試 乗 記 録 No.007

大幹線の小支線(東海道・山陽線編)

Page 1  山陽本線 和田岬支線(兵庫〜和田岬)  取材日 2000年3月26日(


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  東海道本線と山陽本線を分ける神戸駅から、一駅南下した所に兵庫駅

 という駅がある。 この兵庫駅から約2.7キロ、僅か一駅間の支線が分岐

 している。 この路線は、山陽本線の前身である山陽鉄道が建設した支線

 である。 こちらは通称「和田岬線」と呼ばれるが、現在でも正式には山陽

 本線の一支線である。


(左)兵庫駅に到着したキハ35系

 

 同線は当初、和田岬近辺の港湾への貨物輸送が主目的であったが、沿線が重工業地帯化してくると、工場出勤

者の足とされ、今日まで運転が続けられている。 まずは、この「和田岬線」の旅から紹介してみようと思う。

 

  高架上の「本線」ホームから階段を降りると、階段の踊場になって

 いた。 このまま階段を降りると、駅出口に出るのだが、向かって右手

 にも改札が存在している。 この改札こそが「和田岬線」専用の改札口

 である。 形態としては、関東で言うならば「鶴見線」と同様で、他の線

 区とは完全に分離された形態になっている。

 

 


 しばらく様子を観察していると、改札に設置された自動改札機に、定期券を通して通勤客がどんどん通り過ぎてい

った。 この辺は本当に「鶴見線」とよく似ている風景である。

 私は「周遊きっぷ」を持っていた為、自動改札口とは別の位置にある有人改札を通り、構内に入ってみた。

そして以外と長い通路を歩いて行くと、やがて高架上に位置したホームにたどりついていた。 ここは高架ホームと

言っても、本線ホームに比べれば、かなり低い位置にあった。 それでは、構内の様子を眺めてみよう。

 

  和田岬方面へのホームは一面しかないが、機回しが出来るの配線となっ

 ており、2線配置になっていた。 また和田岬方向を眺めると、本線と接続す

 る渡り線と、和田岬方面への線路が分岐していた。 なお、構内は電化され

 ており、電気車の留置などに使われているのではないだろうか?

 列車が到着すると次々に乗客が乗車していく・・・


 変わってホーム上に目を移してみよう。 こちらは先程列車が出発した直後なので、余り人影が見られなかった。

しかし、和田岬からの折り返し列車が到着する頃には、かなりの数の乗客がホームに溢れ、他線区の通勤時間帯

と同じ風景になっていた。

 

 やがてホームには黒煙を吐きながら、和田岬からのキハ35系6連が入線してきた。 降車客が降りるやいなや、

次々に乗客が車内に吸い込まれていった。 私も早速乗りこんでみたが、車内はまさしく通勤列車で、すし詰め状

態であった。 やがて前方の出発信号が青に変わると、ゆっくりと列車は動き出した。 しかしこの編成には、エンジ

ンを撤去したキクハ35形が連結されている。 その為か、床下のエンジンは大きな唸り声を上げるものの、牽き出

しはかなり「ゆっくり」で、重そうだった。 まあ、これだけの人数を乗せている事を考えれば、仕方ないだろうか? 

 

 やがてスピードが十分に出ないうちに、構内外れのカーブに差しかかっていた。 このカーブは高架から地上に降

りる為にスロープ状態になっている。 ここでは「重力」を利用して、列車は加速して行く・・・。

そのスロープを下りきる頃には、既にエンジンは切られており、あとは惰行で和田岬を目指す事となる。

 

   和田岬線の車窓

 (左)川崎重工業の工場では
    223系の姿もあった

 (右)運河をゆっくりと渡る

 

 車窓の方は、国道2号の陸橋を潜るとまもなく「川崎重工業」の工場が見えてきた。 この工場には引込み線があ

り、そこには量産が進む223系電車の姿が確認出来た。 ちなみにこの辺りまで架線が張ってあったので、多分こ

の工場からの車輌回送の為に、電化されていたのではないだろうか? やがて工場の脇をかすめて行くと、前方に

は運河が見えてきた。 かつてここは「貯木場」だったらしく、古い和田岬線の写真では、運河に沢山木が浮かんで

いたのだが、今では殆ど面影がなかった。 そんな運河をゆっくり渡り切ると、両側を工場・住宅に挟まれた線路を

ゆっくりと進み、やがて和田岬駅構内に進入していた。

 

 ホームに到着すると、一斉に乗客が降車していくのだが、肝心のホームが狭い為か、かなり時間が掛かっていた

様である。 私も混雑の中、列車から降りてみた。 和田岬駅の駅舎はかなり古くから建っている建物で、思った以

上に立派な建物をしていた。 だが現在では駅員は無配置で、乗客もそのまま通り過ぎていた。

 またホームの途中には、定期券利用者専用の出入口が、数カ所設けられていた。 ただ別にこちらも駅員がいる

という訳でもないので、まさに最初から、定期券所持者のみの利用を想定した作りになっていた。

 

   (左)意外と?立派な作りをしていた
    和田岬駅の駅舎

 (右)ホームの途中には定期券利用者
    用の出入口が多数あった

 

 一方駅前の方ですが、てっきり工場地帯と思っていたものの、以外と住宅も多く、マンションも建っていた。 この

事から考えれば、思った以上に沿線には人口が有りそうな感じである。 ただ和田岬線は、朝夕しか運転しないの

で、いつも住民はバス等を使い、神戸方面に向かっているのではないか?と思われる。

 

 なお和田岬線のダイヤですが、取材時点で平日と土曜が朝方に6往復、夕方に8往復の計14往復走っていた。

一方の休日ダイヤですが、朝夕それぞれ1往復の計2往復しか走らないダイヤになっていた。 この事からも、完

全に工場出勤者輸送に特化したダイヤ構成となっているといえる。 またこの辺は、鶴見線大川支線の運転形態

にも似ているだろう。

 

 ところで、折り返し時間までの時間を利用して、この線区の主役「キハ35系」を観察して見る事としよう。 このキ

ハ35系は元々、関西・奈良線で活躍していた車輌であったが、同線の電化により余剰となった車輌が転配され使

用されている。 なお転配と同時に、和田岬線で残っていた旧型客車(オハ64形)の淘汰が実施されている。

 

 また旧型客車時代と同じく、キハ35系も「和田岬線」仕様に改造され、使用されている。 まず高速運転をしない

事から、一部車輌はエンジンが撤去され、付随車となっている。(キハ35形→キクハ35形) その他、全駅で和田

岬に向かって右側にしかホームがない為、反対側の出入口扉が撤去されている。 この点も、和田岬線用車輌の

み見られる特徴である。(一部扉は「非常口」として使用されるため、現存している。)

また方向幕は、本線を走る電車と同じ字体で書かれており、この車輌には不釣合いな感じがした。

 

   (左)「和田岬線」専用形式(?)
    キクハ35形

 (右)ホームが無い方の出入口扉
    はこの様に閉鎖されていた

 

 一通り駅構内と車輌の観察を終えたので、今度は兵庫駅に戻る事にしよう。 帰りの列車は、行きの混雑とはう

って変って、閑散としていた。 それでも、一両に5人以上の乗客が乗っていた様である。 やがて発車時刻となり、

私を乗せたキハ35系はエンジン音を唸らせ、和田岬駅を離れて行った。

 兵庫駅までの戻りは逆に、緩やかなに上り勾配になっている。 そんな線形をゆっくりと、走りぬけて行く・・・。

この閑散とした車内から眺める風景は、どこと無く「殺風景」で、同じく「都会のローカル線」である鶴見線に非常

にそっくりだった。 

 

 やがて先程の川崎の工場を通り過ぎると、兵庫駅の高架ホームに戻る「スロープ」に差しかかっていた。 ここで

再度ノッチが入り、床下のエンジンが唸り声を上げ始めていた。 やはりここでも、エンジンの非力さが目立った様

で、「よっこいしょ」と言った感じでスロープを登っていた。 このスロープを登るともう駅構内に入っており、短かった

和田岬線の旅も終りとなった。 ちなみに一駅区間という事で、全線に渡り車掌による車内放送は、省略されてい

た様である。 

 

 現状では工場勤務者が乗客の中心なので、定期券両者の割合が極端に高く、実際に和田岬線単体では、それ

程の収益は無いのではないかと思われる。 また不況の影響で、工場勤務者も若干減ったとも言われている。

そして最近になって、和田岬線沿線を地下鉄が走ると言う計画も出ていると言う。

和田岬線沿線にも、今後大きな変化が見られる可能性が無いとは言えない・・・。

 

− 終 −

 


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