ひがし大雪

今回は学祭期間を利用して3泊4日で大雪山国立公園の東部地域に行ってきました。場所は然別湖や、糠平湖があるあたりのところです。この辺りは札幌とは違い、平地でも針葉樹林が広がっているところで、エゾシカやナキウサギなど、たくさんの野生動物が生息しています。4日間の滞在中は晴れ続きでたくさんの動植物を観察できました。

日程 6月3日                  

十勝三股の草原

十勝三股の草原は、人間が森林を切り開いたためにできた二次草原です。ほとんどがササで覆われていました。ここにはエゾシカもよく草を食べにやって来ます。今回、エゾシカの姿は見られませんでしたが、ササに食痕がかなり沢山残されており、糞もあちらこちらに落ちていました。 また、草原性の野鳥の生息地でもあり、鳴き声がにぎやかでした。中でもオオジシギは鳴き声・羽ばたき音が派手で目立つ存在でした。

写真にある丸っこい草の盛り上がりはヤチボウズ(谷地坊主)といわれるものです。スゲ植物の旺盛な地下茎の分枝により形成された塊です。 十勝三股の草原には隣接してこのように小川が流れている場所があり、谷地坊主の他にもエゾノリュウキンカなどが見られました。ここは森があったころから木のまばらに生える開けた場所だったのだろうと考えられます。

音更川の河畔林

   

上の写真は音更川の中州の河畔林の様子です。音更川は糠平湖の北にひろがる川で、ここでは川からの距離によって植生がどのように変化しているかを観察しました。上の写真のように、川のすぐそばでは湿った場所を好むケヤマハンノキや、ヤナギ科の植物が密生してました。これらの林はほぼ樹高と幹の太さが同じだったので、川の氾濫後に一斉に生えてきたものだと思います。

この河畔林の林床の近辺で見つけたもの

これは、エゾシカの骨だアァァァァァァァァァァァ!!!いや、いきなり大声で失礼しました。この骨は川のすぐそばで見つけました。エゾシカは冬の間、河畔林を餌場や水場として利用しています。おそらく、このエゾシカは厳しい冬を越すことができずに死んでしまったのでしょう。大きさからしてだいたい1〜2歳ぐらいだと思われます。
これは、ケヤマハンノキと共生している根粒菌です。ちょっとわかりづらいですが、中心の根っこの周りについているつぶつぶしたのがそれです。この根粒菌は空気中の窒素ガスを植物が利用できる形にして供給してくれるため、ケヤマハンノキは貧栄養の河畔林で優占していけるのです。
これはツマトリソウです。妻取草と書くんだそうです。さてここで問題です。この妻取というのは妻を娶れるようになると言う意味なのか、または妻を奪ってしまうという意味なのかどちらでしょう?正解は………秘密で〜す。どうしても知りたい人は自保研の例会に来ましょう(笑)。

 

然別湖

  

左の写真は然別湖です。この然別湖は大雪山地域唯一の自然湖で、火山の活動で川がせき止められてできたと考えられています。この然別湖から私達はナキウサギを見るために、ナキウサギの棲むといわれるガレ場を目指して然別湖畔を歩いていきました。右の写真はその湖畔を歩いていたときに見つけたツバメオモトです。5〜7月に開花します。この然別湖畔ではかなりの数がありました。ところでナキウサギは氷河期の生き残りと言われ、非常に涼しい場所を好みます。そんな彼らをここで生活できるようにしているのは、夏でも涼しい風が出てくる岩と岩の隙間の風穴と呼ばれるものです。この風穴から涼しい風が出るのは、地面の下に永久凍土があるためだと考えられています。標高が低いわりに、ここは亜高山性の針葉樹林となっていたのですが、これも永久凍土の影響だと思われます。

野生動物

 

もう説明は要らないでしょう、左の写真はキタキツネ、右は道路で轢かれて死んでいたエゾシカです。野生のキタキツネを見ることができてうれしかったのですが、このキタキツネは私達の車になんのなめらいもなく近づいて来ました。未だに野生動物にえさをやる人がいる証拠です。そう言う意味では少し悲しくもありました。エゾシカは頭をはねられたようで、頭部を中心に出血していました。かなり生々しいこの死体を見て、私はエゾシカと人とのかかわりについて考えずにはいられませんでした。

 

今回の調査は、多くの野生動物に触れたり(姿は見れませんでしたが、ナキウサギの声も聞くことができました)、河畔林の詳しい様子が観察できたり、博物館で勉強したり、特殊な土地の様子が観察できたりと有意義なものでした。

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