Prelude

そもそも、世界を暗黒に陥れた者は誰であったのか。

空は薄暗く濁り、水面はきらめくこともなく、土は腐って障気をあげ、
魔の者の口腔から吐き出された焔は、街を、ひとびとを焼いた。

以前は、これほどではなかったのだ。
いのちの危険を身近なものとしていたのは、旅の商人や辺境の村くらいであった。

街から出なければ、安全は確保されていたのだ。

ところが、かの事件が起こってからというもの、
いかな都のひとびとといえど、絶えず恐怖におののかねばならなくなった。

一人の娘の誘拐である。

娘の名はセリルウィーン。
かつては世界を支配したという大国、
いまはその地の聖なる力に護られた『まどろみの都コーネリア』の姫君であった。

人々は姫を敬愛をこめて『神器の預かり手のセーラ姫』と呼んだ。

その誕生の際に、賢者ルカーンに幸福を招く者と予言されたセリルウィーンは、
魔の恐怖にさらされ続ける人々にとっては、たしかに希望そのものであった。

その希望をなくしたとき、世界は絶望の淵に立たされたのだ。

「祈るのじゃ。古来からの伝説にのっとって祈れば、
我らの姫を想うこころが天に通ずれば、
光の戦士が降臨したもう。
彼らは必ず姫を救い、我らの頭上を覆う闇を振払ってくれよう。
我が民人よ、祈るのじゃ。
『祈り』は『光』となり、
やがて『力』となって降りそそぐ」

無能だ愚鈍だと噂されていた王が、毅然として言い放つと、
ひとびとはまだ残された希望を見た。
今にも消え入りそうなかすかな光ではあったが、
ひとびとは信じ、祈った。

『来れ。光の戦士』

と。


ずっとやりたかったFF1の小説化です!
あの乾いた、冷たい空気。砂の混じった風。曇った空。
そして、なにより美しい世界!!!
……できるだけ、忠実に、再現していけたらと思っています。
私は超級遅筆ですから(笑)、どうか、あたたかく見守ってくださいませ。

NEXT

back

INDEX