試 乗 記 録


 

No.002 東京都交通局、京浜急行電鉄、京成電鉄

「エアポート快速特急」 羽田空港 成田空港  試乗日 1999年2月2日(火)

 

羽田空港京急線ホームに佇む、600系「エアポート快速特急」成田空港行

 

 日本初の「空港間連絡列車」が誕生した。 三者線直通で知られる都営地下鉄、京急、京成両電鉄が運行を始

めた「エアポート快速特急」である。 これは去年11月18日に開通した、京急線羽田空港乗り入れの一大目玉で

ある。 初乗りとしては少々遅いと思われるが、今日はここ京急「羽田空港」駅より、試乗していこうと思う。

また、今回比較試乗として帰路は、JR成田・総武・横須賀線「快速エアポート成田」に乗車してみることにする。

 

   

羽田空港ターミナル「ビッグバード」        羽田空港ターミナル地下1階コンコース

 

 2月2日、午前11時。 開業したばかりの羽田空港駅ホームに立つ。 ここは空港ターミナル地下3階に位置して

おり、地下2階改札口及び、ターミナルビル地下1階とは、それぞれエスカレーターで結ばれている。

 ホーム上は、時間帯的にそれほど混雑する時間ではないのだが、それでもかなりの乗客が見られる。 京急およ

び乗入れ各者のPRが功を奏しているのだろうか? 確かに羽田空港では先輩格である「東京モノレール」線の乗

客が若干減少しているとも聞く。 こうして見ると「ターミナル乗り入れ」は、まずまずの成果を挙げているようだ。

 

 しばらくホームで待つと、「羽田」改め「天空橋」側より、二つのヘッドライトを輝かせて、京急600型特急「羽田空

港」行が入線してきた。 これが折り返し成田空港行「エアポート快速特急」(以下「エア快」と表記)となるのである。

停車すると、すぐさま方向幕の表示が変わった。

 

京浜急行の主力1000形

 

 「エア快」運用車両は、京急側が600形、都営側が5300系、京成では3400・3700系が限定使用されている。

ぜひとも京急では新鋭2100型を使用して欲しいところだが、こちらは京急の虎の子で、本線「快速特急」運用が

主体であるので、贅沢なお願いであろう。 ちなみに2100形には、新製時から「成田空港行」「上野行」の方向幕

が用意されているので、今後期待大である。 それでもこの600型、クロスシートを採用しており、通勤形としての

快適性では上位に位置される車両である。 京急は首都圏では珍しく、積極的にこういった車両を導入している会

社である。 他社とはサービスの方向性に違いが見られる。

 

 早速、先頭車両601−8号車に乗り込む、もちろん乗車位置は最前列固定シートである。 ここは運転席の真後

ろであり、かぶりつきの展望が楽しめる。 11:18分、定刻通り羽田空港駅1番線を後にし、羽田空港の地下に建

設された「羽田空港トンネル」を、轟音を伴いながら走り始めた。 乗客は時間帯的なものもあるが、ビジネス客が

多く、大半の座席が埋まり立っている乗客も出ていた。 空港間連絡列車と言う事で、アタッシュケースを持った乗

客がいるものと思ったが、これは肩透かしだった。

 列車は「羽田空港トンネル」内を快調に飛ばし、「天空橋」を通過すると地上に出てくる。 地上駅である「穴守稲

荷」を通過すると、また地下に入り「大鳥居」を通過する。 このあたりは、近年変化の著しい「空港線」の中でも、

最も変化のあった区間である。

 

     

 空港直下の地下トンネルを快走していく     まだまだ昔ながらの姿も残る空港線(糀谷)

 

 「糀谷」(こうじや)を過ぎると、単線急カーブの「空港線蒲田第一踏切」を通過し、「京急蒲田」1番線に入線した。

この辺だけは、昔のままの情景が残っている。 しかしながら、今までのんびりと電車が行き来していた、「空港線」

の快速運転は新鮮であった。 この蒲田でも乗客が入れ替わったが、先ほどよりも乗客が増えた様だ。

余談だが、蒲田は空港線関連で、快速特急停車駅に格上げされ、便利になった町である。

 

 蒲田を発車すると、しばらく本線下り線を逆走した後、渡り線を介して本線上り線に入る。 下り本線上では交換

待ちの下り特急が停車して、こちらの通過を待っていた。 渡り線を通過すると運転手が、マスコンをフルノッチ投

入した。 ここからは本線「快速特急」と同じく、120km/h運転区間に入る。 「平和島」の手前で、高架線に上り

詰めると高速運転に入り、一気に通過駅を通過していった。 そしてあっという間に「品川」駅に到着していた。

この区間は、「快速京急」を物語る区間であり、最前列に座ると、まるで「ジェットコースター」に乗っている様な錯覚

さえ覚える。

 

    

京急線内は自慢の俊足で疾走 (左:京急800形 右:京成3700系)

 

 「品川」を出発し、次の停車駅である「泉岳寺」より都営浅草線区間となる。 ここで乗務員が交代し、押上までの

ハンドルを握る事になる。 この都営区間でも快速運転が行われており、「三田」・「新橋」・「日本橋」・「東日本橋」・

「浅草」しか停車しない。

 

 しかし、浅草線には待避施設が無い為、押上にて先行列車を追い越すまで続行運転となる。 なおこの「エア快」

の他、「青砥」にて上野発「エアポート特急」に接続する、「エアポート特急」も同様の運転形態を取っている。

 先行列車が直前にある為、それ程高速走行をしないのだが、ここも今まで快速運転がなかった区間であるので、

新鮮な印象があった。 しかしこの区間が京急空港線内と共に、列車設定上一番苦労した区間であると思う。

ここを敢えて快速運転にしたのは、特記に値すると思う。 しかしこの列車の性格上、本来はもう少しスピードアップ

したい所だろう。

 

 都営線に入ってからの車内は、主要駅で大量の下車があった為か閑散としており、立ち席客は殆ど見られなくな

った。 また残っている乗客も殆ど入れ替わった様だった。 この事からも空港間連絡というよりも、都心部と両空

港間連絡というこの列車本来の性格が伺える。 やがて列車は押上に到着するが、ここでは先行普通「青砥」行が

待避していた。 これは、京急1500形(VVVF車)が使用されていた。 ここで再び乗務員交代が行われ、これら京

成線内へと足を進める事となる。

 

 ここでは先行列車からの乗換えがあり、若干乗客が増えたが、まだ5〜6割乗車という感じである。 なおここで列

車名が「エアポート特急」に変更となる。 京成線内では最優等列車に「スカイライナー」があり、この空港間連絡列

車についても、青砥以降は、上野発特急と同じ種別の列車として運転されている。 だからこそ、あえて京急の列車

種別である、「快速特急」を使う必要がないのだろう。 また使ったところで紛らわしいだけで、使う効果がまったくと

いって無いからだと思われる。 確かにそう考えると、うなずける。

 

    

   青砥〜京成高砂間の複々線区間      「スカイライナー」AE100系も時折すれ違う

 

 京成押上線内は、ノンストップで走行していく事になる。 そして架け替え工事中の四つ木橋梁を渡ると、程なく2

段式高架駅である「青砥」駅に到着していた。 青砥では上野方面から到着した、3300系普通列車からの乗換え

客で、少々車内が賑やかになった。 青砥発車後は、次の「京成高砂」までの複々線区間を、ゆっくりと走行し高砂

駅に進入した。 ちなみに改正前までの京急600形の運用はここが北限で、この先は新運用区間である。

(上野〜青砥間についても同様)

 

 ここは京成金町線と、北総開発鉄道の分岐点である。 高砂発車後は高砂車庫付近まで、同時発車の金町行普

通電車と並走して走り、やがて北総線が高架でクロスオーバーしていった。 それからしばらく走ると、江戸川橋梁

を渡り千葉県内へと足を踏み入れていた。 確かに京急線内に比べると、スピードを出していないのだが、それでも

快調な足取りで通過駅を飛ばしていく。 やがて千葉県内最初の停車駅である「京成八幡」へ到着した。

 

 その後も快調に列車は走っていくのだが、この辺は丘陵地帯を抜ける為か、カーブと勾配が多く、中々車窓を飽

きさせない。 そんな中ふと車内に目をやると、いつの間にか一部空席が見られる程、乗客が減少していた。

元々昼休みの時間帯なので、乗客数としてはこんな物だろうと思われる。

 西船橋付近で一瞬オレンジ色の武蔵野線とクロスし、程なく建設中の高架線が右手に見えてくると「京成船橋」で

ある。 この船橋駅付近は現在連続立体化工事が進行しているが、完成はまだまだ先の様である。 「船橋」を出

ると次は「京成津田沼」である。 ここでは千葉方面と成田方面が分岐する他、新京成電鉄も接続している。 この

「津田沼」を出ると、先ほど分岐した千葉線がオーバークロスしていった。

 

千葉県中部の丘陵地帯を走り抜ける(京急600形使用の「特急上野行」)

 

 この先「八千代台」「勝田台」と、名前通りの丘陵地帯を走破し、やがて左手に、印旛沼が見える様になってきた。

ここでは、普段の600形の車窓からは想像できない程、のどかな風景が広がっていた。 そんな中を走っていくと、

やがて列車は「京成佐倉」に到着していた。

 「佐倉」を発車すると、まもなく右手に広がる「宗吾車庫」を通過する。 ここは京成電車の寝倉で、AE100系を始

めとした、京成の各種車両が留置されていた。 この「宗吾」を通過すると、まもなく「京成成田」に到着となった。

 

 この成田では3分程小休止の後、「空港第二ビル」駅に向けて発車した。 この区間は成田空港開業に際し、旧

「成田空港」駅(現東成田)まで開業した区間で、比較的線路状態が良い区間である。 この600形はフルノッチ

110km/hで、ラストスパートを披露していた。 しかしこの区間は、過去の空港反対闘争に関係してか、線路敷は

完全にフェンスに仕切られており、まるで新幹線の様であった。

 

 やがて東成田行線路と分岐し、空港ターミナル方面へと向かう。 ここで僚友600形エアポート特急「羽田空港」

行と行き違う。 その直後「成田空港トンネル」へ進入するとすぐさま単線になり、「空港第二ビル」駅へ到着する。

なお隣のホームはJR線のホームとなっている。 この「第二ビル」駅を発車するとJR線と並走して走り、程なく終点

「成田空港」駅へ滑り込んだ。 13:02分の定刻到着であった。

「羽田空港」から乗換えなしで、ここまで1時間45分。 非常に快適な旅であった。

 

  

    成田空港地下ホームに到着          新東京国際空港(第一ターミナル)

 


ページ先頭へ戻る  次のページ(成田空港の様子)へ進む  試乗記録メインへ戻る