2.道が開ける

 マナウスにある自然科学博物館の橋本捷治館長のサイトが存在することは、大分前から知っていた。しかし,その文体の何とも言えないあくの強さから,どうも,ここに問い合わせるのはためらわれた。しかし,もう,これしかない。すがるような気持ちでメールを書いた。

 数日して,橋本館長の日本での代理人の人からメールが届く。ちょうど所用でブラジルにゆくところだったので,タイミングが良かった。館長に質問したいことをまとめてくれれば返答できるという。蝶採集の可否,治安,交通手段,地図の入手,現地のガイドなど,聞きたいことをまとめて送ったところ,しばらくして館長のサイトの「辛口相談コーナー」に私の手紙の全文が掲載され,詳細な返事が書かれていた。やはり,採集はできない。これに違反したものが逮捕・拘束される事件まで起こっているという。遅く生まれたことが悪かったのか。目の前が真っ暗になった

 ブラジルにこだわらず,他の国も考慮して検討し,また,八重洲にあるツニブラトラベルの近藤という人に相談したらどうか,と最後に書かれていた。ツニブラトラベルはブラジル専門の旅行会社である。ブラジルでは採集できないと言いながら,ブラジル専門の旅行会社を紹介するというのは何とも奇妙だが,とにかくe−mailを出して見た。

 橋本館長に相談するように言われた旨と,希望に対して,

「橋本館長の推薦なら(本当は,それほどのものではないのだが,まあ,そう思ってくれているのをことさら否定する必要もなかろう)相談に乗る,いつでも来てくれ」

と言う返事。都合も聞かずに翌日のこのことと行き,

「近藤さんいらっしゃいますか」

「何のご用件ですか」

橋本館長は,「近藤という蝶に詳しい人」としか言っていなかったので,まさか社長とは思わず,これもびっくりした。

 その日は不在だったので,改めて伺い,詳しい話を聞くことができた。

 蝶に限らず、生物全般に及ぶ採集禁止,これは本当で仕方がない。この法律自体、遺伝子資源の保持、麻薬の取り締まりなどを意図したものとはいえ、空港での機内持ち込み荷物検査に引っかかり,採集した蝶が出て来ると,相当やっかいな話になる可能性もある。採集に関しても,全く知らない土地で一人で網を振っていたらトラブルになる可能性がないとは言えない。しかし,地元の人に話を通したうえで,その人の所有地などで蝶を観察している分には何の問題はないだろうということであった。そして,そのような形での「アマゾンの蝶観察ツアー」なら設定できるという。そのほかにもいろいろな情報が得られ,日程,場所など,全面的に近藤社長にお任せすることにする。当初予定していたカシウアナンの研究保全林が諸般の事情で変更になるなど,紆余曲折を書き始めると長くなる。とにかく,2月5日から17日の日程で,4人で出発できることになった。

 ちょっと心配なのは,トメアスで宿泊する「民宿」のこと。実際は民家のホームステイであり,日本人名であるが,日本語を話すのか,どんなものを食べさせられるのか,皆目見当がつかない。ツニブラトラベルの担当者である佐藤氏によると,日本の食材が手に入りにくいので,海苔,シイタケ,お茶など,日本の食べ物を持って行けばよろこばれるだろうという。ということは,日本と近い食事が取れるのかもしれない。

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