< 04年12月14日 >

需要とかに縛られず、書きたい物を欲望の赴くままに執筆するのもSS書きの正しい姿だと思うのです(自己弁護


『るりくろ』(斬魔大聖デモンベイン(大十字九郎・覇道瑠璃))


今後のデモンベインSSの基本設定となる様な作品かと。
雑記のコーナーに置くにしては微妙に長さがありますので、後に通常のSSのコーナーに移す可能性大だったり。















< 04年12月1日 >

友人宅で聴かされた『月詠』のOPが耳から離れません(汗



『ネコミミ』(ToHeart(たさい):琴音・綾香)














< 04年11月1日 >

苦し紛れの場繋ぎ一発ネタです(汗
困った時のおっぱい物。
100%『壊れ』ですのでご注意を。



『ぺた』(ToHeart:マルチ・長瀬主任)














< 04年10月22日 >

『まったりイチャイチャ』
これに関しましては浩之&あかりカップルが一歩抜きん出ている気がします。
ただの『イチャイチャ』ならば他のカップルでも可能ですが、これに『まったり』が加わりますと……。
築き上げてきた歴史が物を言っているのかも、と個人的には思いますです。



『変化』(ToHeart:浩之・あかり)














< 04年10月8日 >

熱を出して寝込んでました。
風邪をひかないようにと注意していたにも関わらず。
かなりショックだったり。

一人暮らしの人間が寝込むと本当に不便ですよね。
夜に大きな地震があった時には、半ば本気で死を覚悟しましたとも、ええ(泣


『寝込みの日』(夜が来る!:亮・鏡花)














< 04年9月15日 >

やや実話。というか目撃談。
場所が場所でしたので、目に(耳に)していたほんの少しだけでしたけど。
私みたいな奴が長々とそんな場所にいたら通報されかねないですし(汗


『お買い物の母娘』(ToHeart:あかり・ひかり))


何気に以前にも何回かこの手の話を書いてたりしますが……気にしない気にしない。ひとやすみひとやすみ。














< 04年8月4日 >


『マジカルラブリー』(ToHeart)


「きゃーーーっ! 誰か、あの男を捕まえてぇぇ!」

 賑やかさに包まれていた午後の商店街に、ややお歳を召した女性の甲高い悲鳴が響き渡った。
 引ったくりである。
 サングラスにマスクというあからさまに怪しい風貌をした男が、女性から強引に奪い取ったバッグを手に猛然と走り去っていく。
 その姿を偶然目撃したとある人物。

「引ったくり……許すまじ」

 怒りに満ちた目を引ったくりに一度向けると、ギュッと拳を握り締めて、急いで人気の無い路地へと入っていった。

「すぐに天罰を与えます」

 呟きつつ、何処からか徐にピンク色をした――上端部に星が意匠された丸いクリスタル、そのすぐ下に天使の羽を連想させる装飾品が付けられた――ステッキを取り出すと、

「くるくるみらくるせりりんりん」

 それを振り回しながら呪文を唱え始める。
 途端、全身が光に包まれ、一糸纏わぬ姿となり……





「おらおら! どけっ! どきやがれぇ! ぶっ殺すぞっ!」

 引ったくりの男が、声を大にして商店街に訪れていた人々に向けて叫ぶ。
 何時の間にか手にはナイフが握られていた。
 凶器を振り回して吼えている男の迫力に気圧され、誰も引ったくり犯を捕らえる事が――近付く事すら――出来なかった。
 それをいいことに、男は悠然と走り続ける。
 だが、そんな引ったくり犯の前に、一人の人物がスッと立ち塞がった。

「邪魔だ! 邪魔すんじゃねぇ! どきや、が……れ?」

 ナイフをちらつかせて脅す男であったが、目の前に現れた者の姿に気を取られ語尾を弱めてしまう。
 あまつさえ、思わずその場で立ち止まってさえしまった。

「な、なんだ、てめぇ?」

 引ったくり犯の口から疑問が漏れる。
 そう尋ねずにはいられないほど、現れた人物は場にそぐわない格好をしていた。
 具体的には……白を基調とした、黒のフリルとギャザーで彩られた大きく胸元の開いたスクウェアブラウス。清潔感のある白で統一させたプリーツエプロン付きのスカート。頭にはレースで丹念に編みこまれたヘッドドレスを纏い、首にはシンプルなシルバーのチョーカーという所謂ゴシックロリータ風ファッションである。
 対して、問われた方。
 よくぞ訊いてくれました、と言わんばかりに口元を微かに歪ませた。
 次いで、手にしたピンクのステッキをバトンの様にクルクル回しながら口上を述べ始める。

「ご町内の平和を守るため、魔法の力で大変身。誰が呼んだかマジカルラブリー、事件が起これば即参上」

 そして、ステッキを男に向かってピッと突き出すと、胸を張って高らかに名を告げた。

「愛と勇気の魔法執事、まじらぶセバスちゃん。ここに見参☆ で、ございますぞぉ!」

 『セバスチャン』ではなく『セバスちゃん』なのでお間違いのなきように。
 閑話休題。
 セバスちゃんは、面長の顔に貼り付けられた目を大きく見開いてそう宣った。
 引ったくりの男は唖然とした表情で立ち竦み、周囲にいた皆様からは「うげっ」という声が上がる。無理もない。
 そんな反応に一切構わず、セバスチャン、もといセバスちゃんは、呆然としている眼前の男の頭をガシッと掴んだ。親指と中指がこめかみにめり込んでいる。

「悪い子にはお・し・お・き・だよ♪ で、ございます。くらえ! 必殺、セバスちゃんクロー! で、ございますぞぉぉぉーーーっ!」

 叫ぶと共に、セバスちゃんは指にギューッと力を込めていった。
 途端、嫌すぎるメキメキという音と、男の口から耳を塞ぎたくなる程の絶叫が迸った。

「どうだ! セバスちゃんの魔力を思い知ったか! で、ございますぞ。これに懲りたら、もう二度と引ったくりなんかしちゃダメだぞ♪ で、ございます」

 完全にKOされてピクピクしている引ったくり犯に向かって言うと、セバスちゃんは「かかか」と高笑い。
 周りの面々は、揃って「いや、それ、魔力じゃなくて握力です」とか思っていたりしたが、口に出せる勇気あるものはいなかった。

「正義の勝利だよ♪ で、ございますぞぉ! かーっかっかっか」

 なんとも表現しがたい『ご無体な空気』が充満する中、セバスちゃんはただ一人アゴをカクカクさせて笑い声を上げ続けるのであった。ゴスロリ姿で。

 なにはともあれ、セバスちゃんの活躍で一つの悪は滅び去った。
 ありがとう、セバスちゃん。

 しかし、これでセバスちゃんの戦いが終わったワケではない。
 まだまだ、改心させるべき悪人は山ほどいるのであるから。

 いけいけ、セバスちゃん! がんばれ、セバスちゃん!

 ご町内から悪が一掃されるその日まで!





 < 完 >





 ……………………=□○_















< 04年7月18日 >

『いめぇじあっぷ 〜(たぶん)その1〜』

後先考えずに、頭の中を空っぽにして突っ走った例。
えっと……あらゆる意味でごめんなさい?(汗















< 04年6月10日 >

掲示板でも書きましたが5周年です。
5年もの長い期間、HP運営を続けられた事を我ながら驚いています。
これも、全て皆様の御支援の賜物。
心より感謝致します。本当にありがとうございます。
そして、どうか今後とも宜しくお願い致します。



『あにばさり』(ToHeart(たさい))

「うふふ。今日は記念日ですね、浩之さん」

 朝食の席で、琴音ちゃんが唐突にそんな事を言ってきた。

「あれ? 今日、なんかの記念日だっけ?」

 少々怪訝な表情を浮かべて俺が返す。

「え? 浩之さん、今日が何の日か忘れちゃったんですか?」

 笑みを消して、琴音ちゃんがガクッと肩を落とした。

「浩之さん……ひどいです」

 恨めしそうに言うと、琴音ちゃんは「クスン」と小さく鼻を啜る。
 すると、それに呼応して、智子やセリオたちが俺に非難の目を向けてきた。
 あかりや芹香も困ったような顔で「ダメじゃない」と窘めてくる。

「いや、そんなこと言われても……」

 みんなと暮らすようになってから、俺は『女の子は記念日を大事にする』ということを学んだ。というか学ばせられた。
 だから、俺は些細な事でも『記念日』になりうるものなら可能な限り覚え、忘れないように気を付けている。さもないと、今みたいに全員から責められる事態に陥るし。
 ――で、そんな浩之的データベースの中、少なくとも『今日』という項目は存在していない。脳内を必死に検索しているのだが、全くヒットしない。

「むー。浩之さん、本気の本気で綺麗サッパリ忘れてますね?」

 琴音ちゃんが拗ねた声で尋ねてくる。
 その問いに、俺は素直に首を縦に振って応えた。降参とばかりに両手を挙げつつ。

「仕方ないですね。今回だけ特別サービスで教えてあげます。いいですか、浩之さん。今日はですね……」

「今日は?」

 もったいぶる様に言葉を切った琴音ちゃんに対し、俺は微かに身を乗り出しながら先を促す。

「今日は……ですね……」

 充分に溜めを作ると、琴音ちゃんは仄かに頬を染め、

「浩之さんに、初めてお尻で……されちゃった日です。きゃっ♪」

 朝の爽やかさを木っ端微塵にぶち壊す爆弾を投下してくださりました。

「あら? どうしました、浩之さん?」

「……いえ、なんでもないッス」

 テーブルに豪快に顔面ダイブしてしまった俺を誰が責められようか。
 まさか、そう来るとは思わなかったです、はい。
 意表を衝かれたのは他のみんなも同様だったらしく、揃って呆気に取られた顔をしている。
 ――が、ダメージが尾を引いている俺を余所に、あかりたちはアッサリと立ち直ると一様に理解を示し始めた。

「分かる。分かるよ、琴音ちゃん。やっぱり、どんなことでも『初めて』って大事な思い出だよ。例え、それが……そ、そ、外でお漏らし……とかだったりでも……」

「オシリのバージン? 確かに、コトネにとっては立派なANNIVERSARYネ」

「えへへ。皆さんなら分かってくれると思ってました。浩之さんに『いろいろな初めて』を捧げている皆さんなら」

 葵ちゃんとレミィの言葉に、琴音ちゃんが満面の笑みで返す。
 仲良き事は美しき哉、な光景ではあるが……なんつーか、俺にとっては色々と端々が痛いです。

「えっと……初めてお尻をいぢめられた日と……玩具の初めてと……」

 理緒ちゃん、お願いだから真面目な顔で指折り数えるのはやめてくれ。

「とりあえず、みんな最低でも三つか四つはありそうよね。ねっ、浩之もそう思わない?」

 こっちに振るな、綾香。マジで答えに窮するから。

「うっ。わたし、なんか損や。お尻も縄も一度に済ませとるし。他のみんなよりも『記念日』少ないかも」

 いや、そんなことで残念がらんでも。

 しかし……なんつーか……今の雰囲気、やばくね? 俺にとって。
 浩之くん的危険察知シグナルが大点灯してますよ。
 このまま此処に留まったら、きっと後悔する可能性ビッグ。

「てなワケだから、俺は一時退却、戦略的撤退を……って、おや?」

 身体がピクリとも動かない。手も足も、見えない何かにシッカリと拘束されていた。

「浩之さん。ダメですよ、逃げようとしちゃ。ある意味『主役』なんですから」

 主役と書いて『にえ』と読む。思わずそんな言葉が脳裏を過ぎる。

「ちゃーんとわたしの記念日を覚えててくれてたら、見逃してあげたんですけどねぇ。ま、自業自得ということで♪」

 後悔役立たずっぽいが……池より深く反省。



 ――その後、俺が全員分の『記念日』を覚えさせられる羽目になったのは言うまでもない。
 おかげで、俺の『浩之脳』もパンク寸前だったりする。
 もう何も入りません。入れたら出ます、トコロテン風にデロデロと。

 それにしても……

 琴音ちゃんも、あかりもマルチも芹香もレミィも、よくもまあ正確に日付を記憶しているものだ。
 みんながみんな、それぞれの『初めての日』をちゃんと覚えている事に深く感心してしまう俺であった。

 と同時に、覚えるのに死ぬほど苦労する程の沢山の『記念日』を作り出してしまっている、俺の幅広さとマニアックさに乾杯。















< 04年5月31日 >

以前もこの手の話は書いてますが(汗
雑記の場での超々短編ってことでお許しを。



『あいされ』(ToHeart(たさい))

 定期的に行われるセリオとマルチのメンテナンス。
 その度に長瀬は強く思う。この二人は本当に大事にされているな、と。
 故障らしい故障など皆無。それどころか、本来あって然るべきの小さな傷すらも見当たらない。
 駆動部に若干の磨耗は見られるものの、他の部位は新品同様といっても差し支えない程である。

 実際のところ、セリオとマルチの耐久度は市販されているメイドロボに比べて高い。コストダウンが重要視される『商品』とは異なり、ある程度予算度外視で――ネジの一本に至るまで高品質の部品を用いて――製作されているが故に。

 だが、それを差し引いてもセリオとマルチの損傷の少なさは驚異的ですらあった。

 藤田くんに、そして神岸さんや芹香お嬢様たちに、二人が――家族として、恋人として、親友として――心底大切にされている証、ってとこかな?
 しっかし、これじゃ『メイド』ではなくて『箱入り娘』って感じだねぇ。本来は『人様の為に働いてなんぼのメイドロボ』、その開発者としては些か複雑な気分かな。尤も、彼女たちの『父親』としては実に嬉しい限りではあるんだけど、ね。

 そんな事を思い、長瀬は微かに苦笑を浮かべた。

「主任? どうかなさったのですか?」

「なんです、不気味にニヤニヤしちゃって? ひょっとして、脳に蝶々でも飛んじゃってます?」

 小首を傾げてマルチが、半眼になってセリオが尋ねる。

「あ、いや、なんでもないよ。……ちなみに蝶々も飛んでないから」

 コホンと小さく咳払いをして、長瀬は娘たちに応えた。

「では、ショウジョウバエ?」

「どういうチョイスだい、それは!? てか、何も飛んでないから!
 ――ただ、ちょっと感慨に耽ってしまっただけだよ。マルチもセリオも本当に愛されているのだなぁ、ってね」

 言いながら、長瀬が父性を漂わせた視線を愛する娘に向ける。
 すると、その目と言葉を受けたマルチとセリオは、

「はわっ!? ど、どうしてそのことを!? た、確かに昨夜も……浩之さんに……あ、愛されましたけど」

「ま、マルチさん。もしかして、洗浄し忘れました!? 体内にアレを残したままメンテを受けてしまったとか!?」

「わ、わたしは忘れてませんよぉ。せ、セリオさんこそ」

「わたしだって忘れてません! 忘れてない、はずです。……たぶん、おそらく」

 思いっきり動揺していたりした。

「……あ、あのね、君たち」

 漫画チックなでっかい汗を流しつつ、長瀬が呆れた口調で声を掛ける。
 しかし、その声はマルチとセリオの両名には届いていない。
 今の事が引き金となって昨夜の情事を思い起こしてしまったのか、二人ともどことなく陶然とした表情になっていった、

「それにしましても、昨晩は凄かったですよねぇ。浩之さん、わたしとセリオさんの二人を相手に……あ、あんなに……」

「そうですね。確かに凄かったです。実にハードで濃厚でした。身体中に愛を注がれてしまいましたし。わたしもマルチさんも……な、何度も何度も……はふぅ」

 艶っぽい吐息を漏らし、頬に手を添えて身悶えるマルチとセリオ。

「い、いや、だからね。『愛されてる』ってのは別にそういう事じゃなくてだね、ごくごく一般的な意味で……げふっ!?」

「……って、やーん、もう! 恥ずかしい! いやですよ、主任。何を言わせるんですか♪」

 ツッコミを入れようとした長瀬の言葉が途中で遮られる。
 セリオの放ったギャラクティカ・ファントムによって。
 銀河をバックに長瀬の体が派手に宙に舞う。「勝手に言っておいてそりゃねぇだろ。てか、少しは人の話を聞いてよ」とか何とかの抗議を胸に内包しながら。
 そして……
 グシャッという派手な音と共に豪快な車田落ちを見せ――来栖川エレクトロニクスHM研筆頭――主任長瀬、堕つ。

 やんやんやん、と――明らかに誰かさんからの影響受けまくりのポーズで――くねくねしている娘たちの姿を掠れていく視界で捉えつつ、薄れ行く意識の中で長瀬はちょっぴりだけ思った。

 嫁がせる先、間違えたかなぁ?

 ほんのちょっぴりだけ、割と本気で。















< 04年5月17日 >

『過ぎたるは』(夜が来る!(亮・鏡花))

なんとなくこの場で公開。
中途半端に実話。














< 04年4月20日 >

ファイル消失(詳しくはBBSにて)の痛手から強引に復活しつつある今日この頃。


『舞姫』(ToHeart:綾香(芹香・セリオ・マルチ))














< 04年4月9日 >

SSの執筆に詰まったら即興の小ネタに逃げるのも一つの手ということで(汗




「さすがは天野だな」

「え?」

 ミッシーからのお誘いを受けて天野邸へと遊びに来た俺――相沢祐一。
 出された天野お手製の餡蜜と緑茶に舌鼓を打ち、楽しいオヤツの時間を満喫していた。

「さすがって、何がです?」

 不意に俺に投げ掛けられた言葉に、天野はお茶を口に運ぼうとしていた手の動きを止めて尋ねてくる。

「餡蜜に緑茶というラインナップが実に天野らしくて感心してたんだよ。これがケーキとコーヒーだったら意外に思って驚いただろうけど」

「……それは暗におばさんくさいと仰ってますか?」

 目を細めて、ジトッとした視線を送ってくる天野。
 それに気圧され、俺は微かに身を仰け反らせてしまった。

「お、おいおい。別にそんなことは一言も言ってないだろ。被害妄想だぞ、それは」

 被害妄想。
 尤も、それは多分に俺の所為かもしれないが。今まで、何度も何度も何度も何度も口にしてきたのだから、多少疑心してしまうのも致し方のないところだろう。
 ……むぅ、ちょっぴり後ろめたい。
 天野から僅かに視線を逸らし、気まずさから「コホン」と小さく咳払いを一つ。

「ま、まあ、少なくとも、今回は本当に変な事は考えてないぞ。ただ純粋に、天野って何となく和風なイメージがあるから……」

「ケーキよりも餡蜜とかの方が似合う、と思われたワケですか?」

 俺の後を継ぐ天野。その問いに、俺はコクンと首肯して返した。

「なるほど。いまいち釈然としない部分もありますけど……納得しました」

 分かっていただけてなによりで御座います。
 俺、思わず安堵の吐息を零してしまう。

「確かに相沢さんの仰るとおりですね。その辺は否定しませんよ。食べ物だけに限らず、日本的な物の方が好みだったりするのは間違いありませんから」

 柔らかく微笑んで天野が答える。

「あ、やっぱし。うんうん、それでこそ天野だ。ケーキよりも餡蜜、コーヒーよりも緑茶。そして、料理をする時はエプロンじゃなくて割烹着」

「さすがに割烹着なんて着ません」

 間髪入れずに天野が否定してきた。

「台所に立つ時はエプロンです」

「ありゃ? そうなのか? それじゃ、この餡蜜とかを作った時も?」

 俺が尋ねると、天野は「はい」と言いつつ頷いた。ついでに「割烹着……一応、持ってはいますけど」とボソボソと。
 ――そっか。持ってることは持ってるのか。

「なんだ。ちょっと残念。天野だったら似合うと思うんだけどな、割烹着」

「……それは遠回しにおばさんくさいと」

「言ってない言ってない」

 小さく手を振りながら、半眼になった天野の言を遮る。

「おばさんじゃなくて……うーん、どちらかと言うと『お母さん』かな」

「え? お母さん、ですか?」

 意表を衝かれたか、天野がキョトンとした顔になる。

「そう。天野って優しくて物腰柔らかで、それでいて言うべきところはシッカリと言う芯の強さも持ってるからさ。なんとなく、お母さんっぽいイメージがあるんだよな」

「……そ、そんなこと、ないです」

 俺の言葉に、天野が頬を朱に染めた。

「そんなことあるって。天野は古き良き日本の良妻賢母って感じがするよ。お嫁さんにするには理想的だな」

「ええっ!? お、お、お嫁さん!?」

「うん。天野と結婚できる男は幸せだよなぁって思う。本当に理想的なお嫁さ……あっ」

 えっと、もしかして、俺、何気に凄い事を言ってませんか?
 下手したら、否、下手しなくても、口説いてるように聞こえる可能性大。

「い、いや、その、なんつーか、理想的ってのはあくまでも俺個人の考えなんで、他の奴はどうか知らんけど……」

「いいです、他の人なんてどうでも。わ、わたしは……相沢さんにとって理想的でさえあれば……そ、それで……」

「……そ、そっか」

「……は、はい」

 今の俺、泥沼の典型的パターンかも。

「……」

「……」

 ――その後、今日一日はずっとギクシャクしっぱなし。
 何をしても、何を言っても、天野がすぐに『ポッ』という状態に陥ってしまう為、空気が常にピンク色。まるで新婚夫婦。

 でもまあ、偶にはこんなのもいいかも。
 そんな事を思った今日吉日。



 ――余談

 無理を言って天野に割烹着を着てもらった。
 天野の醸し出す温かな雰囲気に実に良くフィットしていた。

「うんうん。やはり、天野にはエプロンよりも割烹着の方が似合うな」

「……」

「だから、今度またやろうな、裸割烹着。フェチな感じが実にエクセレントだし、それに天野もいつもより興奮してたみたいだしさ」

「し、知りませんっ……相沢さんの……ばか

 和風、最高。














< 04年3月23日 >

少しだけ『夜が来る!』を遊んでみて、鏡花萌えを再認識してみたり。
ちなみに、鏡花以外のアリスキャラ(女性)ですと――
元子・華苑・レイラ・サテラと云った辺りがお気に入り。
後は葉月とかちとせとかファネルとか涼とかレジィナとか(以下略

我ながら「分かりやすい好みをしてるなぁ」と思う次第です。


『ねぼけ』(夜が来る!:鏡花)


今回の超短編に出てくる先生、少しだけエヴァのミサトが入ってるような……そうでもないような……。














< 04年3月7日 >

世間がFateで盛り上がっている中、私は相も変わらず大番長。
会話についていけなくて少しだけ疎外感を抱いてみたり……そうでもなかったり。

それはさておき、大番長。
この作品、ヒロインが6人いるわけですが、これって『あくまでもこの作品内で結ばれるのは6人』というだけで、エンディング以降まだまだ増えそうな気がするのは私だけでしょうか?
少なくとも、絵梨花・マリーシア・毬音・リオン辺りは確定だと思うのですが。
後は、剣道に神耶・ミオ・ユキとかも有り、かも?
(ちなみに、カミラはウルルカさんのものということで)

取り敢えず、神耶ルートということで↓こんなのを妄想してみたり。




 ヨーロッパに魔界孔が出現。
 この報は瞬く間に世界中へと伝えられ、多くの者の耳に飛び込んでいった。
 衝撃や悲嘆、我が国でなくて良かったとの安堵、様々な感情を人々にもたらしながら。
 そして、それは大木の枝に腰掛けてショートケーキを頬張っている少女――緋皇宮神耶にも当然の様に届けられた。

『魔界孔がヨーロッパに開いたというのは、どうやら確かな情報みたいですねぇ』

 神耶の背負っている箱に住む人外の者――彼女の保護者にして下僕であるルヴァウルの言葉に、神耶はコクンと小さく首肯する。ケーキをもふもふと咀嚼しながら。

『まお、まおー?』

『どうしますか、と尋ねてますよ』

 箱の同居人である魔族、大まおーの問いを通訳するルヴァウル。
 同時に、自身も神耶からの答えを求める気配を漂わせた。

「決まってる。……行くわ。魔族は……皆殺し。それが……私の使命、だから」

 少しの迷いも見せずに神耶は即答する。

『やっぱりね、そう言うと思ってましたよ。しかし、どうでもいいですが、そういう過激なセリフをケーキを食べながら口にしてもイマイチ締まりませんね。ぶっちゃけ、ちょっぴりお間抜けっぽいです』

 クスクスと、笑いの混じった声でルヴァウルが突っ込みを入れた。
 対して神耶。些かバツの悪い顔で、手にしていたケーキの残りに暫し視線を送った後、徐にそれを口にポイッと放り込む。
 然る後、

「……とにかく、行く。魔族は……全て捻り潰す」

 場を取り繕う様に「コホン」と一つ咳払いすると、神耶は何食わぬ顔で改めて行動指針を示した。

『分かりました。主の望むがままに』

 恭しくルヴァウルが承諾の意を返す。

『ところで、神耶? なにか、妙に浮かれてませんか?』

 神耶の声にどことなく浮ついた物を感じ取り、ルヴァウルが不思議そうに尋ねた。

「え? そ、そんなことは……ない。浮かれてなんか……いない。へ、変な事、言わないで」

 常に冷静な彼女にしては珍しく、あからさまに動揺を見せる神耶。頬も少々色付いている。普段とは違う主人の様子に、ルヴァウルは更に不可思議の念を深くした。

『まおー。まお、まおー』

 そんな使い魔に、同居人が何やら言葉を投げ掛ける。こちらも神耶に負けず劣らずの楽しげな雰囲気を纏わせて。

『へっ?』

『まお、まお、まおー』

『ああ、なるほど。納得です。深く納得です。謎は全て解けましたね』

 自らの言葉通り、ルヴァウルが全身から『納得』というオーラを発する。

「……ルヴァウル。大まおー……なんて言ったの?」

 大まおーの言葉を理解できない神耶がルヴァウルに通訳を求めた。

『狼牙君に会えるかもしれないから、それが嬉しいのだろう、って。ヨーロッパに魔界孔が開いたというニュースが正しいのであれば、彼が其処で戦いを開始したという報せもまた事実なのでしょうからね。私も同居人と同意見です』

 悪戯っぽい口調でルヴァウルが応える。

「……っ!」

 ルヴァウルの言に、神耶の顔が赤く染まる。濃く、急速に。
 恐怖に彩られて世界中に報じられた魔界孔出現。そして、それと時を同じくして伝えられた物がもう一つ。希望と共に届けられる『日本の魔界孔を閉じた男、ホワイトファング』『魔族と戦う白いガクランを着た男』の報。
 もちろん、神耶もその情報を得ていた。

『だって、神耶は狼牙君の事が大好きですから』

「……だ、大好きっ!? ば、ば、ば、ばかじゃないの? な、なんで……私が……狼牙なんかの事を……」

『違うとは言わせませんよ、神耶。肉体の維持の為に身体を重ねた際、貴方は狼牙君の名前を何度も何度も口にしていたじゃないですか。しかも甘ったるい声で。実際に抱いているのは私なのに、あれには思わず妬けちゃいましたよ。もしかして、自覚していなかったのですか?』

「っっっ!?」

 ルヴァウルの放った爆弾を受け、瞬時に湯気が立つほどに全身を真っ赤にする神耶。
 口をパクパクと開くが全く言葉が出てこない。

『まおっ? まおー』

『ええ、そうなんですよ』

『まおー、まおまおー』

『はい、仰るとおりです。神耶は、ああ見えましても実は……』

『まおーまおー』

『はっはっは。いえいえ、それどころかですね……ちょっとお耳を拝借』

『まおー? ま、まおーっ!?』

『ねっ? すっごいでしょ?』

 言葉を失くしている主人を余所に、和やかに盛り上がる使い魔二人。
 神耶には何を話しているのかは理解できないが、ただ、自分にとってあまり面白くない会話が為されている事だけは痛いほど感じ取れた。
 思わず神耶の目が細められ、こめかみにプクッと血管が浮く。

「ルヴァウル」

『はい? なんですか、神耶』

「大まおー」

『まお?』

「あなたたち……うるさい」

 冷たい口調で言い放つと、神耶はルヴァウルと大まおーが入っている箱の蓋を問答無用で閉じた。しかも、思いっきり。
 更に、鍵をしっかりと掛け、駄目押しにロープでグルグルと縛り上げる。

『わーっ! 閉じ込めないで下さいよぉ! 神耶! 神耶ってばぁ!』

『まおー! まおっ! まおまおーっ!』

 箱の中から訴えの叫びが聞こえてきた。
 が、神耶はアッサリと無視。完全に聞こえないフリ。

「さて。それじゃ……行こうか」

 誰にともなく宣し、神耶は木の枝から軽やかに飛び降りる。
 そして、小さく「よし」と気合の声を放つと、神耶は前だけを見て力強く一歩を踏み出した。
 新たな激闘への、まだ見ぬ凄惨なる死場への第一歩を、覚悟と共に踏み出した。

 尤も――その顔には、どんなに隠そうとしても隠し切れないほど、期待感に満ちた穏やかな微笑が浮かんでいたりしたが。





 ――で、この後ヨーロッパで狼牙たちと合流を果たし、愛情値次第でエンディングへ、と。

 ところで、普通は神耶みたいなキャラには『孤独な一人旅』が似合うと思うのですが、ルヴァウルや大まおーが一緒ですとどう考えても『愉快な珍道中』にしかならない気がします。
 無論、そこがまた良いわけですけどね。














< 04年3月1日 >

 香里ネタですが、誕生日は全く関係なかったり(汗


『まっただなか』(Kanon)














< 04年1月15日 >

 穴埋め更新ってことで(汗

 『大番長』をやってる時にふと思い浮かんだ小ネタです。


『制裁』(大番長)














< 04年1月7日 >

 初詣にて、賽銭を投げた後で心の中で思った事。
『ま、それなりによろしく』
 我ながら、見事なまでのおざなりっぷり。
 いつか絶対に罰が当たるんじゃないかと恐々。


『お願いは』(夜が来る!)














< 03年12月31日 >

 早いもので今年ももう終わりですね。
 皆様には本当にお世話になりました。ただただ、感謝感謝です。
 どうか、来年もまた変わらぬ御愛顧をよろしくお願い致します。
 それでは皆様、よいお年を


『おそば』(ToHeart)














< 03年12月18日 >

 短いうえに、超の字が複数付いてしまうくらいありがちな話ですのでここでひっそりと。
 自分でも以前こういう類の話は書いてますし。


『いぬねこ賛歌』(ToHeart(たさい))














< 03年12月3日 >

 12月1日。東京ドームにてt.A.T.u.のコンサートが行われました。
 そうです。マスコミ等で『前売り券が売れない』と言われていた、あのコンサートです。
 そのコンサートを、私の友人数名が観に行ってきました(私も誘われたのですが、仕事の為に断念)
 某オークションにて『200円』で落札したチケットを持って。

綾香 :「200円!?」

セリオ:「聞くところによりますと、1円とか10円という値が付いていたのもあったみたいですよ」

綾香 :「……遥か昔のお駄賃じゃないんだから」


 参加者一同、午後4時頃、東京ドームに到着。
 その瞬間、全員の脳裏に掠めた言葉。
「……ひ、人がいねぇ」

綾香 :「見事なまでにガラガラだったみたいね」

セリオ:「追い討ちの雨が涙を誘います」


 寒い中、『チケット売ります』と書かれたプラカードを持った人がちらほらと。
 逆パターン(『〜のチケット買います』)ならコンサートではお約束の光景ですが……。

 午後4時半、開場。
 ゲートの外に設置してあるグッズ売り場も閑古鳥。
 ある意味、物凄く貴重な光景。
 追い討ちの雨が涙を(以下略

 取り合えず、ドームの中に入った友人達。
 その彼らを愕然とさせる光景がそこにはありました。
「売店が閉まってるよ、おい」

綾香 :「一部の売店は営業を取りやめにしてたらしいわ」

セリオ:「あまり詳しくはないのですが、他の人のコンサートの時でもそうなんでしょうかね?
     ローテーションで休みにしてるとか」

綾香 :「さ、さあ?」(汗


 この辺で、面白半分でコンサートに赴いた彼らも些か同情気味に。
 開演5分前になっても全く埋まらない座席が更にその感情を深めます。

セリオ:「あまりにも席が埋まらないので、2階席の観客を急遽アリーナへ移動させたりもしたらしいです」

綾香 :「……」(絶句



 ――で、午後6時半。開演時間。
「……始まらないんだけど」
 全員の脳裏に『ドタキャン』という言葉が浮かんだのは想像に難くありません。

綾香 :「Mステの前科があるものね」

セリオ:「と言いますか、コンサート前日の公開リハーサルもドタキャンしたらしいですよ」

綾香 :「……マジ?」(汗


 午後6時45分頃。
 会場が暗くなり、『謎のDJ』が出現。スクリーンに『わけのわからないクリップ』を流し始める。
 そして、それが延々と。
「本気でドタキャンか?」
 友人達、及び周辺も不安(とある種の期待)に包まれる。
 ――が、午後7時20分頃。
 開演から『50分』が過ぎた辺りで――引っ張りに引っ張りまくって――やっとt.A.T.u.が登場。
 1曲目は『All the Things She Said』。
 初っ端から恒例の濃厚キスシーンを炸裂。

綾香 :「さすがにキャンセルはしなかったか」

セリオ:「それどころか、いきなりサービス全開ですね」


 観客にキスを要求したりと煽る煽る。
 しかし、盛り上がりは(前の方を除いて)イマイチ。
 業を煮やしたか、ヤケクソ気味にジュリアが『ジーパンに手を突っ込んで、いけない所を弄る』というオ○ニーまで披露。
 けれども、笛吹けど踊らず。観客は醒め気味。

セリオ:「サービス全開どころか過剰でした。やりすぎです」

綾香 :「盛り上がる前に退くって、そんなことされちゃ」(汗


 数少ない盛り上がり箇所の一つが、男に肩車された二人がアリーナに降りたとき。
 客からカメラのフラッシュ浴びまくり。

綾香 :「……って、フラッシュ!? 普通、コンサートでは写真撮影禁止じゃないの?」

セリオ:「今回は許可されていたみたいですね。それだけ主催者側も『必死』だったのでしょう」


 最後の方で、公募されたらしい女の子たち100人くらいがステージへ。
 アリーナ席はそれなりに沸く。
 但し、それ以外の場所では『微妙』な空気が。
 ステージ付近と『その他大勢』の間に深い深い溝。

 ――で、十数曲(正確には13曲らしい)を歌い終え、二人が「トウキョウ、サイコー!」とか「サンキュー」とか言いながらさっさと退場。
 本当に退場。アンコールも無くガチで退場。
 午後7時20分に始まり、終了は8時13分くらい。

綾香 :「早っ!」

セリオ:「1時間足らずですか」

綾香 :「前座のライブみたいね」(汗


 その後、ごく僅かに起こる「えーっ!?」という不満の声を掻き消すように「アーティストはすでに会場を離れました。本日の公演はこれで終了です」といった旨のアナウンスが流される。
 こいつら、帰る時だけ妙に手際が良いです。

 コンサート後、何度も何度も「明日の公演の当日券を発売しております」云々というアナウンスが。
 ……主催者側、本当に本当に必死です。可哀想なくらいです。
 ここまで来ると、主催者と言うよりは被災者といった感じでしょうか。

 ちなみに、チケット売り場もガラガラに空いていたらしいです。
 と言いますか、この期に及んで『7500円』で販売するのはどうかと思いますが。

綾香 :「ツケって廻り廻って自分に返ってくるのね」

セリオ:「今まで好き勝手してきましたから、それも已む無しかと」

綾香 :「自業自得、か。でもまあ、これで少しは懲りたでしょ」

セリオ:「どうでしょう? けど、そうであって欲しいですね。じゃないと、周りの人が可哀想で。
     ……ワガママな女王様に振り回される気持ち、わたしもよーーーっく分かりますから。
     何せ、習い事から逃げたり公式行事からエスケープしたりする人が身近に居ますし」

綾香 :「う゛っ」(汗

セリオ:「ねっ、綾香さん♪」

綾香 :「……ごめんなさい、反省します」

セリオ:「でしたら、これからは逃げたりしませんね? ね?」

綾香 :「そ、それは……その……えっと……てへっ♪」(汗

セリオ:「……おゐ」



 ――最後に。
 楽しい(?)情報を事細かに教えてくれた友人諸氏に感謝を。
 みんなのおかげで雑記に書くネタが出来ました。

 そんなこんなの前代未聞のコンサート。
 仕事を放り出しても観に行くべきだった様な……観に行かなくて正解だった様な……。














< 03年11月26日 >


 激しいツッコミを入れられるよりも、サラッとナチュラルに返される方が痛いという事は世の中に多々。
 こういう場合、大抵は自業自得だったりしますけど。


『慣れ』(Kanon)














< 03年10月24日 >


 熱しにくく冷めにくい。
 私にはこういう面があります。
 簡単に何かにハマったりしない代わり、一度ハマったら呆気なく深みに。しかも、いつまでも飽きずに。
 ゲームを例にしますと……

 一般作品では『サムライスピリッツ』『サイキックフォース』『ウィザードリィ』『ガンパレ』等。
 18禁作品では『ToHeart』『アリスソフト作品』等々。

 そして、最近、これらの中に加わりそうな勢いの物が一つ。
 無茶苦茶今更ながら『スーパーロボット大戦』。

 ……ふと気が付けば、ゲームボーイアドバンスのソフト『スパロボOG』を衝動的に購入していたり。
 遊ぶ暇なんて無いのに。

 このままでは『第二次スーパーロボット大戦α』も買ってしまいそうです。
 PS2本体ごと(汗





『華』


「此処には華が無い」

「ああ、華が無いな」

 ロンド=ベル隊で1,2を争う硬派、ゲッターチーム。
 その竜馬と隼人がどことなく遠い目をしてぼやいていた。

「華が無い?」

 たまたま二人の声が耳に入った弁慶が、怪訝な顔をしながら言葉を返す。

「そうっすか? そんなことないと思いますけど」

 言って、軽く周囲を見回す。


○   ○   ○

 EVAチーム

「最近のあんた、妙に男らしかったりするわね。なんか……バカシンジのくせに生意気」

「生意気と言われても困るけど……男らしい、かな?」

「……ええ。この碇くんは『シンちゃん男前ルート』を通った碇くん。だから男らしいの」

「は? お、男前ルート? な、なにそれ?」

「ファーストってば、相変わらずわけのわからない事を……。というか、なんであんたが此処にいるのよ? 碇司令と一緒に行方不明になったんじゃなかったっけ?」

「……そう? 知らないわ。だって、わたしは……えっと……数人目だから」

「横着するなぁ! 数くらいちゃんと覚えときなさいよ!」

「あ、綾波って意外とアバウトだよね」



 Zガンダムチーム

「カミーユの世話を焼くのは私の役目です。そう決まってるんです。フォウさんは手出ししないで下さい」

「い、何時の間にそんな決まりが?」

「あら、そうなの。でも、それも今日まで。これからは私が引き継ぐわ。そう決まってるの。今までご苦労様、ファ」

「だから、何時の間にそんな決まりが?」

「今日も明日も明後日もその後も私の役目です! そもそも、私とカミーユには幼馴染という強い絆があるんです。割り込もうなんて無駄なことは考えないで下さい」

「運命的な出会いに戦場で育まれた愛。私たちにはドラマティックなストーリー性があるわ。そっちこそ早々に諦めた方がいいんじゃなくて?」

「あ、あのさ、二人とも。俺たちは仲間なんだから、そうケンカ腰にならずにもう少し和やかに……」

『カミーユは黙ってて!』

「……はい」



 ZZチーム

「ジュドー! いっしょにあそぼ!」

「ダメよ、プル。ジュドーはあたしと遊ぶの」

「プルもプルツーもなに言ってるの!? お兄ちゃんはわたしと一緒にお買い物に行くの!」

「お前ら……俺の都合って考えてるか?」

「相変わらずモテモテね、ジュドー。まったく、こんなロリコンでシスコンのどこがいいんだか」

「待て、ルー! 人聞きの悪いことを言うな! ロリコンとか言うな、シスコンとかも言うなぁ!」

『えっ? 違うの?』

「……何故に綺麗に言葉をハモらせますか、あんたらは」


○   ○   ○

「軍隊にしては華だらけだと思いますけど?」

 周囲の様子を眺めた後で、弁慶は羨ましさや痛ましさや同情が混ざり合った複雑な声でそう述べた。

「弁慶。どうやらお前は、俺たちの言わんとしていることがまるで分かっていないみたいだな」

「お前には失望した」

「そ、そう言われましても……」

 深いため息を吐く竜馬と、どこぞの髭司令みたいな事を言う隼人。その二人を見て弁慶は困惑顔。

「いいか、弁慶。もう一度周りをよく見てみろ」

「特にあの辺をな」

「はあ、あの辺っすか?」

 露骨に『わけわからん』という顔をして、弁慶は隼人が指差したほうに視線を向けた。
 すると、そこでは、


 コンバトラーチーム
 豹馬とちずるがいつものように犬も食わないケンカに興じていた。

 ボルテスチーム
 健一とめぐみが缶コーヒーを飲みながら楽しそうに談笑していた。

 獣戦機隊
 女心を分かっていないデリカシーに欠けた発言をした忍を沙羅が張り倒していた。

 SRXチーム
 スーパーロボットについて熱く語るリュウセイをレビが微笑ましげに眺めていた。

 龍虎王・虎龍王
 竹刀を手に鍛錬しているブリットをクスハが優しい眼差しで見つめていた。お手製の健康ドリンクを手に。


 仄かなラブ・バカップル・素直じゃない等々程度の差はあるが、総じて何処も彼処も良い雰囲気であった。
 そして、その光景を見て、弁慶は何となく悟った。

「もしかして、華が無いのは……ゲッター?」

「やっと理解したか。そう、その通り。他の変形合体するスーパーロボットにはみんな女性パイロットがいる。いいか、みんなだ」

「しかし、俺たちだけは違う。違うんだよ。言うなれば例外だ、唯一だ、オンリーワンだ」

「ゲッターは男のみ。男と男が熱く合体してるんだ」

「男だけで挿したり抜いたりしてるんだよ。男だけでな」

「いやあの、言ってることは正しいし、紛れもない事実なんですけど……ちょっと表現が……。なんか誤解を招きそうなんですけど」

 冷や汗を一筋流しつつ弁慶がごにょごにょと零す。
 しかし、そんな声がどこか切れかけている二人の漢に届くはずもなく。

「昨日は後ろで明日は前。男同士でな」

「三機がくんずほぐれつ。男同士でな」

 竜馬と隼人の口からは些か不穏当な発言が出続けた。
 その様を見て、弁慶はちょっぴりだけ二人の先輩への憧れと尊敬の念を揺らげさせてしまう。
 ――と同時に『何とかせねば』と妙に使命感を燃え立たせてしまう弁慶であった。

 よせばいいのに。



 そして、次の日。
 格納庫でゲッターの整備をしていた竜馬と隼人、武蔵の前にその者は現れた。
 大きく胸元の開いたセクシーなドレス。
 妖艶なまでに輝いている真っ赤なルージュ。
 光を纏わせた長い金髪。

「……」

「……」

「……」

 ゲッターチームの三人に思わず作業の手を止めさせてしまうほどの存在。
 その名は、

「はぁい、ベン子でぇす。よろしくねぇ♪」

 ベン子、らしい。嫌すぎる名前だが本人がそう名乗っているのだから仕方が無い。

「どうです? これでゲッターチームも華やかになりますでしょ? もう例外でも唯一でもオンリーワンでもないっすよ」

 胸を張って言うベンケ……もとい、ベン子。
 ――しかし。

「まだまだ戦いは続く。これからも頑張ろうぜ、『武蔵』」

「俺と竜馬と『武蔵』。ゲッターチーム、三人で力をあわせて、な」

「……あ、あれ!? ノーリアクション!? っていうか、遠回しにさり気なく戦力外通告されてる!?」

 取り合えず、いろいろな意味で一本気すぎた漢に心からの拍手と合掌を。


 ちなみに、後日この話を伝え聞いた変形合体系のスーパーロボットの『残りの』パイロットの面々曰く。

「四六時中目の前でイチャイチャされるくらいなら男同士の方が全然マシだぁ!」

 魂の叫び。正論、かもしれない。


 さらに、この話を伝え聞いたトップ部隊の面々曰く。

「男の人って変な事を気にするのね。私は女だけでも構わないのに」

「わたしも全然オーケーですね。というか、お姉様が相手なんだから寧ろ推奨」

「あら。ノリコってば嬉しいこと言ってくれるわね。私もノリコだったら大歓迎よ。ノリコ、可愛いしね」

「え、えへへ。そういう風に言われたら照れちゃいますよ」

「そこっ! 妖しい雰囲気を作りかけない! 誤解を招きそうな会話をしない! ただでさえノリコの『お姉様』発言の所為でいろいろとあらぬ噂が立てられてるんだから! このアタシにまで百合疑惑が掛けられてるんだからぁ! あぁっ! こら! そこの未確認生命体ボス! アタシらの会話を聞いて変な妄想をするんじゃない! 鼻の下を伸ばすな、鼻血を垂らすな、あまつさえ体の一部分を元気にするなぁぁ!」

 ……まあ、何と言うか、とにかく頑張れ、ユング。














< 03年9月17日 >


『美しき哉オンナの友情』(Kanon)

先日、似たような(?)会話を某ファーストフード店で耳にしました。
さすがにもっと和やかでしたが。
女の子同士の会話って生々しいなぁとか改めて思ったり(汗














< 03年9月3日 >


 なんとなーくの思いつきクロスオーバー。


   『似たもの同士?』(ToHeart+月姫)


「ふふっ。綾香さんってば面白い方ですね」

「そうかな? でも、秋葉も相当なもんだと思うわよ」

「え? 私、面白いですか?」

「うん。リアクションとかがね。反応が生真面目だから、からかうと楽しいし」

「あら、それは聞き捨てなりませんね。からかい甲斐でしたら綾香さんの方がよっぽど……」

 涼しい風が心地よい初秋の午後。
 日本有数の大財閥である遠野と来栖川の令嬢が談笑しながらお茶を楽しんでいた。
 公式の場では何度か顔を合わせた事のある二人。プライベートで言葉を交わすのは初めてであったものの、すぐに打ち解けあい穏やかな空気を作り出していた。鈴の音の様な軽やかな笑い声が場に溢れる。

「秋葉と綾香さんの二人、盛り上がってるなぁ」

「ああ、俺たちの存在をすっかり忘れてな」

 会話を楽しんでいる秋葉と綾香から少し離れた場所で、こちらはこちらで意気投合している志貴と浩之。
 ぼやきながらも、微笑みあっている二人に優しげな視線を投げかけていた。

「お堅い秋葉にフランクな綾香さん。性格は違うけど結構気が合うみたいだな」

「違うから故にじゃねぇの? 尤も、根本的な所では似てるのかもしれないけど」

 志貴と浩之は顔を見合わせると、確認するように言葉を紡いでいく。

「綾香さんって負けず嫌い?」

「それはもう。加えて意地っ張り」

 思い切り首肯して浩之が返す。

「意地っ張りか。秋葉もだよ。更にはヤキモチ焼きで甘えん坊で、その上寂しがりや。トドメに……」

 少し間を空けると、志貴は小声でボソッと漏らした。

「唯我独尊」

「綾香にもそういうとこがあるなぁ。特に……」

 同様に浩之も暫しの間の後にボソリと。

「唯我独尊」

「そ、そっか。そっちもか」

「……ああ」

 慰め合うように志貴と浩之がお互いの肩をポンポンと叩いた。

「でもさ」

 不意にニヤリと笑って志貴が言い加える。

「その割には夜は従順だったりするんだけど」

「右に同じ。借りてきた猫みたいになっちまうんだよな。あくまでも夜限定だけど」

 大きく首を縦に振って浩之もニヤリ。

「なるほど。それじゃ、やっぱり根っこの所じゃそっくりなんだな、あの二人」

「違いない」

 言って、少々邪気の入り混じった笑みを浮かべあう志貴と浩之。

「何気に外見もちょっとだけ似てる、かな?」

「長くて綺麗な黒髪とか、意志の強さを感じさせる瞳とか。確かに見た目の共通点も結構あるかな」

 志貴の言葉に浩之も同意を示す。

「でも、似ても似つかない部分もあるけど。外見的にも内面的にも」

「まーな」

 志貴は秋葉に目を向けると、微かにため息を吐きつつ言い零した。

「スタイルの良い綾香さんと違って秋葉は……ペッタンコと云うか、洗濯板と云うか。ナイムネ女王。まさにクイーンオブクイーン」

 続いて浩之も。

「気品溢れる秋葉ちゃんと違って綾香は……大雑把と云うか、粗雑と云うか。パチお嬢様。来栖川じゃなくて、実は来須川か栗栖川だったりしてな」

 そして、志貴と浩之は再度ため息。

「へぇ、随分と言いたい放題言ってくれますね」

「あなたたち、いい度胸してるじゃない」

 ――刹那、お約束と言わんばかりに背後から撃ち放たれてくる視認できそうな程の殺気。
 志貴と浩之の頬に冷たい汗が一筋伝った。
 嫌々ながらおそるおそる振り返ると、そこには二匹の悪鬼羅刹が。

「ナイムネ女王ですか。素敵な称号をありがとうございます、兄さん」

「誰がパチモンだって? 人を偽ブランドみたいに言わないでくれるかしら」

「そういえば、唯我独尊とか何とかも仰ってましたね」

「後は、夜がどうとかこうとか、余計なことまでもベラベラと」

 額に青筋が浮かんだニッコリ顔で詰め寄られ、志貴と浩之の全身から見事なまでに血の気が引いていく。

「ま、待て、秋葉。それは、その、言葉のあやというやつでして……つ、つまり、だから……は、話せば分かる、話せば。そうだ、平和的に話し合おうじゃないか」

「や、やっぱ世の中はラブアンドピースだよな。平和的解決を望むぞ。ど、どうか、ここは一つ穏便に……」

「聞く耳持ちません」

「問答無用ね」

 髪の色を変える秋葉と指をポキポキと鳴らす綾香。
 この二人を前に最早命乞いは無意味と悟った哀れな子羊二名。志貴と浩之は、滂沱の涙を流しながら胸の前で十字を切った。

「兄さん、お仕置きです」

「大丈夫よ、ほんのちょーっと痛くするだけだから♪」

 口は災いの元。心の底から己の発言を後悔する志貴と浩之であった。



「綾香と秋葉ちゃんの二人……いろいろ似ている点はあるけど……」

「い、一番の共通点は……容赦の無さと……」

「手の早さ、だよな」

「……ああ」

 目を背けたくなるほどの惨劇の後、浩之と志貴はそれだけを言い残すとガックリと堕ち、完全に沈黙した。

「なにを仰ってるんですか。容赦が無いなどと人聞きの悪い」

「そうよ。ちゃんと手加減はしてあげてるわよ」

 腕を組んで屍を見下ろす秋葉と綾香は、心外そうな顔をしてそう宣う。
 次いで、「それに……」と言葉を重ねると、二人は胸の内で同じことを思った。

 浩之に『手が早い』だなんて言われたくないわ。
 兄さんに『手の早さ』云々を言われたくありません。

 自分の最愛の者の手癖の悪さを――ついでにいろいろな女性の顔も――思い出し、ついつい深いため息を漏らしてしまう両名であった。

 抱いている心労の中身も同じ。
 秋葉と綾香。やはりこの二人は似たもの同士なのかもしれない。

 ついでに、志貴と浩之も。
 ――ある意味で。














< 03年8月20日 >


 普通に公開してもよかったのですが、ちょっとお遊び(わるふざけ)を入れてますのでこちらに。
 一部の人には(正しくは、一部の人にしか)分からないネタですし<お遊び



   『今日はどんな日?』(ToHeart(たさい)(+α))


「ああっ。また倒れなかった!」

「こっちもや。まったく、糊付けでもしてるんやないやろうな」

「うう。もう一回チャレンジするネ」

 年に一回、盆が過ぎた頃に近所で催されるお祭り。
 金魚掬いや焼きイカ、綿菓子、チョコバナナといったお約束の出店が並び、こじんまりとした規模ながらも華やかさと賑やかさに満ちていた。
 そんな出店の数々の中の一つ、射的。これに藤田家の面々――特に綾香に智子、レミィが声を張り上げつつ熱中していた。尤も、戦果はイマイチ芳しくはなかったが。

「大物を狙いすぎなんだって。こうやって妥当なやつをターゲットにすりゃ……」

 言いつつ、浩之は銃を構えて一発放った。
 空気圧によって吐き出されたコルクの弾がキャラメルの箱に当たる。さしたる抵抗も見せずに棚から落ちる小箱。

「ほらな。あっさり落とせるんだからよ」

 景品を的屋のおじさんから受け取りながら、浩之は智子たちへと視線を向ける。

「それは分かってるんやけどな」

「チマチマとした小物を狙ったって面白くないじゃない」

「ビッグなのをゲットしてこそ一人前のハンターなのヨ」

 浩之の言葉に頷きつつも尚も大きめの景品を狙う三人。
 その様子に苦笑しながら、浩之は獲得したばかりのキャラメルを一つ口に放り込んだ。そして、残りを後ろで応援しているあかりたちに「ほら。みんなも食えよ」と投げ渡す。「ありがとう、浩之ちゃん」「浩之さん、射的がお上手なんですねぇ」等々の会話が交わされ長閑な空気が流れる。

「あぁっ! また倒れない!」

 無論、観客モードと化した浩之があかりたちとマッタリしている間も綾香たちの苦闘は続いていた。

「こ、こうなったらヤケや! もう一回!」

「うーん、銃のイリョクが低すぎるヨ。もっと手にビリビリくるくらいじゃないとダメネ」

 そんな危ないもん、こんな所で使えるもんかい。つーか、どうでもいいけど、レミィって銃なら的に当たるのな。弓だと散々なのに。
 レミィの発言を聞いて、浩之が胸の内で思わずツッコミ。次いで、しょーがねーなぁとばかりにハァと吐息を零す。
 その浩之の耳に、唐突に『お隣さん』の声が飛び込んできた。

「外した!? 秋俊ってば何をやってるのよ! このヘタクソ!」

「……秋俊、頑張って」

「うるせーよ、リン! ま、任せろ、アイ。絶対にベーチュのヌイグルミは獲ってやるからな」

「岡島くん、射撃はハートよ」

「岡チン、ファイト!」

「しっかり、秋俊ちゃん。もし獲れたらみんなでご褒美にチュってしてあげる♪」

 ひょっとして、ここの射的屋は大物狙いをさせるオーラでも漂っているのだろうか。
 隣のグループから聞こえてくる会話を耳にして、なんとなくそんな埒もない事を考えてしまう浩之だった。


「ヤレヤレ。みんなへったくそネ。見てられないワ」

 不意に響いた呆れた色合いを持った声。
 よく知った者の、それでいてどこかが違う声。
 浩之が主の方へと視線を向けると、そこには、腰に手を当て周囲に挑発めいた目を向けているレミィの――正しくは、レミィであってレミィでない者の姿が。

「ハンターモード。カリン、か。久しぶりだな」

「……ふんっ」

 手を軽く挙げて声を掛けてくる浩之から不機嫌そうに、それでいてどことなく照れくさそうに顔を逸らすと、カリンはおもむろに手にしていた銃を構えた。

「ハンティングってのはネ、やみくもに銃をシュートすればいいってもんじゃないのヨ」

 ペロッと唇に舌を這わせて湿らせると、レミィ――カリンは狙いを定めた。

「クリティカルポイントっていうのがあるノ。そこを撃てば、どんな標的もイチコロネ」

 銃口の先にあるのは愛嬌のある顔をした狸のヌイグルミ。

「もらったワ」

 言うと同時にカリンが引き金を引く。
 ポフッという間の抜けた音を残して撃ち出されるコルク製の弾。それが狸の額をピシッと叩いた。
 すると、

「イエス!」

 ヌイグルミはあっけないほどに簡単に倒れ、棚からポトリと落ちた。

「どう? ざっとこんなもんヨ」

 勝気な笑みを浮かべつつカリンが振り返る。
 そして、その瞬間「っ!?」と絶句した。
 彼女の目に飛び込んでくる人、人、人。
 何時の間にか、多くの野次馬が集まっていた。ブロンドの美少女の凛々しい姿に周囲から視線が集中していた。

「見事なもんだ。かっこよかったぜ、カリン」

 おじさんから貰った狸をカリンに手渡しながら浩之が褒める。

「え? あ、ど、どうも……サンクス……って……!」

 ふかふかしたヌイグルミの感触に、茫然自失していたカリンが我に返る。

「こ、こんなのいらないわヨ! あ、アタシは別にラクーンドッグが欲しくてシュートしたわけじゃないんだから! ただ、おテホンを示そうと……」

「いいじゃんか。貰っとけよ。持ってて困るもんでもないだろ」

「そ、そうだけど」

 唇を尖らせつつ戦利品に目を落とすカリン。

「ま、どうしてもいらないって言うんなら煮るなり焼くなり捨てるなり好きにすればいいさ。お前が獲得した時点でそいつはカリンの物なんだからさ」

「……アタシの物、か」

 不機嫌な顔を崩さぬままにカリンが狸を睨み付ける。ただ、その表情には満更でもないものが混ざってはいたが。

「あの……ところでさ、カリン」

 浩之とカリンの会話が一段落着いたのを見て綾香が声を掛ける。

「よかったら、例のポイントってやつの見極め方を教えてくれない? このまま収穫無しじゃ悔しくて帰るに帰れないわ」

「そやな。できたらわたしにも頼むわ」

「……エッ? な、なに?」

 ヌイグルミに気が行っていた為に僅かにカリンの反応が遅れた。

「あ、ああ、ポイントネ。も、もちろんいいわヨ! まかせなさい。二人とも、リッパなハンターにしてあげるワ!」

 気恥ずかしさを隠すように大声を張り上げるカリン。

「そ、それじゃ、まずは……」

 顔を微かに朱に染めて。カリンが綾香と智子に講義を開始する。
 腕でしっかりと狸のヌイグルミを抱き締めながら。

 ――これから数分の後、射的屋のおじさんの顔色が真っ青なものに変化を遂げたのは言うまでもない。



○   ○   ○



「ったく。こんなの押し付けられてもウレシクないってのヨ」

 自室にてカリンはベッドにゴロンと横たわり、手にしたヌイグルミをジッと見つめつつ不満気に零した。

(スナオじゃないネ。ホントはよろこんでるクセに)

「ウッサイ!」

(ウププ)

「わ、笑うナァ!」

 狸を乱暴に――それでも傷めないように細心の注意を払って――振り回しながらカリンが抗議の声を上げる。

(そ、そんなこと言われても……ウプッ、ウププププ)

「レミィ! アンタ、いいかげんにしなさいよネ!」

 心の中で笑いを漏らすレミィと真っ赤な顔をして文句を言うカリン。
 この両者の掛け合いは明け方まで続いたとかどうとか。

(ア、アハハ、アハハハハ)

「笑うなって言ってるでしょうが!」

 とにもかくにも、この日、カリンは初めて『カリンの物』を手に入れた。
 レミィの物ではない、共有物でもない、『自分だけの物』を。

 つまるところ、今日はそんな日。










< おわり >






 ( 余談 )

「ありがとう、秋俊。これ、大事にするね」

「ま、バカ秋俊にしちゃ頑張った方なんじゃない」

「アイが喜んでくれて何よりだよ。ところで、リン。お前、それって褒めてるのか?」

 苔の一念岩をも通す。
 苦戦しながらも見事ベーチュをゲットした秋俊であった。

「それにしても、岡島くんってば結局幾ら使ったのかしら」

「……岡チン、暫くは極貧生活かな?」

「……秋俊ちゃん、少しくらいなら家賃遅れてもいいからね」

 但し、その代償は途轍もなく大きかったが。

 ――これにより、青ざめていた射的屋のおじさんの顔色が若干回復したのは言うまでもない。














< 03年7月17日 >

 一発ネタと言いますか……ボツネタと言いますか……(汗



『こんじょー』


 休み時間。
 自販機で買ってきたカフェオレを啜りながら歩いていた浩之が、とある階段の前を通りかかった時のこと。

「っんしょ……ん、っしょ……」

 いかにも『重たい物を持ってます』という感じの――しかも、よく聞き慣れた――声が耳に飛び込んできた。
 導かれるように視線を向けると、そこには浩之が思い浮かべた通りの人物の姿が。

「……っ……こいしょっ……っしょ……」

 マルチがコピー用紙の束を抱えてフラフラしながら階段を上っていた。

「マルチのやつ、あんな重そうなもんを持って。また用件を押し付けられたか?」

 あきらかにヨロヨロしているマルチを見て浩之が眉を顰める。

「ったく、しょーがねぇな。放ってもおけねぇし手伝ってやるか」

 今にも転びそうで、黙って見ている方が心臓に悪いし。
 浩之は微かに苦笑すると、残っていたカフェオレを一気に飲み干してからマルチに声を掛けた。

「おーい、マルチぃ!」

 しかし、浩之はその行動をすぐに激しく後悔した。

「っしょ……ふぇ? ひ、浩之さん?」

 浩之の声に反応したマルチが勢いよく振り返った。
 ただでさえ重い物を持ってよろめいていたマルチである。そんな彼女が急に体の向きを変えたりしたら結果は一つ。

「は、はわっ!?」

 バランスを崩し、足を踏み外すマルチ。
 刹那、マルチの身体が宙に浮いた。

「やべっ! マルチ!」

 反射的に走り出す浩之。
 落下を予想される場所へとダッシュで駆け寄ると、浩之は大きく手を広げる。
 そして、衝撃に備え足をグッと踏みしめた。

「はわわわわぁぁぁっ!」

 浩之の所へ寸分違わずマルチが降ってくる。まるでフライングボディプレスの様な体勢で。
 ふぅ。やれやれ、間に合ったか。
 落ちてくるマルチを見ながら、心の中でホッと安堵の吐息を零す浩之であった。
 しかし、その油断が命取り。
 彼女だけに気を取られていた浩之は、他への注意が行き届いていなかった。疎かになっていた。
 脅威が降りかかる寸前まで。

「っ!? お、おい! 冗談だろ!?」

 顔から血の気を引かせて浩之が叫ぶ。
 マルチが転んだ際に放り投げられたコピー用紙の束。それがマルチよりも先に、浩之に向かって頭上から飛んできていたのである。
 だが、気付いた時には既に遅し。

「ちょっと待て! 待てって……ぐはぁっっ!」

 紙も大量に集まれば立派な凶器。その直撃を受けた浩之は耐え切れずにその場に屈みこんでしまった。
 加え、やや遅れて、

「ひ、ひろゆきさぁぁぁぁぁぁんっ!」

 追い討ちでマルチ着弾。

「ひでぶぅぅぅ!」



「い、いたた。……す、すみません、浩之さん。いつもいつも御迷惑をお掛けしてしまって」

 腰を擦りつつ立ち上がりながら、マルチが受け止めてくれた礼を口にする。

「……って、あれ? ひ、浩之さん? 浩之さん?」

 しかし、彼女の謝意の言葉はすぐに止まってしまった。
 浩之の姿が見えなかった。消えていた。
 キョロキョロを辺りを見回してみるが、影も形も見当たらない。
 目に入るのは、散乱したコピー用紙と放り捨てられたカフェオレのパックのみ。

「え? あれ? え?」

 頭の中にたくさんのクエスチョンマークを浮かべてマルチが首を傾げた。

「おや? 浩之さん、どこに行ってしまったのでしょう?」

「ここだ、ここ」

 疑問に答えるように、不意にマルチの耳に浩之の声が届けられる。

「えっ!? 浩之さん!? どこですか!?」

 マルチは、声の主を求めて顔を激しく左右に振った。
 けれども、相変わらず浩之の姿は見つけることが出来ない。

「はうぅ。声はすれども姿は見えずですぅ。うううっ、浩之さーん、どこですかぁ?」

 僅かに涙声になるマルチ。
 そんなマルチに、再度浩之から声が掛けられた。

「どこ見てんだよ。こっちだ、こっち」

「はう?」

「もっと下の方だよ。そしてもっと近く」

「下で近く、ですかぁ?」

 浩之の声に導かれて、マルチは視線を動かしていく。
 そして、捜し求めていた人物と、

「ひ、浩之、さん?」

 思い掛けない場所で御対面した。

「おいおい、しけた顔してんじゃねぇよ。てやんでぃ! ど根性!」

 どっこい生きてる制服の中。
 この世でひとり、平面ひろゆ……










 ごめんなさい、私が悪かったです。















< 03年7月11日 >

 衝動買い。
 唐突にPCのゲーム(特にQOHとメルティブラッド)をパッドではなくスティックで操作したくなり、PS用コントローラーをPCに接続する為のユニット(SMART JOY PAD 3)を購入。
 で、早速導入&プレイ。

 ……えーっと(汗
 その時の気持ちを簡潔に書きますと、


綾香 :「ううっ」

セリオ:「あらあら」

綾香 :「うううっ」

セリオ:「おやおや」

綾香 :「えぐえぐ」(泣

セリオ:「何と言いますか……動きがぎこちないですねぇ。連続技の精度も低いですし」

綾香 :「わ、我ながら情けなくなってくるわ。こ、こんなはずでは」(泣

セリオ:「スティックにした意味が全くありませんね」

綾香 :「あうう。スティック派なのに……あたしはスティック派なのに……」

セリオ:「だった、の間違いじゃないんですか?」

綾香 :「……」(泣

セリオ:「だって、パッドだったら連続技とかもビッシビシ決めてるのにスティックでは……」

綾香 :「……」(泣

セリオ:「もう、すっかりパッドに慣らされてしまったんですね」

綾香 :「違うと言いたい……言いたいけど……しくしくえぐえぐ」

セリオ:「心はスティックを求めているのですね。しかし、手はパッドに馴染んでしまっている、と。
     なるほどなるほど、これはつまりアレですか」

綾香 :「アレって?」

セリオ:「いわゆる『心では拒んでいるのに身体が言う事を聞かない』という状態なワケですね」

綾香 :「な、なんか嫌な表現、それ」(汗

セリオ:「綾香さん」

綾香 :「な、なによ?」

セリオ:「パッドに調教されちゃいましたね」

綾香 :「っ!? い、いきなりなんてことを言い出すのよ!」

セリオ:「……これは、わたしも負けていられませんね」

綾香 :「ま、負けていられないって……そ、そんな対抗意識燃やして何をしようっていうの!?」

セリオ:「もちろん『ナニ』です。決まってるじゃないですか」

綾香 :「うわ、アッサリキッパリ言い切るし。お約束すぎるセリフを恥ずかしげもなく」

セリオ:「うふふ。わたし、頑張りますね」

綾香 :「いいから。頑張らなくていいから。お願いだから頑張らないで
     て言うか、頑張ろうとしたら問答無用で蹴る」

セリオ:「そんなに嫌がらなくてもいいじゃないですか」

綾香 :「嫌がるに決まってるでしょうが! バカなこと言ってると本当に蹴って投げて極めるわよ」

セリオ:「……仕方ないですね。分かりました」
    (ふふっ。そんなこと言っていられるのも今のうちです。
     気長にジックリと仕込んで、そのうち、『心が拒んでも身体が』という状態にしてさしあげます。
     ……くすっ」

綾香 :「……こら、セリオ! あんた、ぜんっぜん分かってないじゃない!」

セリオ:「えっ?」

綾香 :「考えてた事、途中から口に出してたわよ」

セリオ:「……ま、マジですか? わたしがそんな古典的な教科書通りのベタなボケを?」

綾香 :「うん、大マジ」

セリオ:「……」

綾香 :「……」

セリオ:「てへっ、わたしってばお茶目さん。セリオちゃん、ドンマイ♪」

綾香 :「うわぁっ、なんかすっごくむかつくぅぅぅっ!」(怒



 ――と、こんな感じ(?)でした。
 半ば本気で泣きたくなったり。


 今更ですが、このコーナーでのセリオがエロエロで妙に黒かったりするのは『仕様』ってことで。
 もしかしたら、線が一本多かったりマフラーの色が違ったり目が鋭かったりする可能性もあったりなかったり。













< 03年6月18日 >

 またまた一部ノンフィクション。



 それは、俺が近所のコンビニに行ったときのことだった。

「いらっしゃいませぇ! ――って、藤田くん!?」

 店内に入った瞬間に、レジに居た店員から掛けられた声。
 こんなところで自分の名前が呼ばれるとは思ってもいなかった俺は、驚いて声の主へと視線を向けた。
 すると、そこには俺のよく見知った顔があった。

「あれ? 理緒ちゃんじゃないか。なに? ここでバイトを始めたの?」

「うん。3日くらい前からね」

「へぇ、そうなんだ」

「藤田くん、このコンビニにはよく来るの?」

「よくって程でもないけど……そうだなぁ、週に一回は必ず」

 充分『よく』だよ。
 理緒ちゃんに答えながら、俺は心の中で自分にツッコミを入れる。

「ま、理緒ちゃんがいるのなら、これからは毎日通うかもしれないけどね」

「え? そ、そう? え、えへへ、ありがと。藤田くんが来てくれるのなら、ますます働き甲斐が出るよ」

 ちょっぴり照れくさそうに、けど嬉しそうに理緒ちゃんが微笑む。

「そっか? だったら、俺は通い甲斐があるな。――さて、そんじゃ、ちょっくら物色してくるわ」

 言いながら、俺はカゴを手に取ると、売り場の方へと足を運んだ。



 ハムサンドとタマゴサンドを一つずつ。350ペットのコーラとポカリ。コンソメ味のポテチ。そして、週刊のコミック雑誌を2冊。
 それらをカゴに放り込むと、俺は理緒ちゃんの待つレジへと向かった。
 ――物を見ている最中ずっとレジから視線を感じていた為、雑誌コーナーでちょっぴりエッチなグラビア誌を立ち読みできなかったのが些か残念だったりするのはここだけの秘密だ。

「お待たせ。会計を頼むよ」

「うん。いつも以上に心を込めてレジ打ちするね」

 小声でいたずらっぽく言う理緒ちゃん。

「おう、お願いするぜ」

「うん♪ それじゃ……えっと……」

 カゴから品物を取り出しながら、理緒ちゃんは一つ一つ丁寧にバーコードで値段を読み取っていく。

「はい、しめて1,302円になります」

「うい。せん……さんびゃく……に……円っと」

 財布から丁度の金額を出して理緒ちゃんに手渡す。
 それを受け取りながら理緒ちゃん。

「温めの方はいかがなさいますか?」

 満面の笑顔でそう宣った。

「……は?」

「……え?」

 思わず目と目を見合わせてしまう俺と理緒ちゃん。
 二人してポカンとした顔になっている。
 俺は言われたことに激しい違和感を覚え。
 理緒ちゃんは自分が条件反射的に口にしてしまったセリフの的外れさに動揺し。

「温める?」

「あ……その……」

「なにを?」

「だ、だから……」

 理緒ちゃんは暫し言葉を失い、その後にポツリと言った。

「ざ、雑誌を、かな。あ、あはは、は……はぅ」

 少しの間、レジに沈黙が落ちた。
 これがマンガなら、間違いなく俺たちの間を寒風が通り抜けたに違いない。

「雑誌?」

「……あう」

「なかなか斬新なサービスだね。嬉しいかどうかは別として」

「あうう」

「それじゃお願いしようか。ちょっと興味あるし」

「あうううううう。わたしが悪かったですぅ。だから、そんなにいじめないでよぉ」

 迷惑な客と、言い掛かりを受けて困っている店員の図、ここに完成。
 それはさておき。
 とりあえず、『温めますか?』のセリフが早くも口癖になっているぐらいなら、もう既に立派なコンビニ店員だよ理緒ちゃん。自信を持っていいと思うぞ。
 ――たぶん、な。


 ちなみに、その日以来、

「温めお願いね。特に雑誌」

「ふぇぇぇん、藤田くんのいじわるぅぅぅ」

 このやり取りが俺たちのお約束となったのは言うまでもない。














< 03年6月4日 >

 一部ノンフィクション



「あら、なかなか良い感じのお店じゃない」

 あたしこと来栖川綾香は、姉さんとセリオと共に近所に出来た――ほんの数日前にオープンしたばかりのレンタルビデオショップに訪れていた。
 新しいお店だけにお客さんの数も多い。どことなくお祭りの活気にも似た心地よい騒々しさに満ちている。
 こういう雰囲気は嫌いじゃない。場に居るだけで心に楽しい気持ちが沸き立ってくるから。

「さて、何か掘り出し物はあるかしらね」

 店内の賑やかな空気を心地よく感じながら、ホラーコーナーに向かった姉さん、わき目も振らずに特撮系コーナーに歩いていったセリオと別れて、あたしは一人で店内を見て回る。
 先ず立ち寄ったのは新作コーナー。
 棚にはリリースされたばかりの洋画・邦画が所狭しと並べられていた。
 しかも、人気作は簡単な特設コーナーが作られていて結構な数が仕入れられている。

「へぇ、かなり品揃えはいいわね。この辺のお店じゃ一番かも。――って、ああっ! こ、これっ!」

 そんな大量に陳列されているビデオの中に、あたしは他のレンタルショップでは借りることの出来なかった作品を見つけた。もちろん、迷わず手を伸ばす。

「あはは、ラッキー♪ この映画、どこに行っても貸し出し中だったのよねぇ」

 それをしっかりと確保し、他にもう1本「これ、確かあかりと智子が観たがっていたわよね」という洋画を手に取ると、そのコーナーを満足感の漂うホクホク顔で後にした。
 そして、次に向かったのは格闘技のビデオが並んでいるコーナー。

「うわぁ。ここも凄い品揃えねぇ」

 思わず感嘆の――どことなく呆れすらも混じった声が漏れた。
 新作やら過去の名作やら、興味を引かれる作品がてんこ盛りだった。いつまででも物色していたいと思わせるほどに。
 しかし、あたしはその場に長く留まる事は出来なかった。
 なぜなら、

「っ!? こ、これって!?」

 棚の横に据えてある平台に、『格闘界のアイドル 来栖川綾香特設コーナー』なんてものが作られているのを発見してしまったから。
 あたしが出ているビデオが揃えられている様を見て、しかもかなりの数が『レンタル中』になっているのを見て、強い照れくささを覚えてしまう。
 嬉しいし有り難いし誇らしくもあるのだが……それでも、恥ずかしさはどうにもならない。全身がどうにもこそばゆい。

「……え、えっと……その……み、見なかったことにしよう」

 頬を染めつつ、そそくさと逃げ出してしまうあたしであった。


 その後、店内を一通り見て回ったあたしは、先程の新作コーナーの近くで数本のビデオを抱えた姉さんとセリオと合流した。
 二人ともかなりの満足感を得ているようで、嬉しそうに笑みを浮かべている。

「ふーん。どうやら収穫有りだったみたいね。で? なにを借りるの?」

「わたしは『ミラーマン』と『流星人間ゾーン』と『電人ザボーガー』。あと『鉄人タイガーセブン』です。ここ、良いですね。店員さんが『分かって』ますよ♪」

 セリオの答えは予想通り、全てヒーロー物だった。些かラインナップが偏っている気もするが。
 ……偏っているということが理解できる様になってしまった自分が少し悲しい気もするけど、それはこの際無視しておく。

「姉さんは?」

「『バトルヒーター』と『アタック・オブ・ザ・キラートマト』。『悪魔の毒々モンスター 東京へ行く』です」

 ……なんだろう、この強烈すぎるキワモノっぷりは。姉さん、実はマニア? それも『そっち』方面の。
 少々眩暈を覚えてしまうあたしだった。

「ま、まあいいけどね。そ、それじゃ、そろそろ帰りましょうか」

 言いながら、会計を済ます為にあたしはレジへと歩き出す。
 そのあたしの背に、セリオと姉さんが言葉を投げかけてきた。

「帰ったら一緒に観ましょうね」

「今日はオールナイト、です」

「……え?」

 ま、また付き合わせる気なの? マジで?
 しかも姉さんまで!? C級カルトホラーをオールナイトで!?
 じょ、冗談じゃないわよ。そんなの、あたしの神経が耐えられないわ。
 ――でも。
 きっと、あたしの意見は流されるんだろうな。
 この後に確実に訪れるであろう拷問とも呼べる状況を脳裏に浮かべ、あたしはガックリと肩を落としつつ盛大にため息を漏らした。

 いいわよいいわよ。こうなったら、浩之やレミィ、理緒たちも巻き添えにしてやるんだから! 死なば諸共よ!
 ――なんて、不穏な事を考えながら、心の中でやけくそ気味に叫ぶあたしであった。



 余談だが、姉さんたちに無理矢理付き合わされたビデオは意外にも楽しめてしまった。
 そんな自分がちょっぴり切ない。

「やはり綾香さんには素質があるのでしょう。良いことです」

「同じ穴の狢、ですね。……くすっ」

 ……イヤ過ぎる。

 ちなみに――強引に巻き込んだ浩之たちには、暫くの間、恨みがましい目を向けられ続けたのは言うまでも無い。 

「仕方有りませんね。強要した綾香さんが悪いのですから」

「まったくです。無理強いはいけません、無理強いは。因果応報、自業自得、ですよ」

 ……あ、あんたらが言うか、あんたらが。













< 03年4月29日 >

 ガンパレについていろいろ。

●小説
 広崎悠意氏の小説への評価をやや上方修正。
 ガンパレの世界観を読者に示す、一冊で終わらせる。
 これらの制約の中で書かれているにしては「良い」とは言い切れないものの
 決して「悪くは無い」のではないかと。


●カップル
 定番カップルが好きだったりします。
 速水×芝村,瀬戸口×壬生屋(+ののみ),茜×森,善行×原……等々。
 唯一の例外が来須でしょうか。ヨーコも良いのですが、個人的には萌を推したいところ。
 無口カップル萌え(笑


●裏設定
 ぶっちゃけ興味無しです。否定派でも肯定派でもなく、どうでもいい派。
 中学・高校生の頃なら楽しめたかもしれませんが。
 取り敢えず、オリジナルストーリー(オリジナルキャラ)を書いている人の『反面教師』としては
 ある意味最適かもしれないと思いました。


●SS
 結局書いてしまいました。
 相変わらずのお気楽極楽の能天気話ですが(苦笑

 二次小説『……に耳あり』













< 03年4月10日 >

 『ガンパレ』熱沸騰中。
 文庫(小説)4冊とコミック2冊を一気購入&一気読破。
 我ながら「なんだかなぁ」とは思いますが……それはさておき。

文庫:高起動幻想ガンパレード・マーチ(広崎悠意)
   ガンパレード・マーチ 5121小隊の日常(以下 榊涼介)
   ガンパレード・マーチ 5121小隊 決戦前夜
   ガンパレード・マーチ 5121小隊 熊本城決戦
   
 非常に面白かったです。2冊目以降は。
 アクション有り、シリアス有り、ギャグにほのぼのも有り。ラブラブも有り。
 ガンパレの醍醐味が凝縮されていると感じました。
 ライトノベルに属される作品を、時間も忘れて読み耽ったのは久し振りです。
 対して1冊目。
 何と言いますか……薄い。
 面白い面白くない以前に薄い。あまり印象に残りませんでした。
 ガンパレを1冊で完結させようとしたのが、そもそもの間違いかもしれません。

コミック:ガンパレード・マーチ(さなづらひろゆき)

 好き嫌いがハッキリ分かれる作品だと思います。
 ダメな方はとことんダメでしょう。
 説明不足(読者置いてきぼり)な点も多々有りますし。
 私は……取り敢えずOKでしたが。

 この作品で一番違和感を覚えた事。
 最初、舞の胸がでかかった(笑
 胸がぽよよんと弾む舞なんて舞じゃありません。
 やはり、舞の胸は『薄く』なければ。



○   ○   ○



マドカ:「胸なんて飾りです。偉い人は……。
     ね、あかりさん」

あかり:「な、なんでわたしに振るの!?」

マドカ:「なんでって……貧乳同盟の仲間ですから」

あかり:「勝手に妙な同盟に入れないでよぉ。
     それに、わたし、別に貧乳って程じゃ……それなりには有るし。
     まあ、確かに、今はまだちょっと小さいかもしれないけど……。
     でもでも、きっとそのうち大きくなるし」

マドカ:「……ふっ」

あかり:「は、鼻で笑わないでーっ!」

ちとせ:「…………(今回は、いろんな意味でノーコメントです(汗))」



○   ○   ○



綾香 :「ふぅ。危ない危ない」

芹香 :「うう。綾香ちゃん、本気でぶった〜」

セリオ:「痛ひ」

綾香 :「正当防衛よ。貞操の危機だったんだから」

芹香 :「てーそーのきき?」

セリオ:「貞操、ですか。今更何をって気もしますが……」

綾香 :「なんか文句ある?」(指をポキポキ)

芹香 :「……」(ふるふるふるふる)

セリオ:「い、いえ、何も」

綾香 :「ん。オッケー。分かればいいのよ、分かれば。
     ……あ、そうそう」

芹香 :「?」

セリオ:「なんです?」

綾香 :「これから暫くはエッチネタ禁止ね♪」

芹香 :「へ?」

セリオ:「何故です?」

綾香 :「何故とか言うか。付き合わされる方の身になりなさいよ。
     姉さんたちの所為で、あたしのイメージはすっかり総受けなんだから。
     たまったもんじゃないわ」

芹香 :「……それは別にわたしたちの所為じゃないと思いますけど」

セリオ:「まったくです」

綾香 :「シャーラップ!
     とにかく禁止よ。いい?」

芹香 :「……」

セリオ:「……」

綾香 :「い・い・わ・ね?」

芹香 :「仕方ないです」

セリオ:「分かりました」

綾香 :「よろしい」

芹香 :「えっと……つまり、綾香ちゃんは焦らされるプレイを御所望なワケですね」

綾香 :「……はい?」

芹香 :「本当はエッチな事をしてもらいたい。言ってもらいたい。
      でも、その気持ちを敢えて抑え込む事で、自ら欲求不満状態を作り出そうと。
      抑圧しておけばしておくほど、解放された時の快感は大きいですからね」


綾香 :「……あ、あの……ね、姉さん? なに言ってるの?」

芹香 :「もう、綾香ちゃんってばエッチですねぇ。
      何時の間にそんな高等テクニックを覚えたんですか?」


綾香 :「待った! ちょっと待った! 勝手に変な誤解しないで!
     てか、どこをどうすればそんな解釈ができるのよ!?」

セリオ:「ふむふむ。なるほどなるほど」

綾香 :「そこ! 納得しない!」

セリオ:「綾香さん、直接的な責めには慣れてしまったのですね。ですから、そんな間接的被虐プレイを」

綾香 :「だーかーらぁ! なんでそういう嗜好……もとい思考になるの!?
     違うってば! プレイとかそういうんじゃなくて!」

芹香 :「……ふふふ。大丈夫ですよ。ちゃんと分かってますから」

綾香 :「分かってない! ぜんっぜん分かってない!」

セリオ:「綾香さんの心の内はしっかりと理解してますよ。皆まで言わなくてもオーケーです」

綾香 :「理解じゃなくて誤解、もしくは曲解でしょうが!」

芹香 :「気にしない気にしない」

セリオ:「問題なし」

綾香 :「気にするわ! 問題あるわ!」

芹香 :「気のせいです」

セリオ:「のーぷろぶれむ」

綾香 :「……」

芹香 :「……」

セリオ:「……」

綾香 :「ふぇーん」

芹香 :「あ、泣いちゃいました」

綾香 :「泣きたくもなるって!」

セリオ:「個人的には、『泣く』よりも『鳴く』の方がいいんですけど」

芹香 :「『啼く』も捨てがたいですね」

セリオ:「尤も、綾香さんでしたらどれでも萌えなのですが」

芹香 :「同感です。綾香ちゃんの『なきがお』は可愛いですから」

綾香 :「……ううっ。
     どうしてあたしの周りにはこんなのばっかりなのかしら。えぐえぐ」













< 03年3月19日 >

お買い物

『高機動幻想ガンパレード・マーチ』と『ラジカルあんてぃ〜く5 聖なる山とドジ妖精』を購入。

○ガンパレ
 欲求に負けて結局買い。
 分厚いマニュアルを読んでいるだけで燃えてきます。
 職場の仲間たちには揃って『お前は芝村舞にはまる』と断言されました。
 多分当たります。
 ちなみにゲームはまだ起動すらしてません。暫くは積みかも(泣

○ラジカルあんてぃ〜く
 今現在、私が唯一読んでいるライトノベル。
 カーリン萌え。
 ――で、もちろんこっちも当分は積み。

……取り敢えず、購買欲だけは充分満たされました。



○   ○   ○



あかり:「『ガンパレ』の世界って大変だよね。死と隣り合わせ。命懸けの日々だもん」

マドカ:「ですね。尤も、『命懸けの日々』なのはわたしも同様ですが」

ちとせ:「同じく。わたしもです」

あかり:「……そっか。そうだよね。二人とも、戦ったりしてるんだもんね」

マドカ:「はい。
     とは言え、わたしたちの大変さ・危険さなどは、あかりさんと比べたら微々たるものですけど」

あかり:「え? わたし?」

ちとせ:「?」

マドカ:「超絶性欲魔人との呼び声の高いあの藤田浩之さんとベッドインしているんですよね?
     わたしにはとても真似できません。恐ろしくて。
     ハッキリ言いまして、命が幾つあっても足りない気がします」

あかり:「……そ、そんな大袈裟な。と言うか、『あの』とか強調しないでよぉ」

ちとせ:「なるほど。そう言われてみれば確かに」

あかり:「納得もしないでーっ!」



○   ○   ○



芹香 :「〜〜♪ 〜〜♪」

綾香 :「ぜ、前回のセリオに続いて今回は姉さんが奇怪なダンスを……。いったいどうしたのかしら?」

セリオ:「とある方から『攻め攻めのブラック芹香さん萌え』というお褒めの言葉を頂きましたので
     芹香さん流の喜びの舞を踊っているんですよ」

綾香 :「ね、姉さん流の喜びの舞?
     あの、見ているとマジックポイントを吸い取られそうになる怪しいダンスが?
     そもそも『ブラック』って褒められてるの?
     ……ま、いいんだけど、さ。
     ところで、どうでもいいけど、前回の引きを思いっきり無視してるわね。いいの、こんな事で?」

セリオ:「構わないんじゃないですか?
     まあ、綾香さんがお望みとあらばちゃんと話を続けさせますが」

綾香 :「それは勘弁して。お願いだから」

セリオ:「……少し残念な気もしますが了解です。
     あ、そう言えば、同じ方から綾香さんにも御意見を頂いてますよ」

綾香 :「あら。そうなの?」

セリオ:「はい。『いぢめられまくりの総受け綾香萌え』だそうです」

綾香 :「……あ、あんまり嬉しくない」

セリオ:「ちなみに、わたしの事には一切触れられていませんでした。
     ……いいんですけどね。どうせわたしは日陰の女ですし。うふふふふ」

芹香 :「――というワケですから、さっそく期待にお応えしちゃいましょう」

綾香 :「…………。
     『なにが『というワケ』?』とか『まったく会話になってない』とか
     『セリオの事はサラッとスルー?』とか『いつの間にあたしの背後に?』とか
     ツッコミたい所はいろいろあるけど。
     取り敢えず、『期待に応える』ってなにするつもりよ?」

芹香 :「えっち」

綾香 :「わーっ、ストレートすぎーっ!」

芹香 :「人間、正直が一番ですから」

綾香 :「正直すぎるのも問題だって!」

芹香 :「そうですか? ま、そんな細かい事はさておき」

綾香 :「さておくなぁ!」

芹香 :「今からえっちしましょう。もちろん綾香ちゃん総受けで」

綾香 :「毎度のことながら全くあたしの言う事聞いてないし。
     嫌よ。お断り。そんなにえっちしたいなら一人でしてて」

芹香 :「むー、綾香ちゃん、つれないです。けちんぼです」

綾香 :「何と言われようと嫌」

芹香 :「……浩之さんにはすぐOKしちゃうくせに。それなのにわたしの時はアウトだなんて。
      綾香ちゃん、差別はいけないと思います。ひどいです。イジワルです」


綾香 :「ひ、浩之は特別なの!
     てか、ひどい!? イジワル!? どの口が言う!?」

芹香 :「この口が」

綾香 :「…………。
     と、とにかく嫌なの。浩之以外とえっちする気なんて全く無いから」

芹香 :「そうですか。綾香ちゃんの気持ちは分かりました。
      ですが、わたしもこのままおとなしく引き下がるワケにはいかないのです」


綾香 :「な、なんでよ?」

芹香 :「ここで素直に下がっては『ブラック芹香ちゃん』の名が泣きますから」

綾香 :「そんなもんには勝手に泣いててもらってよ。てか、その名前、すっごくお気に入り?」

芹香 :「綾香ちゃんは嫌。わたしは引き下がれない。このままでは話は平行線。
      ですから、ここは一つ賭けをしましょう」


綾香 :「賭け?」

芹香 :「わたしが賭けに勝ったら綾香ちゃんを好きに出来る。その代わり、わたしが負けたら」

綾香 :「負けたら?」

芹香 :「綾香ちゃんに誠心誠意『ご奉仕』します、って事で。それはもうジックリと」

綾香 :「なんか、どっちに転んでもあたしの運命は変わらない気がするわよ!?」

芹香 :「――で、勝負の方法ですが、ズバリえっち勝負。先に相手をイカせた方が勝ち、です」

綾香 :「転ぶ前から既に運命確定!?」

芹香 :「ただ、問題が少々」

綾香 :「少々じゃない気がするけど……なに?」

芹香 :「わたしと綾香ちゃんの力量が均等ではないって事です。このままでは勝負が見えています」

綾香 :「なにを今更って思うけど……うん」

芹香 :「ですからハンデを付けます」

綾香 :「ハンデ?」

セリオ:「わたしが味方につきます」

綾香 :「そうなの?」

セリオ:「はい」

綾香 :「そっか。そうなんだ。
     (セリオがいるのならあたしでもなんとかなるかも。
     少なくとも弄ばれっぱなしって事にはならないだろうし)」

芹香 :「どうですか?」

綾香 :「いいんじゃない。問題ないわ。
     (今までの分、少しでもお返ししてあげるわ)」

芹香 :「成立ですね。では、頑張りましょうね、セリオちゃん」

セリオ:「はい。二人で綾香さんをとことんまで陥落させましょう」

綾香 :「へ? ふ、二人であたしを?
     あ、あれ? ハンデ? え? あれ?」

芹香 :「それでは……早速」

セリオ:「始めましょう」

綾香 :「ちょ、ちょっと待ったぁ! 待って! 待ってってばぁぁぁ!
     あーんもう! ばかぁぁぁぁぁっっっ! ごくあくにぃぃぃん!」

芹香 :「わ。綾香ちゃん、ひどいです。
      わたしは、『魔王を召喚したいなぁ』とか『異界への門を開いてみたいなぁ』とか企てるだけの
      平和的で無害でお茶目なただの魔女っ子ですよ。
      決して極悪人なんかじゃありません」


セリオ:「わたしだって違います。
     ときどき『軍事衛星をハッキングしてみたい』とか思うだけの善良なメイドロボです。
     極悪などと言われるのは心外です」

綾香 :「…………。
     なんかもう、どこから突っ込めばいいのやら」

芹香 :「どこからって……それはもちろん」

セリオ:「綾香さんの(ぴー)」

綾香 :「……もういや……あたしって不幸……くすん」

芹香 :「スパーク君?」

綾香 :「分かりにくいって……そのボケは」













< 03年1月1日 >

明けました。
今年も当HPをよろしくお願い致します。



○   ○   ○



マドカ:「お正月ですか」

あかり:「うん。新しい一年の始まりだね」

ちとせ:「気持ちが引き締まります」

マドカ:「ふぅ」

あかり:「な、なんでため息?」

ちとせ:「どうかしたんですか?」

マドカ:「無邪気に笑えるみなさんの気持ちが理解できないです」

あかり・ちとせ:「?」

マドカ:「お正月とは暗いイベントなのでしょう?」

あかり:「え?」

ちとせ:「な、なにを言ってるんです? お正月は希望に満ちた明るいものです。
     巫女のわたしが言うのですから間違いありません」

マドカ:「ウソですよ」

ちとせ:「ウソじゃありません」

マドカ:「だって、昔の人が言ってますよ」

あかり:「昔の人が?」

マドカ:「正月は冥土の旅への一里塚、だと」

あかり:「あ、あう」

ちとせ:「そ、それは……確かに……一休禅師がそういう言葉を残していますが……」

マドカ:「その言葉は更にこう続くんですよね。
     めでたくもなく、めでたくもなし――と。
     ほら、やっぱり暗いじゃないですか。救いようが無いほど真っ暗じゃないですか。
     間違いを教えようとしてもそうはいきません。
     高性能なわたしは騙されません」

あかり・ちとせ:「間違ってる! 根本的な所で既に思いっ切り間違ってるよぉ!」



○   ○   ○



セリオ:「ランラランララ〜ン♪ ヘイ! ランラランララ〜ン♪ ヘイ!」

綾香 :「な、なにやってるの? 突然何事?」

セリオ:「喜びの舞です。何と言っても新年ですから」

綾香 :「……へ、へえ」

セリオ:「決して、影が薄いのを払拭しようと頑張ってるわけじゃありませんよ!
     派手な行為で注目を集めて、あわよくば話題を独占!
     ――なんてことを企んでるわけじゃないですからね!
     本当ですよ! 本当に本当に本当ですからね!」

綾香 :「りょ、了解。よーく分かったわ」

セリオ:「そうならいいんです」

芹香 :「……はい。わたしもよく分かりました。セリオちゃんが何とか目立とうと苦労しているという事が」

綾香 :「……ね、姉さん」

セリオ:「ち、違うんです! 違うんですよぉ! 違うんですからぁ! えぐえぐえぐえぐ」

綾香 :「分かってるから! ちゃんと分かってるから落ち着いて! 泣かないで!
     え、えっと……あの……そ、そうそう。
     踊りといえばさ、姉さんが結構上手いのよね。日本舞踊とか」

芹香 :「綾香ちゃん、あからさまに場の空気を変えようとしてますね」

綾香 :「そういう余計な事は言わなくていいから!」

芹香 :「は〜い」

セリオ:「そういえば、芹香さんは日舞がお上手でしたよね。あとは社交ダンスとかも。正直意外ですが」

芹香 :「別に上手くはないですよ」

綾香 :「なによぉ、姉さんったら謙遜しちゃって。とっても上手じゃない」

芹香 :「謙遜しているつもりはないんですけどね」

綾香 :「またまた〜」

芹香 :「まあ、誰かさんと違ってお稽古をサボったりしませんから、基礎は身に付けていると自負していますけど」

セリオ:「なるほど。確かに芹香さんは習い事を逃げたりしませんからね」

綾香 :「う゛っ」

芹香 :「ですが、あくまでも基礎だけです。上手と言われるようなレベルではありません。それに……」

セリオ:「それに?」

綾香 :「それに、なに?」

芹香 :「わたしは、踊るよりも躍らせる方が得意ですし」

綾香 :「躍らせる?」

芹香 :「はい。ベッドの上で綾香ちゃんに可愛いダンスを舞わせるのが特に」

綾香 :「か、可愛いダンスって……ま、またそういう話になるの!?」

芹香 :「不服そうですね。ダメなんですか?」

綾香 :「ダメ!」

芹香 :「楽しいのにぃ」

セリオ:「楽しいですのにぃ」

綾香 :「指を咥えてもダメ! てか、セリオまで!」

芹香 :「それじゃ、どんな話題だったらいいんですか?」

綾香 :「そうねぇ。やっぱ、タイムリーにお正月の話題とか」

芹香 :「お正月ですか? お正月といえば姫初めですね」

綾香 :「結局はその手のネタ!?」

芹香 :「お約束ですから」

セリオ:「外すわけにはいきませんよね」

綾香 :「ううっ、嫌なお約束」

芹香 :「ねえ、綾香ちゃん?」

綾香 :「……なによ?」

芹香 :「今から姫初めをしましょう」

綾香 :「唐突に何を言い出すかこの姉は!? 嫌に決まってるでしょ!」

セリオ:「いいですね。それはナイスアイデアです」

綾香 :「こっちはこっちで素直に受け入れてるし」

芹香 :「大晦日はいろいろ忙しくてエッチ出来なかったですから、その分も含めてたっぷりと楽しみましょう」

綾香 :「そして、姉さんは案の定あたしの話を聞いちゃいないし」

芹香 :「本当は、大晦日の夜に、除夜の鐘にあやかって108回イカせてあげたかったんですけど。
      そうすれば、煩悩も綺麗に消え去るでしょうしね」


綾香 :「無茶苦茶言わないで! 煩悩どころか命までもが消え去るわよ!」

芹香 :「その代わりと言っては何ですが、姫初めでは新年にちなんで2003回イカせちゃいます」

綾香 :「殺す気!? そんなの人間には無理よ!」

セリオ:「そうですね。さすがにそれは。ここは平成15年という事で、15回で我慢しておくのが吉かと」

綾香 :「まあ、その程度なら……じゃなくて! なにを納得しかかってるのよ、あたしは!?」

芹香 :「15回ですか。少々物足りないですが、それで良しとしましょう。綾香ちゃんもその回数を望んでいるみたいですし」

綾香 :「望んでない! 望んでないってば!」

セリオ:「往生際が悪いですよ。覚悟を決めて下さい」

綾香 :「あっ! こ、こら! 放しなさいよ!」

セリオ:「申し訳ありませんがそれは聞けません」

綾香 :「なんでよ!?」

セリオ:「……綾香さんをいぢめる立場になった方が目立てるみたいですし」

綾香 :「そんな理由で友達を売るなぁ!」

セリオ:「……世の中には、友情よりも大事な物もあるんですよ」

綾香 :「遠い目をするなぁ! 自分の『目立ちたい』という欲求を友情よりも大事にするなぁ!」

セリオ:「結局、自分が一番可愛いですしね」

綾香 :「身も蓋も無い言い方すな!」

芹香 :「どうやら話はまとまったみたいですね」

綾香 :「どこをどうすればそういう解釈が出てくるの!?」

芹香 :「それでは、そろそろ姫始めを……」

綾香 :「待った! ちょっと待った!」

芹香 :「待ちません」

綾香 :「ね、姉さん! ダメだってば! ひ、ひえぇぇ! お、お助けぇぇ!」

セリオ:「さてさて。
     大ピンチに陥った綾香さん。果たして綾香さんの運命や如何に!?
     屈服か隷属か服従か。連続する絶頂の中で綾香さんが見るものは……次回に続く!」

綾香 :「なにを冷静に締めに入ってるか!
     てか、そんな暗い未来が確定してるっぽい引きはやめて!」

芹香 :「えー? とっても楽しい未来像だと思いますけど?」

セリオ:「まったくです」

綾香 :「こ、こいつらは……」













< 02年11月12日 >
何気なくぶらりと立ち寄ったCDショップにて『マクロス20周年記念アルバム MARI IIJIMA sings LYNN MINMAY』を購入。
思わず聴き入ってしまいました。やっぱり、バリバリのマクロス世代ですからね。
CDを聴きながら、ちょっぴりノスタルジックな気分にひたってみたり。

私にとって、マクロスはガンダム以上に思い入れがある作品だったりします。
メカデザインもキャラクターもマクロスの方が好みですし。特にキャラ。
ロイ=フォッカー・マクシミリアン=ジーナス(マックス)・柿崎速雄・ミリア=ファリーナ=ジーナス・早瀬未沙・リン=ミンメイ等々。みんな魅力的です。
これで主人公がもう少し……だったら言うこと無かったのに(苦笑



○   ○   ○



マドカ:「マクロスと聞いて真っ先に思い浮かぶのはアレですよね」

あかり:「アレって? ミンメイさんの歌?」

ちとせ:「迫力あるドッグファイトとか? 板野サーカス」

マドカ:「ダイダロスアタック」

あかり:「なぜ!?」

ちとせ:「真っ先に思い浮かぶのがそれですか!?」

マドカ:「だってインパクトあるじゃないですか」

あかり:「た、確かにインパクトはあるけどぉ」

マドカ:「なにかご不満でも?」

あかり:「別に不満はないけどぉ」

マドカ:「腕をぶち込むんですよ。強引にねじ込んでしまうんですよ。
     凄いじゃないですか。思わず圧倒されてしまうじゃないですか」

ちとせ:「それは……まあ……そうかも」

マドカ:「言うなればフィスト○ァック?」

あかり・ちとせ:「違う! その例えは何かが違う!」



○   ○   ○



セリオ:「綾香さんは芹香さんにあーんな事やこーんな事をされている真っ最中。
     従って、この場はわたしが仕切らせていただきます」

綾香 :「なにを勝手な事を言ってるのよ」

セリオ:「あ、あれ? 綾香さんは芹香さんによってエッチな教育を施されているはずでは?
     それなのになぜ此処に?」

綾香 :「逃げてきたのよ。死に物狂いで」

芹香 :「逃げられてしまいました。残念です」

セリオ:「そうなのですか。
     今頃は芹香さんにダイダロスアタックでもされているのかと思ってましたのに」

綾香 :「あのねぇ」

セリオ:「そして、身体の中でグー・チョキ・パーとかされていると思ってましたのに」

綾香 :「んな事されたら死んじゃうって」

芹香 :「大丈夫ですよ。人間はそんなにヤワじゃないですから……たぶん」

綾香 :「たぶん!? たぶんって何よ!?」

芹香 :「細かいことを気にしちゃダメです」

綾香 :「細かくなーい! 下手したら命に関わるのよ!」

芹香 :「……最悪の場合は降霊術で呼んであげますから問題なしです。
      寂しい思いはさせませんから安心して下さい」


綾香 :「あたしの言うこと聞いてる? てか、サラッともの凄いこと言わないでよ!」

芹香 :「それにしても……逃げ出すなんて、綾香ちゃん酷いです」

綾香 :「何事も無かったように話題を戻してる!?」

芹香 :「あっ。もしかして、お仕置きを期待してるんですか?
      だから、わざと悪い事をするんですね。納得です」


綾香 :「納得しないで! 第一『悪い事』ってなによ!?」

芹香 :「芹香ちんから逃げました。従って、綾香ちゃんは悪い子だと全会一致で認定されました」

綾香 :「逃げるに決まってるでしょうが!
     というか、全会一致って!? 姉さん以外に誰がいるのよ!?」

セリオ:「はーい」

綾香 :「……あら? セリオ、まだいたの? 影が薄いから気が付かなかったわ」

セリオ:「っ!? えぐえぐえぐえぐ」

芹香 :「あー、泣かしたぁ。綾香ちゃんはやっぱり悪い子ですぅ」

綾香 :「う゛っ。い、今のは確かにあたしが悪かったかも。ちょっと罪悪感」

芹香 :「さすがは、お仕置きが欲しくてわざといけない事をしちゃう『いぢめてちゃん』です」

綾香 :「それは違う! 絶対に違う! 断じて違う!」

芹香 :「えー?」

綾香 :「素で不思議顔をしないで」

芹香 :「だって、綾香ちゃん、鞭でピシピシ叩かれたりするの好きでしょ?」

綾香 「好きじゃないわよ!」

芹香 :「あれ? おかしいですね」

綾香 :「おかしくない!」

芹香 :「もしかして、身体中に媚薬を塗りたくられて、全身を過敏にされちゃって、
      その上でローターで刺激されまくって、死ぬほどイカされまくっちゃうっていう方がお好みですか?
      ハードですね」


綾香 :「それもイヤ! お断りよ! そんなの、考えただけで」

芹香 :「興奮しますか?」

綾香 :「背筋が凍っちゃうわよ!」

芹香 :「?」

綾香 :「な、なによ?」

芹香 :「まさかとは思いますが、綾香ちゃん、本気で嫌がってます?」

綾香 :「当たり前でしょ。ほんっきでイヤッ!」

芹香 :「そうなんですか。わたし、綾香ちゃんに対してちょっと思い違いをしていたみたいです」

綾香 :「ちょっとどころじゃない気がするけどね」

芹香 :「ごめんなさい、綾香ちゃん。わたし、誤解してました。
      わたし、綾香ちゃんはてっきりマゾマゾのネコさん、もっと分かりやすく言いますと
      『いぢめられるのが快感の総受けちゃん』だと思ってたものですから」


綾香 :「……い、いろいろと突っ込みたい点はあるけど……ま、まあ、分かってくれればそれでいいわ」

芹香 :「本当にごめんなさいね、綾香ちゃん。
      綾香ちゃんは直接弄ばれるよりも羞恥系や放置系の方が好きなのですね、きっと。
      わたしとしたことがとんでもないミステイクです。反省反省」


綾香 :「間違ってる! 反省するところが間違ってる!」

芹香 : 「でも、本当にミステイクなのでしょうか。どうにも腑に落ちないのですが」

綾香 :「腑に落ちない? なんでよ?」

芹香 :「だって、綾香ちゃんって浩之さんにいぢめられるの好きじゃないですか」

綾香 :「ひ、浩之は別よ! 例外なの!」

芹香 :「冷害?」

綾香 :「そうそう、気温が低くて野菜の育ちが悪かったりして……って、ちっがーーーう!」

芹香 :「ありがとうございます。まさか、こんなボケに乗ってくださるなんて思いませんでした。
      さんきゅ〜べり〜まっち、です」


綾香 :「なんか無性にむかつく!」

芹香 :「ま、それはさておき」

綾香 :「……マイペースね」

芹香 :「つまり、今はまだ、浩之さん以外の人にいぢめられるのはイヤって事ですか」

綾香 :「『今はまだ』ってなに!?」

芹香 :「言葉通りよ」

綾香 :「キャラ変わってる!?」

芹香 :「まあ、三日後には、誰にいぢめられても悦ぶ綾香ちゃんに生まれ変わっているでしょうけど」

綾香 :「なに、その予言!?」

芹香 :「正確には『わたしが生まれ変わらせる、無理矢理にでも』ですが」

綾香 :「ちょっと待った! どういうことよ!? なにをしようって言うの!?」

芹香 :「雌犬調教」

綾香 :「うわぁ、ストレートだぁ」

芹香 :「てなわけですから、早速始めましょう」

綾香 :「わわっ!? ま、待って! 姉さん! 待ってってばーーーっ!
     ど、どこ触ってるのよ!? ち、ちょっとーーーっ!
     ……って、これじゃ前回と同じ引きじゃない! 姉さん、芸が無いわよ」

芹香 :「……ドンマイ」

綾香 :「自分で言うなーーーっ!」



セリオ:「えぐえぐ。わたし、今回も影が薄いです。綾香さんの仰るとおりになっちゃってますぅ。
     ううっ、いいですいいです。次回こそ目立ってみせますから!
     その野望を胸に、とぅーびーこんてにゅーですぅ。……しくしくえぐえぐ」













< 02年10月29日 >

『超電子大戦ビクトリーファイブ』の1巻を読了。
長谷川裕一氏が描くコンバトラー・ボルテス・ダイモスのコミックです。
氏のファンでコンバトラー世代の私にとっては非常に楽しめる一作でした。
相変わらずの長谷川節全開でしたし。

このマンガを読んでいて、久しぶりにコンバトラーの超合金を触ってみたくなりました。
例の5機別売りの変形合体するやつ。

それにしても……コンバトラー・ボルテスに比べてダイモスは地味ですよね。
やはり、超電磁スピン・天空剣Vの字斬りと烈風正拳突きを比べたらいまいちインパクトが弱いのが原因でしょうか。
個人的には、この三体の中では一番好きなんですけどね。



○   ○   ○



マドカ:「やっぱり変形合体はロボットの華ですね」

あかり:「そういうものなの?」

マドカ:「はい。ロボットとして生を受けたからには誰でも一度は夢見ることですから」

ちとせ:「夢、ですか」

マドカ:「もっとも、わたしは『ロボットじゃないよ。アンドロイドだよ』ですが」

あかり:「R!?」

ちとせ:「てか、ネタが古すぎて理解できる人も少ない気が……」

マドカ:「夢といえば、アンドロイドも電気うなぎの夢を見るのでしょうか?」

あかり:「うなぎ!?」

ちとせ:「いや、それ、正しくは羊ですし」

マドカ:「でも、どんなに夢見ても、残念ながらわたしは変形は出来ないんですよね」

あかり:「わ。なんか唐突に話を戻したよ」

ちとせ:「相変わらずの強引っぷりですね」

マドカ:「合体なら可能なのですが」

あかり:「え? そうなの?」

マドカ:「はい。毎晩のように合体しています」

ちとせ:「毎晩?」

マドカ:「恭平さんとしっぽりと合体」

あかり:「し、しっぽり!?」

マドカ:「ガシーンと勢いよく」

ちとせ:「が、ガシーン!?」

マドカ:「正確には『ぬちゅ』とか『くちゅ』といった感じですが」

あかり:「あうぅ」

ちとせ:「妙に生々しいし」

マドカ:「あ、そういえば」

あかり:「なんです?」

マドカ:「変形も有りですね。とは言え、変形するのは恭平さんの方ですけど」

ちとせ:「恭平さんが変形?」

マドカ:「一部ですけどね。大きくなったり固くなったり」

あかり:「そ、それって!?」

ちとせ:「もしかして!?」

マドカ:「はい。恭平さんのおち(ぴー)んです」

あかり:「わーっ! わーっ! わーっ!」

マドカ:「ペ○スや陰茎の方が良かったですか? もしくは如意某とか。伸びたり縮んだり」

ちとせ:「言い方の問題じゃありません!」

マドカ:「恭平さんの立派なんですよ。挿入していて充足感がありますし」

あかり:「……いつもの如く、サラッと流すし」

ちとせ:「……なんか、もう慣れてきました」

マドカ:「やはり、夜の変形合体はロボットの浪漫ですよね」

あかり・ちとせ:「その浪漫に、ロボットは関係ないでしょ!?」

マドカ:「今晩は沙由香さんも交えて三身合体ですね。決定」

あかり・ちとせ:「三身合体!?」

マドカ:「以後宜しく」

あかり・ちとせ:「メガテン!?」

マドカ:「わー、びっくりです」

あかり:「その棒読みは何?」

ちとせ:「ビックリって?」

マドカ:「驚きのあまり、目が点」

あかり:「……」

ちとせ:「……」

マドカ:「ふぅ。どうやら、ギャグのレベルが高すぎて理解できなかったみたいですね。
     高性能すぎるのも考えものといったところですか。やれやれ」

あかり・ちとせ:「呆れられてる!?」



○   ○   ○



セリオ:「さて、続きです」

綾香 :「なんだかなぁ。ホントに続いてるし」

セリオ:「改めて登場していただきましょう。芹香さんです! ぱちぱちぱち〜♪」

芹香 :「いえーい♪」

綾香 :「いきなりキャラ変わってる!?」

芹香 :「そんなことないですよ。……うふふ」

綾香 :「あ、あまり追求しない方がよさそうね」

芹香 :「追求してもいいのに。……うふふ」

綾香 :「なにかが漠然と妙に怖っ」

芹香 :「怖いだなんて、綾香ちゃんったら失礼ですね。
      芹香ちん、怒っちゃいますよ。ぷんぷん」


綾香 :「マジでキャラが違うし!」

芹香 :「些細なことを気にしたらダメダメですよ」

綾香 :「些細、かなぁ?」

芹香 :「些細です。……うふふ」

綾香 :「何故そこで笑うの!? 何か企んでそうで怖いってば!」

芹香 :「何も企んでなんかいませんよ。……うふふ」

綾香 :「……。
     もういいわ。なるようになれって感じね」

芹香 :「そうそう。人間、諦めが肝心です」

綾香 :「……。
     そろそろ本題に入るわ。
     えっと、前回はあたしの部屋に仕掛けられたビデオ等々を外す云々って所で終わったのよね」

芹香 :「みたいですね」

綾香 :「では、早速今から外しに行きましょう。話があさっての方向に飛んじゃう前に」

芹香 :「亜○飛んじゃう?」

綾香 :「なんの話よ!?」

芹香 :「くり○むレモン。早い話がエッチなアニメ。意外と面白かったです」

綾香 :「観たの!?」

芹香 :「シリーズ全て制覇しました。ちなみに、セバスチャンに買ってきてもらいました」

綾香 :「……長瀬さんに?」

芹香 :「執事姿のままで」

綾香 :「それ、なにかの罰ゲーム? いやがらせ?」

芹香 :「?」

綾香 :「素で不思議そうな顔しないでよ。姉さんに悪気が無かったのは分かったから。
     ……って、言ってるそばから話が飛んじゃってるし」

芹香 :「○美飛んじゃう?」

綾香 :「それはもういいから!」

芹香 :「はーい」

綾香 :「ったくもう。……ま、いいわ。
     そんじゃ、そろそろビデオを外しに行きましょうか」

芹香 :「えー?」

綾香 :「な、なんで不満気!?」

芹香 :「ビデオを外したら覗けなくなってしまいます」

綾香 :「覗けなくするの!」

芹香 :「えー?」

綾香 :「指を咥えて見ないで! 懇願するような目をしないで!」

芹香 :「だって」

綾香 :「ビデオの件には姉さんも一枚噛んでいるみたいだけど、なんでよ?
     なんで姉さんがあたしの部屋なんか覗こうとするのよ?
     それも……その……あたしと浩之が……ごにょごにょ……してるところを」

芹香 :「それは……」

綾香 :「それは?」

芹香 :「わたしも……好きですから。……のことが」

綾香 :「えっ!? ね、姉さん?」

芹香 :「わたしも抱き締めたい……抱き締めてもらいたい」

綾香 :「……」

芹香 :「でも、そんな想いを表に出してしまったらきっと迷惑がかかってしまう。
      だから、姿を見るだけで我慢を……」


綾香 :「う゛」

芹香 :「わたしだって……わたしだって……」

綾香 :「姉さん」

芹香 :「わたしだって、浩之さんみたいに綾香ちゃんにあんなことやこんなことをしたいのに!」

綾香 :「はい!?」

芹香 :「浩之さんばっかりずるいです! わたしも綾香ちゃんに可愛い声を出させてみたいです!」

綾香 :「ちょっと待てぇぇぇっ!」

芹香 :「? なに?」

綾香 :「ね、姉さんが好きな人って浩之じゃないの?」

芹香 :「浩之さんですか? もちろん好きですよ」

綾香 :「そ、そうよね」

芹香 :「綾香ちゃんのことはもっともっと好きですけど」

綾香 :「え゛!?」

芹香 :「愛しているといっても過言じゃありません。もちろん肉欲込みで」

綾香 :「に、肉……って、な、な、なにを考えてるのよ! あたしたちは女同士なの! しかも姉妹なの!
     そんなの人として間違ってるわ!」

芹香 :「大丈夫ですよ」

綾香 :「なにが!?」

芹香 :「わたしは倫理なんか気にしません」

綾香 :「してよ!」

芹香 :「綾香ちゃんの為なら、悪魔に魂を売ることすら厭わないです。……うふふ」

綾香 :「怖いって!」

芹香 :「……あ」

綾香 :「なによ?」

芹香 :「わたしの魂、既にベルちゃんに売却済みでした。……てへ♪」

綾香 :「売却済み!? てか、ベルちゃんって誰よ!?」

芹香 :「ま、大したことじゃないですよ。魂の一つや二つ」

綾香 :「いくつも持ってるんかい!?」

芹香 :「命は時々二つ持ってますけど?」

綾香 :「あんたはゾフィーか!?」

芹香 :「というわけですから、わたしと愛し合いましょう」

綾香 :「というわけ!? なにが!?」

芹香 :「うふふ。綾香ちゃん……可愛がってあげる」

綾香 :「なんか早くもその気だし! しかもこっちの都合を完璧に無視で!」

芹香 :「さあ、綾香ちゃんも早く脱いで」

綾香 :「うわー。やる気満々だー!」

芹香 :「ほら、早く」

綾香 :「ち、ちょっと待って! 姉さん、見てるだけで我慢するんじゃなかったの!?
     迷惑をかけたくないんでしょ?」

芹香 :「ええ、浩之さんには」

綾香 :「あたしにはいいんかい!?」

芹香 :「綾香ちゃん。今夜は寝かせてあげないからね」

綾香 :「あ、あうあう。目が妖艶に輝いちゃってるし。
     えっと……その……せ、セリオ! セリオ! 姉さんを止めるのを手伝って!」

セリオ:「……えぐえぐ」

綾香 :「……セリオ? どうしたのよ。部屋の片隅で膝なんて抱えちゃって」

セリオ:「わたし、完全に芹香さんに喰われちゃってます。存在感がゼロになってます……しくしく」

綾香 :「あー。まあ、確かに。姉さん、妙に濃いから」

セリオ:「う゛う゛。こうなったら、存在感をキープする為にも芹香さん以上に濃くなるしかありませんね。
     例え悪魔に魂を売り渡してでも」

綾香 :「それはやめなさいって」

セリオ:「メイドロボの魂はレアでしょうからね。きっとどんな願い事でもバッチリですよ」

綾香 :「……聞いてないし」

芹香 :「あ・や・か・ちゃん。セリオちゃんとのお話は終わりましたか?」

綾香 :「え゛?」

芹香 :「さあ、続きをしましょ」

綾香 :「ま、待って! 姉さん! 待ってってばーーーっ!
     ど、どこ触ってるのよ!? ち、ちょっとーーーっ!」

セリオ:「……と、綾香さんが芹香さんの手の内に落ちたところで、とぅーびーこんてにゅーです。
     PCエンジン版モンスターメーカーの様に」

綾香 :「その例えじゃ続きにならないしょ!」

芹香 :「わたしとしては、『落ちた』よりも『堕ちた』の方が」

綾香 :「……それはイヤ。えぐえぐ」













< 02年10月28日 >

最近、ゲームボーイアドバンス用ソフト『逆転裁判2』にハマってます。
休憩時間とかにちょこちょこと少しずつ進めてます。
友人に薦められた為購入したのですが、本当におもろい。
難易度は少々易しめですが、それが却って良いですね。
謎がどんどんと解けていくので爽快感がありますし。
このゲームの為だけにGBAを買った甲斐がありました。
しかし……近所の店でことごとく一作目が売り切れてたのが(泣



○   ○   ○



栞 :「祐一さん、明日お買い物に付き合ってくれませんか?」
祐一:「明日? 相変わらず唐突だな」
栞 :「ダメですか?」
祐一:「いや、別に構わないけど。それで? なにを買うんだ?」
栞 :「お洋服です」
祐一:「服?」
栞 :「はい。今持ってるの、結構小さくなってきちゃったんですよ。
    何と言いましても、わたし、まだまだ成長期ですから」
祐一:「なるほどね」
美汐:「異議あり!」
祐一:「おわっ!? あ、天野!?」
栞 :「な、なんですか、突然!? 異議ありってどういうことですか!?」
美汐:「相沢さん、騙されてはいけません。美坂さんはウソをついています」
祐一:「栞がウソを?」
美汐:「はい」
栞 :「な、なにをわけ分からない事をほざいてやがるんですか!?
    わたし、ウソなんてついてません!」
美汐:「いいえ。先程のあなたの発言には大きなウソが含まれています」
祐一:「そうなのか?」
美汐:「はい。美坂さんは服のサイズが合わなくなった理由を『成長期だから』と述べました。
    ですが、実際は違います。本当は……」
祐一:「ほ、本当は?」
美汐:「アイスの食べすぎで太っただけです!」
栞 :「っっっ!? ふ、ふ、ふ、ふざけた事を言わないで下さい!
    な、なんの証拠があってそんな事を言うんですか!」
美汐:「美坂さんの事はよく見てますから。体育の着替えの時などに」
栞 :「えぅ!?」
祐一:「着替えの時に見てる? なんで?」
美汐:「ライバルですから。……のサイズ的に。
    しっかりとチェックをするのは当然です」
祐一:「サイズ? ああ、胸のサイズか」
美汐:「は、はっきり言わないで下さい!(赤」
祐一:「わ、わるい(汗」
美汐:「……こほん! ま、まあ、それはさておき。
    美坂さん。確かに服は合わなくなってきたでしょうね。
    だって、以前に比べてお腹の辺りが少々ふくよかになってきましたから」
栞 :「っっっっっ!?」
美汐:「でも! 肝心の身長やバストは全く変わっていないように見えます!
    見事なまでに停滞しています! なのに『成長期』とは片腹痛いですね。
    そんな馬鹿げたセリフ、お天道様が許しても……
    愛と平和と相沢さんの天使! この『みるきぃみっしぃ♪』が許しません!」
栞 :「え、えぅぅぅ(がっくり」
美汐:「ふっ。完璧な勝利、です」
祐一:「おおっ! すごいぞみっしぃ♪ 天晴れな観察眼だ。ほめてつかわす」
美汐:「いえいえ。この程度、当然のことです」
祐一:「ところでさ、天野? ちょっと気になったんだけど」
美汐:「? なんです?」
祐一:「天野の方はどうなんだ? 身長や胸、停滞しないでちゃんと成長してるのか?」
美汐:「……」
祐一:「……」
美汐:「……(汗」
栞 :「祐一さん祐一さん、その事には触れないでいてあげるのが思いやりってものですよ。
    うぷぷぷぷ」
祐一:「……?
    おおっ、なるほど! そういうことか。すまん、天野。俺が悪かった」
天野:「そ、そんな酷な事はないでしょう(泣」













<02年10月18日>

 買ってはいたものの聴かずに積みっ放しにしていた『秋子さんのばんごはん』。
 ふと思い立ち、在宅での仕事中にBGMにしてみました。懲りずに。

美汐:「やっだ〜♪」

 ……。
 何と言いますか、アンソロジーと銘打っているとは言え、このCDは半オフィシャルの作品。
 それで二次創作以上のキャラ壊しをされますと……無性に悔しいんですけど(苦笑
 もっと精進しなければと思ったりしました。



○   ○   ○



マドカ:「というわけですから壊れて下さい」

ちとせ:「うわっ! 唐突すぎですよ!」

あかり:「いきなり壊れて下さいと言われても……」

マドカ:「取り敢えず、はっちゃけた挨拶からいきましょうか」

ちとせ:「聞いてない!?」

あかり:「あう〜」

マドカ:「さあ、どうぞ」

ちとせ:「……」

あかり:「……」

マドカ:「どうしたのですか? やらないのですか?」

ちとせ:「やるわけないじゃないですか!」

あかり:「うん。わたしもイヤ」

マドカ:「そうですか。では、仕方ありませんね。こんな事はしたくありませんでしたが」

ちとせ:「な、なんですか?」

マドカ:「お二人の(ピー)な姿が写ったこの写真をインターネットで世界中に配信……」

ちとせ:「ちょ、ちょっと待って下さい!」

あかり:「なんでそんなの持ってるの!?」

マドカ:「高性能ですから」

ちとせ・あかり:「答えになってないし!」

マドカ:「さて。どうしますか? 素直に言うとおりにしますか? それともこの写真を……」

ちとせ:「やる! やります! いえ、やらせて下さい!」

あかり:「だから、それを配信するのだけは勘弁して!」

マドカ:「……いいでしょう。では、張り切ってどうぞ」

ちとせ:「ううっ」

あかり:「しくしく」

マドカ:「さあ、早く」

ちとせ:「……」

あかり:「……」

マドカ:「えっと、写真を早速スキャナーで取り込んでっと」

ちとせ:「今すぐやりますから待って下さいぃぃぃ! うううっ、もう自棄です!」

あかり:「そ、それじゃ……いくよ」

マドカ:「はい、どうぞ」

ちとせ:「きゃい〜ん、飛鳥ちとせで〜す♪ よ・ろ・し・く・ね

あかり:「やっほ〜、みんなのアイドルあかりんだよ〜 いえーい♪」

マドカ:「……」

ちとせ:「……」

あかり:「……」

マドカ:「申し訳ありません。私が間違っていました」

ちとせ・あかり:「謝られた!? 何故!?」



○   ○   ○



セリオ:「『壊れ』と言ったら綾香さんですよね」

綾香 :「はぁ? なんなのよそれ? あたしには『壊れ』なんか無縁よ」

セリオ:「え?」

綾香 :「『え?』ってなによ?」

セリオ:「だって、いつも叫んでるじゃないですか。というか昨夜だって」

綾香 :「は? 叫んでる? 昨夜?」

セリオ:「浩之さんとまぐわってた時、毎回絶叫してますよ。
     『壊れちゃう! あたし、壊れちゃうよぉ!』って感じで。もちろん昨夜も例外ではなく。
     そういうわけですので、綾香さんには壊れクイーンの称号を授けます」

綾香 :「いや、それは『壊れる』の意味合いがちょっと違うし。
     そんなイヤすぎる称号なんかもいらないし。
     ……てか、また覗いてた!?」

セリオ:「はい」

綾香 :「わ、アッサリキッパリ認めるし」

セリオ:「芹香さんと一緒に」

綾香 :「姉さんと一緒!?」

セリオ:「堪能させていただきました」

綾香 :「……あのねぇ、いい加減にしなさいよ。終いにはあたしも怒るからね」

セリオ:「『姉妹には』怒るということはわたしはセーフですね。怒られるのは芹香さんのみ」

綾香 :「都合よく字を変えない!」

セリオ:「……上手く誤魔化せると思ったのに」

綾香 :「思うな!」

セリオ:「ちぇー」

綾香 :「ところで、セリオ」

セリオ:「なんですか?」

綾香 :「あたしの部屋に仕掛けてあるビデオやマイクの類、全部外しなさい。今すぐに」

セリオ:「えーっ?」

綾香 :「不満そうな声を上げない!」

セリオ:「ブーブー」

綾香 :「ブーイングもしない!」

セリオ:「むぅ。綾香さん、心が狭いです」

綾香 :「自分の部屋にビデオ等々を仕掛けられて広い心でいられる人なんているもんですか。
     少なくともあたしには無理。だから即刻外しなさい」

セリオ:「……はーい」

綾香 :「まったくもう。どうしてこんな娘になっちゃったのかしら?
     昔の清楚で素直なセリオは何処に……ハァ」

セリオ:「それはやっぱり『朱に交われば赤くなる』ってやつじゃないでしょうか?」

綾香 :「……朱?」

セリオ:「特にこの方」

芹香 :「呼びましたか?

綾香 :「ね、姉さん!? 何時の間に!?」

セリオ:「さあ、大物が出てきました! 言うなれば黒幕登場です!
     これから更に話が泥沼化しそうな気配がプンプンです」

綾香 :「なんでそんなテンション高いのよ、無駄に。
     と言うか、あんたが言うな。泥沼化させてる張本人が」

セリオ:「――といったところで次回に続く。とぅーびーこんてにゅー」

綾香 :「案の定シカトするし!
     ……って、続く!?」

芹香 :「せっかく出てきたのに次に引かれちゃったの。
      セリフも少ないの。芹香ちん、がっくし。……くすん


綾香 :「こっちはこっちでキャラ変わってる!?」













<02年10月14日>

 全く積み本を消化しきれていないにも関わらず新しい本を購入。

・憂い顔の童子 大江健三郎 講談社
・海辺のカフカ(上・下) 村上春樹 新潮社

 税込みで計5460円也。
 暫くはこれらも積み本になりそう。いつになったら読めるのやら。

 新しい本を買ってきたついでに、久しぶりに本棚を整理整頓しました。
 暫く放置していた為、既読本と未読本がかなりごっちゃになってましたし。

 で、その結果。やはり、放置はいけないということが判明。

 あああっ! 『芥川龍之介全集(1) ちくま文庫』が見当たらない!
 紛失!? マジっすか!? 何故!? なぜなぜWHY!?

 ……ショックでかし(泣



○   ○   ○



マドカ:「先日、恭平さんのお部屋を掃除しましたらエッチな本が大量に出てきました。
     さすがです」

あかり:「浩之ちゃんも隠して持ってるよ、エッチな本。
     わたしは気付いてないフリしてるけどね。お掃除が終わった後で元あった場所に戻しておくし」

ちとせ:「志狼さんはそういう本は持ってないみたいです。ただ、その代わり……」

あかり:「その代わり?」

ちとせ:「枕元に、わたしが写った写真ばかりが貼ってあるアルバムが置いてあることがありますけど」

あかり:「そ、それって……もしかして……」

マドカ:「つまり、志狼さんはちとせさんの写真で自家発電及び大放出をなさっているわけですね」

ちとせ:「じ、じかはつでん!?」

あかり:「だ、だいほーしゅつ!?」

マドカ:「ストレートに一発ヌイてるの方が良かったですか?」

ちとせ・あかり:「!?」

マドカ:「なにをこの程度で動揺しているのですか。ウブなネンネじゃあるまいし」

ちとせ:「う、ウブなネンネって……」

あかり:「久しく聞かない表現だよね」

ちとせ:「完璧に死語な気がする」

あかり:「だよね」

マドカ:「……」

ちとせ:「……」

あかり:「……」

マドカ:「高性能ですから」

ちとせ・あかり:「なにがーっ!?」



○   ○   ○



セリオ:「綾香さんも志狼さんと同じような事してますよね」

綾香 :「な、なによ藪から棒に!?」

セリオ:「一人寝が寂しい夜、浩之さんの写真を見ながらご自分を慰めて……」

綾香 :「わあああぁぁぁ! なんて事言い出すのよあなたは!?」

セリオ:「素直にオナ……」

綾香 :「言うな!」(げしっ!)

セリオ:「はうっ! い、痛ひ」

綾香 :「まったくもう。なんでセリオがそんな事知ってるのよ。ひょっとして覗いてたの!?」

セリオ:「……」

綾香 :「な、なによ?」

セリオ:「カマをかけて、口からデマカセを言っただけなのですが……ビンゴでしたか」

綾香 :「!?」

セリオ:「なるほどなるほど」

綾香 :「……」

セリオ:「……」

綾香 :「う、うっさいわね! そうよ! ビンゴよ! 悪い!?」

セリオ:「うわ。開き直り」

綾香 :「そういうセリオはどうなのよ!? あなたの部屋にも浩之の写真がいっぱいあるじゃない!
     それらを使って……そ、その……一人で……し、してるんじゃないの?」

セリオ:「わたしはしませんよ。綾香さんみたいに写真を見ながらオ(ピー)ニーなんて。
     それはまあ、確かに浩之さんの写真も大量に持っていますけど……」

綾香 :「わざわざ『あたしみたいに』って言わない! 悪かったわね、エッチで!
     ……って、浩之の写真『も』?」

セリオ:「はい。わたしの部屋には浩之さん以外の方の写真もたくさんあります。
     ミラーマンの写真とファイヤーマンの写真、あとはレッドマンに超人ビビューン、
     アクマイザー3、流星人間ゾーンに円盤戦隊バンキッド。他に……」

綾香 :「もういい。もういいから。てか、なによ。そのマニアックすぎるラインナップは?」

セリオ:「マニアックですか? 基本を押さえているだけですけど」

綾香 :「基本、ねぇ。セリオにとってはそうかもしれないけど」

セリオ:「誰にとってもそうですってば」

綾香 :「……はいはい。
     ま、それはさておき。
     つまり、セリオは一人で……その……したりはしないわけね?」

セリオ:「自慰ですか? しないことはないですよ」

綾香 :「はっきり言うな!」

セリオ:「はーい」

綾香 :「……あれ? そういえば、さっきはしてないって言ってなかったっけ?」

セリオ:「写真を見ながらはしてないってだけです」

綾香 :「あ、そ」

セリオ:「わたしがオカズに使ってるのは別の物ですから」

綾香 :「オカズって言うな。
     ――で? 何を見ながら?」

セリオ:「綾香さんと浩之さんがくんずほぐれつしている所を映したビデオを見ながら……」

綾香 :「ちょっと待てぇぇぇっ! ビデオってなんなのよ!? あんた、なにやってるのよぉぉぉ!?」

セリオ:「なにって……いわゆる盗撮?」

綾香 :「何故に半疑問形!?」

セリオ:「ホント、いつもお世話になってます。感謝感謝」

綾香 :「うわっ、すっごくむかつく!」

セリオ:「ちなみに芹香さんにもダビング済みです」

綾香 :「姉さんもグル!? ひょっとして、何時の間にか四面楚歌!?」

セリオ:「わたしがビデオを観る時は四面楚歌ならぬ四面嬌声ですけどね。
     ザッツ・ドルビーサラウンド。迫力タップリ」

綾香 :「……こ、こいつはぁぁぁ!」







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