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松茸の土瓶蒸し

東京で学生時代を送っていたころのこと

少しは都会の生活にも慣れ
ちょっぴりきどって、新宿地下街で食事でも・・と
さっそうと出かけた

「松茸の土瓶蒸し」???
そんなの食べたことも見たこともなかった
「よ〜し、話のタネに・・」と、注文!
待つこと数十分
目の前には、メニュー通りの「土瓶」が運ばれて来た

ところが・・・

「これってどうやって食べるの?」食べ方が分からない
周りを見渡しても、同じものを食べてる人はイナイ
「さ〜困った」
恥ずかしさをかなぐり捨て、自己流(?)で何とか食べ終え、お店を出た

「お店の人今ごろ大笑いしてるんだろうなぁ」と
恥ずかしさいっぱいで帰りの電車に乗った

あの食べ方で良かったのかな〜
あれ以来一度も口にしたことのない『松茸の土瓶蒸し』
いまだに正しい食べ方を知らない

これから先、食べることもないだろうから
「まっ、いいか・・知らなくても」

,

.

開演5分前のブザー

少女時代から何度聴いたろう、このブザーの音

何日も前から、この音を思い浮かべ
気分をステージへと盛り上げていく

開演前15分・・・10分・・・
体中が心臓のようにドッキン、ドッキン
だんだん言葉も少なくなり、時には、その場から立ち去りたいこともある

でも・・・

5分前、途端に自分が変わる
コツ・・コツ・・
シーンと静まり返ったステージへと歩いていく姿をイメージ

わたしをピアニストに変える
開演5分前のブザー

新聞が届く音

大学時代、私は寮で4年間を過ごした

初冬の早朝
本に夢中になり、気がついたら、もう夜明け前
インスタントコーヒーを飲みながら、重い頭でボ〜・・

キィーッ、ガチャン
自転車のブレーキと、スタンドを立てる音
すぐ、新聞配達の人だと分かった
「40部もの新聞、重くて大変なんだろうなぁ。ご苦労様の声でもかけてこようかな・・」
玄関先に行ってみると、もう姿は無かった
ビニールで被われ、風よけのためなのだろう
大きい石がのっている新聞が、夜明け前の玄関先に白く浮かび上がっていた

うっすら雪の積もった道路には
自転車のタイヤの跡と靴跡が続き
その先に新聞少年の、自転車をこぐ背中が小さく見えた

現在
夜明け前の、新聞の届く音は昔と変わらない
キィーッ、ガチャン

この音を聞くと
雪道のタイヤの跡と、あの少年の後ろ姿を、ふと思い出すことがある

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