住宅施策を考える/日本建築学会東海支部都市計画委員会 住宅部会

第17回部会 「岡崎市の住宅施策について」   [2001.11.13]

参加者:11名

1 岡崎市の住宅施策について
(1)現況
    【人口】
  • H12の国勢調査で、人口33万人、世帯数11万世帯
  • 工場が多く、雇用の場があるため、社会動態の増加が大きい。生産年齢人口、若年層の人口が多い。25〜29歳(第2次ベビーブーム)の人口が最も多い。また、4人世帯が多く、高齢者のみの世帯も県平均より少ない。
  • 通勤通学流動:名古屋市・豊田市との結びつきが強い。昼夜間人口比率は93.5%と低く、住宅都市という性格も有する。
    【交通】
  • 道路:東西を結ぶ国道1号線(旧東海道の宿場町)と南北を結ぶ国道248号線。国道248号線は、バイパス建設に併せて行われた土地区画整理事業の活発な施行により沿線が開発され、それに伴い市南部は、ジャスコ・SEIYU等が進出し発展してきている。
  • 鉄道:東海道本線と名鉄名古屋本線。以前はJR(4万人)に比べ、名鉄(8万人)のほうが圧倒的に利用客が多かったが、最近は市街地の南の方が開発されてきたので、JRの利用客も多くなり、差が縮まってきている。
    【産業】
  • 以前は繊維工業が盛んであったが、現在は輸送機器(三菱・アイシンAWなど)が出荷額で工業全体の40%を占めている。また、商店数が減少するも郊外店舗が好調で、商品販売額は製造品出荷額に匹敵する状況。
    【市の財政】
  • 不交付団体であり、H15からの中核市となっても継続される見通し。今後、衛生費が伸びる一方で、土木費・教育費が減少するのではないか。(今後、ゴミ対策に金がかかり、土木や教育費にしわ寄せがいくと見ているため)
    【住宅事情】
  • 空家数の増加が目立つ
  • 建て方別:一戸建てが中心(62.1%)だが、共同住宅も増加している。特に小規模な借家が多くなってきている。
  • 建築年別:昭和56年〜平成2年建築のものが30%と多く、新しいストックの構成比が高い。昭和45年以前が少ないのは、戦災にあったことと、昭和46年以降、土地区画整理事業が活発に行われたから。
  • 住宅の価格:一戸建ては3,000万円前後、マンションは2,000〜3,000万円、賃貸61,500円/月
  • 地価:商業地で18万円/u、住宅地で11万円/u
  • 繊維工場跡がマンションに変わっていている。また、宅地並み課税により、市街化区域内農地(970ha)は、マンション・アパートに変わってきている。
    【基盤整備と公共施設】
  • 市街化区域5,740haのうち、1,450ha、27地区で区画整理を完了。近年は市南部のJR駅東でシビックコア整備(官庁施設)を進めている。
  • 人口集中地区の平成7年の面積は、昭和35年の5倍に増加。人口密度は半減している。 
  • 教育施設の充実、市外からの通学も多い。市民病院が東部の郊外山間部に移転。跡地計画は未定。
    【歴史】
  • 五万石の城下町、東海道五十三次の宿場町として発展。家康の生誕地である。大正5年に県内三番目の市制を施行。
  • 歴史的資源:岡崎城・大樹寺、伊賀八幡宮、滝山東照宮など。
  • 年中行事:岡崎公園の桜まつり、家康行列、夏まつりでの花火大会。
  • 特産品:花火・石製品・味噌・仏壇などの伝統産業品。輸送用等機器産業、化学・繊維工業等。
(2)今後の計画
    【住宅マスタープラン】
  • 平成12・13年度で策定中。市民公募委員7名を含む10名からなる懇談会を設置。
  • 3つの目標(@安心・長持ちの住まいづくりA活気とゆとりの住まいを支えるまちづくりBさまざまな生活スタイルが実現できる仕組みづくり)と10の基本施策で構成されている。
  • 従来のような郊外での新規開発型の住宅市街地整備は慎み、既成市街地の空洞化した地域やスプロール化した地域での住宅供給を図る。
  • 市民、事業者、行政間の役割分担を再構築する。(民間重視、市場重視)
  • 従来バラバラだった施策をまとめる役割
    【中心市街地活性化基本計画】
  • 平成12年3月に策定したが、9月に市長が交代し、白紙再検討となっている。
  • 岡崎公園前に、昭和40年代の市街地再開発事業でできたショッピングセンターが集中しているが、最近は、移転・撤退するところも出ている。空き床も目立つ。
  • 公共施設や民間開発の集合住宅・ホテル等からなる再活性化拠点施設を計画していたが、現在は白紙再検討中。図書館といった動きもある。


3.質疑応答・意見交換
【住宅施策の現況】
特優賃の状況は?
建設中を含め7棟(県認可)。市建設の特公賃は大苦戦した。
都心に高齢者向けの(公共)住宅を供給することが有効ではないか。
高齢者向けとして特に考えていない。また、中心市街地のエリアでのマンション建設が活発である。
今後の市営住宅の計画は?
家賃が低いため、民間を圧迫することも考えられる。今後はストック活用計画の中で、戸数を増やさない方向で検討していく。(現在市営住宅:2,790戸、簡平簡二は200戸程度)既存住宅のエレベータ設置等の高齢化対応にお金を使っていきたい。
今後は市営住宅の戸数を増やさないということだが、市営住宅は、低所得者向けという意義があるのではないだろうか。市営住宅の空家の状況は?
空家率は、8%だが、政策空家が多い。高額所得者が居すわっている実態がある。
【中心市街地の状況と取組み】
公共施設等が分散しているイメージが強いが…。
市街地が拡大するにつれて公共施設が移動していった結果である。中心市街地の空地に公共施設や無料の駐車場を作ってほしいという意見もある。
旧市街地の空洞化の状況はどうか?
伝馬通り沿い及び裏通りに空地の増加。映画館も1軒のみになった。高齢夫婦を残して子供が郊外に出て行くと推測される。
この地域には祭りは残っていないのか?
神社で町内会が主導で「山車」を引いたりしている。
旧東海道「岡崎27曲り」をもとにまちづくりを進めている。中心市街地の7つの商店街が結集して「未来城下町連合」という商店街の連合を組織。イベント等を行っている。
岡崎市の中心市街地は、道路などの基盤整備がしっかりしているという印象がある。
南北の主要道路は電線の地中化が済んだ。東西のメイン道路も電柱のカラー化やクリスマスシーズンの電飾などをしている。
以前「三河小町」というイベント・物販スペースがあったが今はどうなっているのか?
利用者は少なかった。現在、同敷地に、再活性化拠点施設の整備を計画している。
巡回バスの状況は?
コミュニティバスを、1ヶ月、中心市街地を拠点に走らせたが、想定以下の利用客であった。ニーズが無いと判断している。
【住まい・まちづくり施策の方向】
現市長は、市民意見重視から「教えてくれません課」をつくったが、市民の行政依存の方が根強い。
住宅施策:市場重視というわけでもないが、今までは市営住宅の建設が主であった。民間もまだまだ元気である。土地利用のコントロールはする必要がある。
まちづくり条例をつくる予定である。
空家・空室情報を活発にし、流通を支援することも検討。
今後は、一部に残る老朽危険住宅やマンション対策が課題となってくるのではないか。