帰 路 (比較試乗)
東日本旅客鉄道 成田・総武・横須賀線直通 快速「エアポート成田」号
しばしの成田空港見学を楽しんだ後は、帰路に付く事としよう。
成田空港は第2旅客ターミナルが完成し、規模も大きくなっていた。 しかし諸問題により拡張工事が遅れ、今だに
滑走路1面で運用している為か、発着機・駐機とも少なめで、(とは言うものの、現状では最大限使用しているのだ
が…)少々寂しいものを感じた。 しかしながら、日本の「空の玄関」である事は変わらないので、各国各航空会社
の乗り入れがあり、バラエティーに富んでいた。
出発を待つ「エアポート成田」(1634F)
「成田空港建設反対闘争」・「羽田空港国際化論争」・「首都圏第3空港計画」と、この空港を取り巻く環境は厳し
い様ではあるが、我々利用者としては、1日も早い問題解決を望みたいと思う。
さて、成田空港駅JR線ホームに降りてみようと思う。 京成線ホームの横に位置する、1面2線の島式ホームに
は、先行する15:43分発の253系「成田エクスプレス26号」と、これから乗車する16:00発、E217系「エアポー
ト成田(1634F)」が入線していた。 そしていよいよ定刻となり、私を乗せた「エアポート成田」は、成田空港地下
ホームを静かに離れていった。 出発後、一通り車内を見渡してみる。 平日とあってか乗車率は余り高くないよう
で、かなりの空席が目立っていた。 「空港第2ビル」を過ぎると、京成線が分離していくが、まだまだトンネル区間
が続いていた。
すっかり成田アクセスの「顔」となった「成田エクスプレス」
この成田線空港支線は、本来成田新幹線として着工した路線であるので、現状は単線ながら(行き違いの為、
途中に信号所が設置されている)複線新幹線規格の路盤・トンネルを持っている。 それもあってか乗り心地はま
るで新幹線の様である。 やがて成田空港トンネルを抜けるが、京成線と同じ様に丘陵地帯を走るので、短いトン
ネルと高架線が連続している。 この良い線形の区間をE217系は快調に飛ばしている。
ところでこのE217系、総武・横須賀線の慢性的混雑を解消するために投入された車両で、区分的には「近郊
型」に属するが、車内は209系に準じたロングシートになっており、車体も4扉車となっている。 この車両によって
JR東日本においては、「近郊型」・「通勤型」の区別は無くなったとも言える。
しかしこの車両の一部には長距離乗車を考慮してか、一部にクロスシートを採用しており、(具体的には基本編成
の成田寄り)やはり「近郊型」であると実感してしまう。 ちなみに今回の試乗では京急600型との比較の為、クロス
シート車に乗車している。
ここでシートの話が出たので、E217系のシートについて触れておく。 基本的にシートの座りごこちはロング・クロ
ス共大差が無く、209系などと同じ腰の部分に出っ張りの有るタイプで、シート素材も適度な硬さで、長時間の乗車
でも余り疲れないタイプである。 シートでいえば京急600型より快適である様である。 しかしこれは私の体形が
標準的な日本人体形であった為であり、体の大きさによっては、腰部分の「こぶ」がうまくフィットしないのでは?と
思ってしまった。
この成田空港線区間も、成田山新勝寺が見えてくると、本線へのスロープ区間に入る。 ここで一旦信号停止。
これは、成田で併結する鹿島神宮発542Mを先に通す為である。 やがて542Mが通過すると、当方も静かに
動き出し、やがて成田駅に到着した。 成田では、先の542Mとの併結作業が行われた後の発車で、16:21に発
車となった。 成田の先は、成田線内唯一の通過駅となる酒々井を通過し、一路成田線をひた走っていく。
やがて佐倉に到着となり、これより総武線に入る事になる。 乗客はこの辺でもまだ少ない方で、殆ど立ち客は見
られない。 しかし中高生などが乗車してきており、先程より賑やかな車内になってきている。
そして暫く走ると、千葉へと到着していた。
千葉では乗客の変動があり、乗車率も少々上がった様であった。 千葉は16:34発で、これから帰宅ラッシュ時
間帯の総武快速線をひた走る事となる。 やはりここは、京葉間のメインルートたる路線である。 千葉を出ると、
黄色の総武緩行線や、「成田エクスプレス」などの特急がすれ違っていく・・・。
乗客もラッシュアワーであるので各駅ごとに増えてきている。 そんな夕暮れ迫る京葉地帯を快走することしばし、
江戸川を渡り東京都内に入る頃には、すっかり日も暮れかけていた。 錦糸町を過ぎ、馬喰町、新日本橋と地下区
間を走ると、東京駅へ到着となる。
この東京ではしばし停車の後、横須賀線として17:36に出発した。 乗客はここで一段と多くなり、帰宅列車然と
した車内となった。 やがて、品川で長い地下区間から抜け出し、西大井、新川崎、横浜と、今度は京浜間を走り抜
け、やがて大船へ到着した。 大船からは東海道線とも分かれ、横須賀線へと足を進める。
この辺りに来ると、乗客数も一気に少なくなってきた。 鎌倉を過ぎると、付属編成を切り放す逗子に到着した。
ここでしばし停車の後、横須賀、衣笠と停車し、終点を目指していく。 この辺はトンネルの多い区間であるが、すっ
かり辺りが暗いので、視覚的には区別できなくなっていた。 そしてしばし走ると、終点久里浜へと到着していた。
時刻は19:05分で、約3時間の旅であった。 しかし、その旅は比較的快適であった。
終点、久里浜駅へ到着
最後に、今回は「エアポート快速特急」と、JRの「エアポート成田」にそれぞれ乗車してみたが、やはりそれぞれに
列車の性格が異なっている様であった。 たとえば「エア快」では、長年に渡る「3者線直通」の集大成的な列車であ
り、京急線内の「快特運転」や、今回初めて行われている都営線内の通過運転など、各社とも最大限の速達化に
努め、「看板列車」として育てようとしている。
また一方の「エアポート成田」であるが、これは元来の総武横須賀直通列車を成田空港に延長したものであり、
愛称をつけることにより、成田空港直通路線である事を、アッピールするのが主目的の様だ。 たしかに実態的な
運転形態は、他の横須賀・総武快速線と変わり無い。 またJRでは、成田空港直通列車としては特急「成田エクス
プレス」が主力であり、あくまでも路線全体として、成田空港直通である事を印象付けるものであると思われる。
また、「エア快」も一番走行距離の長い京成線内では「特急」運転になるなど、ひとつの列車でも担当会社で性格
が異なるのが分かった。 これは、京成線内では「スカイライナ」という特別列車があり、この列車との関係で仕方
が無いのであろう。 しかしながら京成としても、「スカイライナー」に追い抜かれないスジを用意するなど、それでも
置かれた環境下で、最大の速達化を達成している。
また、どちらも京浜地区と成田空港を直通する列車だが、以外と直通客が少なかったようだ。 しかし両者とも区
間利用は活発であり、それなりの成果を挙げていると思う。
現状では、まだまだ問題点が無いとはいえない「エアポート快速特急」であるが、運行各者とも看板列車に育て上
げようとしているので、今後の発展に期待したいところである。 また、「空港連絡列車」という列車自体の発展につ
いても、他の交通機関同士の連携を強める為にも、必要と思われる。
― 終 ―