ヒロシマのうた


「ヒロシマのうた」(今西祐行著)

この作品は、「わたし」という元水兵の稲毛さんの目を通して語られる戦争小説である。8月6日に被爆したヒロシマの救護兵として稲毛さんは働いていた。地獄絵の中で彼は、瀕死の母と赤ちゃんを見つけ、かろうじて赤ちゃんだけ助け出し、通りすがりの人に赤ちゃんを預ける。それから何年か後、ラジオの「たずね人」のコーナーをきっかけに、稲毛さんと赤ちゃんを預かった人が再会する。その人は自分の実の子を原爆で亡くし、原爆の後遺症で夫も亡くし、預かった子(ヒロ子ちゃん)をどうしようか悩んでいたのだ。しかし、稲毛さんに会って、当時の話をきくと、迷いは吹き飛び、自分の力で育てることを決意する。しかし、ヒロ子ちゃんは、おばあちゃんに「拾われた子のくせに」といじめられ、母子は家を出、ふたり洋裁学校に住みこむことになる。そしてまた数年後、稲毛さんのもとに「ヒロ子ちゃんに本当の話をしてやってほしい。」という手紙が届く。稲毛さんは原爆記念の日を選び、中学校を卒業したヒロ子ちゃんと再会する。そして、やっとの思いで真実を話す。話を聞き終わったヒロ子ちゃんはにっこり笑って「私、お母さんに似てますか。」と…。その夜、ヒロ子ちゃんは、稲毛さんのために徹夜でワイシャツを縫い上げ、プレゼントする。そのワイシャツには、稲毛さんのイニシャルと原子雲のかさが刺繍されていた。「何もかも安心です。」と涙をそっとぬぐうお母さん。稲毛さんはワイシャツを胸に15年の年月を思い出しながら帰っていく。


ヒロ子の手紙 

「ヒロ子になりきってワイシャツに手紙を添えよう」という学習より