<鯉の構造・形態>
さて先程、野鯉と鯉の区別は野生であるかないかをもってすると定義しましたので、野鯉も鯉も身体の形態・構造は変わりません。
そこで、野鯉を釣るためには鯉の形態・構造を知ることが役に立ちます。
鯉の身体の特徴と各部の名称
@ヒゲ
上唇の左右に長短2対のヒゲを持つ。味覚と触覚を持つと言われるが、退化して働きは弱い。
A口
コイの口には歯が無く、前方下に良く伸縮する。そのためエサは地底の泥や砂と一緒に吸引して取る方法をとり、サイハで濾過して食べる。この索餌形態をうまく利用して考えられたのが吸い込み仕掛けである。
口の中には味覚をつかさどる器官があり、いろいろな味を識別する能力があり、人間より何倍も敏感であるという。このことは、コイが雑食であり、適応力の強さを証明する一端とも言える。
B歯
コイの歯は、咽喉歯と呼ばれ、喉に位置する。下顎に人間の臼歯に似た12個の歯を持ち、上顎には円筒状の臼のような形の大きな歯が1個あり、これを擦り合わせてエサをかみ砕く。この歯の力は強力で、コインを折り曲げる程の力をもち、タニシやシジミの殻も簡単に砕いて食べる事ができる。
C目
コイの目は一対で、頭部の前方上側面に位置する。視界は両眼合わせて360度をカバ−するが、近眼である。色彩感覚もあり、赤い色を好むといわれるが定かでは無い。
地形の違いをより分け記憶する事ができる
止まっているものより動いているものに敏感である
D鼻
鯉の鼻は口と目の間に位置し、一対の穴と蓋を持ち、口とは独立して存在します。嗅覚を受け持ち、その能力は犬以上と言われ、餌を探すのに大きな役割を持ちます。水中では匂いは空中よりもはるかに強い刺激を持ち、集魚力に大きな影響を持っています。
E耳
人間のように外に見える外耳は無く、側線を通して感じる振動を頭部にある内耳で識別する。
人間よりかなり低い周波数まで感じると言われ、地震の前にコイが良く暴れるというのは、地底の振動をいち早く感じ取るせいかも知れない。
水中における音の伝わる速度は秒速約1800bで、空気中に比べると5倍以上速い。そのため、音には敏感でこれによって素早く危険を察知したり、エサを食べる音を聞き分けている。
Fウロコ
頭部とヒレ以外の身体全体を重なり合って覆い、身体を保護する働きを持つ。
ウロコは側線部分で片側37〜38枚あり、成長するに従い年輪を形成する
G側線ウロコ
体則の中央に横に一列に穴の開いたウロコが並んでいますが、これを側線ウロコと言います。
低周波の波動を感じ、レ−ダ−の役割を持つと言われ、これにより濁った水や暗闇の中でも餌を探し出す事ができます。
Hエラ
コイのエラブタの内側には赤い色をしたヒダ状の重なったものがあり前の部分をさいは、後ろの部分をサイヨウと言います。
サイハ ここでエサを濾過する役割を持つ
サイヨウ 呼吸をつかさどる器官で、人間の肺と同じ役割を持つ
水中における酸素の量は地上に比べて非常に少なく、しかも水温が高くなるほど少なくなる。そのため、酸素の量は活性に大きく影響する。
Iヒレ
身体の下側に1対の胸ヒレと1対の腹ヒレ及び1枚の尻ヒレを持ち、上部に3棘17〜21軟条のヒレがあり、最後部には推進力を司る尾ヒレがある。
J脳
各種感覚が発達し、高い識別能力を持つ。
高い記憶力を持ち、学習能力がある。
Kウキブクロ
これによって浮力を調整し、自由に水中に漂うことができる。
水中の音波を感じ内耳に伝える働きと、音を発信して距離を測る能力を持つという。
L消化器・腸
鯉には胃が無く、人間のような空腹感や満腹感は無いと言われ、血液中のある成分の減少によって摂餌行動が促されるという。
M卵
3〜4年で成熟し、水温20度前後の春から初夏に産卵する。1回に10万単位の卵を産むが、殆ど生息数が変わらないということは、この中で成熟する鯉は1〜2匹しかいないということを現し、いかに自然淘汰が厳しいものであるかを示している。
N亜熱帯性の変温動物である
変温動物である鯉は体温調節機能を持たないため、急激な温度変化に弱い。反面、恒温動物のように体温を維持するためのエネルギ−を必要としないため、エサの量は少なくてすむ。
O大きさと寿命
10数年成長を続け、平均80〜90aの大きさになり、まれに1bを越える。
飼育された鯉では100年も生きたものがいると聞くが、自然の中では常に生存競争があり、天寿を全うすることは非常に難しく、20年程度が限界と思われる。