良い意味でも悪い意味でも一見さんお断りゲーム。

 『ままにょにょ』とはそんなゲームです。

 まず、キャラが一見さんお断り。
 多くの歴代キャラが出てくる為に、古くからのアリスファンは凄く楽しめます。
 反面、キャラに対する説明は作品内で一切成されない為、アリス作品に詳しくない方がこのゲームに手を出しますと見事なまでに『置いてきぼり』を喰らいます。
 潔いくらいに全く説明無しですから。

 Hシーンも一見さんお断り。
 普段は表に出てこない(原画をやらない)方が描いてくれていますので、ディープなアリスファンならそれだけで楽しめます。
 しかし、そうでない方には少々きついかもしれません。
 内容はほぼ(一部例外あり)鬼畜陵辱系。キャラは(言葉は悪いですが)一回限りの使い捨て。
 感情移入できる余地は全くありません。
 CG数はそれなりに有りますが、シーンに辿り着くまでに要する労力に見合うだけの物があるかと問われますと……ちょっと首を傾げざるを得ません。
 Hシーンはあくまでもオマケ。そう割り切っていただくのが一番かと。
 ……何気にテキストは上手くて濃かったりしますが。

 ゲーム内容自体も一見さんお断り。
 エンディング有りませんし。
 いつまでもダラダラと続けられる。自分で目的を定められる。
 そういう方じゃないと向かないかもしれません。
 逆に言うと、そうでない方はおそらくすぐに厭きます。
 とは言え、作品としては非常によく出来ています。
 『にょ』シリーズの中で最も完成度が高いと思います。
 テンポも良好。良すぎて止め時が無いくらいに。
 下手すると、数時間平気で過ぎていたりしますし。


 アリスファンだと断言できる方には強くオススメ。
 「別に……」という方には「買っても損はしないでしょうが、過度な期待は禁物」と。

 マインスイーパーやトランプ等の『暇つぶしゲーム』の豪華版と解釈し遊ぶのがベスト。
 そんな作品だと思います。



(お気に入りキャラ)

 たくさんいますが、敢えて一人の名を挙げるなら……

 七荻鏡花

 一人だけレベルが別世界ですし。
 攻撃力は赤い死神以上ですし。

 好きなキャラをとことん贔屓できるのもこの作品の魅力かと。







(――以下は、お約束の超短編SSです)


「ふぅ。此処には容姿端麗な方は多いのですけれど」

「処女や童貞は殆どいないんだよなぁ」

「ええ。非常に残念です」

「あーあ。どっかに可愛らしい生娘でも落ちてないかねぇ」

 会話を交わしながらママトト内で物色……もとい、お散歩を楽しんでいるのは初音とミリ。
 この二人、出会った瞬間にお互いの嗜好に気付き合い、実はとある協定を結んでいたりする。
 その名もズバリ『不戦協定』。
 限定された場所で数少ない『獲物』を奪い合うよりは、共有して楽しみを分かち合った方が得策と考えたが故に。
 しかし、その肝心の『ターゲット』がいない。これでは協定を結んだ意味が無い。ため息や愚痴も出ようと言うものである。
 無論、初音もミリも『処女や童貞以外は却下』なんてことは言わない。
 けれども、どうせ頂くならば新鮮な方がいい。相手が無垢な方が、清い方がより楽しめる。
 なのにママトトには処女・童貞が殆どいない。大抵が彼女・彼氏持ち。お手付き。経験済み。
 初音もミリも、何度『こーんなおとなしそうな顔してこの娘は……』と思ったことか。

「まったく。嘆かわしい事だ。最近の若い奴らは乱れてる。どいつもこいつも簡単に身体を許しすぎだ」

 腕を組みながら、険しい顔をしてミリが零す。
 初音が同意するように首肯した。

「はぁ。やれやれだぜ」

「ふぅ。やれやれですね」

 自分の事は棚の最上段及び最奥にしまいこみながら、ついつい軽くため息を漏らしてしまう初音とミリであった。

「あっ。初音さん、ミリさん、こんにちは」

 そんな二人に、不意に前方から掛けられる挨拶の声。

「はい、こんにちは」

「おっす」

 先程までの鬱屈した気持ちを押し隠し、自然な態度で挨拶を返しながら初音とミリが視線を向けると、目に飛び込んできたのは巫女装束を身に纏った少女、飛鳥ちとせの姿だった。

「今日も頑張りましょうね」

 柔らかい笑みを浮かべながら、茶目っ気たっぷりにガッツポーズをしてみせるちとせ。
 全身から清楚なオーラが漂っている。眩いばかりの純な、一片の汚れの無いオーラが。
 思わず顔を見合わせてしまう初音とミリ。

「そういえば、この方がいましたね」

 初音が妖艶に微笑む。

「一般作出身だもんな。てことは間違いなく……」

 ワケの分からない事を口にしながら、ミリがぺロリと舌なめずり。

「な、なんですか? 私がなにか?」

 二人が放つ何とも形容のし難い危険な波動を感じ、ちとせは本能的に一歩退がる。
 だが、彼女に許されたのはそこまで。それ以上の後退は出来なかった。

「ちとせさん。申し訳ありませんけど、少々お時間を頂けませんか?」

「ちーっと、あたしたちに付き合って欲しいんだ」

 何時の間にやら、ちとせの左右の腕が初音とミリによってガッチリと捕らえられていた。

「えっ? ちょ、ちょっと……えっ?」

 ちとせは反射的に身を捩るが、初音とミリは全く意に介さない。余裕を感じさせる笑みを顔に貼り付けているのみ。

「は、ははは初音さん!? ミリさん!? なんですか!? なんなんですかぁ!? なにをしようって言うんですかぁ!?」

 得体の知れない怖さを覚え、ちとせが本気でジタバタと暴れ始める。けれども、捕獲者の二人は相変わらずビクともしない。

「そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ」

「決して変な事はしないからさ。……変じゃない事はするけど」

 な、な、ななな、なんなんですかぁ!? 変じゃない事ってなんなんですかぁ!?
 心の中で喚きながら、ちとせは何とかして逃げ出そうともがきにもがく。
 その様を楽しそうに眺めながら、

「では、行きましょうか。一緒に、ね」

 初音がちとせの耳元で囁いた。『天国に連れて行ってさしあげます』という謎の言葉も共に。

「尤も、相手があたしらだからな。一緒にイクのは無理だと思うが。てか、ちとせが一人でイキっぱなし?」

 加えて、ミリが追い討ちとばかりに、これまた謎な台詞を炸裂。

「わーっ! 放してください、放してくださぁぁぁい! 私は何処にも行きたくなんてないんですぅぅぅ! だから手を放してくださぁぁぁい!」

 それらを聞いて、半泣きになって暴れるちとせ。
 しかし、この二人がそんな訴えに耳を貸すはずもなく。

「だ、誰かたすけてぇぇぇ! あーん、志狼さぁぁぁぁぁぁん!!」

 必死の叫びも虚しく、初音に割り振られている部屋へと連れ込まれてしまうちとせなのであった。
 ちなみに、室内でちとせの身に何が降りかかったかは知る由も無い。
 ――ただ、余談ではあるが。
 次の日の出撃の間にて、

『ちとせ 療養中 完治まで、あと20ターン』

「あ、あれ? おかしいなぁ? ここのところ、ちとせさんには出撃をお願いしていなかったはずだけど……あれれ?」

 ママトトの将軍ナナスが不思議顔で首を傾げるという些細な出来事があったとだけ記しておく。









< おわり >





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