6.学齢期の教育

6.1 自閉症児にとって教育に勝る治療はありません

 早期発見・早期療育を経た子どもたちは,社会に出るまでの長い期間,学校に通います。10数年にも及ぶ学校教育のあり方が自閉症の人の人生のあり方を左右すると言えます。自閉症は医療行為による決定的な治療効果が期待できない障害であり,教育に勝る治療方法はないと言っても言い過ぎではありません。

 日本自閉症協会千葉県支部のアンケート結果から,学校の教育に対する保護者の希望を集約すると,「保護者も参加した個別教育計画の作成」,「個に応じた教育の実践」及び「教育の一貫性」となることが知られました。さらに,教育の鍵を握る教員には,「自閉症に関する専門性」及び「教員としての資質」を求める声が多いことが知られました。

 以下に,アンケート結果(表4〜6)に基づき,保護者の希望を示します。


6.2 学校の教育システム・制度は持続的かつ個別的に

 学校の教育システム・制度に対する保護者の希望は,高い順に,1) 担任が替っても前年度の教育がスムーズ引き継げるよう,学年の引継ぎはきちんとやってほしい(67%),2) 学校に心理療法士などの専門家を配置してほしい(52%),3) 教育指導要領で知的障害と同じく自閉症を発達障害として位置付けてほしい(41%),4) 小・中・高の連携が希薄なので十分な連携をとってほしい(33%),5) 療育機関と十分な連携をとってほしい(30%)となることが知られました(表4)。

 このほかに,小学校普通学級では「通級制度を取り入れてほしい」,小学校特殊学級や中学校特殊学級では「高等学校に特殊学級を設置してほしい」が高い支持を得ました。

 これらの結果から,保護者の学校の教育システム・制度に対する希望は「持続的な教育」と「自閉症の特性を理解した教育の実施」,そして「教育に専門家を配置,活用」という希望に集約できることが知られました。

 このほかにも,保護者座談会では,現在一部の市町村において活用されている介助員制度や通級による情緒障害児学級の全県下での実施とともに,自閉症の困難性に対応した職員の加配について高い要望が出されています。


6.3 個に応じたきめ細かな教育を

 学校の教育内容制度に対する保護者の希望は,1) 一人ひとりの能力を引き出してほしい(65%),2) 将来を見据えた個別の教育計画を親の参加のもとで作成してほしい(53%),3) 夏休みなど長期休暇の指導を充実してほしい(プールなど)(46%),4) 子どもに様々な社会体験をさせてほしい(45%),5) 集団の中で社会性を意識した教育をしてほしい(42%),6) TEACCHプログラムを導入してほしい(29%)となることが知られました(表5)。

 これらの希望には,共通して「個々の子どもの特性や能力,性格に応じたきめ細かな教育を行ってほしい」という主張が伺えます。


 

6.4 教員は専門性と保護者とのコミュニケーションを

 教員に対する保護者の希望は,1) 深い専門知識や技術をもつ(56%),2) 問題行動の原因の分析と適切な対応ができる(55%),3) 子どもの課題を的確に分析できる(50%),4) 子どもの個性や人権を尊重する(46%),5) 親がささいなことでも相談ができる(38%),6) 親からの情報を大切に扱える(34%),7) 常に子どもの立場,視点を重視する(32%)となることが知られました(表6)。

 このほかに,就学前や小学校普通学級では「いじめの問題にき然と対応する」が高い支持を得ました。

 このように,教員に対して,「専門性」,「教員としての資質・姿勢」,「親とのコミュニケーション」といった希望が大きいことが知られました。

 

      

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