3.自閉症の困難性

3.1 自閉症は対応が難しく大変困難な障害です

  自閉症の人は,治療も教育も圧倒的に困難な障害を抱えていることから,家族にとって,彼らと接し,育てていくことは,通常では考えられないほど大きな困難が伴うことになります。また,対応方法を誤ると,「行動障害」や「不適応行動」といった問題行動から「強度行動障害」まで発展してしまうことが多いのも,他の障害では見られない困難性です。

  表1は,日本自閉症協会千葉県支部が1999年に実施した保護者アンケートの結果です。



  子どもの年齢に関わらず,「固執・こだわり」及び「コミュニケーションをとりにくいこと」に困っていると答えた人が最も多く,いずれも6割の回答者がこれらの行動で困っています。また,回答の特長として,全般的に回答のバラツキが大きいことも知られました。これは障害の内容及び程度にみられる個人差を反映した結果であると考えられます。さらに,全ての保護者から,子どもが何歳になっても何らかの(複数の)行動で困っているという切実な訴えが寄せられていることも知られました。

  次いで,子どもたちの年齢ごとに,保護者が困っている子どもの行動を比較してみると,学齢期までは,子どもの年齢によって,困っている内容や,その困っている程度が大きく異なります。学齢期は,いわゆる問題行動が最も顕著な時期といえます。例えば,就学前は「身辺自立」など生活する上で最も基本的なことや,「問題行動」,「多動」で困っている人が多く,小学校以上では「自傷」等の2,3次障害や,「一人で留守番ができない」,「何もすることがない」,「思春期」といった就学前にはまだ顕在化していなかった新たな問題に次々と遭遇していることが知られました。

  高校以上では,回答に相変わらずのバラツキが見られますが,学齢期以下で顕著に見られた年齢の違いに由来した傾向が見られなくなります。
このように,自閉症という障害を生涯背負った彼らの行動も,保護者が受けとる困難性は彼らの年齢によって変化していきます。しかし,もちろん自閉症のもつ困難性が解消されたわけではありません。   



3.2 学校や社会でも自閉症は対応が難しく大変困難な障害です

 一般就労や自立状況から見ても,自閉症の予後は他の障害である知的障害や,精神障害と比較して,格段に悪いという現実があります。次は自閉症の困難性を表す実態です。

1) 自閉症の人の一般就労は1988年の時点ではわずか6%でした(現在は22%)。
2) 欧米では40 - 60%の自閉症の人が施設入所しています。
3) 行動障害児(者)研究会や日本社会事業大学の石井らの調査によって,著しい行動障害で社会参加や家族全体が危機的な状態に巻きこまれるほど家庭生活が困難になる,「強度行動障害」は自閉症の例が非常に多いこと(9割近くが自閉症)が知られています。
4) 横浜市の教育現場で,対処が困難になり教育センターに教育相談が持ち込まれる知的障害の事例の大部分が自閉症です。
5) 自閉症の人の3人に1人はてんかんを発症します。このことも困難性を増す一つの要因です。

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