ドイツのF1

ドイツ人にとっての「Formel 1

●ドイツでの「Formel 1」人気

 前回も書いたように、ドイツではシューマッハーの人気はすごい。子供から大人、老人までがシューマッハーの名前を知っている。F1の特番のようなものもたまにあった。そこにシューマッハーがゲスト出演して「このコースはこう走る」とか解説したりしていた。

 ドイツから帰ってきて日本でドイツ語学校へ行っていた時の話だが、自己紹介をする時に私は必ず「Formel 1 が好きだ」と言っていた。その時どの先生も老若男女問わず必ず反応を示す。「ミハエル・シューマッハーを応援してるの?」と具体的に聞かれることもあったが、たいていは、誰を応援しているか聞かれた。私がシューマッハーだと答えると、「彼はとても速いよね。」と得意そうな返事が返ってきた。この先生もF1を見るのだろうか?と思えるくらい真面目でおとなしそうな女の先生すらもF1を知っていた。

 日本で、そんなに有名な日本のスポーツ選手がいるだろうか?野球選手に数人いそうだが、現役ではほとんどいないと言ってもいいだろう。

 私の住んでいた街のデパートでは、フィルムを現像に出すとF1をイメージした袋に入ってネガと現像された写真が帰ってきた。「写真が現像されるのが速い!」と言いたいらしい。F1が一般市民に受け入れられている証拠である。

 シューマッハーが出てくるまで、ドイツでのF1の人気はかなり低かったと聞く。過去はある程度人気はあったものの、一時期死亡事故が多かったせいか、「あんな危ないスポーツ」と見向きもしなくなったらしい。ところがシューマッハーがデビューした。彼はあっという間にトップの座についた。すると、ドイツでのF1人気もうなぎ上り。なぜ、こんなに人気が出たのだろうか?

 

●ドイツの「Formel 1」視聴率

 ドイツ(ヨーロッパ)では昼間生中継している。しかも、土曜日・日曜日と休みの真っ最中だ。もし、日本で昼間の生中継があったとしても、視聴率はかなり低いだろう。ドイツでは50%を切ることは、まずない(と聞いたが本当かどうかは疑わしい)。

 なぜ土、日曜日の真っ昼間に、そんなに視聴率が取れるのだろう。日本では考えられない。日本人は、休みだとどこかへ出かけてしまい、家でテレビを見てる人は珍しい。休みの日に家にいるなんて、と思っている人が多い。しかも、土日は出かけたくなるようなスポットが日本にはたくさんある。そこがドイツとは違うのである。

 ドイツに限らずヨーロッパ全域にいえることだが、観光地などの例外を除き、少なくとも私の住んでいた街では土曜(第一土曜日は除く)の午後から飲食店以外の店は法律で全部閉まってしまう(1995年の時点)。日曜日も飲食店(カフェやレストランなど)しか開いていない。土日は街自体がとても静かだ。ドイツ人は土日を家族と家でのんびりと過ごすのが当たり前なのである(年頃の若者はどうだか知らない)。だから、家でテレビを見ていることはごく自然なのである。しかも、F1は昼食後ののんびりした時間に始まる。しかも、「Euro Sport」と「RTL」の両方が放送している(1995年の時点)ので、片方にCMが入ってももう片方で見ることができた。もし見逃してもRTLでは夜再放送する。最悪それが見られなくても次の日も再放送していた。CMは30分に1回。それが当り前だと思って日本に帰ってきた時の落胆は大きかった。

 

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