身体に大きな揺れを感じて、私は目を覚ました。しかししばらくは
自分がどういう状況におかれているのか、わからなかった。
それくらい熟睡していたらしい、寝台車のゆれるベットの上だと
いうのに。
山口県在住の友人を訪ねるため、昨夜、東京駅から寝台特急
「あさかぜ3号」に乗車したのだった。東京駅の
9番ホ−ムを「あさかぜ3号」が出たのは19時20分のことだった。
しばらくは、車窓を過ぎていく夜の町を眺めたり、ガイドブックを
読んだりしていたが、次第に眠くなりいつのまにか眠り込んでいた。
もう日付けが変わっている時刻には違いないだろうが、なんだか
時計を見る気がしない。
列車は止まっているようだ。車内は見知らぬ乗客たちの寝息が
聞こえるだけで静かだ。そのうち、がちゃがちゃと車両の連結を
付けたりはずしたりする音が聞こえてきた。この作業のための
停車らしい。
「今、どこにいるんだろう?」
私は身体を起こして、窓にかかる妙に細長いブラインドを少し
上げた。夜中の駅前を見て、どこの駅か、どこの町かが
わかるとは思わないがどんな町の駅に自分がいるのか知りたい
気持ちでいっぱいになった。
窓から外を見て、私は一目で自分が京都駅にいる事を知った。
天気が悪くて星ひとつでていないまっくらな夜空に京都タワ−が
煌々とした姿をみせていたのだった。
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