●宇宙にはタイムマシンがある ・光は30万km/秒で進む。すなわち、光の速さは有限である。 →われわれが見ている太陽は8分前の姿である。もっと遠くの天体はもっと古い姿である。 ・小柴先生のノーベル賞は、16万年離れた超新星のニュートリノが定年1カ月前に届いたのを観測したもの。「16万年前から約束されていたノーベル賞」。 ・「遠くの宇宙=昔の宇宙」 木星・土星 … ざっと1時間前の姿 天・海・冥 … ざっと10時間前 銀河系 … 数十年〜数万年前 局所銀河群 … 数百万年前 かみのけ座銀河群 … 3億年前 ・もっと遠くを見たい! → 深宇宙 HSTディープフィールド(10日かけて) … 最大100億年前ぐらい すばるディープフィールド … 30億〜130億年前の銀河が撮影された ●では、最も古い宇宙はどのぐらい前? ・宇宙の年齢は現在140億歳ぐらいらしい ・すばるが撮った最も古い銀河は10億歳ごろのもの ・40万歳のとき、最初の光が放たれた…「マイクロ波背景放射」 ●マイクロ波背景放射について ・1965年、ニュージャージー州のペンジャス氏とウィルソン氏が偶然発見。電波観測のための新型アンテナのテスト中、どうしても消えないノイズがあった。最初はアンテナが悪いのかと疑った。 ・実はそれが背景放射で、同じ州のプリンストン大学のチームが探そうとしていたものだった。「あなたの雑音、私のシグナル」。 ・この電波は「黒体輻射」である。これは、初期の宇宙が「高温の、熱平衡状態」であったことを意味する。 ・1978年、ノーベル賞がペンジャスとウィルソンに授けられた。プ大関係には授けられなかった。 ・この電波を最初に予想したのはガモフ。「宇宙の始まりは熱かったはずだ」。 ・COBE(コービー)衛星の観測で、2.275Kと決定された。 ●マイクロ波背景放射は、宇宙が40万歳のときに発せられた ・誕生直後の宇宙は、陽子と電子がバラバラに飛び回っていた。(エネルギーが高いため、大人しくくっついていられなかった)=宇宙は帯電した物質で満たされていた。→光は直進できなかった。 ・3分後、元素の合成が始まったが、このときはヘリウム原子がわずかにできただけ。 ・40万年経ったころ、陽子と電子は水素原子を形成するようになり、宇宙は晴れ上がった。 ・つまり、背景放射を見ることは、曇った日に雲底を見るようなもの。 ●背景放射の詳しい観測 ・1989年、COBE衛星打ち上げ(NASA) 温度の正確な測定→2.725K(前述)。 温度分布の測定→ドップラー効果の補正などすると、10万分の1のゆらぎが残った。このゆらぎが、宇宙の構造のもとになったに違いない。 ・2001年、WMAP衛星打ち上げ(NASA) COBEよりも高解像度「もっと詳しく見てやろう」。軌道の高さは150万km(月よりも遠い)。 ●背景放射を調べて何がわかる? ・「宇宙の物質の量は?」とか「膨張の速さは?」とかがわかるはず。←なんで? ・40万歳以前の宇宙はプラズマで満たされていた。大まかに言うと「気体」である。 その中を音が伝わり、気体の粗密ができたのだろう。その「宇宙の音」が見えたのだ! ・楽器は宇宙そのもの。楽器の大きさで音の高さが決まる。周期40万年の「重低音」。 ・楽器の形で倍音構成が決まる(音から楽器の形がわかる)。つまり宇宙の形がわかる。 ・気体の性質も音を変える。どんな物質がどれだけあったかがわかる。 ・「空間の性質」もわかる。空間が凸レンズみたいなのか、凹レンズみたいなのか。 →理論計算と照らし合わせると、「宇宙の曲率はゼロ」らしい。 ●で、わかったことは ・宇宙の全エネルギー(=質量)の73%は正体不明の「ダークエネルギー」である。 (ダークエネルギーは、アインシュタインが「宇宙項」を作るために発想したもの。一度ポシャって、違う文脈で復活したわけだ) 23%は正体不明の「暗黒物質」である。 のこり4%が、水素、ヘリウムなどお馴染みの物質。 ・宇宙の年齢は137億歳。 ・宇宙は今後、速度を速めながら膨張を続ける ・今から50億年後、銀河系はM31と衝突する。そして多分合体する。 ・1000億年後、宇宙の大きさは現在の500倍に。かみのけ座銀河団は1500億光年先へ。見えねー。 ・100兆年後、すべての星は燃え尽き、物質は壊れる。そして冷たい宇宙が残る。 …と、宇宙背景放射を調べるといろいろわかる。 ●今後の背景放射観測 ・暗黒エネルギーと暗黒物質についての精密な観測 ・衛星(←何の話だったか今橋忘れた) ・HSTに続く宇宙望遠鏡 ・30m級の地上望遠鏡 ・ALMA(チリに作る予定の干渉計) 谷口先生の講演へ |