9.家族支援

9.1 保護者の悩み

 日本自閉症協会千葉県支部の保護者アンケートの結果(表15)から,子どもの年齢に関わらず,多数の保護者が「子どもの将来を考えると滅入る」という悩みを抱えていることが知られました。

 アンケート結果では,このほかに,就学前及び学齢期の子どもの保護者において,「子どもの世話に疲れる」及び「兄弟姉妹に関する問題に困っている」とする回答が多くみられました。

 成人した子どもの保護者では,「子どもの将来を考えると滅入る」とする保護者が6〜8割存在する一方で,2割近くの保護者が「特に困っていることはない」と考えていることも知られました。これは,成人したことによって子どもの問題行動が激減したわけではないので,保護者自身が彼らの行動に適応した(慣れた)結果とも言えます。このほか,ここではデータを示していませんが,子どもが入所している保護者から「子どもの世話に疲れる」,また在宅の保護者から「子どものために時間が拘束される」,「相談相手がいない」などに困っているとする回答(3割)が寄せられており,いずれも家族が深刻な悩みを持つことが知られました。

 東京大学の永井らによって,自閉症の子どもの母親は,一般の子どもの母親に比べて,非常に強いストレスを受けており,子どもの症状が重度の場合にはさらに強いストレス状態を呈していること,母親自身の生き方にかなりの制限が加えられていること,特に,幼児期の親は,非常に不安定な精神状態にあることが報告されています。また,自身の相談業務の中で,自閉症児の成長に伴って,兄弟姉妹の相談が実に多くなるとしています。

 自閉症児のいる生活は,24時間態勢の仕事と言えます。眠りが断続的な子どもを持つ親は,十分に睡眠がとれません。思いがけない時に起こるかんしゃくに対処しなければなりせん。親自身の健康をないがしろにできません。健康状態が悪くて疲れていれば,子どもに向き合うこともできません。 

 ストレスの高まった母親の育児の手を一時的に休めることは,極めて重要です。兄弟姉妹に目を向ける時間を作ることも重要です。レスパイトは,その意味で非常に大切な制度です。一時緊急保護をはじめ夏休み,冬休み,放課後にいつでも利用できる機関が必要です。また,千葉県の一部の市町村で独自に行われている「一時介護委託料助成制度」を「障害児・者生活サポート事業」などとして対象事業を拡大し,一人当たりの利用額を増額することも千葉県の指導によって是非とも全県下で充実してほしい制度です。

 我孫子市では,この7月から外出先まで同行してくれるガイドヘルパー(介護者)派遣事業が実施されるようになりました。このことによって,子どもたちの生活空間が飛躍的に伸びることでしょう。千葉県全県下においても,自閉症の人が年齢制限なくガイドヘルプを利用できるようにしてください。

 ホームヘルプ事業については支援費制度における重要なメニューの一つとして利用時間の制限なく積極的に市町村が取り組むよう,指導・支援してください。また,国の通達では,障害児・知的障害者ホームヘルプ事業において中軽度児が対象外となっていますが,これでは高機能自閉症が対象となりません。自閉症の対応の困難性を認め,県の県単独事業として補ってください。

 今後,家族の生活を支えるためにも,ショートステイ,ガイドヘルプ,ホームヘルプ,レスパイト,障害児学童保育,グループホーム,レクリエーション開発,ケアマネジメントなどのサービスが様々な形態で用意されることを期待しています。繰り返しになりますが,自閉症センターの創設(5.1で前述)のほか,地域生活支援センター(8.4で前述)が国基準である30万に2カ所を越え,柔軟に配置されることを強く期待しています。

     

        説明書目次へ  次 へ