厚木基地基地祭『WINGS2000』見聞記(その序章)
○きっかけ
今年の五月くらいだったと思う。
地元では割と大きな本屋に何の気無しに行った時、ふと広田の目をひいたのは航空機雑誌のコーナーだった。
二種類ほど大きな見出しで
『2000年 エアショーガイド』
とか書いてある雑誌があった。
……五分後には両方とも手に取りレジ前に立っていた、広田はすでに猿であった。
家に戻りさっそく内容を検分する、すると厚木基地のページに「7月開催予定 詳細は決定次第厚木基地のHPに掲載される」とある。
その夜から広田の、インターネット巡回先が増えた事は言うまでもない(笑)
○高まる猿根性
当“電網広田家の居間”に“NEXT棚”というのがあるのに気付いた人は多いだろう。
NEXTとは一種のゲームサイトで、広田を含めた友人連中が共同で運営しているところなのである。
内容は大雑把に言うと、『架空世界を舞台として、そこに住むキャラクター達の物語を小説形式で発表してゆく』という感じ。
もちろん広田も幾人かキャラクターを登録しているのだが、その中に『民間アクロパイロット』という肩書きを持つのがいるのである。
当然、空を飛ぶ話も何本か書いている。
が……非常に困っていた事があった。
民間機のアクロ飛行資料って少ないんだ本当に……
今までは強引に、その場のでまかせで描写とかしていたのだが、いつまでもそれでは自分自身が不満である。
時々資料を探しに本屋巡りしていたのだが、軍用機の関係ばかり目立って民間のそれはついぞお目にかかった事がなかった。
ところが前述のガイドブックを良く読んだところ……おや、日本人のアクロパイロットが参加するらしい。
こりゃ見なければ絶対に後悔するな、しかもひょっとしたらビデオとか資料とかも販売してる可能性があるなこりゃ。
その事に思い当たった瞬間、今回の基地祭での目的は完全に決まった。
民間機の(特にアクロに関する)資料探求である。
そう、広田は厚木基地に民間機を見に行くのだ。
意思が強くなりすぎて、この時点で半分ほど軍用機がどうでも良くなっていた(笑)
7月まで一週間前後となったある日、とうとう基地祭詳細を発見。
開催日は7/1(土)〜7/2(日)、土曜日は仕事だし夕方のイベントしか見れないかな? ……と思ってたら……
なぬぅ? 7/1の夜に都内でNEXTの打ち合わせやるだぁ!?
それでは土曜どころか日曜の見物にすら支障をきたす。
広田は騒いだ、両手を胸の前で合わせてウルウル涙を流さんばかりの気迫(?)で懇願した。
その結果、打ち合わせは秦野市でと予定変更されたのであった。
もはや無敵のテンションであった。
○7/1夜、広田の戦支度
仕事から帰って、まず風呂と食事。
そして速やかに打ち合わせ会場に……行かずに日曜大工のショップへ車を走らせる(笑)。
いつものパターンを考えると、打ち合わせは深夜に及ぶ事が予想される。
夏の気温の中で、一面コンクリートの基地祭会場を練り歩くにはそれなりの準備がないときつい。
広田はショップが開いてる内に買い物を済ます必要があった。
広田が買い求めたのはクーラーバッグと保冷剤だった、これらを用意しておけば少なくても自分一人の行動には支障がないだろう。
いくつかグッズも買いこむつもりでいたので、逆にこれ以上の装備は揃えられない。
資金も無いし、当日の機動力に影響が出る。
愛車カロゴンの後ろにそれらを放り込み、打ち合わせ会場に向かう。
NEXTの打ち合わせは2、3ヶ月に一度くらい行われている。
本日の参加者は広田を含めて4人、思ったより早い時間内で当面の事項を決定できた。
打ち合わせ終了後、明日の基地祭の話題が出る。
全員、広田に便乗し基地祭見物と洒落込むつもりらしい。
……ただ……
「あ俺、いま金ないんだ……」
というヤツが二人……おーーーい(笑)
つまり、広田は最低でも一人分の今夜の夜食と、明日の飲食費を持つ事になる訳であった。
とはいえ、やはり一人で寂しい見物ってのもなんだし、わざわざ都内から来てもらった義理もある。
まぁなんとかなるだろう、で了承した。
今考えると、すでにテンションが上がりまくっていたのだろうと思われる。
取り敢えずその夜は焼肉(1時間半2000円で食い放題ってヤツ)を4人で食いに行き、明日へのエネルギーを確保した。