住宅施策を考える/日本建築学会東海支部都市計画委員会 住宅部会

第22回部会 「西春町の中心市街地について」    [2003.1.16]

参加者:11名

1 西春町の中心市街地について
(1) 西春町及び中心市街地の概要
  • 西春町の人口 約33,000人、行政面積 約10ku
  • 町の特性 名古屋市のベットタウン
  • 中心市街地活性化基本計画の範囲は、西春駅西地区を中心とする25ha。
  • 商店と住宅が混在し、建物の老朽化、商業の衰退化が生じている。駅前の通りは狭く、歩行者、自転車と車が混在交錯する状態である。
  • 駅の東側は大規模な工場跡地の再開発等により、駅前広場、駅舎の橋上・自由通路等の整備も済み、駅前には名鉄パレ、UFJ銀行の情報センター等が立地する。
  • 現在駅利用者は23,500人/日だが、今後常滑沖の国際空港開港やUFJ銀行の情報センター(従業員3千人)の移転計画あり、減少が予想される。
  • 駅利用者は多いが、通勤・通学駅であって、沿道の商店街で買い物する人は少ない。商店街の魅力も少なく、昔からの人が細々と経営しているのがほとんどである。

(2) 西春駅西土地区画整理事業
■概要
  • 事業区域 3.2ha。(名鉄犬山線西春駅と主要地方道名古屋江南線との間で県道西春停車場線幅員7.5m(都市計画道路西春駅西線幅員18〜21m)を軸とした西春町では唯一の商業地域)。権利者数76人。
  • 事業の目的…都市基盤の整備・商業地の整備・交通体系の確立・居住環境の改善を行うことにより、西春町の玄関口にふさわしい街づくりを目指す。
  • 設計方針…西春町の玄関口にふさわしい公共公益施設等の整備改善を図り、魅力ある街づくりを計画する。
■ 事業経緯
  • 駅前開発は20年〜30年前ごろから叫ばれ、昭和58年ごろ具体化してきた。当時は9haで基本構想を地元に下ろし、59年から62年ごろ説明合意形成をしてきたが、南側の住宅地の住民からまとまった反対署名が出てきたので、現状の区域とした。
  • 平成2年に西春駅西線の都市計画決定をした。
  • 平成8年ごろから駅前街区で再開発事業の勉強会をしてきたが、小規模な持ち家で商売をしていたこと、当初から再開発に強行に反対する人がいるなどで、平成11年には断念した。代わりに区画整理が進めやすくなったように思う。このため平成11年に区画整理の事業認可を取得した直後であったが、平成12年には再開発中止に伴う事業認可の変更をした。
  • 平成13年に都市再生区画整理事業補助と交通結節点改善事業補助の新規採択を受けるとともに、仮換地指定を実施し建物移転等の工事に着手した。
  • 事業完了は平成22年の予定である。
■事業スキーム

■換地計画と仮換地指定
  • 本地区は単価増進はあるが、総価額的には整理後の価値が減少する減価地区である。このような地区では減価補償金で公共用地の先買いを行い、従前の宅地面積を減らす。西春町では約4500uを減価解消のために買わなければならなかった。通常は事業認可後に補助を入れて先買いするが、西春では早期の事業化を図るため、昭和63年から町の一般会計で、買える土地は買いはじめた。その結果、平成11年には5500uに及んだ。
  • 現在はこれら減価を超えて処分できる土地や地区外移転者の残地と交換して得た土地等が地区内に約2000uあるが、一般権利者の換地を優先したため、小規模な換地が分散していることや、処分先の公平性などの議論があって、処分及び利用方法が課題となっている。
  • 事業費をおさえるため、事業計画上、建物移転を避けようと計画する傾向があるが、返って合意形成をむずかしくする。半端にするなら移転をかけることがよいのではないかと思う。例えば、土地だけを公共施設でとられるような計画は返って前面駐車場を減らされたりすることになり、これを嫌う傾向がある。
  • 照応の原則などあるが、特に大型物件の場合は換地計画のとき従前の建物と重ならない換地計画を立てれば仮設店舗は不要となり事業がスムースとなる。
  • まだ、換地を了解していない人が数名いる。これらの人の不服は、『補償方法、補償額、移転先、移転方法等がわからないのに仮換地指定に同意できない。』という生活再建に関する内容が多いが、事業の流れとして建物補償調査は後になるので説明しにくい部分がある。(事業者が先行調査する方法しかないが、費用がかかる。)
■建物移転計画と施工計画
  • 建物移転を短期に行うことが事業推進のポイントだが、資金調達の問題と玉突き移転の問題を整理しておくことが重要。
  • 一般の市民には資金計画が事業のコントロールになることを理解できにくい。国県の補助をもらわねばできない仕事だけに町としては苦しい。
  • 仮設店舗は駅前条件を満たすものを供給するのは難しいが、休業補償をもらって営業をやめるとか、業種変更をしたり、移転でなく廃業する人があって、当初よりは少なくて済みそうな気配である。
  • 移転にあわせ借地借家の関係を解消したい人も多い。この際、借家を建てずに駐車場にしたいなどの希望あり、借家人からも問題がぶつけられる。来年度からは法律の専門家に借地借家関係の相談・調停をお願いするつもり。借地借家問題の解決が事業進捗を左右する。
■その他
  • 既定計画の駅広の地下駐車場は、集団移転を必要とするなど、資金・財政的な面もあり、断念することとなった。これに変えて地上式で他に分散型を計画中。
  • 公共下水道事業の整備時期との整合が問題となっている。本町でも公共下水道の整備が決定したが、その整備は数年後。現在、移転する人は合併浄化槽の設置が必要となるが、将来はそれが不要となる。住民にとって負担の差が大きい。

(3)その他関連するとりくみ
  • 住民参加のまちづくりという意味から、公共空間の景観を題材にワークショップを開いた。
  • 象徴的意見として、街路樹は植樹帯や樹木などいらない。看板が見えないなどの理由による。最終的には植樹枡を置く程度となる。駅前広場などはイベント広場として利用できることを要望されたので、歩道との段差をなくし、設置物は可動式のものを計画している。
  • パティオ事業を実施予定。3人の共同で優良建築物等整備事業の補助を受けて、来年の秋に完成予定で動いている。
  • 駅前コミュニティセンターを検討中。(役場出張所機能、端末できるもの、子育て支援などはどうか。集会機能や福祉介護情報発信はどうかなど)
  • 地区内にある151uの町有地を利用して、商業活性化施設を検討をしている。
  • 地元要望で駅前交番の誘致計画がある。

(4)中心市街地活性化基本計画について
  • 区域面積25ha。区画整理以外の地区で具体的に動いているものは現段階ではない。
  • 当面は駅前の区画整理事業を完了させることを目標としているが、個人的には既存道路再生事業としてあげているように、歴史軸として位置づけている岩倉街道の整備を次の段階では手がけて行きたい。
  • 市街地の活性化をテーマとして、地元大学(名古屋芸術大学)の協力による交流事業が始まっている。学生作品の展示・販売や看板のデザイン相談など単発的ではあるが、活動は活発である。
  • TMOなどソフト事業との連携が課題。


2.質疑応答・意見交換
Q:事業効率が高いように思うが…?
A:当初は地区の面積が小さくて区画整理補助に該当しないため、公共管理者負担金対応としてもらった。区画整理の採択基準に該当する場合には、公管金制度を活用することはできなかった。その後、平成12年に、補助制度の見直しがあり、都市再生区画整理補助を導入することが可能となった。中心市街地活性化基本計画を策定することにより、重点地区となり、補助率が1/3から1/2にアップした。ちょうど、制度の狭間の中で公管金も区画整理の補助も両方を受けることができた。

Q:中心市街地活性化基本計画の成果としてあげられるものは大学連携といってよいか。また、それができた要因は?
A:活性化基本計画を作っていなかったら、今年度の大学連携はなかったといえる。活性化基本計画策定の委員として名古屋芸術大学の先生に入ってもらったのがきっかけ。以前から、アートのまちづくりを進めており、名古屋芸術大学の先生とはつながりがあった。

Q:店舗の経営者の年齢層はどうか
A:高齢者が多い。ほとんどが高齢者で後継ぎもいない。整備後の姿は住宅地としての色合いが強くなる。

Q:町有地の活用はどう考えているのか?
A:全体で2,000uあるが、300u以上のものが1箇所。駐輪場と交番を除くと、100uを超える土地は4箇所程度しかない。他は100u以下の小規模なもの。一般権利者の換地を優先してきた結果である。今になってなぜ集約しなかったのかという意見がでている。100u未満のものは隣接地に処分することとしている。

Q:借地借家の状態はどうか?
A:借地11人、借家42人(商業10人)、商業10人の年齢は高齢。かつ昭和30年ごろからの家賃、地代安価なので借地借家の権利が強くなってしまっている。個人的には公有地をこれらの対策に使いたいと思うが…町有地の処分は難しい。

Q:小規模な町有地は買いたいという人に売ればよいのに、なぜ売れないのか
A:対象者を絞ることが難しい。また、町が土地を取得した時代は地価が高い時代だったこと、公共財処分をする際に公平性の原則を確保するのがむずかしいなど…。

Q:計画されている駅広はバスが入ってくるのか?
A:現状はないが、大きさとしては可能なものである。

Q:西春としては駅前はむしろはずれ。師勝町と一体となったときに中心地となると思う。本来ならば師勝町と一体となって考えるところではないか。師勝町とあわせれば、7.5万人の人口の都市となり、その中心と考えられるのでは。合併の動きはどうか?
A:活性化計画を策定する際、師勝町に委員に入ってくれるように頼んだが断られた。行政区の違いが支障となっている。合併については、西春日井郡として話はあるが、大きな動きとはなっていない。

Q:この地区の人は活性化をどのような形で望んでいるのか?
A:まちづくりに関して他力本願的な志向が強い。大売出しができるような商店街ではない。

Q:この地区の人にとっては土地区画整理は良かったのか?
A:老朽化した建物が多いので、減歩はあるが、建物補償があることをはメリットだと思う。本来ならば自己資金ですべて建替えしなければならないが、少ない自己資金で建替えが可能となった。



2003/3/15に、みんなで歩いてきました。