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スプレンダ    
ある日どこかで

comeback to me...

クリストファー・リーヴが逝ってしまった。スーパーマン役で一世を風靡した後は、あまり役に恵まれずに、95年に事故でほとんど全身麻痺に近い状態になってしまった。懸命のリハビリでヒッチコックの「裏窓」のリメイク版で車椅子の主役を演じるほどまでに、復帰した矢先の突然の心臓発作での死。かつてテレビシリーズで同じ主役を演じたジョージ・リーヴス(奇しくも苗字まで似ている)は、やはりイメージが強すぎて他の役を演ずることが出来ずに、ピストル自殺をしてしまった。超人を演じた俳優たちのその後の人生は、あまりにも皮肉で残酷だ。
だがジョージ・リーヴスに比べれば、彼はまだ幸せだったと思う。彼のその後の生き方は、同じ障害を持った多くの人々に勇気を与え、真の意味での「ヒーロー」と讃えれた。そして何よりも幸運だったのは、おそらく近年の恋愛映画の中で最高に美しく、最も映画ファンから愛された奇跡のような映画の1本である、この「ある日どこかで」のリチャード・コリアー役を演じたことだ。当初、日本でのロードショー公開は、わずか2週間。このDVDのメーキングによれば、海外でも初めは酷評されたものの、その後、世界中の映画ファンから評価を受け、インターネットに、この映画のファンサイトが存在し、舞台となったミシガン州のホテルでは、毎年この映画の上映祭が開催されているらしい。
時を越えて、人間の魂の存在の美しさを描いたこの映画に何度涙したことだろう。映画の冒頭、若き劇作家のリチャードは、見知らぬ老婆から懐中時計を手渡され、こう言われる。「comeback to me...(私の許へ戻ってきて)」だが、現実の彼はもう2度と戻らぬ人となってしまった。監督のヤノット・シュワルツやヒロインのジェーン・シーモアと共に、この作品が存在する限り、クリストファー・リーヴの名も永遠に映画ファンの記憶に残るだろう。


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