7.再び南部沢へ(2月9日)

 宿へ戻っても,夕方見たシジミが忘れられない。何としても,あれをもっとはっきり確認したい。もしや,明け方に多数のシジミが群飛するようなことはないだろうか。いや,きっとそうに違いない。単なる推理が徐々に確信に代わり,今日は薄暗いうちから宿を出た。沢に降りるころには懐中電灯もいらなくなり,少しずつ周囲がはっきり見えてきた。時々大きな影が敏速に飛んでは飛び去って行く。鳥のようにも見えるが,蝶のような気もする。6時2分,まるで時報のように,セミが一斉に鳴き出す。残念ながら,シジミチョウの飛ぶ姿は見えない。相変わらず大きな黒い影。どう見ても蝶のようである。薄暗い道の中をすれ違うように飛ぶ影を。フクロウチョウであった。フクロウチョウはこの近くで3頭,敏速に飛んでいるのを観察し,その後,帰りがけに林縁に静止しているのも発見した。早起きは三文の得と言うが,シジミチョウならぬフクロウチョウの早朝活動性を確認した。しかし,きわめて短い時間であり,大体6時40分頃には活動を止めてしまっている。フクロウチョウは,その後,7時過ぎに朝食に戻るときに林縁に静止しているものを見た。その他の時間帯では,薄暗い林の中を不活発に飛ぶものや林内に置いたトラップにやってきたものを確認した程度で,早朝以外は確認しにくい蝶である。

 朝食を済ませ,8時過ぎに再び沢に戻る。相変わらずドクチョウは多いが,その他の蝶はあまり見えない。立派なタテハチョウとしばらくにらめっこ。結局どこかに飛び去ってしまった。

 12時近くなって宿に戻り,昼食の後,しばらくのんびりする。天気がよいのは結構だが,どう考えても暑すぎる。こんな暑さでは,蝶も林の中に入ったまま,活動しないだろう。雨が降らない限り,動くのは止めよう。雨上がりで蝶が飛び出すタイミングを狙おう。時々ベットに横たわったり,イヌのサンボと遊んだりしながら時間をつぶす。1時,2時,3時…。まだまだ暑すぎる。こんな時間に無理に出て行っても体力を消耗するだけだ。少し雨が降ってもすぐに止んでしまう。3時半過ぎて待望の雨。少し遅いが,30分ほど降り続いてくれたので,出掛けることにする。相変わらず多いのはドクチョウ類だけ,4時半頃,シジミチョウが少し飛び出す。トラップを少し置き直したりしていると,何と!下草に例のシジミの青緑色が見える。交尾中で,1雄1雌確認。5時過ぎになり,少しずつ雲行きが怪しくなってきた。シジミチョウが飛び交う気配はない。この時間になると,雨が降ることが多いので,夕暮れ活動性は成立しないのだろうか,などと考えながら宿に引き上げることにする。あのシジミが本日最大の成果だったな,と思っていると,薄暗い枝先に大きなジャノメチョウが止まっている。フクロウチョウとは斑紋が違う。キラリと光る部分が見える。モルフォチョウであった。その後,林縁でゆるやかに飛ぶフクロウチョウも確認。少しは夕暮れ活動性もあるのかも知れない。今回は場所を色々変えて観察するのではなく,時間帯を変えて観察する形になっている。

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