住宅施策を考える/日本建築学会東海支部都市計画委員会 住宅部会

第31回部会 「稲沢市の中心市街地について」    [2004.10.26]

参加者:9名

1 稲沢市の中心市街地について
1 稲沢市の概要

(1) 都市概況
  • 人口:101,361人(H15.10)。昭和30〜40年代に急増しその後は微増で推移している。高齢化率は愛知県平均よりも低いが、今年の1月に幼年人口と老年人口の数値構成比が逆転した。
  • 名古屋都心から20km圏内。公共交通機関で15分足らず。
  • 尾張平野の中心地。尾張国府、国分寺・国分尼寺が置かれたところで歴史は古い。江戸時代には美濃路の宿場町として賑わう。
  • 将来都市像:「やさしさと緑あふれる生きがい都市」
(2) 総合計画における市街地整備の位置づけ
  • 第3次総合計画(1994〜2005)において、都市基盤の整備により市街地の拡大を目指す(市街化区域率、現況13.7%、目標27.4%)ことをあげたが、市街化調整区域も土地改良等により一定程度道路整備がされていることや、市街化区域編入のメリットという点で拡大は進まなかった。
  • 第4次総合計画(2003〜20012)では、計画期間10年間は基盤整備を伴っての新規拡大は想定しない計画となった。3つの都市核と市街地周辺部との調和ある進展を掲げた。現在進行している区画整理事業は3地区あり、その事業の推進とともに公共下水道及び幹線道路の早期完了をめざすものとした。将来人口フレームは、トレンドではH17をピークに減少することになるが、大規模住宅開発や区画整理の進展による緩やかな増加を見込んでいる。H24年で104,000人。
  • 第3次では市街地整備を最初の項目1-1としてあげていたが、第4次では1-1に環境対策をあげ、環境への配慮・安心安全を前面に出し、市街地整備は2-1に。中心市街地としては、JR稲沢駅周辺、国府宮駅周辺、市役所周辺の3つの都市核を想定。H18年に中心市街地活性化計画を策定予定としている。
  • H17.4.1に祖父江町、平和町と合併する。人口14万人弱。合併でも、広域都市交流拠点としてのJR稲沢駅周辺の開発は重点ポイントとしての位置づけは変わらず挙げることになった。また木曽川を広域レクリエーション拠点として位置づけられることも大きい。
(3) 市街地の現況と課題
  • 市街地の大きな中心となる核がなく市街地が分散。
  • 美濃路周辺や駅周辺に商店、住宅が張り付く。JR稲沢駅から名鉄国府宮駅を結ぶ東西軸上で区画整理による市街地整備を進めたが、人口増は周辺部の開発によるものが多く、区画整理地内で田や畑が目につく。駅周辺では駐車場に活用されているものが多い。
  • 国府宮駅周辺では市、商店街、商工会議所等が中心になり、整備計画を策定するが具体的な動きはない。
  • JR稲沢駅西周辺では駅舎の新築にあわせたバリアフリー等整備を行っているが、商店街こぞっての具体的な動きまではない。
(4) 産業
  • 農業:古くから野菜、植木・苗木等の産地として発展。日本4大植木生産地の一つ。
  • 商業:商店数は減少しているが、販売額は増加。近年4つのSC(アピタ、ハーモニーランド、トップモール、ヨシヅヤ)がオープン
  • 工業:事業所数、製造品出荷額とも若干減少気味。繊維工場が撤退し、跡地がSCやマンションに。
(5) 住宅整備
  • H13年度の住宅マスタープランでは、稲沢駅周辺地区、稲沢団地(都市機構の団地建替え)、稲沢西地区(区画整理)、北市場地区(区画整理)を重点地区として位置づけ。

2 稲沢駅周辺地区(グリーン・スパーク稲沢21)

(1) 地区の概要
  • T14に日本3大操車場の1つである稲沢操車場が開場。全国の輸送拠点。S62国鉄の民営化により開発に着手。以前は市街化調整区域であったが、市街化区域に編入。
  • 名古屋駅から11km。10分。名神高速道路の一宮ICまで約2Km。交通の利便性の高い地区であり、稲沢市の東の玄関口、西尾張の拠点地区として位置づけ。
  • 地区の西側43.45haは都市機構(旧都市公団)が施行者。東側19.78haは市が施行者。
(2) 尾張西部都市拠点地区事業計画(西側地区)の概要
  • A〜F街区の6つのまとまった街区がある。
  • A街区は市土地開発公社が保有。
  • B街区2.1haは市が購入。地域交流センターを計画。H19年以降の整備予定。昨年、キダムを開催。97%という非常に高い入場者があった。駅に近く、かつ駐車場も確保できるというのが要因。このような利用によって知名度アップを図っていきたい。
  • C街区3.5haは集合住宅地。販売にかけたが落札なし。
  • E街区5.7haはユニーが購入。市西部にアピタがあるが、鉄道駅より東をターゲットにしたい考え。H19春オープン予定。それまでに基盤整備をすすめる。
  • F街区2.3haは県土地開発公社が購入。
(3) 下津陸田地区事業計画(東側地区)の概要
  • すべて一般住宅地。名古屋岐阜線沿線は近隣商業地域でその他は第2種中高層。
(4) 市街地の整備状況
  • 中大通線を中心に発展。S29年より稲沢土地区画整理事業144.9ha、S46年より中部土地区画整理事業43.8haを施行。S29〜60にかけて合計188haの土地区画整理事業が完了。中心部については一定の基盤整備ができている。
  • この西側に美濃路の稲葉宿がある。自然発生的にできた市街地。4地区にわけて区画整理を計画していたが、バブル崩壊により困難となり、1箇所(稲沢西地区41.5ha)のみ施行中。

3 その他(稲沢市の特徴など)

  • なんでもやっているが、秀でるものがない。
  • 市街化区域に4割、市街化調整区域に6割が居住。市街化区域の面積が狭く、図面ではまとまっているようにみえるが、実際の市街化はバラバラに進行している状況。
  • 鉄道駅がたくさんある。JR2駅、名鉄2駅。名鉄大里駅周辺は市街化調整区域。JR駅からでるバスはなく、名鉄駅からのバスも少ない。そのため、自動車で駅までくる人が多く、駅周辺に駐車場が多い。
  • 土地改良事業によって整備。農業振興地域が広がる。土地改良事業の制約によって転用ができないなど、市街化が抑制された。
  • 南北の幹線道路はあるが東西の幹線道路が1本しかなく渋滞。東西幹線道路の整備をすすめているが、JRをまたぐ道路の整備が課題。
  • 財政力指数が1.0を超えている。市民病院を有していながら健全財政を誇っている。


2 質疑応答・意見交換
Q:質問、A:答え、C:コメント)
Q JR稲沢駅から名鉄国府宮駅まで店舗は連続しているのか?
    A 連続していない。駅前に県公社による下駄履き住宅が5棟あるが、老朽化しており再開発が必要。
     駅間は約2km。途中は住宅地となっている。中大通線の背後の美濃路沿いに昔は店舗があり、近商となっている。
Q 美濃路には歴史的まちなみが残っているか。それを保全・活用しようという動きは?
    A 美濃路は清洲宿から市を斜めに通って起宿に至る。立派な旧家が残っているが点在している状況。保全・活用の動きはない。区画整理の事業実施にあたっては十分配慮することとしている。
Q 繊維産業の衰退の影響は?
    A 一宮や津島ほどの影響はない。大きな工場はあったが、繊維工場の数はそれほど大きくはなかった。S40年代前半に稲沢が活気づいていた要因は操車場があったから。多くの人が働いていた。
     JR駅と名鉄駅の間が2kmとやや距離があるが、これがもう少し短かったらもっと発展したのではないか。
Q 国府宮駅周辺に商業集積がないのは何故か?
    A 駐車場経営で土地の収益があがっているからではないか。P&Rとしての利用多い。祖父江町の人も利用する。(平和町は勝幡駅を利用)。
     駅前にあったスーパーがつぶれた。郊外SCの立地により、それを利用した方が便利。
Q 稲沢駅周辺での住宅立地状況は?
    A 現在のところあまりみられない。保留地価格は12.4〜13.7万円/u。1区画あたり60〜70坪。
     住宅購入層の資金が3000万円だとすると土地にまわせるのはその半分。40万円/坪だと40坪が限度。土地の価格、規模にギャップがあるのが要因では?
    A サーラ住宅が工場跡地を開発した地区では50坪、建物を含み4000〜5000万円程度で販売し、それなりの売れ行きがある。ここは、1種低層なみの地区計画をかけており、ステータスとしての魅力もあった。
    C 交通の利便性にプラスして住宅地としての魅力が必要ではないか。現計画の区画整理による区画割では住宅地としての魅力が生まれない。歩行者空間やコモンを生み出す必要がある。幸田町では一定規模を民間に任せることで、コモンなどのある住宅地を生み出し、販売も好調だったと聞いた。
    C 稲沢市に住むことの魅力づけ、CI戦略のようなものが必要なのではないか。
Q 稲沢市にとっての市町村合併の意義は?
    A 木曽川の活用という大きな意義もある。木曽川の知名度は高い。
     従来から広域事務組合において、し尿処理、ごみ処理、消防、水道を共同で行ってきた。行財政運営の効率化という点も大きい。地域一体で前進していくということに意義がある。
Q 周辺の旧住造法による団地や集落地において住宅が歯抜けになっていくような状況はあるか?
    A 集落地ではそのような状況はないが、一部の旧住造法による団地(田代)ではそのような状況も発生している。高齢化がすすみ代替わりしていかない、敷地が細分化するなどという問題も起こっている。
     都市機構の稲沢団地では一部建替えの予定がある。
Q 稲沢市における市民活動などの状況は?
    A 稲沢市ではS55年に市民センター構想を提唱し、市内7地区(中学校区)において、市の出張所、児童館、老人センター、公民館が複合するセンターを設置。出張所には職員3人が専従し、地域のコミュニティ活動を推進。耐震改修の受付や出前講座なども行っている。「まちづくり推進協議会」を設置し、文化・スポーツ活動や河川清掃など多様な活動を展開。コミュニティタウンのさきがけである。ただし、NPO活動が活発とは言えない。
    C コミュニティをうまく運営していることはすごい財産。「コミュニティのある稲沢市」ということをもっとPRし、売り出していくべき。わがまちの自慢として市民にも知らせていくべきだ。
☆市民センター構想
昭和55年10月に提唱したもので、市の出張所としての市民センターを中心に児童館(児童センター)、老人福祉センター(老人憩いの家)、公民館を近接する形で設置し、まちづくり活動やコミュニティ活動の拠点にしようというもの。


  
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