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スワトウのハンカチ

なぜか、タンスの小引き出しにたまるスワトウのハンカチ

初めてそれを手にしたのは、中学2年から3年になろうとしている春休みだった
引っ越しするお友だちから「お別れ」のしるしとしていただいた
箱を開けた瞬間、自分がものすごく大人になった気がして
気取って、人さし指と中指の間に挟み「ごきげんよう」と振ってみた

ちっちゃくてまっ白なハンカチのすみっこに、中が透けている綺麗な刺繍
ひざの上で、ていねいにたたみ、鏡台の引き出しにしまった

その後、いろんな人との「お別れ」にいただいた、スワトウ
使い方が分からないまま、いつの間にか小引き出しにたまってしまった

糊がピンときいて、サラサラしているたくさんのスワトウの中に
たった一枚だけ手触りが違うのが入っている
昨年亡くなった父の葬儀の時に使ったもの・・・

スワトウのハンカチは、私にとっては
初めて手にした時も、そして今も「お別れ」のしるし・・・

もう、「ごきげんよう」なんて振ったりはしない

ひたすら歩く

大学2年の5月の連休
少し汗ばむくらいの国立(くにたち)の町をひたすら歩いていた
そのころ誰もが持っていた籐のバスケットに
non.noと、途中の紀伊国屋で買った(なぜだか分からないが)カッテージチーズを入れて・・

ほとんど何も考えずに、ただひたすら中央線沿いを東に向かって歩いていた
連休期間中なのに、私が歩いていた道はネコ一匹さえ居ない
バックバンドで出て来たことを後悔していた
かかとが、バンドで擦れてとても痛く、とにかくどこかに座りたかった

ふと道路表示を見ると、国分寺と書いてある
電車でしか来たことのない町
歩いている時は感じなかった疲労感がドッと体を包む
なんか、とんでもないことをしている自分に気づく
なぜ、こんな所まで・・・

小さい公園を見つけ、ようやく座る
non.noを開いても目は白昼夢・・・

よ〜く考えてみる
なぜ・・なぜ・・

寮生のほとんどは連休で帰省していたが、私は、なぜか突っ張って残っていた
その日の朝、寮はヤケにシ〜ンとしていた
それに耐えられずに飛び出したのかも知れない

自分のしていることが急に情けなくなった
無性に悲しかった・・・ホームシックなのかも・・・と思った

なにか、吹っ切れた気持ちで
来た道とおんなじ道を、今度は西へと、ただひたすら歩いていた

窓辺でレースのカーテンが揺れる

仕事がオフで何の予定も入っていない日など
頬杖をつき、ぼんやり窓辺を見るのが大好き
風が通り過ぎ、レースのカフェカーテンがフワッ〜と揺れる
そんなとき、このまま時間が止まってくれたらいいな・・と、思う

私が座る場所から、いつも見えるのはケヤキの木

長い冬から目覚めたケヤキは、小さい黄緑色の葉っぱを恥ずかしそうに揺らしている
窓辺のカーテンを揺らす風も、どことなく遠慮がち・・・

初夏・・「見て〜」と言わんばかりに、気持ちよさそうに揺れるケヤキ
そんな時のカーテンは、ギャザーをいっぱい寄せて誇らしそう

真夏の窓辺はとても賑やか
空が隠れるくらいに緑がいっぱいのケヤキ
時折、ス〜ッと涼しい風が気持ち良い
その風を少しでも私に分け与えてあげようといわんばかりに
思いっきり揺れているレースのカーテン
その隙間から、真っ白い入道雲がケヤキの間で見え隠れしている

秋のレースのカーテンは、淋しそう
ハラハラと舞う落ち葉を、私と一緒に静かにながめている
いろんなふうに揺れていたレースのカフェカーテンも、ひっそりしている
もう、わたしの季節も終わりね・・・というように

きょうも、頬杖をつきぼんやり窓辺をみている私

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