・谷口先生の30歳の写真…やっぱりヒゲがある。髪の毛は、今より少し多い。 …外挿すると、「生まれたときからヒゲがあり、頭はもさもさだったに違いない」となる。 →うんと古い銀河を知るためには、半端に古いものを見てもダメだ。 ・天文学とは、「天から来る文に学ぶ」こと、かもしれない。 文…電磁波(光や電波)、宇宙線(荷電粒子=陽子・電子など)、重力波(まだ実績なし)など。 おいそれと手元で実験するわけには行かず、飛んでくるものを待つしかないことが多い。 ●前置き ・銀河とは何か…100億〜1000億個ぐらいの星の集団。銀河が集まった「銀河団」もある。 宇宙には1000億個ぐらいの銀河がある。 ・いろいろな銀河たち 近傍(=そんなに古くない)では、渦巻き銀河が8割、楕円銀河が2割。不規則銀河がごく小数。 ・1936年、ハッブルは楕円銀河が渦巻き・棒渦巻きに進化すると考えた。しかし宇宙年齢以内で、あんな大きなものにそれだけの変化が起きるとは考えられない、と今では考えられている。 ・銀河の衝突・合体に要する時間は「ひとこえ10億年」。その結果楕円銀河ができるらしい(すべての楕円銀河がそうやってできたのかはわからない)。 ●銀河は育っているのか? ・たとえばM31は昔から渦巻き型だったのか? あと10億年ぐらいで、2つの伴銀河は落ちてゆくだろう。するとその重力で、銀河の構造に波ができるだろう。→まあ、変形しないわけがないわな。 ・宇宙誕生の頃はどうだったのか 「銀河」というような集団はなかったはずだ ●銀河の生まれ方を知るには、うんと古い銀河を見ればよい。 …けど、遠くのものって暗いんだよね。→大きい望遠鏡で、時間をかけて写真を撮る ・HST(2.4m)で10日かけて撮った→29等まで写った。 25億〜125億年前のものが写った。数十億光年先の銀河は、変な形のものがいっぱいあった。 →何となく円盤ぽいヤツが渦巻き銀河になって、どう見ても不定形のヤツは楕円銀河になったんじゃないかなあ。 ●遠い銀河は赤く見える。 ・波長を変えて写真を撮ると、赤い写真に暗い銀河がたくさん写る。 ・静止波長をλ0、観測波長をλ1として…ナンダカンダで変形してゆくと(注・ノートを撮るのが間に合わなかった)、赤方偏移の大きさをあらわすzなる値が出てくる。z=0なら現在、z=1なら77億年前。 ●活躍する地上大型望遠鏡 ・すばるは、マウナ・ケアの山頂にいっぱいある大型望遠鏡群とともにトップグループのひとつ。 2003年3月19日、世界一遠い銀河を見つけた、と発表したがアメリカのイラク侵攻と重なってあまり注混むされなかった。 ・すばるは鏡だけでなく、観測装置もすごいぞ。 広視野主焦点カメラ…月ぐらいの範囲を映すデジカメ(800万画素) 超高性能分光器 ●遠方の銀河のスペクトル ・「ライマンα線」に注目する。 飛んでくる途中で、短波長側がどんどん吸収されるので、非対称になる。 ピークの形が非対称かどうかを見るフィルター、ピークの左右が非対称かどうかを見るフィルターを使う。 ・大気中のOH基が出す光に邪魔されない帯域は、z=6.5〜6.7(128億年前ぐらい)。 ●すばるディープフィールドの成果 ・6時間観測したところ、5万個の銀河が写真に写った。その中から古そうなのを73個選び、さらに2個に絞って分光観測。 ・結果は、z=6.54と6.58。世界で1番と3番。 ・2番はハワイのチームで、300万年差(ベンジョンソンとカールルイスぐらい)。 ・その後、z=6.60のも見つけた。 ・もちろん、よそのチームも「一番古い銀河」を探している。 ●で、生まれたての銀河はどうだったのか ・1年間に太陽5個ぶんぐらいの質量のガスを星にしている。(1億年で5億個) つまり、地道に星を作りながら銀河は育ってきた。 ・小さな星の集団が衝突・合体を繰り返し、だんだん大家族になってきた。 ●今見えている「あらすじ」 ・COBEが見たゆらぎが育ち、宇宙年齢5億歳ぐらいのころ、銀河のもとになるガスの塊ができた。 その中で星が次々誕生し、さらに合体を繰り返して銀河になった。 ●深宇宙探査の将来 ・背景放射(Z=1000)とZ=6.6の銀河の間がわからない。何かあったんだろうけど。 ・可視光帯ではライマンαの観測はできない(まぶしいから)。やるならIR帯。 ・波長が長いと解像度が落ちるので、もっと大きい望遠鏡がほしい。 2012年、欧州で100m級の「OWL望遠鏡」を作る計画。他にもいろいろ。 杉山先生の講演記録へ |