大作『大悪司』の正統後継作である『大番長』。
 03年の末にアリスソフトがリリースした大作。
 前作が前作ゆえに、発売前から大変に大きな期待が寄せられていた本作ですが、概ねそれには応える事が出来たのではないかと思います。

 個人的に大きな改良点と感じたのは以下の3点。

・戦闘時のアニメーション
 この手のゲームの華である戦闘シーン(Hシーンは除く)
 視覚的にも堪能させてくれる物になっています。
 いろいろなキャラが派手に激しく、または可愛らしくチョコマカと動き回る様は見ているだけでも楽しめます。

・緊張感
 前作の『大悪司』には後半になると展開がややマッタリしてしまう(簡単になりすぎてしまう)という難点がありましたが、今作ではその点も――可能な限り――改善されている様に思えました。
 全編通して一定の緊張感を保ち続けられるのは、地味ながらも実に大きな変化であると言えます。

・属性
 『大悪司』では飾り――無いよりはマシ――程度でしたが、『大番長』では決して無視の出来ない要素に。
 『考慮するべき点を増やすことで、ゲームに幅と彩りを与える事に成功した』と言っても過言ではないかと。

 上記以外にも、細かい部分での操作性が向上している等々、前作よりも『改善』されている箇所は多々見受けられました。

 ――しかし、改善された点があれば、当然「前の方が良かったかな?」と感じる部分も出てくるワケでして。

・ウィミィと魔界孔
 前作の最後の敵対組織であるウィミィ(一発は除外。あれはあくまでもオマケ扱いだと認識していますので)と今作の魔界。
 インパクトという点では圧倒的に前者かと思われます。
 ウィミィ=女尊男卑
 この思想(設定)が実に効果的でした。
 実際にウィミィと敵対していない場合(序盤等)でも、この女尊男卑という思想(設定)の為に、常にウィミィはプレイヤーに存在感を与えていました。
 小さなイベントにも大掛かりなイベントにもウィミィの影は纏わり付いてきました。いつでもどこでも、鬱陶しくもベッタリとこびり付いてきました。
 けれども、それ故にそんな組織を潰す爽快感、所謂カタルシスが生じたワケです。
 対して魔界。
 何と言いますか、実にアッサリとしています。淡白です。
 やる事といったら、一定ターンごとに神威が一人でブツブツ喋るだけ。
 いろいろと暗躍はしていますが、プレイヤーにとっては実害無し。
 ウィミィの『囚人解放イベント』の様にちょっかいを出してくる事も無く、狼牙たちが攻め入るまでお行儀良く待っているのみ。
 ……。
 ぶっちゃけてしまえば、カタルシスという面は『大悪司』の圧勝ではないかと。
(但し、最後にちゃんとしたボスを用意したのは改善点。
 『大悪司』は一発イベントを起こさなかった場合、最後の敵が本当に『普通』ですから。汎用キャラに毛が生えたようなもの。……毛すら生えてないかもしれません。
 なので、きっちりと『いかにもなボスキャラ』と戦えるのは私的には嬉しかったところ)

 神威に関してもう一つ。
 妙に小物臭さが漂っていたのが減点材料。
 愚考するに、一人でいいので側近のような立場のキャラ――『王道勇者』のネイガルの様な陰険狡猾なタイプが望ましい――がいれば大分印象が変わったのに、と思います。
 一定ターンごとのイベントが神威の独り言から掛け合いになる為にマヌケ感が減少、手下に任せずに自らがちょこちょこ動き回るが故に生じてしまっている軽さ(小物臭さ)の緩和、魔界孔内で中ボス戦を設置することにより無理矢理にでも盛り上がりを作れる、等々。
 ベタですけど、ね。

 これらの点が、私が抱いた『大番長』の欠点でした。
 もう少しラスボス関連がしっかり描けていたら……と、そう思えてなりません。


 なにやら悪い点の方が長くなってしまいましたが、私にとって『大番長』は間違いなく傑作。
 未だに(04年7月27日現在)楽しんで遊んでますし。これからも遊び尽くすつもりですし。


 最後に敢えて纏めるならば……

【ゲーム性・キャラクターでは『大番長』、カタルシス・世界観では『大悪司』】

 といった感じでしょうか。
 あくまでも私見ですが。

 乱暴な言い方をしてしまえば「どっちもすごく面白いから黙って両方やっとけ」です、ハイ。


 
(お気に入りキャラ)

 ※何人かを強引にピックアップして一言ずつ。

・斬真狼牙
 ランスや悪司に比べると青臭いキャラですが、それもまた魅力の一つ。
 若いうちは後先考えずに勢いに任せて突っ走るくらいで良いのです。

・姫乃宮華苑
 ヒロインは全員好きですが、敢えて一番を挙げるならこの娘。
 他のキャラと違い、惹かれていく過程が描かれているのもポイント高し。

・篠田勘助
 一見イロモノ系。その実、イベントはどれも味のある格好良いキャラ。漢。

・久我匡一郎
 このキャラに何度窮地を救われたことか。黒影迅だけで食っていける人。
 弓ちゃんとのカップリングも不器用で微笑ましくて良しです。

・ヴァンダイン
 燃え。全弾発射(二十則)は男の浪漫。

・緋皇宮神耶
 大番長のキャラの中で最も萌えかも。もちろんルヴァウル(と大まおー)込みで。
 真宿の守護神。

・金剛丸三蔵
 この手の質実剛健なキャラは大好きなのです。
 佐藤さんとの一連の電話イベントでは男を見せ付けてくれました。

・アバオ亜空
 笑死。


 あとは、久那妓も扇奈も剣道も弓道も絵梨花も豪も兵太も無頼も摩利夫も仮名も……
 ぶっちゃけ、みんな好き。




<おまけ>
二次小説『無茶苦茶モードにて』






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