住宅施策を考える/日本建築学会東海支部都市計画委員会 住宅部会

第33回部会 「小牧市の中心市街地について」      [2005. 7.26]

参加者:13名

1 小牧市の中心市街地について
●小牧市制50周年記念ビデオの放映
●小牧市の中心市街地のスライドと説明

(1)小牧市の現況
  • 小牧市は名古屋の北に位置し、高速道路のIC、JCT、県営名古屋空港などの交通の要所を抱えている。
  • 伊勢湾台風以前は農業のまちであったが、その後工場誘致を行ったため中心部の周辺が工業地帯になっている。
  • 市全体の人口、世帯とも増加を続けている。旧市街地では人口、世帯が減少する傾向があったが、地下鉄の開通によって平成12年から15年の間は増加に転じた。現在の人口は15万人を超えている。
  • 最近4年間で9棟のマンション(計450戸)が建てられた。
  • 小売販売額は平成9年度までは増加をしていたが、現在は伸びがない。
  • 登録自動車数の伸びに合わせて大型店売り場面積シェアが伸びている。地下鉄の開通以前は自動車が増えると小牧駅の乗降客数が減っていった。
  • 平成7年に策定された住宅マスタープランである小牧市住宅供給促進計画では持家と借家の比率(6:4)を目標にしていて、現状の比率もほぼその割合である。中心市街地を囲むように区画整理が行われているのだが、それは住宅マスタープランの重点地域でもある。
  • 区画整理で宅地供給を行ってきた。3,000戸の県営住宅を抱えており、近年、建て替えによるシルバーハウジングの導入などが行われている。しかし、小牧市独自に特徴ある住宅施策は行っていない。

(2)中心市街地活性化の取り組み
  • 小牧市中心市街地活性化基本計画を平成12年3月に策定した。
  • A街区開発事業は、整備の必要性を感じているが暫定利用にとどまっている。平成13年に市役所の移転案もあがったが、移転の費用が建替えの倍の120億という試算や中心市街地の活性化につながるのかという批判に対し明確に解答が出せなかったこともあり、A街区への市役所移転は行われないことに決定した。
  • 小牧三丁目地区第一種市街地再開発事業は完了したが、「民間開発計画」は一部権利者の反対で進んでいない。上新町地区整備促進事業の区画整理事業は進行中である。
  • 山東地区整備促進計画は景観重点地域にも指定されている地区である。小牧駅と小牧山を結ぶ小牧市のシンボルロードでは地中化を行った。
  • 商業等活性化構想図は商工会議所を中心にして策定したものであるが事業として明確に行われているものはない。
  • 「一・六市」は20数年前に中止された市で、復活を検討しているが警察から道路の使用許可を得ることができていない。また市を行う人が高齢化してしまっているという問題もある。
  • 計画策定時は5つあった商店街も、現在では1つになってしまった。
  • 小牧駅と小牧山を結ぶシンボルロードは歩道の拡幅、地中化を行った。昭和62年ごろから進めた道路拡幅によって商店街が閑散としてしまった。以前のように一方通行にして、路上を駐車スペースにして欲しいという意見もある。


2 質疑応答・意見交換
Q:質問、A:答え、C:コメント)
Q グラフを見ると人口や世帯が増加しているのに商店街が衰退してしまうのはなぜか。
    A 自動車がないと生活しにくいまちであるので、大型店での消費が多いと思う。イトーヨーカドー、ジャスコ、アピタ、清水屋などの大型ショッピングセンターに加え、大型ホームセンターも相次いで出店している。
Q 中心市街地にあるイトーヨーカドーは好調なのか。
    A 好調ではないと思う。計画当初は周辺の商店街への波及効果を期待していたが、現状で波及効果は見られない。
Q 店舗を畳んだものの中でどのような業種が多いというようなことはあるのか。
    A 特に無いと思う。
    C 下駄屋、はんこ屋、飲み屋などは残っている
    C 駅前には空き店舗が出ても新しいお店が出るが、個人資本ではなく大きな資本のあるところが出店している。地主に運用する意欲がない。
Q 駅前のマンションに入居した人は名古屋に通勤している人が多いのか。
    A 地下鉄が開通したので、以前から名古屋に勤めていた人がマンションを購入したケースが多いと思う。
Q 小牧地区は中心市街地の区域と考えればよいのか。
    A 中心市街地の区域は93haであるが、小牧地区はそれよりも大きく147haである。
Q 小牧市のマンションの価格はどれくらいなのか
    A 中心価格帯は2500万ぐらいだと思う。
Q 持ち家と借家の比率が6:4というのは持ち家を増やすという意味での目標なのか。
    A そうだと思う。しかし、計画を策定した段階で既に6:4なのでよくわからないが、現状維持という意味合いとも考える。
Q 財政力指数が高いということだが、どのような企業があるのか。
    A 東海ゴム、日本ガイシ、三菱重工などがある。業種に偏りがないので社会状況の影響が少なく、安定しているのだと思う。
Q 工場が移転してできた跡地はないのか。
    A ほとんどない。岐阜に移転した工場はあるが、まだ跡地として利用されていない。住宅になると思っている。
Q 名古屋空港閉鎖の影響はあるのか。
    A まだ実感がない。機内食をつくる工場が常滑に移転したということしか把握していない。民間駐車場業者も小牧市ではなく豊山町に立地していた。高速道路のインターチェンジがあるということが移転企業の少なさにつながっていると思う。
Q 景観条例を定めているのだが、どのような景観をイメージしているのか。
    A シンボルロードに植栽を植えるなど、緑を多くすることを考えている。条例は平成13年4月1日に施行した。
Q まちづくりに関する市民団体はあるのか。
    A 4月1日にまちづくり活動センターを設立し、120団体が登録している。しかし、中心市街地の中で活動している団体はない。センターは中心市街地の中の市民会館の中にある。
Q 商業活性化構想図に示されている空き店舗等活用事業は進んでいるのか。
    A 進んでいない。
Q 小牧に大学はあるのか。
    A 名古屋造形芸術大学と愛知文教大学の2つがある。課ごとに大学側と連携していることは多くあるが、まちづくりに関しては名古屋造形芸術大学にモニュメントを制作してもらっている。
Q 財政力指数の高い都市なので恵まれた状況であり、チャレンジすることが少ないのでは。
    A 確かにまちづくりで成功しているのは、地域が自主的に動き、役所がしぶしぶ動いているところだと思う。小牧市はほとんどが官主導で進めているというのが現状である。地元からの盛り上げを待つのが今の市の姿勢である。しかし、財政状況は悪化しており新規事業を行うことは難しくなってきている。
Q 桃花台は市としてどのように考えているのか。
    A 駐車場が足りないという問題も出ているが、そのうち空き家が出るようになりそこが駐車場になると思う。どこの新住事業でも同じであると思うが、高齢化は進んでいる。
    C 開発当初に分譲した地区ではすでに人口が減少に向かっている。
Q 高蔵寺のような深刻な問題にはならないのでは。
    A 15年をかけて分譲しているので、高蔵寺のように一気に高齢化が進むことはないと思う。
Q 桃花台はどのようなイメージがあるのか。千里ニュータウンのようにハイソなイメージはあるのか。
    A ハイソなイメージはない。西枇杷島町と同じ面積があるというのにも関わらず、遊ぶ場所がないので寝るためのまちとしか思うことができない。
    C 名古屋市からの転入者が多いこともあり、教育に対する関心は高く、教育水準は市内で最も高い。学習塾は多く立地している。周辺を含めて3万人が生活するには店が少ない。店舗の入替は行われている。
Q 小牧には外国人が多いというイメージがあるのだが、実際に多いのか。
    A 人口の5%が外国人である。ゴミの出し方や夜遅くに駅前で騒ぐといったトラブルはある。桃花台の北に亜炭鉱があったので、在日韓国人も多くいる。
Q ピーチライナーは採算が悪化しているのか。
    A 年間3億円の赤字を出している。セントレアや春日井駅などに向かうバスはあるので、公共交通へのニーズはあるが競合してしまっているのだと思う。
    C 新交通システムであることにこだわって、無人化にするためにコストが大きくなってしまっている。バスを走らせることも検討されているが難しいと思う。

<主な意見>
  • 小牧市は市街化区域が多すぎる。にもかかわらず、調整区域で公共施設の建設を行っている。
  • 中心市街地を通っている街道は上街道と呼ばれるものである。
  • 小牧城は当初は砦であった。昭和43年に平松氏が寄付をしてくれたのが現在の小牧城である。城下町としてできたまちではなく、所領地というイメージの方が合っている。
  • みずほ銀行の跡地利用を検討している。
  • 西から中心市街地、工業専用地域、桃花台となっていて、工業専用地域によって分断されている。
  • 桃花台の整備から、理想を求めて新交通や鉄道立体交差事業などが始まった。結果、それらは桃花台の整備よりも多くの資金が必要となった。
  • 街路も地下を通しているのは小牧だけでは。
  • 当初は鉄道を高架にするという計画であった。駅が地下になってしまってわかりにくいという意見もあり、高架にしたほうがシンボルになってよかったと思う。


  
8月27日実施