五行推命学研究所
五行図による安田式四柱推命学(五行推命)に関する情報サイト


イラク日本人外交官殺害事件
〜奥克彦大使と井ノ上正盛書記官の殉職に弔す〜

                                            旧コラム(2003/12/08)
 
 先月(11月)29日、イラク北部のティクリット付近で、日本大使館の車が移動中に自動小銃で襲撃を受け、外務省の奥克彦・在英国日本大使館参事官(当時)と井ノ上正盛・在イラク大使館3等書記官(当時)の二人が殺害されました。この痛ましい事件で、日本は有為なる人材を失い、国民は悲しみにくれました。そして、イラクへの自衛隊派遣をめぐって、国民的な物議をかもし出しています。尚、殉職後、二人はそれぞれ奥克彦さんが参事官から大使に、井ノ上正盛さんは3等書記官から1等書記官に昇進しています。
 今回はこのお二人の命式(三柱)に触れてみたいと思います。二人の命式は下に掲載している通りです。二人の命式については、それぞれ少しく分析していますが、結論的に見ると二人に共通していることは、”激烈なる才能は激烈なる運命をも引き寄せる”という命理の宿命を、図らずも暗示していたということです。ただ、二人はその行動の動機・志が自己中心的なものではなく、より公的で公益的なものであったが為に、ただ単なる悲劇で終わるのではなく、誇り高い死としての価値を持ち、人々の心に永久に刻まれるものとなりました。彼らの死を無駄にしたくないとう思いを、きっと心ある人達の胸に刻みつけ、人類の悲願である恒久平和への前進力となることでしょう。

 司馬遷の『史記』(孝文紀)には「禍は怨みより起こる(禍自怨起)」とあります。武力制圧の為に血と汗を流すのなら、テロの原因となり温床ともなっている”怨みや憎しみの連鎖”を断ち切る為に、より以上の努力を傾けるべきではないでしょうか。
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●奥克彦大使(1958年01月3日生まれ)

奥克彦(五行)

┌─┬─┐┌─┬─┬─┬─┐
│流│大││ │日│月│年│
│年│運││ │柱│柱│柱│
├─┼─┤├─┼─┼─┼─┤
│癸│丁││ │庚│壬│丁│逆
│未│未││ │辰│子│酉│行
├─┼─┤├─┼─┼─┼─┤9
│傷│正││ │ │食│正│年
│官│官││ │ │神│官│運
├─┼─┤├─┼─┼─┼─┤
│冠│冠││ │ │ │帝│
│帯│帯││ │養│死│旺│47
├─┼─┤├─┼─┼─┼─┤歳
│印│印││ │偏│食│敗│
│綬│綬││ │印│神│財│
└─┴─┘└─┴─┴─┴─┘



◆事件当日(11月29日午後5時)の流月・流日、そして流時
 流月:癸亥傷官 病(傷官)
 流日:丙午偏官沐浴(偏官)

 流時:丁酉正官帝旺(敗財)←年柱干支と反言

 奥克彦大使の命式は、生日が庚辰の「魁ごう」でそこに酉の帝旺羊刃が付いている「食神・正官」の並びとなっています。五行の配合は、三柱では特に偏ったところは見受けられませんが、冬子月で食傷の気が旺ずる季節に生まれている事と、正官に帝旺羊刃が付いているところを見ると、食傷と官星の尅しあいが五行の要点となています。これは、同じ日干が庚辰の魁ごうで、正官と傷官の尅し合う命式となっていた大老・井伊直弼の命式を思い起こします。彼もまた「桜田門外の変」で水戸浪士に暗殺されたのですが、鬼神が働くとする「魁ごう」が特殊な命理組織となった時、その人生も衆に秀でる才を持つと同時に、数奇残酷な運命を辿ることがあるものです。
 庚辰「魁ごう」の持つ潜在的才能が、酉の帝旺羊刃、壬子辰の食傷水局、丁火官星の鍛冶によって、剛直な金水傷官の才となっています。正官が旺相して正義感と責任感の強い方で、金水傷官魁ごうの剛直な面を持った方ではありますが、そこは月上食神ですから、心から平和を愛する人柄と品の良さも伺えるのですが、見た目の温厚さとは裏腹に、こうと思った時の鬼神をも驚かす行動力と決断力は、周囲を驚かすこともあったことでしょう。

 行運は大運・流年で、官星と傷官が尅しあい、死期に現れ”石の冠を被る”と言われる「冠帯」が大運・流年に二位重なり、更に未は丁正官の天来羊刃となって、公務による傷害と先祖からの殺傷因縁とを共に暗示するものとなっています。
 事件当日の流月・流日を見れば、やはり官星と傷官が共に専旺干支となって尅害する日ともなり、我を尅する「偏官」が鬼となって現れ、これがテロリストとして眼前に現れたのです。
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●井ノ上正盛1等書記官(1973年05月11日生まれ)

奥克彦(五行)

┌─┬─┐┌─┬─┬─┬─┐
│流│大││ │日│月│年│
│年│運││ │柱│柱│柱│
├─┼─┤├─┼─┼─┼─┤
│癸│甲││ │丁│丁│癸│逆
│未│寅││ │未│巳│丑│行
├─┼─┤├─┼─┼─┼─┤2
│偏│印││ │ │比│偏│年
│官│綬││ │ │肩│官│運
├─┼─┤├─┼─┼─┼─┤
│冠│ ││ │冠│帝│ │
│帯│死││ │帯│旺│墓│31
├─┼─┤├─┼─┼─┼─┤歳
│食│印││ │食│比│食│
│神│綬││ │神│肩│神│
└─┴─┘└─┴─┴─┴─┘



◆事件当日(11月29日午後5時)の流月・流日、そして流時
 流月:癸亥偏官 胎(偏官)
 流日:丙午劫財建禄(劫財)

 流時:丁酉比肩長生(偏財)

 井ノ上正盛書記官の命式は、表裏の羊刃が重なる「官殺混雑」で、五行図と月令を参照すれば、三柱ながら比傷が官を破る形となっていることが分かります。四柱本体に未丑の冲が羊刃と飛刃の関係で墓庫を開く命となり、その上に冠帯羊刃及び帝旺の極旺地支と墓神の極衰が並立し、突然の幸福と不幸が交錯する命となっています。晴天の霹靂の如く事件や事故に、巻き込まれた方の命式に多いパターンとなっています。
 アラビア語が堪能で、語学的才能のあった方だと聞いていますが、三柱だけでも食傷が2つあり、太過旺相した比肩が食傷を生じ強めていますし、又年干支と日干支が地支冲尅・納音相生で「才能の秀でる命」ともなっています。更には不明の時柱に食傷又は印星があるのでしょう。お写真を見ても、少しあごが尖り、傷官が表に出ているようにも見受けられますし、諸々の状況を見ると、午後4時前後の申刻傷官沐浴に生まれている可能性があります。(実際鑑定の推時法としては、性格や容貌、過去の履歴等を細かく見ないと、正確な推時は出来ませんが…)
 この命式は、目から鼻に抜けるような頭の回転の速さがあり、比肩と食傷が強く、印星と財星が弱い上に、帝旺・冠帯が並んでいますので、性急すぎる性格があります。行動力があり正義感と責任感が強い反面、緻密さも持ち合わせていますが、これは丁と傷官に由来するものなので、確かに秘書的才能を意味はしますが、印星が弱い分、時々突っ走ってしまって、穴を開けることもあります。”行き過ぎの失敗にはくれぐれも注意して下さいね”と鑑定では必ず忠告したくなる命式です。前述のように墓穴が空いていますので、全力で直線道路を突っ走っている時に、突然落とし穴に落ちるという姿が浮かんできます。

 行運は奥大使と同様に、流年に死期を暗示する「冠帯」が羊刃として現れ、それが年支の丑の墓神を冲尅することによって、二重に墓庫が開いています。天干には我を尅する鬼殺が羊刃を伴って現れ、これもテロリストの出現を暗示しています。大運の甲寅印綬死は”成果が消えてなくなる”という意味があり、比肩と同様な現象が起こります。また同時に、地支の寅は月支と刑する他、諸々の殺星(亡神・劫殺・空亡)も加わりますので、凶神群集し、凶は更に凶を呼ぶこととなりました。(※通常の鑑定では、単独の神殺は殆ど無視しますが、このような特殊な事件の場合、特殊な集まり方をしていることがあるものです。)
※奥克彦大使と井ノ上正盛1等書記官のご冥福をお祈り致します。