12.ピエールの森へ(2月13日)

 今日は,今回の旅行の最後の目的地であるピエールの森に向かう。ここは,フランス人のピエール氏が管理する森であり,事前の情報では,ピエール氏というのはフランスではかなり高名な昆虫学者で,日本の蝶,特にPapilionidae(アゲハチョウ科)の蝶があったら持ってきてくれ,ということだったので,手元にあった三角紙標本を各々が持参していた。

 ベレンから1時間弱,車が北東に進み,草深い小道の奥にある家から,パンツ一枚で,全身かなりの量の体毛に覆われた老人が出てきた。不思議なことに,彼が歩いても全く昆虫は逃げない。それ以前に,裸でいるのに,なぜ彼は蚊に刺されないのか,薮草の刺などでケガをしないのか,不思議なほどである。ピエール氏に案内され,林の中に入って行く。とにかく蒸し暑い。しかし,ピエール氏によると,今日は寒いので虫が少ないという。しばらく進むと,小川の向こうに伐採地が広がっている場所が見えた。ここにいれば,森の中の蒸し暑さから少しは解放される。私はここで粘ることにした。林縁に沿って時々モルフォチョウが飛び,また林の中に吸い込まれて行く。そのほか,タテハ類もかなり現れる。寒すぎるかどうかはともかく,今日は天気が良くないので,あまり蝶は見られないが,条件さえ良ければ多数の蝶が飛びかうのだろう。

 昼食をご一緒しようと思ったが,今日は1カ月半振りに奥さんが見えるので遠慮しておくという。ピエール氏は,ここで熱帯魚や日本の金魚を飼育しており,奥さんと娘さんはそれを町で売っているのだという。以前は輸出もしていたが,価格競争が激しく,今は輸出はしていないという。一年中日長がほぼ一定で,低温もない赤道直下の条件で,金魚が繁殖するのか,興味深いが,聞き忘れた

 ピエール氏は,37歳のときにここに住み着き,現在まで30年近くここにいるという。ピエール氏が発見し,彼にちなんだ名をもつ昆虫,魚は10種以上あるという。第二次大戦では,特別な任務に着いていたらしいともいい,とにかく謎の人物である。午後はあまり天気が良くなく,明日また来る約束をして宿に戻った。

 今日の夕食は,アマゾントラベル(現地にある,ツニブラトラベルとの提携会社)の社長の北島さんのご招待で,カニ料理をいただいた。カニを木の棒でたたいて殻を割って食べる,まあ,いたって素朴な料理だが,これがとてもおいしい。

 北島さんは精悍な印象の方であり,最近はそれほどでもないが,以前はベレンの町の夜の帝王として鳴らしたという。マナウスの橋本館長−ツニブラの近藤社長−アマゾントラベルの北島社長−トメアスの南部さん。北島社長は南部さんと同じ船で日本に渡ってきた仲だといい,これで,今回の旅行に関係した人脈の輪がつながったことになる。私が橋本さんの名前を出して近藤社長にコンタクトをとったときから,「近藤がいうなら」と北島社長が動き,「北島の頼みは断れない」と南部さん,そして二ッ森さんが我々の宿泊を引き受けてくれた。旅行会社サイドでいえば,今回のような「蝶観察ツアー」が,ビジネスとして成立するかどうかを調べるためのテストケースとして我々のツアーを設定した,という面もあるだろうし,我々の側から見れば,結果的にうまい具合いに人脈の輪に乗っかっることができて,今回の旅行を設定してもらった,といえる。それにしても,鎖の出発点にいる橋本館長に一度お会いしたいものだ。

 北島社長も,日本にいた期間より,アマゾンで過ごした期間の方が長くなったという。それにしては,赤坂,六本木界隈の店など,我々よりもよっぽど良く知っている。

 二次会に行ったカラオケで,北島社長が最初に歌ったのは「北へ帰ろう」だった。

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