ツアー代金値引きで世も末か?

 私が旅行業界に就職した頃は、ビジネスマンの海外出張はといえばノーマル航空券を使っていました。ちょっと偉いサンにでもなればビジネスクラスで役員にでもなればファーストクラスが当たり前だったものです。この頃は航空会社も儲かっていたでしょうね。
 しかし今となっては国内の出張だって早割や特割を使う会社が多いですので、もしかしたらニッポンの物価はここ数年下がり続けているのかもしれません。しかし世の中には景気のいい会社もあるものです。もうだいぶ前に「談合疑惑」が新聞に取りざたされた会社なのですが、国内は全て普通運賃で出張や単身赴任者の帰宅など。(誰も普通運賃では買ってくれませんが)それから50才を越えたら夫婦で海外旅行。まだそんな会社があったんか?というような会社です。
 そのプレゼント旅行でヨーロッパ9日間のご旅行を申し込まれていました。お一人様約35万円で高単価のお客様だったのです。お客様が選ばれたのは全日空ワールド主催のハローツアーライトの商品でした。もう予約も取れていますし、お申し込み金もいただいているし、私のノートには7万円とその収益を記入済みの分です。その方からいきなり「キャンセルしたい」とのお申し出がありました。訳を聞 いてみますと「ANAカードのクレジットカードを持っていると直接申し込むと5%の割引があるのを知ってしまったから・・・」とおっしゃるではありませんか。このままではのこり3.5万円の収益だけでも確保するべく同条件にさせていただくのでお取り扱いはさせていただきたいとお願いして引き留めました。後で調べましたらJASのナイスウイングも同様の割引をしていました。
 たった5%の値引きで何を・・と思われるかも知れませんが、この商品の元々のコミッションが10%しかないのです。それを5%に削り、カードでお支払いの場合はさらに約2%をカード会社に手数料として引かれてしまいます。売上のたった3%が利益の商売なんて他にありますか?旅行業者の年商ほどアテにならないものはありません。その中の収益はそのわずか一部なのですから。
 ちなみに夕刊紙をにぎわしている激安旅行?なんか最初から販売店に返すコミッションなんか計上していないものが多く、電話のみで直接のみが多いのです。「JTB旅物語」販売できるのですが、たったの2%〜3%のコミッションしかありません。これをカードで支払されたら赤字にもなりまねません。あーやだやだ暗い話ばかりになってしまいました。                 

手話を覚えたい!!

 店頭にはいろいろなお客様がお見えになられます。話すことが不自由なお客様もけっこうご来店されます。こんな場合筆談になるのですが、対応が済んでからいつも「手話でも習おうか」と痛感するのですが、忙しさにかまけて一歩も前進いたしません。こんなボランティアを目的としない人でも習えるものなのでしょうか?ご存じの方おられましたらお教え下さい。
 九州のバスガイドさんなんかで熱心な方は手話でガイドが出来る人だっているのですよ。なんかこれって下手に英語を話せる人より価値があり、そしてかっこいいことと思いませんか?
 でも話すことが不自由なお客様ってこちらが理解していることを示しますとすごくいい表情で喜ばれるのですよ。 

本当に世の中不景気なのでしょうか?

 ボーナスの話題が出始めた頃から、旅行代理店のカウンターはもうナチス軍に攻め込まれた状態になります。アウトセールスどころではなくなり店に居残りしなくてはなりません。6月中旬から7月中旬ぐらいまでがそのピークになります。本来なら何か仕事がないかと思いながらさまよっているのですが、この時期は毎日遅くまで仕事をしているのに翌朝も早く出社しないと仕事が追いつかない・・のです。
 今の世の中、本当に不景気なのでしょうか?疑ってみたくもなります。企業は確かに動かないのですが、優良企業も便乗しているのではないでしょうか?と思えるほど今年の夏は好調なのです。昨年などは「グアム・サイパン」とか「韓国」など安くいけるところに集中した感がありました。それが今年はどういう風の吹き回しかまったく違います。夏のヨーロッパ!!それも単価が30万を超えるようなものがバンバン売れています。消費者の節約疲れもでてきたのでしょうか?
 もうひとつ私が不況を疑う理由があります。先日私は今年3回目の同僚の送別会に行きました。「こんな割に合わない仕事をしてられるかー」と他の仕事に就いた人や「こんな割に合わない会社で働けるかー」と同業者に転職した人。皆が皆、より待遇のいい会社に転職しているからです。断っておきますがいつも私が「安い安い」を連発している会社の給料も業界の中では決して安すぎるものではないのですよ。こんなことが続いてホントに今不景気?と思ってしまった次第です。

危ない会社が一杯の旅行業界

 1998年2月中堅のツアー会社(ホールセラーでは大手)のジェットツアーが倒産しました。なんせこの会社の社長が日本旅行業協会の副会長を勤めたことのあるほど、一時期波に乗っていた会社なので業界内に衝撃が走りました。業績は長引く不況のため良くはないが、つぶれるほど悪くなかった、というのが実状です。金融ビッグバンに備え債権を整理する子会社設立の書類がたまたま間違った先にFAXで流され、噂が噂を呼んで、「ジェットツアーは危ない」から数ヶ月後の倒産にいたったわけです。真っ先に店頭からパンフレットをおろしたのは大手ナンバー2の近畿日本ツーリストでした。近畿日本ツーリストが店頭からパンフレットを下げたという話が業界にパッと広がり、他の会社も同様にパンフレットを店頭から排除したのです。この近畿日本ツーリストの行為は確認を怠ったとも言えますが、お客様を保護しようとしたためで一概に責められるものではないと思います。まさに噂によって殺されたと言っていい例でしょう。この時ジェットツアーの旅行系専門学校の先輩が後輩の店舗に説明してまわることも行われましたが信頼の回復が出来ずあのような結果になったわけです。
 そもそも旅行業のうま味はお客様から先に旅行代金をいただき、後に支払という所にあります。しかし業界内で悪い噂が流れると一斉に取引先から支払の請求が来て支払いが出来なくなります。今ある旅行業社で一斉に取り立てが来て、倒産しない会社は数社だけだと思います。歴史のある旅行業社であってもいつジェットツアーのようになるかわかりません。また悲しいかな銀行は旅行業社に(その会社がいくら素晴らしいアイデアを持って営業しようとしても)担保なしで融資することはあり得ないのです。結局お客様は旅行に行けないばかりかお金も返ってこず、取引先も丸損をすることになります。これからこんなふうに倒産する会社がもっと出ると思います。予約の際はくれぐれもお気をつけ下さい。      

旅行業社はいつも荒稼ぎか?

 バブル期のこと出張や社内旅行に使うお金を少しでも社内に残そうと言う考えや、多角化の一環として旅行業に手を出す企業がたくさんありました。まさに雨後のたけのこ状態で不動産屋さんもサラ金屋さんも薬屋さんも旅行業社を作り、石を投げれば旅行業社に当たる状態でした。簡単に開業できてしまう仕事ですし、バブル期天井知らずに業績が伸びると信じて疑うことなかったのでしょう。しかしいつまで待っても独立採算がとれず、結局「10年間毎年赤字だった」から「廃業」に追い込まれた会社が少なくはありません。(この種の廃業はお客様にあまり迷惑はかかりません)
 もともと手数料商売で収益率の低い業界なのです。しかも業者の乱立でさらに利益率を落としてでも取扱高を伸ばしたいといった営業内容でした。取扱高といえば当時大手ではJTBと近畿日本ツーリスト以外の会社は営業マンのノルマを収益ではなく取扱高で管理していました。すなわち利益が少なくても旅行をとってくることが彼らの仕事だったのです。当然値崩れがおこります。パッケージ商品の値引きだって当たり前になってきました。定価で販売しても10%しか利益がでないのに5%値引きして5%の利益を確保したのです。
 唯一高い利益率をあげられたのは企業の旅行でした。それもこの長引く不況のため企業の財布の紐もかたくなり、以前のような大判振る舞いもかげをひそめてしまいました。
 これらの悪条件の中で大手四社の現状はJTBは別格として(リストラが相当進んでいる)近畿日本ツーリストは赤字が親会社の経営まで圧迫して昨年春季より全社員の給料10%カットで話題を呼び、日本旅行は債務超過に陥りJRに買い取られるのも時間の問題。(後は社名を残すか否かが問題の焦点になっています)東急観光はごくごく一部を残して海外旅行分野からの撤退にいたりました。大手でさえこの状態なのです。この先いったいどうなるのでしょうか?          

大いなる巨人JTB

 みなさんご存じのJTBは世界一の取扱高を誇る旅行業者です。 国内2番手の近畿日本ツーリストと3番手の日本旅行の2社分を足してもまだまだ、JTBにはおよびません。社員の待遇も旅行業界の中では飛び抜けていいんです。多角化も進んでいます。出版、イベント、広告、保険などから契約先の旅館に備品やお皿を売りつける会社まで。もちろん私たちの知らない仕事も手がけているのでしょう。あるていど年をとってラインから外れた人間はこれらの会社や契約旅館に左遷させられるのです。本当の意味でのリストラが進んでいる会社なのです。
 一人勝ちのJTBの次に利益を出している会社が中堅の格安航空券で有名なHIS。これも意外ですが大手業者はいったい何をしてるうでしょうか?しかし昨年からJTBが必死になってHISをつぶそうとしていると旅行業界ではささやかれています。(なんともおとなげない!!)店頭でHISより安く格安航空券を販売し始めたし、昨年9月の国内団体航空運賃の改正も、HISが国内の仕事に参入出来なくするため、だともっぱらの噂です。仕入れはボリュームが命というなら、これからも巨人のエゴがまかりとおるのでしょう。


債務超過の京阪交通社のリストラに悪徳社員の思うこと

 今年の初め頃、京阪交通社(従業員数530人)のリストラがニュースになりました。債務超過に陥った京阪交通社はいったん全社員を解雇し、20%の人件費を削除して、再雇用すると言った内容でした。関西方面ではなじみのある会社名なので聞かれた方は驚かれたかと思います。
 また他の大手数社も同じような大胆なリストラを計画している。という噂も流れています。京阪交通社は親会社がしっかりした鉄道会社だからこそ倒産せずに済んだのですが、並の会社がこの状態になればまず「倒産」は間違えないでしょう。京阪交通社のように(中途半端に)大きい会社では「固定費」がかさみ人件費20%カットで本当にそれならやっていけるのか?と心配します。
 でも悪いことばかりではないと思います。ここ2〜3年を持ちこたえた旅行業者とセールスマンは必ずまわりに敵がいなくなると思うのですがいかがでしょうか?(と言うほど今が悪すぎると思うのです。)同業の方おられましたら情報交換をしましょう。    

商品は皆、明日になると売れ残り

 旅行業と他の仕事との最大の違いは、さて何なのでしょうか?それは一切商品のストックが出来ない点です。旅行業者だけではありません。旅館ホテル・航空会社・鉄道会社も皆同じです。今日出発のツアーの残席は明日になると売れ残りになってしまいます。物を作ったり売ったりする会社なら、商品を倉庫に入れておいてまた明日売ることもできるのですが。しかし旅行業は今日の商品は必ず今日中に売ってしまわないとダメになってしまう、非常に厳しい商売なのです
 そしてそのことより効率の悪いことは、「ツアーに行きたい、航空券が欲しい」 お客様がたくさんいても空席や空室がないと販売することが出来ないことです。全ての旅行業界人が思っていることですが「全ての予約が取れたら倒産する旅行業者はない」と。
 これだけ不景気になってニッポン人は働き過ぎと言われる事は少なくなりました。しかし世界で唯一ピーク期のある変な国です。国民がこぞって大移動する「年末年始」「ゴールデンウィーク」「お盆」のことですが、もうそろそろ世界中から笑い物にされる休暇の取り方はヤメにしてはと思います。この時期だけツアーや航空券が2〜3倍の値段がするにもかかわらず早々と売り切れ。車で帰省したら身動きが出来ないほどの渋滞。別に全員が一緒に休みを取らなくてもいいと思うのですが・・・                 


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