某月某日、とある法案が可決された………。

ー多夫多妻制度の可決………。

つまり、本人たちの同意があれば、何人でも奥さんや旦那さんが娶れるとゆう物である。

この法案がどんな結果をもたらしたか、ある少年を中心に紹介してみよう。


KANON〜多妻編 いつか、信じて〜

第一話 始まりの日に

作・ファントム


>視点・祐一

テレビの中から興奮したアナウンサーの声が聞こえてくる。

某月某日、名雪の家ーそして、俺が今居候している家でもあるーのリビングには、俺を含め10人が集まっていた。

アナウンサーが、今回決まった法案を、回りくどい教科書にでも出てきそうな説明口調で話している。

俺は周りを見渡してみる…月宮あゆ・水瀬名雪・沢渡真琴・天野美汐・美坂栞・美坂香里・川澄舞・倉田佐祐理…。

この八人は、驚きと喜びと疑問そして多少の不安が入り交じった顔をしている。

そして、そこから少し離れているもう一人の人物ー水瀬秋子ー秋子さんの表情は、驚くべきことに…無表情だった。

何を考えているのだろう…。

俺はどんな顔をしているのだろう…ふとそんなことを考えた。

驚き? 喜び? 安堵? 不満? 怒り? 悲しみ? それとも、秋子さんと同じような…無表情だろうか?

こうなった原因は、さっきからアナウンサーが話している今回決まった法案だ。

その内容は…少子化対策のためと言う名目で…先進国では初めて…ここ日本で…多夫多妻制度が可決されたとゆう物である…。

多夫多妻制度…言葉道理の意味だ。

簡単に説明するのなら、つまり、本人たちの同意があれば、何人でも奥さんや旦那さんが娶れるとゆう物である。

ぷっん

突然テレビが消えた…いや、いつの間にか俺は、リモコンを握っていた、俺が…消したのか? 

無意識のうちに消していた…。

誰かがー特に真琴あたりがー文句を言ってくるかと思ったが…みんな、沈黙している。

海より深い沈黙…数分経って、それを破ったのは、名雪だった。

「なんだか、大変なことになっちゃったね」

「そうだな」

素っ気なく答える、俺。

だが、確かにそうだ、大変なことになった。

…? 何が大変なんだ?

ふと、頭に浮かぶ疑問。

すると。

「あ、あう〜、よく意味がわかんない」

「うぐぅ、実はボクも」

あゆと真琴の声に再び落ちる、沈黙。

香里、美汐、佐祐理の三人が口を開くより早く、俺が説明していた。

「今回決まった法案は、多夫多妻制度ー平たく言えば重婚ーの導入とゆう物だ。

 実質的名目は、近年の少子化対策と言うことになっている。

 これは、先進国では初めてのことだ」

これ以上ないくらいの説明口調になってしまった…動揺しているのか? 俺は…。

「それじゃテレビと同じよ」

「もっとわかりやすく、教えてよ。祐一君」

あゆと真琴は、予想道理というか理解できなかったらしい。

ほかのみんなも同じような表情をしている。

意味は分かるが、理解できない。と、言ったところだろう。

俺も似たようなものだ。

「つまり、結婚出来る年齢になれば、本人たちの同意さえがあれば、何人でも奥さんや旦那さんを作ってもいい、という意味だ」

再び落ちる、沈黙。

俺の声で…知り合いの声で説明されようやく現実的になった。

そんな感じだろうか…。

「つまり、ここにいる全員ー秋子さんは違いますけどーが…」

栞が、確認するように声を上げる。

ーやめろ、言うな!!

心の中から、そんな声が響く。

…!? なんて…ことを考えているんだ…? 俺は…?

栞の声が続きを言う。

「…祐一さんと…」

耳をふさぎたい衝動に駆られる。

なぜかは…自分でも解らない。

「結婚できる」

栞の声が、きっぱりと事実を言い切った。

「…まあ、そうだな」

俺の声に今までの沈黙がーまるでダムが決壊したような勢いでー破られた。

ざわざわと響く声、みんな今回のことを喜んでる…当たり前だ。

今まだ抱えていた不安が、無くなったのだから。

不安、つまり…誰が…俺と…結婚するか…とゆうことがだ。

俺も、うれしいはずだ、誰も振らなくてすむ、傷つけなくてすむんだ。

そのはずだ…。

…ならなんで、みんなと一緒にはしゃいでないんだ、俺。

うれしいはずなのに…。

「よかっかね、祐一く…祐一君、どうしたの!?」

俺に話しかけたあゆが驚きの声を上げる。

「うれしく…ないの?」

その声に、みんなの顔がこっちを向く。

とたん、ざわめきが…消える。

「うれしくないの?」

あゆがもう一度同じ問いを発する。

「たぶん…うれしいと思う」

「たぶん…て、どういう意味よ」

香里が、あきれ果てた声で言う。

「よく分からない…」

「………」

誰も口を開かない。

「よく分からない…なんだか、頭の中ぐちゃぐちゃで…わけわかんなくて…うれしいと思うけど…なんだか」

「………」

みんなが不安そうに顔を合わせる、そりゃそうだろう、せっかく問題が解決したの、俺がこれじゃ…でも。

「…時間をくれないか」

『…え!?』

今のが、誰の声かは、わからなっかった。

ひょっとしたら、全員の声かもしれない。

「考える時間を、くれないか?」

「なんについて、ですか?」

美汐がー気のせいかー責めるような口調で聞いてくる。

「今回のことについて、だ」

「………」

誰も、何も言わない…。

「だめ、か?」

「………」

「…解りました」

「倉田さん!?」

佐祐理の声に、香里が反応した。

「ごめん、な」

俺は、立ち上がるとリビングの出口に向かう。

扉を開け、外に出ようとする…と。

「祐一」

舞が声をかけてきた。

「…祐一の…私…たちが、好きだって言葉…信じてもいい?」

俺は、振り向かずに答える。

「…ああ」

「解った。私は、祐一を信じる」

「…ああ」

そう答えて、俺はリビングから出ていった。


あとがき

どうも、ファントムです。Hrioの部屋初投稿作品は、いかがだったでしょうか。

突然可決された法案、多夫多妻制度それに戸惑う祐一。

彼がこの法案をどう思い、どう考えたのか。

それを表現できたら、と思い書いてみました。

祐一のとまどいは了承学園の中での長岡志保が元になっています。

また全体的な心理描写には、アージュの君が望む永遠を参考にしました。

第二話では、祐一が多夫多妻制度をどう思っているかを、書きたいと思ってます。



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