章 ブッコミ釣り仕掛けの基本と応用

釣人に、鯉が針掛かりする時は吸込む時と吐き出す時のどちらでしょうか、と尋ねますと、意外にも吐き出す時だと答える釣人が多いのに驚かされます。

しかし、普通の仕掛けでは、針を吐き出す時に掛かる事はありません。針を吸込む時のみに掛かります。

なぜ、針を吐き出す時では無く吸い込む時に掛かるのかという事は、次に説明しますが、このことは、仕掛けを作る上で最も大切な基本の一つとなります。

私が馬鹿の一つ覚えで引用する言葉に、1.場所2.エサ3.仕掛けという言葉があります。12の基本に就いては、以前の大鯉クラブに述べていますが、今回は、3の仕掛けの基本に就いて述べたいと思います。12でも述べましたが、基本はあくまでも野鯉の構造・形態そしてそれに対応する仕掛けの構造にあります。

現在の釣針の殆どが、針先が軸に平行に曲げられたしの字型をしていますが、これは軸の方向に引く事により針先が刺さる構造になっています。反対に、押す方向に力を入れて刺すものに銛があります。

針が魚の口に掛かるためには、針先が刺さるという作用を支えるための支点が無ければなりません。

普通のアワセを行う釣りでは、魚のアタリを見て竿を立て、そのパワーが竿先からラインを経て針先に伝わります。鯉釣りでも、ブッコミ釣り以外の釣りでは、殆どがこの方式で針を掛けます。その場合、アワセをする時は針を吸込んだ時であるという事は、子供でも判ります。しかし、むこうアワセとなるブッコミ釣りとなると、何故か吐き出す時に掛かると答える人が意外と多いのです。しかし、アワセをするのが、釣人側から鯉の方に向きが変わっただけで、原理は同じです。針が吸込まれる事によりハリスが引かれオモリが抵抗となり、針が掛かるのです。

針掛かりのアタリは、針に結ばれたハリスを通してオモリに伝わり、更に道糸を通して竿先に伝わります。

 実は、仕掛けを作る上でこの針掛かりの構造を知らないと、正しい仕掛けを作る事ができません。1+1=2の算数を1+1=0で覚えると後の計算ができないのと同じになるのです。

現在使われている多くの仕掛けは、経験的に伝えられてきたものが殆どで、科学的な理論の解説は殆どされてきませんでした。試行錯誤の経験上、実績を残した仕掛けが少しずつ改良を加えて伝えられてきたようです。

 ハリスや仕掛けの長さなどは、案外とこの基本的な原理を知らないで漠然と作られている事が多いようです。