住宅施策を考える/日本建築学会東海支部都市計画委員会 住宅部会

第18回部会 「半田市の中心市街地について」   [2002. 5.22]

参加者:14名

1 半田市中心市街地について
(1) 中心市街地の概要と区画整理について
  • 武豊線が明治19年に開通→JR半田駅東から市街化が始まる。
  • 名鉄河和線が昭和6年に開通→JRと名鉄の間の市街化が進む。
  • 以後発展し、かつては何でも揃う地区だったが、昭和50年以降、郊外型店舗の展開と郊外区画整理の実施により、中心街の衰退が始まった。
  • JR半田駅東側には、コールタールで塗られた工場、蔵などがあり、風情のある景観を生み出している。ふるさと景観条例による景観重点整備地区に半田運河沿いを予定し、地元と協議中。
  • 平成10年、上記の地区を含む80haを対象に、中心市街地活性化基本計画を策定した。
    ・ 商店街の発展の変化
       JR半田駅周辺から名鉄知多半田駅周辺へ
    ・人口       市の人口   中心市街地
       昭和59年  9万1千人  4600人
       平成10年 10万8千人  3700人
       平成14年 11万3千人
    ・ 減少要因
       郊外区画整理の実施、若い世代の郊外流出、知多半田駅前区画整理も原因
 ■知多半田駅前区画整理の概要
  • 事業期間 : 5年延長の予定(H16 からH21へ)
  • 目 的 : 道路、公園、公共下水道の整備
  • 区 域 : 市街地再開発を含む17.7ha
  • 進捗状況 : 移転 257/389戸(66.1%)。  玉突き移転を進めてきたが、拠点の交渉が難航している。区域内での建築中又は建築完了物件は70軒。
  • 計画はバブル期に作成。事業費が厳しく、10億円/年のときもあった。今は20億円/年以上確保している。
  • 区整の外に出た人は土地を手放していない。道路が整備された段階でどうするか検討していると考えられる。
  • 平成10年度に中心市街地活性化基本計画を策定。
  • 平成12年3月 駅前地区計画をかけた。(従前まちづくり協定があり、これよりゆるやかな規制とした内容で地区計画とした。)
(2) 再開発について
  • 地権者15名、借地権者1名で平成7年に準備組合設立。平成11年度に都計決定。平成13年度に事業計画(案)を作成。今年度、組合の設立認可をめざす。
  • 1・2階は店舗。3階は公益施設(子育て支援センターで検討中)。4〜6階は駐車場。7階以上を住宅で計画中。
  • 店舗は核テナントを考えず、地元の商業者中心で検討。
  • 駐車場については、当初地下で予定していたが、水害対策上、地上階に変更した。
  • 組合理事長はTMH((株)タウンマネジメント半田)の役員も兼任している。
(3) TMO(TMH:(株)タウンマネジメント半田)について
  • 中心市街地活性化法は平成10年7月24日公布だが、商店街では早くからこの情報を入手し、平成9年度末から勉強会を始めている。
  • 平成10年5月 : 商店街だけでなく市を巻き込んだかたちで準備会形成。
  • 平成11年3月 : 基本計画策定
  • 平成11年10月 : TMOは第3セクターで設立。当時、第3セクターか商工会議所かという議論はあった。資本金2000万円のうち1000万円を市が出資。あとは半田商工会議所が300万円、商店街4組合で120万円、残り580万円を民間出資。
  • 平成11年度事業 : 各商店街が個別に実施していた夏祭りを合同で実施。イルミネーションも設置。運営費 201万2千円(資本金比率に応じ、141.7万円を市が負担)
  • 平成12年度事業 : 山車まつりを実施(山車16台を展示)。併せて、山車まつりグッズ販売(携帯ストラップ、ピンバッチ、小判)→300万円の利益、パソコン教室→300万円の利益、運営費846万円
  • 平成13年度事業 : T's CAFEの開店。T's CAFEの9月からの収支は31600円の黒字。売り上げは1千万円を超える。運営費1160万円
  • 平成14年度事業 : 市の当初予算(市の負担額)744.6万円


3.質疑応答・意見交換
 T's CAFE(旧中埜家住宅)の所有は今どうなっているか。客の属性はどうか。
 旧中埜家住宅は民間が所有。家賃9.1万円/月。客は市外の方も結構多い。観光客が途中で立ち寄ることもある。リピーターもそれなりにある。
 T's CAFEのきっかけは?
 空き店舗対策のひとつとして、旧中埜家の向かい側にあったおもちゃ屋をTMOの事務所として借りることになった。入居後その向かい側にある旧中埜家住宅をなんとかならないかと考えたことがきっかけ。国指定重要文化財であり、文化財保護法に文字どおり従うと、火災報知器や消火設備などの安全対策が大変。「軽微なものはその限りでない」という条文を適用してもらうよう県に働きかけ、なんとかOKをもらった。
 TMH((株)タウンマネジメント半田)の事務所が3階建てでは負担が大きくないか。
 当初は補助金で空き店舗を賃貸していた。今後の検討課題である。
 資本金2000万円のうち、一般580万円の出資者はどういう人か。
 金融機関が7行、市内企業が26社、個人が17名となっている。
 区画整理事業で長期間商業活動が止まる影響はどうか。
 道路財源が縮小され、財源が手当できなくなり、事業期間の延伸を余儀なくされた。そのためもあり、中心市街地活性化計画を策定し、一般会計の導入を図った。
 地価はどうか?
 全国的には商業地の地価は、昭和63年を1とすると、平成14年は0.58まで下がっている。しかし半田市は、名古屋に近い東海市などよりは下がりにくいようだ。100万/坪→80万/坪といったところ。
 区域から出ていった住宅が帰ってくる保証はないが?
A 道路が整備されれば帰ってくると思う。17.7haをランダムに手を付けたのが失敗だった。歯抜け状態を招いている。土地を処分する人は少ない。事業費のうち工事費は少なく、物件移転に金がかかっている。
 鉄道連続立体高架についてはどう考えているのか?
 JRとは高架化の協議をしている。名鉄は半田常滑線部分の高架化を進めている。
Q 景観条例とのかねあいはどうか?
 地区東部のJR東側を特に重点と考えている。保存すべきものに対しては補助を行う制度を持っているが活用事例は少ない。
 区画整理を実施することとした動機や経緯は?
 車社会が進展するなか、昭和56年に大学の先生の講演会があり、半田の中心市街地の衰退の危機が指摘された。これを元に市議会が動いた。昭和63年に基本調査、平成2年事業計画、平成6年仮換地指定と進んできた。
 区画整理によっても東西軸が抜けないなど、問題解決にならないのではないか。
 指摘の点は鉄道高架ができないと解決しない。だが今は、そのタイミングにはない。道路整備を主体とするよりは、駅前商店街を何とかしたいというのが先にあった。
 住宅地にしてはりっぱな道だが、鉄道に挟まれ通り抜けないのでは意味がないのではないか。また、商業地区は地区計画により、下駄履きの住宅しか許容していないのに、車が寄りつけない道路計画となっており、これでは商店経営はなりたたないのではないか。道路計画と土地利用計画が整合していないのではないか。
 幹線は道路特定財源による補助が期待できる。区画整理の事業費を生み出すため、幹線道路が必要以上に大きくなった傾向はある。
 再開発では、4〜6階を駐車場とする計画だが、あまり一般的ではないように思うが?
 住宅系再開発補助の対象となる。4,5階は一般駐車場、6階は住宅用で計300台分を予定。底地地権者のうち大手企業が1/3、市が1/3を所有している。
 住宅は83u/戸、90戸を考えている。地区内の分譲マンションは90m2以上で早期に完売している状況であり、2100万円/戸ならリーズナブルと考えていた。販売を住宅供給公社に要請している。参加組合員、あるいは特定建設事業者制度を活用することも必要かと思う。
 83uのマンションは、分譲には小さく、賃貸には大きい中途半端な規模のように思う。場合によっては住宅はなくてもいいのではないか。
 商業床での購買力を考えると、住宅はなくてはならない、と考えている。

◆部会後の意見
 区画整理であそこまで整備するというのが、今風ではないのはもちろんですが、もうかなり整備されているのであれば早く完成させれば、20世紀型ニュータウンを評価する一般の人々にはそれなりに受けるんじゃないかなと思いました。今の時代にああしたインフラ整備ができるというのが半田らしいといえば半田らしいし、商業サイドは、TMOを中心にそれなりに形にするだろうと楽観的に考えます。
 再開発ビルには、無理して集合住宅を作らなくても、他の土地で別のディベロッパーがそれなりのものをつくるでしょう。住宅導入が再開発の絶対条件でしょうか。民間導入の方がスムーズだと思います。もしくは市営住宅というのもありえます。
 駅前は20世紀末型の新市街地整備として、JR駅東の景観地区の整備の方を真剣に考える必要があるのではないでしょうか。といっても、面的に重点整備地区とするのは難しいようです。点的、人的な展開の可能性はないのでしょうか。
 このままほっておけば衰退してしまうという危機感で始めたはずの中心部の整備が、住宅を追いだし、人口減少に拍車をかけているという矛盾。バブル期に成長を前提として作った計画が変更できないまま、長期化して先が見えないという状況が、この半田市でもおこっているというところでしょうか。
 事業としては難しいところがありますが、元気のあるTMOがまちづくりに取り組んでいるところが期待できそうです。まちとしても、山車祭りや歴史的な雰囲気が残っているところが、まちの魅力づくりに活かしていけそうです。
 ちなみに、今年は市政65周年記念ということで、10月5日、6日に36台の山車が勢揃いするそうです。