五行推命学研究所
五行図による安田式四柱推命学(五行推命)に関する情報サイト


フセインと誘拐殺人事件の容疑者(第6回)

                                 旧コラム(2003/05/01)
 
 先月の4月17日に発生した「愛知新城会社役員誘拐殺人事件」の容疑者(後藤浩之)と先々回のコラムで取り上げたサダム・フセイン大統領の四柱命式がよく似ていますので、ここに取り上げてみました。下が2人の生年月日と命式の比較です。(※但し、フセインの公表されている生年月日は果たして本当かどうか、疑わしい部分もありますが、一応後藤容疑者との比較から見てみることとします。)

     ■サダム・フセイン           ■後藤浩之
     1937年04月28日生まれ          1965年01月21日生まれ
フセイン&後藤浩之
【命式のポイント】

 2人の命式は所謂、食神と劫財が並び「劫達の命」(劫財特達の命)となっています。「劫達の命」とは、大胆さと積極性はあるが財を尅し癖のある「劫財」(凶星)が、成財と福運の星であるが大人しく積極性に欠ける「食神」(吉星)と並ぶことによって、それぞれの星の長所を引き出し、短所を補い合って、特殊な財運を齎す星の並びを言います。但し、一般の四柱推命では日干と同一五行で且つ陰陽が違う変通星を一律に「劫財」と取っていますが、高木流・安田流では日干が陰干の場合のみを「劫財」と取り、日干が陽干の場合にはこれを「敗財」として、「劫財」とは性質が異なる変通星としています。従って、この「劫達の命」の命となるのは日干が陰干の場合に限られるのです。
 この2人の四柱を比較して見ると、年柱と月柱が丁度反対になっているのが分かります。同じ干支が年月で反対になっていて、且つ日干も「乙」と同じになっていますので、四柱八字ならぬ三柱六字(年月日の天干と地支で6つの星)では、日支のみが違っているだけです。フセインは日支が官星の「酉」で、後藤容疑者は印星の「亥」となっていて、五行図を見ても分るように、フセインには官星が二個分(●△△)ありますが、後藤容疑者には官星がありません。勿論、時柱が分ってこそ、本当の命理が解明できる分けですが、三柱だけで見ても、人の上に立つ力量はフセインの方があることが窺えます。
 「冠帯」は旺相の支ではありますが、一面「詐欺」的な意味があり、本命式のように、冠帯羊刃となった上に、劫奪の星である「劫財」と共にあると、更に一層そのような象意が強くなります。かつてフセインは湾岸戦争の時に隣国のクェートを奪おうとしましたし、後藤容疑者は「身代金を詐取」しようとしました。ただ、2人は中心星(月柱)が違います。フセインの命式は中心星が劫財冠帯であるのに対して、後藤容疑者は食神衰ですから、後藤容疑者の方が人間的な人の良さがあるということができますが、彼はギャンブルと女遊び(フィリピンパブ)で多額の借金を抱えていたとあるのは、この食神と劫財の働きに他なりません。月上劫財のフセインと違い、後藤容疑者は根っからの悪人にはなり切れない命式です。
 月上劫財のフセインは父を尅し、大運も第一巡が劫財となっているますので、彼は生まれる前に父を失い、義理の父から虐待を受けています。それがまた、彼の残虐性を形成することとなっています。また、フセインの命式は月上食神の後藤容疑者に比べると、非常に強引さと行動力があると言えるでしょう。
 後藤容疑者の方は父母と兄弟を意味する月柱に「食神」があり、このことは父親が「給食センター」の社長をし、自らもその会社の専務をしていましたし、妹もそこで働いていたということに表われています。仕事は真面目に頑張っていたということですが、今回の事件によって会社が閉鎖に追い込まれてしまいました。ご両親や従業員の方々には辛いこととなり、大変に残念に思います。「食神」は本来福禄・生財の星ですが、近所の人が見た彼の姿は「子煩悩な父親」という顔があった分けですが、反面この「食神」を男性が持つと、前述のように色情・女遊びという面がありますので、気を付ける必要があります。特に、運気が悪い時には、余計にストレス発散に女性にのめり込む傾向があります。
 後藤容疑者には「食神」と「劫財」の吉面と凶面の二面性による、表裏の「2つの顔」があったと見ることができます。「強気の失敗」を意味する「劫財」には、ギャンブル性がありますので、ギャンブラーに多く、賭事・賭博を好む傾向があります。かれには、人の良い気の小さい面と、大胆な面が共存していたと言えるでしょう。

【行運のポイント】

 後藤容疑者の大運は順行5年運で、安田流の各年運で見ると「甲申劫財胎」となります。ここで彼の年齢は数え年で、40歳と数えます。満年齢では38歳となっていますが、四柱推命では生まれた年の流年=年柱の干支を以って、1歳とし、以後、干支が変って流年が一つ増える毎に「数え年の年齢」も一つづつ増えて行くのです。従って、彼の場合には生まれた年「甲辰」が1歳で、今年はそこから数えて40回目の年となりますので、数え年40歳と数えます。
 そのように見ますと、36歳〜40歳の大運が「甲申劫財胎」となり、上述のような「劫財」の働きが強まり、ギャンブルと女遊びで借金まみれとなっていることがよく分かります。彼は、会社のお金も1千万円以上も使い込んでいたということで、それらのことが今回の犯行の動機となっているものと考えられます。丁度「40歳」は大運の最後の区切りとなっていて、よく私達は「最後っぺ」などと呼んで、大運の総決算の時期として、一番注意を要する時であると見ています。実際には、彼の大運は「劫財」の前の「偏印」から落ちていたことが分かります。中心星である月柱が「食神」ですから、吉福の神である「食神」を「偏印」が壊して「倒食化」することによって、福運が去って凶運が来るので、身を修め欲を慎んで、この時期を真面目に通過すべきでした。ご両親や家族、従業員の方々もそれを願っていたことと思います。却って運の良い時よりも、運の悪い時こそ、人間にとって大切なものを掴むことが出来ます。しかし、自分を中心として欲に生きる多くの人達はここで大切なものを失ってしまい、逆に歴史に名を残した偉人達はこの悪い時期にこそ、人生にとって大切なものを掴んでいるものです。
 更に、大運の支「申」が良くありません。十二運「胎」は大人しい星ですが、「脛をかじられる/かじる」という意味から、劫財に付くと人にお金をせびったり、会社のお金を使い込んだりということがあります。また、安田流ではあまり神殺を重視しませんが、凶星が沢山集まって天干の凶星に付くのも良くありません。この場合「申」には劫殺・亡神・空亡の事件化神殺三点セットが付いていますので、劫財が更に事件化して行き、魔が差してしまう要素を孕んでいます。
 流年を見てみますと両者とも日干が同じ「乙」ですから、当然流年が同じ「偏印」となり、四柱中の「食神」と倒食しています。しかも、「天戦地冲」での「倒食」なので非常に強い「倒食」となっています。2人の四柱にとっては「食神」の吉作用が命ですから、それを天干と地支で尅する「天戦地冲」で「倒食」され、更に大運が最悪となると、決定的な年となってしまいます。ここで、不明の時柱に救いの星があれば良いのですが、このように事件化したということは、それも余り期待できません。
 後藤容疑者が国外逃亡を企てて、フィリピンで身柄を拘束された22日の流日は「乙丑比肩衰」の日でした。「比肩」には「分離」と「悪事露見」という象意がありますので、まさに国外に分離しようとしたけれども、悪事露見して捕まったというところでしょうか。

 ※下は後藤容疑者の命式の全体です。

 ※被害者となられた松井紀裕さんのご冥福をお祈り致します。

後藤浩之