前作よりも萌えられて、前作よりも鬱になる。
 『魔法少女アイ2』とはそういう作品でしょう。

 キャラクターの魅力(言うなれば萌え度)は確実に上がっています。
 アイもリンも紫も宮広もメグも全員良い。素晴らしいキャラ立てが成されています。
 しかし、それ故にエッチシーンがきつい。前作の時も同じことを書きましたが、受ける精神的ダメージは格段に上昇していると感じました。
 しかも、鬱になるシーンに限って回避不可ですし。
 そういう意味では、好きな娘(仲の良い娘)が汚される場面は絶対に見たくないという方にはとてもオススメ出来ません。

 あと、前作のシビアな雰囲気が気に入ってる方にも薦められないかもしれません。
 良くも悪くもコメディ色が強くなってますので。
 加えて、シナリオライターが変わった所為か、前作の設定が生かされていない(忘れられている?)と感じる部分もありましたし。
 ラスボス関連も前作の方が盛り上がりがあったかも。
 今作も悪いというわけではありませんが、どうしても中途半端感は否めません。
 これはやはり、メグ対シンの戦いが何も語られずに終わっているのが原因でしょうか。
 鬼神メグの姿(及びシンの実力)を見ることが出来るチャンスだったのですが……。非常に惜しまれます。

 それにしても、今回は敵が強くなりすぎです。秋俊と融合したアイがもの凄く弱く感じるとは。
 もしも続編を出すのなら(個人的には『2』で終わって欲しいのですが)、これ以上の強さの高騰は抑えていただきたいところです。
 某週刊少年漫画雑誌じゃないんですから(苦笑

 ――いろいろ書きましたが、『魔法少女アイ2』が良質なAVGであることは間違いありません。
 キャラが良いですし、シナリオにもパワーがあります。システム(セーブ・バックログ等)も使いやすくなってます。
 陵辱物(触手物)に抵抗がないのでしたら、一度はプレイして頂きたい作品だと思いました。





(お気に入りキャラ)

 加賀野アイ

 リンも良いですが、私はアイ派です。
 秋俊が記憶を思い出す一連のシーンなんて、年甲斐もなくジーンと来てしまいました。
 EDでのべーちゅもラブリーでしたし(笑

 でも、やはりリンも捨てがたい……





(――以下は、お約束のSSです)



『グッドエンド、そしてそれから』


「どうしたのアイちゃん? さっきから、ずっと私と美景ちゃんのことを睨んでるけど」

「加賀野さん? 私、なにかしちゃったかしら?」

 例の事件の後、秋俊・アイ・リン・メグ・宮広・紫の六人は秋俊の部屋に集まることが多くなった。たむろしていると言ってもいい。
 この日もご多分に漏れず、秋俊の部屋で全員揃ってお茶をしていた。そして、各々が持ち寄った菓子やジュースを口に運びながら、秋俊をからかって肴にして楽しく会話に興じている。
 メグと宮広が、アイからのきつい視線に耐えかねて声をかけたのはそんな時だった。

「べ、別に……私、睨んでなんか」

 ボソボソとアイが呟く。しかし、言葉とは裏腹にアイの目は未だに鋭い光を宿していた。

「アイちゃん?」

「加賀野さん?」

 困惑したようなメグと宮広。二人とも、アイに睨まれるようなことをした覚えが無いのだから当然だろう。
 しかも、殺気すら込められている眼を放ってくる割には、どういうわけかアイは二人の顔を見ていない。視線は明らかに他の所に向かっている。それがメグと宮広の困惑を一層深いものにしていた。

(アイちゃん、さっきから何処を見てるのかしら?)

 頭の中でクエスチョンマークを浮かべながら、メグは何気なくアイの視線を辿ってみた。

(ん? おや? もしかしてアイちゃんったら)

 アイの心の内を理解し、メグがイタズラっぽいと表現出来る笑みを浮かべる。

「ふーん、そういうことかぁ」

「なに? メグ姉様」

 ニヤニヤと笑いかけてくるメグに、アイが些か不機嫌そうに応えた。

「べっつに〜。ただ、アイちゃんも女の子なんだなぁって思っただけよ♪」

 からかうような口調でメグが返す。

「あ、なるほど」

 メグの言わんとすることを理解し、宮広が納得顔になった。次いで、アイに『加賀野さんでもそういうこと気にするのね。可愛い』と言わんばかりの穏やかな視線を向けてくる。
 恥ずかしげに頬を染めつつ、バツが悪そうに顔を背けるアイ。

「まあ、あたしは加賀野さんの気持ちは分かるけどねぇ」

 メグの隣でお茶を啜っていた紫。こちらもアイの視線の意味に気付いたらしく、うんうんと何度も頷いて彼女の心情に理解を示していた。

「なんなんだ? まるで話が見えん」

「一体全体どういうこと?」

 周囲の面々が訳知り顔になる中、理解できずに取り残されていた秋俊とリン。
 そのリンにアイの視線が向く。

「なによ?」

「ふぅ。勝ってるのはリンだけか」

 リンからの問いを綺麗に無視して、アイが深いため息を零した。

「はん?」

 わけが分からないといった風情のリン。小首を傾げて『なに言ってんの?』という顔でアイを見る。
 ただ、バカにされているらしい雰囲気は痛いほど伝わってくる為、リンの目には剣呑な光が宿っていた。
 そんなリンの隣で、

「そういうことか。分かった」

 秋俊が『謎は全て解けた』と言わんばかりの表情で手をポンと打った。

「なによ!? 秋俊まで分かったっての!?」

 思いっきり不機嫌そうにリンが尋ねる。口調には、自分だけが蚊帳の外なのが気に入らないといった負の感情がありありと出ていた。

「ああ、分かったぞ。メグ姉ちゃんや宮広を睨んでいた。羨んでいたと言ってもいいな。そして、リンには勝っている。この事実から導かれるものは一つ。それは……」

「それは? それはなに!? 早く先を言いなさいよ!」

 もったいぶったように間を空ける秋俊。それをリンがいらついた声で促した。

「それは、ズバリ、アイは胸の大きさの事を……」

「死ねぇ! このバカ秋俊!」

 最後まで言い終わる前に秋俊が吹き飛んだ。

「ぐっはぁ!」

 リンが放ったドロップキックによって。
 ドンガラガッシャンと派手な音を撒き散らしながら秋俊が転がっていく。

「なんで『アタシに勝ってる』って言葉を聞いた瞬間に理解するか! 気付くのならもっと早くに気付きなさいよ! もしくはずっと気付かないままでいなさいよね! なに? もしかして、秋俊はアタシの事を『貧乳のえぐれ胸の洗濯板』とでも思ってたわけ!?」

「じ、実際にその通りだろうが……ぶふぉぉ!」

「黙れ!」

 再度吹き飛ぶ秋俊。今度の技はケンカキックだった。

「ま、まあまあリンちゃん。ストップストップ」

 冷や汗を浮かべつつメグがリンを制止する。

「そ、そうよ。はい、これでも飲んで落ち着いて。ねっ」

 次いで、宮広もジュースをリンに差し出しながら宥めてくる。

「は、はわわ」

 紫は……額に縦線を入れて、秋俊の冥福を祈っていた。
 そんな周囲の喧騒を知ってか知らずか――と言うか、十中八九眼中に無い――アイが自分の胸元を眺めながらため息混じりにポツリと呟いた。

「メグ姉様や美景までとは言わないけど、せめて紫さんくらいは欲しいなぁ。はぁ、毎晩秋俊に揉んでもらってるのに」

 音量は小さかったが、なぜかその声は妙に響き渡った。よく通った。嫌でも全員の耳に入った。
 刹那、部屋中の空気が凍った。

「あ、アイ。な、なにを言い出すんだよ」

 振り絞った様な掠れた声で秋俊がアイにツッコミを入れる。

「え? ……ぁ」

 その声を聞いてアイが我に返った。自分が口走った事を思い出し、瞬時に顔を真紅に染め上げる。

「あ、あらあら。秋俊ちゃんもアイちゃんもラブラブねぇ」

「お、岡島くん……毎晩だなんて……ふ、不潔」

「ひょっとして、岡チンってケダモノ?」

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 誤解だ! どこがどう誤解なんだか自分でもよく分からないがとにかく誤解だ!」

 揃って引き攣った顔を向けてくる女性陣に対し、秋俊が支離滅裂な言い訳を返す。無論、その様なものが聞き入れられるわけはないが。

「問答無用! 秋俊のどスケベが!」

「ま、待てリン! 少しはオレの話を!」

「そんなの聞く耳持たーん! てんちゅーっ!」

 秋俊の訴えをサラッと聞き流してリンが再度攻撃を仕掛けた。ガッチリと逆えび固めを極めて、ギリギリと締め上げる。

「ぎ、ぎええぇぇぇっ! ギブギブ!」

 バンバンと床を叩いてタップする秋俊。

「リン! 秋俊になにするの! 離れて!」

 アイが血相を変えて駆け寄り、力任せにリンを引き剥がす。
 そして、秋俊を守る様に――他の者に触れさせない様に――彼の頭をギュッと抱き締めた。
 小さいながらも柔らかなアイの膨らみが顔に当たり、思わず秋俊の頬が朱に染まる。と同時に、デヘヘと言わんばかりのだらしない笑みも。
 その秋俊の様子を見て、アイは微かに羞恥の色を浮かべながらも愛しげにはにかみつつ――リンに向かって、勝ち誇った挑発めいた顔を向けた。秋俊に酷いことをした仕返しの意味も込めて。

「ふふ。私の胸、気持ちいいみたい」

 さらに追い討ちの一言。『顔を胸に埋めてあげるなんて、リンには到底出来ないでしょ?』。アイが言外にそう語っていると、少なくともリンには受け取れた。
 ただでさえ気の短さでは定評のあるリン。それらを見聞きして、リンの堪忍袋の尾はいとも容易くプチッと切れた。ツカツカと二人の元へ近づくと、強引にアイの腕を秋俊から引き剥がした。

「なにをするの!」

 抗議の声を上げるアイ。
 しかし、リンは全く相手にせずに、秋俊の頭をアイと同じように抱き締めた。

「り、リン!?」

 殺気の篭った視線を送ってくるアイと、驚きのあまり声も出せない秋俊の二人を無視して、リンが秋俊に甘く語りかける。

「ねえ、秋俊。成長の見込みの『全くない、皆無な』アイの胸なんかじゃなくてさ、アタシの胸を……その……揉んでみない?」

 言いながら、秋俊の耳に熱い吐息。

「あ? え? う?」

 混乱して上手く言葉を紡げない秋俊。

「ね、いいでしょ?」

 普段からは想像も出来ない猫撫で声でリンが迫る。『ふふん。アタシにだって、胸で秋俊を篭絡させるくらいの芸当は可能なのよ』。瞳で、そうアイにメッセージを送りながら。

「いいわけないでしょ!」

 空気を震わさんばかりの叫びと共に飛んでくるアイの拳。
 それを軽く避けると、リンはアイを睨みつけた。

「危ないじゃない!」

「チッ、逃げられた」

 ちなみに、リンにかわされた拳は秋俊の顔面を見事に捉えていたのだが……頭に血が上っている二人はその事実に全く気付いていなかった。
 ともかく、秋俊を放っておいて臨戦態勢に入るアイとリン。

「もう、二人とも乱暴ね。どう、秋俊ちゃん? いっその事私に乗り換えない?」

 秋俊を介抱しながら、メグが冗談めかして自分を売り込む。

「もしくは私なんてどうかな? 私なら岡島くんに痛い思いなんてさせないわよ」

 ついでに漁夫の利を狙う宮広。

「見て、岡島くん。私なら、あの二人と違って胸だって……」

 何気にテンションが上がってしまっているのか、それともアイとリンに毒されたのか、はたまた対抗意識を燃やされたのか。恥ずかしそうな顔をしつつも、宮広は誘惑する様にシャツのボタンを一つ一つ外していく。秋俊の目の前に現れる美しい谷間。
 秋俊は、ゴクリと唾を飲み込んで、アイやリンには望み得ない光景に思わず見入ってしまった。そして、ついつい手を伸ばしてそっと触れてしまう。

「あ、あんっ。もう、岡島くんってば。おいたさんなんだから」

 慈愛に満ちた眼差しを秋俊に向けて優しく叱る宮広。「わりぃ。あんまりにも綺麗だからつい」と照れくさそうに謝る秋俊。二人の間になんとも桃色な空気が流れた。
 尤も、そんなラブラブが長続きするはずもない。

「秋俊、宮広美景」

「な、な、な、なにやってんのよあんたらはーーーっ!」

 アイの絶対零度の呟きとリンの大絶叫。好対照の二つの声が、秋俊と宮広が作っていた雰囲気を木っ端微塵に破壊した。
 当然、宮広は面白くない。負けじとアイとリンを睨み返す。

「まあまあ。アイちゃんもリンちゃんも美景ちゃんも」

 ニコニコと満面の笑顔で仲裁に入るメグ。

「ケンカしちゃダメでしょ。言うなれば、みんなは仲間なんだから」

「仲間?」

 怪訝な顔をしてアイが尋ねる。

「そうよぉ。三人とも――いいえ、紫ちゃんも入れて四人ね――秋俊ちゃんが大好きという共通点を持った恋仲間。でしょ?」

 メグは、敢えて『恋敵』という表現を使わずにアイたちに言い聞かせた。
 もちろん、仲良くさせようという意図からである。多少、本当に多少ではあるが、事態を複雑化させて単に面白がっているだけという部分も否定は出来ないが。

「あ、あたしは……えっと……その……あうぅ」

 メグの言葉を聞いて、真っ赤になって俯いてしまう紫。
 その彼女を横目に、メグが更に続ける。

「変に奪い合ったりするから争いが起こるの。だ・か・ら、秋俊ちゃんはみんなの共有財産ということにしましょ♪」

 メグ、邪気の無い笑顔で爆弾を投下。

「共有財産? 秋俊なんかにそこまでの価値があるとは思えないけどねぇ。でもまあ、いいんじゃない。アタシは別に秋俊なんか大好きじゃないけどさ。けど、貰える物は貰っておくわ」

「とてもナイスアイデアだと思います。さすがはメグさんですね」

 その――常識で考えれば馬鹿げた――提案を、リンと宮広は拍子抜けするほどアッサリと受け入れた。素直じゃない、とても素直という違いこそあったが。
 しかし、当然受け入れられない者も存在する。

「いくらメグ姉様の言うことでもそれはちょっと……」

「そうだよ。無茶苦茶すぎるってば」

 アイと秋俊だ。

「心配しなくても、秋俊ちゃんは基本的にはアイちゃんのよ。私たちは時々、ほんのちょっとお裾分けを貰うだけ。それでもダメかな?」

 アイの目を見つめながら穏やかな表情でメグが諭す。さりげなく『私たち』と自分を入れているところが流石である。

「……それなら、まあ」

「いいのかよ!」

 メグの説得とも言えない説得にいとも容易く首を縦に振るアイに、秋俊が頭痛を覚えながら突っ込んだ。

「よしっ! それじゃ、全員が納得したとこで」

「してねーよ!」

「さっそく全員で秋俊ちゃんにサービスしちゃいましょうか」

「頼むからオレの話を聞いてくれーっ!」

 秋俊、魂からの叫び。だが、それは誰の耳にも届かなかった。
 メグを筆頭に、アイもリンも宮広も服を脱ぎ捨てていく。

「岡チン、世の中諦めが肝心だと思うよ」

 訂正。一応聞いている者はいたようだ。ただ、それで事態が変わるわけではなかったが。
 なぜなら、紫も脱衣組の一人であったから。紫曰く『ここで遠慮してたらバカを見るだけだもんね。こうなったら、毒を喰らわば皿までだよぉ』とのこと。

「秋俊」

 頭を抱えている秋俊にアイの声が掛けられる。そちらに目を向けると全裸のアイの姿が飛び込んできた。条件反射か、途端に元気になる秋俊ジュニア。

「私、いっぱいいっぱい秋俊を気持ちよくしてあげる。だから、秋俊もここをたくさんマッサージして」

 真っ赤な顔をして秋俊の右手を取ると、アイは自分の胸に添えさせた。

「それじゃ、こっちの手はアタシね」

 空いている左手を取ると、リンはアイと同じように秋俊の手を運んだ。

「岡島くん」

 秋俊を背中側から抱き締めた宮広は、甘い声で囁きながら秋俊の首筋に舌を這わせる。

「ほら、紫ちゃんも。負けてちゃダメよ」

「は、はい」

 メグに背を押され紫が秋俊に近づいていく。後を追うようにしてメグも。

「お、オレの意思は? ねえ、オレの意思は!?」

 体の至る所から伝わってくる心地よさと、自分の意見を綺麗にスルーされた哀しさ。
 相反する二つの気持ちに苛まれながら、秋俊はルルルーと滂沱するのであった。



 ――数時間後

「さて、一回りしたかしら? それじゃ、これからが本番ね」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ! オレ、もう限界だって!」

 何気なく恐ろしい事を言うメグに、秋俊が必死の形相になって訴えた。

「なに言ってるのよ。若いんだからこの程度でギブアップしてちゃダメよ」

 罪の無い笑顔を浮かべて酷な事を宣うメグ。
 そのメグに追随する様に、

「秋俊、ふぁいと」

「なーに? もうへばってんの? だらしないわねぇ」

「頑張ってね、岡島くん」

「岡チン、一応声援だけは送ったげるね」

 周囲の面々からのありがたいお言葉が。

「ま、マジっすか? お、オレ……明日の朝日は拝めないっぽい?」

 アイたちの言葉を聞いて、『オレ、ゆらぎになりてぇ。触手を我が手に! 触手プリーズ!』と半ば本気で思ってしまう秋俊であった。

 めでたしめでたし。








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