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タクシードライバー コレクターズ・エディション

時代を飛び越えた、真に恐ろしい作品

中学生の頃に今はなき「月曜ロードショー」で初めて見て、意味不明で、荻昌弘さんの解説が更に意味不明で、なのにどうしても忘れられない作品として心に残り続けてきました。

 それから何度も見ました。今では「この作品こそ時代を飛び越えたマスターピースであり、そして他人に勧めることが出来ない真に恐ろしい作品だ」と確信します。自閉し、人生と自尊心の一発逆転を試み、そしてテロリストになっていく人間の心理をこれほどまでにリアルに描いた作品はありません。世に受け入れられられないことによる底知れぬルサンチマン。N.Y.だけでなく、この日本にも無数のトラビスが街を徘徊している時代になりました。私自身もまたトラビス的な一面を自分の中に見いださざるを得ません。本当に恐ろしい作品です。

 トラビスは女性と生身の関係が持てません。ベッツィとデートしても成人映画に行き、アイリスを買っても説教しか出来ず、そしてTVの中のラブシーンを恨めしげに傍観するしかないのです。まるでビデオで全ての性欲を処理しようとする現代の男性像を先見しているかのようです。そして肉体改造、微細に渡る日記の独白…。彼のルサンチマンのはけ口は政治家やもてる男などの成功者に向けられ、そしてマグナムとなって発射されるのです。

 スコセッシ監督演じる乗客が重要な役割を担いますが、監督自身虚弱体質のため学生時代疎外感を抱いていた若者でした。しかし彼は映画監督として自分自身思っていなかった成功をおさめることになります。トラビスが何故か英雄となる結末はそこから来ているのだと思います。なお、スコセッシ監督の『キング・オブ・コメディ』も全く同じ構造を持っており、もう一つの『タクシードライバー』となっております。必見です。語るべき事はまだまだ尽きませんが、今回はここまで。



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