五行推命学研究所
五行図による安田式四柱推命学(五行推命)に関する情報サイト


五行図と十二支

                              旧コラム(2004/10/25)

  四柱推命の根本が、「陰陽五行の理法」「五行の旺休・相生相尅等の作用原理」にあることは論を待ちません。如何なる推命の流派においても、この点においては共通しています。命式の解法においても、様々な用神・喜忌仇閑神の取り方があるにしても、五行のバランスを重んずることも、推命の根幹となっています。

 近年、多くの流派では、五行を数値化し、そのバランスを看ています。ただ、数字だけというのは左脳的で、右脳的・感覚的に把握しにくい面がありました。この四柱八字における五行のバランスを分かりやすく図式化したものが、日本推命学研究会初代会長・安田靖先生創案による「安田式五行図」なのです。これは、初代高木乗が頭の中で算命していた五行を、一級建築士として図面引きに慣れていた安田先生の頭脳が、一目瞭然に俯瞰出来る図面化して生み出したものなのです。下に、五行を数値表で示した例と、安田式五行図による表示例を図示し、比較してみます。

五行図
 上図を見てもお分かりのように、天干・地支の五行を黒丸●、干支合を△▲で表現し、更に日干=比肩の位置にV線を引いて、五行の中心軸を明確にしています。このように、コロンブスの卵のような発想で、非常に分かりやすい五行のバランス把握を可能ならしめたのです。五行図を発案された安田先生は、初代・高木乗にこれを見せたところ、「お前!俺のを盗んだな!」と唸ったと言います。高木乗が長年、頭の中で把握していた五行の展開図を、安田先生が目の前に図式化したわけですので、高木乗が驚くのも無理はありません。

 安田先生の五行図は、現時点では純粋な「正五行」によって、五行図に配当しています。干支合は加えていますが、月令・蔵干五行・方合・調候などは基本的には使用せず、非常にシンプルなものとなっています。このシンプルさが安田式推命の良さでもあるのですが、反面、深く命理を読み解く為には、やはり物足らない面もありました。シンプルさの中に深さがあるのが、安田先生の推命でもあり、私も中級では、安田先生の教えを極力踏襲して、シンプルで便利な安田先式五行図を宗として教えております。

 安田先生は、常々弟子達に「君達独自の研究によって、私の推命を改良していってくれ」という趣旨の事を言われているように、どこかの大家や宗家と言われる先生方とは違い、又安田先生自身が高木乗の推命を、改良・進歩させて行かれたように、柔軟に推命の研究を考えておられます。

 私も、上級においては、従来の安田流の枠を超えて、他の要素を取り入れた推命の研究と教授をしています。五行推命的な観点から言えば、古典にも「天は清く、地は濁れり」とあるように、天干の五行はより純粋性がありますが、地支の五行には雑多な要素を含んでいます。また、天干も相互作用によっては、様々なバリエーションと特質、変化がありますが、地支は、それ以上に雑多な要素を含んでいるのです。これを、五行推命の解釈に、含めてより立体的に天干と地支の関係を読んでゆくようにしているものです。今後、ソフトの次期バージョンの開発にも、シンプルな安田式五行図の他に、様々な実験的なバリエーションを加えて行こうと考えております。

 例えば、今年行なわれたある教室での遣り取りです。ある教室生が「阪神タイガースの赤星は、命式に”墓”が三つ出ているようですね」と話しました。私は、野球は好きですが、赤星選手の命式までは頭に入っていません。ただ、赤星選手が三年連続(四年?)盗塁王であるということは、知っています。そこで、「ならば、辰辰辰でしょうね。それも、日干が壬かな?」と、答えたものです。実際、後で調べてみましたら、やはり赤星選手は辰年・辰月・辰日生まれで、日干が「壬」となっていました。

 何故、生年月日を調べなくても、これくらいのことを推定出来るかと言えば、次のような理由に拠ります。即ち、十二支で「墓」となるのは、「丑辰未戌」と四支しかありませんが、中でも最も動きがあるのは、「辰」だからです。同じ陽支で比較すると「戌」と「辰」がありますが、どちらの十二支も安田式の五行では同じく土に●となります。しかし、十二支の持つ性質に違いがあるのです。「辰」は手偏を付けると「振動」の「振」となり、雨を上に付けると「地震」の「震」となります。このように、「辰」はそれ自体に、”動く”という意味・性質があるのです。また、「辰」は水局するところから、中気蔵干に”水”を含み、春の土ですから余気蔵干には土を尅する”木”を含んでいます。このことからも、流動性のある「土」であることが分かります。

 それに対して、「戌」は火局する秋の土であるので、中に「火」「金」を含んでいます。従って、「戌」は、硬くてドッシりとした山のような「土」であると言えるでしょう。孫子の言葉に由来する武田信玄の「風林火山」で、「動かざること山の如し」というのは、十二支的には「戌」の方であると言えます。また、「辰」は二つ・三つと並ぶと、「自刑」となって、”突っ走る”という意味が加わりますが、他の三つはそのようなことはありません。更に、「辰」が十二運「墓」となるのは、日干が「辛」か「壬」です。ここは「辰」が印綬となる「辛」であるより、偏官となる「壬」の可能性が強いということになります。動きのある「辰」が日干から見て偏官となることによって、余計に動きが激しくなるのです。また、赤星選手が、プロ野球に入る前は、電車に乗って車掌をしていたというのも面白い事実ですね。何故なら、「辰」は「竜」であり、事象的には列車なども意味しているからです。

 このように、従来の安田式ですと同じ土●(偏官)の「戌」と「辰」も、その性質の違いによって、火を含む「土」と、水を含む「土」によって違いが出て来ます。これはほんの一例にしか過ぎませんが、十二支もその五行・特質・通変・立体的十二運・天干地支の縦的関係・地支の横的関係等を精査することによって、安田式の五行図も、更に深く読み解いて行けるようになります。