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みなさん、さようなら

普遍的な親子愛をみごとに描く

たそがれ清兵衛を押さえてアカデミー外国語映画賞を受賞し、カンヌやベルリンなど主要な映画賞を総ナメした傑作。

本編主人公である父(レミー・ジラール)は歴史の教授で、歴史を専攻したドゥニ・アルカン監督の分身でもある。原題は「蛮族の侵入」で(一般的にはローマに侵入したゲルマン民族を指すが)、911テロでアメリカの中枢が攻撃されたことと、主人公が癌(=蛮族)に冒されることを指す。ほんわりした邦題からは連想できない風刺の効いたものだが、これは86年制作の「アメリカ帝国の滅亡(ギボン著ローマ帝国衰亡史のもじり?、性的に奔放な生活でアメリカの堕落を描く)」と同じキャストであることと、監督の歴史認識が影響している(監督はフランス系カナダ人だが、フランス人らしい皮肉っぽい雰囲気を感じる)。

そのキャストによる楽天的な社会主義者たちが語るアカデミックな会話(ソルジェニツィンの収容所列島など彼らが80年代以前の社会主義に傾倒していたことが分かる。しかし(性的な)ユーモアの効いたセリフも多く、重苦しくなりがちなテーマを軽妙な雰囲気にしている)やキリスト教を絡めた(監督はカトリックに批判的?)セリフが頻繁に語られ、日本人(の特に若年層)には理解しにくい部分もある。

しかしこの作品の本質はインテリが喜びそうな小難しい会話ではなく、普遍的な親子の愛を描いていること。父が病に倒れるまで反目していた息子(ステファン・ルソー)は、クールな表情からは感情を読み取りにくいが、父が安らかな死を迎えるため、あらゆる手を尽くす。その甲斐あって最初は不機嫌だった父が、後半にかけて平静に死を受けいるようになる。「父さんのしたいようにするよ」というセリフに対して「おまえのような立派な息子を育ててくれ」というセリフが印象的で心に染みる。



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