出店が半分以上を占め、よくがんばっているほうだと思う。力はまだあるのではないか。
H7→11年の中心市街地の人口増減は−5%であり、確かにさほどではないかもしれない。
将来の西尾をどうしたいのか、ビジョンが今ひとつ伝わってこない。
市長選の結果によっては駅西再開発は見直しとなるかもしれない。
(高齢者が住みよいまち)
高齢者のサービスを中心部に集めることはできないのか。商業はあきらめて、高齢者が集まるコミュニティ施設(宅老所、ミニデイサービス等)をつくってはどうか。また防災がきっかけにならないか。
江戸時代からの道路がまだ残っており、駐車場の確保が問題となっている。中心には高齢者が残り、区画整理された周辺部に子どもが住んでいる。
イメージとしては大正村のようなものになるのだろうか。
(活動の担い手と活性化の方向)
市がやりすぎてしまった感がある。現在もほどほどで大きな問題もなく、みんな満足しているのかもしれない。まだ今は切実な危機感をもっていないだろうが、数年後には団塊の世代が高齢者になる。それまでに、元気なお年寄りが何かをする気になる仕掛けをつくることが必要だと思う。大企業の退職者など、老人力を活用することも重要。
中心市街地活性化推進協議会のワーキングメンバーは論客にはなるが、活動の担い手とはなっていない。
優等生的なよくできた計画だと思うが、新しい発想・若者の発想がない。これでは、本当に活性化できるのか疑問に思う。若い人が参加していないからだろうか?
「旧井桁屋を考える会」の代表は大学生であり、期待をもってみている。