バネが戻る力の大きさは、変形量に比例します(「フックの法則」)。ゼンマイを巻いてオルゴールを鳴らすとき、ゼンマイが戻るにつれてだんだんと力が弱くなって行きます。
小型の安価なオルゴールでは、調速器がついていてもゼンマイが戻るにつれてテンポが低下するのがシロウトの耳でもわかりますが、大型のオルゴールではほとんどわかりません。(というか、私の耳では全くわかりません)
大型のオルゴールでは、調速をもっぱらエア・ブレーキで行っているものが多いようです。
空気抵抗は、空気の粘性によるもの、物体の後ろ(風下)にできる渦によるものなどさまざまの要因が関係している複雑な現象です。興味のある人は「流体力学」の勉強をして下さい。
いろいろな要因をすべてあわせると、同じ物体ならば速度の2乗から3乗に比例して空気抵抗が大きくなるとされています。たとえば2乗としても、速度が1.22倍になれば空気抵抗は1.5倍。言い方を替えると、50%増の力をかけても22%しか速くならないということです。3乗とすれば、50%増しの力で速さが14%増。
さらに、回転が速くなるとバネ仕掛けで風車の羽根が開き、いっそう抵抗を大きくするようになっているものもあります。こうして、回転速度をほぼ一定に保つようになっているのです。
すべての大型オルゴールがエアブレーキで調速しているわけではありません。たとえば、「エロイカ(シンフォニオン38型)」には裏に2つの振り子がついており、これで調速を行っています。
(エロイカの振り子は重力を利用するのではなく、バネの力でねじれを戻すタイプのものです。軸についたおもりの開き方を調整することでねじれの反復の周期を調整します。振り子で速度が一定に保たれる仕組みについては、下諏訪にある時計の博物館「儀象堂」を見学されることをお薦めします)
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