潜り屋必携アイテム。
 『ひたすら迷宮を潜ってレベル上げ&アイテム集めが大好きな人は黙って買っとけ』って感じです。


 内容は良くも悪くも『DALK』。
 あくまでもメインはゲーム部分でお話は必要最低限しかありません。
 シンプルイズベストとも言えますが、最近のストーリー重視の作品に慣れた方には少々キツイかもしれません。
 「ゲームはシナリオ重視」という方は回避した方が無難です。
 逆に「読むだけのゲームには飽きた」という方には強くオススメします。
 期待通り(?)に睡眠時間を大幅に奪ってくれることでしょう。


 ゲーム性重視の本作ですが、意外とエッチシーンは濃かったりします。
 主人公は神様なのですが、らしからぬ俗なプレイのオンパレード。
 ですが、神様と思うと違和感を覚えるプレイも、マーティスだと思えば途端に納得してしまいます。
 前作を遊んだ方は尚更でしょう。
 何せ、セイルに『ゴッドバイブ』なんていうふざけた代物を渡すような男ですから。
 さすがはお気楽極楽の不良恋愛神マーティスです。面目躍如といったところでしょうか(笑

 しかし、あれだけの女の子に手を出していたらミラがぶち切れそうですが……。ミラって嫉妬深そうですし。
 自分以外の神族を相手にしなければOKなのでしょうか。
 ま、神様は基本的に博愛主義――悪く言えば節操なし――ですからね。神話等では複数の異性に手を出すのは当たり前ですし。その辺には意外と寛容なのかもしれません。


 このゲームですが、遊び方は十人十色になるのではないでしょうか。
 ゲーム部分に燃えるも良し、メイドたちとのハーレムに萌えるも良し。
 止め時も自由。
 女の子たちのCGが埋まったら止めてもいいですし、一応のエンディング(スタッフロール有り)がありますので、そこに到達した時点で止めてもいい。
 もちろん、とことんまで極めても(999階まで潜っても)いい。
 遊び方の幅は広いと思います。


 2,800円ですし、購入して損をしたと思う事は無いでしょう。
 いつまでもダラダラと続ける事が出来ますので、暇潰しにも最適ですし。
 尤も、暇潰しのつもりが何時の間にか朝に……という危険性はありますが。

 私の場合、『昔ソリティア、今DALK』です(笑





(お気に入りキャラ)

 レジィナ

 素直になれない意地っ張り。
 でも、芯は誰よりも素直で優しい娘。
 萌えです。直撃です。
 見た目もお気に入り。会報でイラストを見た瞬間から魅了されました。
 当然、一番レベルが高いです。それも圧倒的に。
 ま、それはこの手のゲームでのお約束ってことで。

 次点は時子。
 生真面目な性格の和装剣士。
 こちらも非常に私好みのキャラです。
 戦闘でもお世話になってますし。






(――以下は、お約束の超短編SSです)


『なーんにも無い日』


 柔らかな陽射しが優しい穏やかな午後。
 恋愛男神マーティスは、暇を持て余す様に当ても無く館の中をブラブラと散歩していた。
 そして、彼付きのメイドの一人であるエレシアの部屋の前を通りかかった時、

「エレシアってば本当に弱いわねぇ」

「あうう、レジィナさんが強すぎるだけですよぉ」

 中から楽しげな――というには些か語弊があるが――声が聞こえてきた。

「おやおや、なにやら盛り上がってますね」

 興味を引かれ、マーティスはエレシアの部屋のドアノブに手を伸ばした。無論、数回のノックの後に。

「お邪魔しますよ」

「あ、いらっしゃいませマーティス様」

「こんにちは、マスター」

 室内に入るマーティスを、軽く会釈しながら笑顔で迎え入れるエレシアとレジィナ。

「お二人の仲の良い声が廊下にまで聞こえてきましたので、ついつい誘われてしまいました。いったい何をなさっていたのですか?」

「このゲームですよ。マーティス様はご存知ですか?」

 マーティスの問いに、エレシアが小さなテーブル程もある盤と黒と白の二色の石を指し示した。

「ええ、もちろん知っていますよ。東方の遊戯、イーゴですね。これはまた渋いゲームを」

 確か、セイル君の所のジーマさんがお好きでしたね。
 そんな事を考えながらマーティスが答える。

「ヴェルナと時子に以前から面白いと薦められていたので、今日街に出たついでに買ってきたんです。で、暇そうにしていたエレシアを捕まえて」

「お二人で対局に突入した、というわけですか?」

 レジィナの言葉を引き継いでマーティスが確認してきた。
 それに「はい」と答えつつ、レジィナはエレシアに視線を送る。

「でも、この娘ってばすっごく弱いんですよねぇ」

 やれやれと言いたげに肩を竦めるレジィナ。

「あうう」

 エレシアからは一切の反論が無い。その事実が、レジィナの発言の正しさをこれでもかと示していた。

「すっごくですか? 具体的には?」

「今のところ、わたしの12戦全勝です。しかも圧勝」

 マーティスに、微かに誇らしげな表情を浮かべてレジィナが答える。

「なるほど。それは確かにすっっっごく弱いですね」

「あうううう」

 愛しの主に必要以上に強調され、エレシアとしては身を縮ませて唸る事しか出来ない。
 尤も、その様な可愛らしい仕草を見たいが為に、マーティスはわざとそういう意地悪な言い方をしているのだが。
 もちろん、エレシアもそんな事は重々承知している。しかし、分かっているからといって対処出来るというものでもない。上手い返しを思い付けずに、エレシアはただただ「あうう」状態であった。

「ねえ、レジィナさん? そんなに弱い相手と延々と対局し続けていて面白いですか? 却って気疲れしません?」

 マーティスの口から発せられた疑問を聞いて、レジィナが「え?」という顔になる。

「ヴェルナさん辺りと指した方が良い勝負になるのではありませんか? 彼女、この手のゲームに強そうですしね」

 さも名案とばかりに提案するマーティス。だが、レジィナは黙するだけで何も答えない。

「ああ、なるほど。そういう事ですか」

 その様子を見て、合点が言ったとばかりにマーティスがポンと手を打った。

「つまり、レジィナさんはヴェルナさんよりもエレシアさんの方にラブラブという事なんですね。例えゲームの相手にはならなくても、それでも傍にいたい。――ということですか」

「ら、ラブラブって!? ま、マスター! なにを言ってるんですか!?」

 顔を朱に染めて大声で抗議するレジィナ。
 だが、マーティスの口は止まらない。

「レジィナさん、エレシアさん、ヴェルナさん。ふむふむ、なかなかに複雑なトライアングルが形成されてますねぇ。美少女たちが繰り広げる三角関係。味があって大変興味深いですよ。非常に素敵です」

「ま、ま、ま、マスター! 勝手に変な誤解をしないで下さい!」

 先程以上のボリュームでレジィナが必死に訴えた。彼女の顔は、既に耳まで真っ赤になっている。

「おや? 違うんですか? それは残念。ちょっぴり修羅場も期待していたんですけどねぇ」

 言葉通り、心底残念そうな顔をしてマーティスがつまらなそうに零した。
 そのマーティスを、レジィナは物言いたげな拗ねた目をして睨み付ける。
 そして、暫しの後、

「わ、わたし、急用を思い出しましたので、これで失礼します!」

 場の空気に耐えられなくなったのか、言い訳がましい言葉を口にしながらそそくさとドアの方へと歩き出し、

「エレシア! 時子辺りに教えてもらって、次までには少しは強くなっておきなさいよ!」

 色付いた顔をエレシアに向けながら早口でそう言うと、逃げるように部屋から出て行った。

「つまり、また遊ぼうね、という事ですか。やれやれ、相変わらず素直な物言いが出来ない人ですね、レジィナさんは。まあ、そこが彼女の可愛らしいところでもあるのですが」

「そうですね」

 クスクス笑いながらエレシアが同意する。

「マーティス様の仰るとおり、そういうとこもレジィナさんの魅力の一つだと思います。レジィナさん、本当に可愛らしい方ですよね」

「ですねぇ。ま、可愛らしさではエレシアさんも負けていませんけど」

 マーティスの言葉に、エレシアは「ええっ!?」という反応を示す。顔が如実に「マーティス様ってば冗談ばっかり」と語っていた。

「私はレディに対しては嘘はつきませんよ。エレシアさんはとっても可愛らしい方です。もっと自分に自信を持っていいんですよ。というか持つべきです」

 きっぱりとマーティスに断言され、エレシアは頬を染めつつ、曖昧に「は、はあ」と答える事しか出来なかった。

「それにしましても、お二人には悪い事をしてしまいましたね。申し訳ありませんでした」

「え? え? な、なにがですか?」

 敬愛する主人にいきなり謝罪され、エレシアは狼狽してしまう。

「結果的に、お二人の憩いの時を私が邪魔してしまいましたからね。心苦しい限りです」

「邪魔だなんて、そんなことないですよ!」

 頭を下げるマーティスに対して、エレシアは力いっぱい手をバタバタと振って訴えた。

「ですから、そのお詫びと言っては何ですが、私がエレシアさんのコーチをしてさしあげましょう。イーゴの、ね」

「え? マーティス様が、ですか?」

 驚きの表情を浮かべるエレシア。

「はい。こう見えても、腕には少々覚えがあるのですよ。エレシアさんさえ宜しければ、次の対局までにレジィナさんと五分に戦えるまでに鍛えてさしあげますよ。いかがです?」

「是非お願いします!」

 マーティスの提案にエレシアは満面の笑みで応えた。

「了解です。喜んでお願いされましょう」

 言いながら、マーティスは碁盤を挟んでエレシアの対面に座る。

「では早速始めましょうか。まずはですね……」

 ――それから数刻。
 パチンパチンと軽快な音を立てつつ石を動かすマーティスとエレシア。
 基本的な事から一つ一つ丁寧にレクチャーしていった。

「マーティス様? こういう場合はどうすればいいのですか?」

「こんな時はですね、このように石を動かせばいいんですよ」

「あ、なるほど」

 顔に微笑を浮かべながらゲームを堪能する二人を、麗らかな午後の陽射しが優しく包み込んでいた。

「ふふふ。楽しいですね、エレシアさん」

「はい、とっても♪」

 大きな騒動も無く、小さな諍いも無く衝突も無く。かと言って退屈も無く。
 長閑にイーゴに興じる二人の穏やかな姿に象徴される様に、今日も今日とてマーティスの館はマッタリノンビリ、ほのぼのと平穏平和であった。

「しっかし、これは想像以上の弱さですねぇ。先程の五分というセリフ、二分くらいに訂正してもいいですか?」

「あ、あうう」








< おわり >





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