[とある少年の悲劇に対しての考察]

 第十四章 [魔宴]

「さぁて、次は…リツコの希望ね。えーと…
 げっ、あのマニア…リツコらしいけど、変態ね!」
 だーと涙を流すシンジ少年をほっておいて、メモ帳を調べているアスカ。落とし
ても壊れない、洗濯してもなんとか判別可能、使い捨て可能と言うことで、彼女は
PDAよりこちらを使うことが多い。ぶつぶつ文句をいいながらも、自分でも興味
があるらしく、いそいそと衣裳を取り出して、シンジ少年に近付き、脱がす過程は
しっかり楽しみつつ、次の衣裳を着せ掛けた。

「わー、似合うじゃないの、バカシンジ!!」
 眼をきらきらさせて、歓声を上げるアスカ。シンジ少年は、枕をたっぷりと涙で
濡らしている。倒錯的な世界が展開されつつあった。
 猫、であった。
 頭には巨大な猫耳、首には大きな鈴。そして手足には、猫手足グラブ&ブーツ。
しかも通ごのみなことに、特殊ラバー製の特製肉球、〔にくきう君グレート〕が、
爪と共に装備されていた。シンジ少年の涙を浮かべた表情とあいまって、リツコさ
んが狂喜と狂気でハナヂで出血多量になるような出来栄えであった。それ以外でも
ショタ好きおねいさんなら絶対にほおってはおくまい。
 事実、隣のビルではリツコさんが出血多量で死にかけていた。
「先輩、センパイっ!し、しっかりしてくださいっ!」
「マヤ…私が長年探求したものの答えが…やっと見つかったわ…悔いはないの…」
 盗聴機同様、盗撮カメラも潰されていたため、超望遠カメラの設置が完了してい
たため、それの鮮明な画像があったことが、事態に拍車をかけたのであった。
 アドレナリンをしみ込ませた綿を鼻に詰める、ボクサー式の鼻血の止血と、輸血
処理を必死に施すマヤのことを知るはずもなく、撮影は続いていた。
「バカシンジ、『にゃー』って言いなさい!『にゃー』って…」
 完全に悪ノリしているアスカ。
「言えるわけ…ひっく…ないだろ…ひっく…」
「じゃあ、あした、あのことを公表…」
「……………にゃー……………」
「よし、次は片手で顔を洗うポーズ、行くわよぉっ!」
 …そして、悪乗りアスカの獅子奮迅の撮影は終わり、
「さて、次は…あれ、マヤとバカ親父、希望が一緒じゃない…
 うっ、あの二人、変態だわっ!!…でも、やろっと…」
 メモを確認して、嫌悪の表情もあらわなアスカだが、やっぱり興味はあるのか、
イソイソとつぎを用意する。さて、ネルフの潔癖症お姉さん伊吹マヤ二尉と、バカ
パパ総司令ゲンドウの希望とは…

「ぉおおお、これは、これでなかなか…」
「……もう、涙も枯れはてました………」
 そこには、明るい色のブラウスと、かなりミニのふわりとしたスカートを着用さ
せられ、あまつさえ白のハイソックスやでっかいリボンで[完全武装]させられた
シンジくんがいたのであった。
〔似合いすぎて、なんか腹立つわね…〕
 美少女、しかもすこぶるつきの限定品と言っていいだろう。この姿を目撃したな
らば、たとえ彼が男性だと知っていても、男女問わずにナンパが殺到するだろう。
下手すれば、その場で襲われるかもしれない。そして、もし伊吹二尉やゲンドウが
目撃したならば、先程のリツコさんと同じ運命をたどることは明白である。
 当然、その運命をたどっていた。
「あああ、マヤっ!起きなさい!!まだ、死ぬには早すぎるわよ!!」
「しぇんぱぁい…あたし、あたし…悔いはありましぇん…ああ、シンジくぅん…」
 モロに画像を目撃してしまった伊吹二尉は、ハナヂを吹いて倒れていた。
 なんとか動けるようになった赤城博士が、先程自分が受けた治療を、そのまま、
後輩に返していた。白衣はすでに深紅に染まっている。
 そして、ネルフ本部では、その映像の一部を極秘オンラインで受け取っていたゲ
ンドウが、これも出血多量で死にかけている。自らの鼻血に埋もれつつも、不気味
にオヤジは微笑んでいた。
「ユイ…私達の子供は、これほど素晴らしく成長してたよ…ユイ…」
 怪しいうわごとを呟き続けるオヤジ。司令の生命維持に問題発生したとして、司
令の執務室の緊急コールが鳴り響いたが、冬月副司令の
『心配いらん。誤報だ。絶対に誤報だ』
 との一言で一蹴され、たまたま直後にお茶を持ってきた女性職員に発見されて、
集中治療室送りとあいなった。〔冬月の舌打ちは、だれにも聞かれなかった〕
 しばらく生死の境をさまよい、その後、意識を取り戻したゲンドウは、
「きれいな花のたくさん咲いた川原で、白衣姿のユイにあった」
「なぜか、ビデオを構えて下界を必死に撮っていた」
「声をかけたらすごいビンタを食らった」
 と、不思議にも手形の残る頬をさすりながらしょんぼりと言ったという。

 その後、アスカが悪ノリして嫌がるシンジに手鏡を突き付け、シンジが思わずそ
れに見とれてしまうなどの場面があったが、その後も着々と撮影は進んでいった。

「うふふふふ、これなんかは結構はまり役よねぇ?」
「……」
 某人気ゲームの看板キャラクタ、釣りズボンのコスチュームに、光の羽を輝かせ
た、某ロシア人超能力者の少年の衣裳。

「こっちも捨てがたいわぁ。」
「…うう…母さん…」
 さらに、また別の某人気格闘ゲームの、オロチ一族の少年のコスチューム。
 ちなみに、なぜかお鍋も握らされてる。

「ふーむ、これも意外と…」
「…もう嫌だ…もう嫌だ…!」
 さらには、白と青の衣をまとった、某撃剣格闘ゲームの巫女姉妹の妹の衣裳。
 当然氷の精霊つきである〔アスカは冷凍庫からだしてきた氷を背筋や胸元に入れ
てさんざか悪戯をしていたが〕

「さて…あ、そうそう、ミサトのを忘れてたわね。なになに…
 ぶっ!!」
 アスカは一息入れて飲んでいたスポーツドリンクを盛大に吹き出した。
「…やるわね、あの行き遅れ…流石にただもんじゃないわ。」
 ぎらり、と抜き身の刃のように蒼い眼が光る。
「…もう嫌だ…死にたい…何もしたくない…」
「なに甘ったれたこといってんのよ!まだ生きてるんでしょ!?
 しっかり[ピーーー]されて、それから死になさい!」
 ぐったりするシンジ少年の服をはぎ取ると、てきぱきとミサト希望の衣裳を着せ
掛けて行くアスカ。黒を中心としたその衣裳とは…
「これは…ちょっと、たまらないわね…ズズッ…」
「……神は…神は死んだ……」
 年長の同居者が選んだのは、なんと[メイド服]であった。たしかに、シンジ少
年は働き者だが、ミサトの趣味の走り方も只者ではない。
 しかも、アト〇スの某人気RPGの合体所、ホテル〔笑〕業〇殿の受け付けの
少女バージョンである。さらに悪ノリしたものか、鎖つき首輪に手錠のオプション
つきというものである。
 シンジ少年の涙声をBGMに、しっかりと撮影はすすめられた。
「…ふー、さて、これで一応は全部終わりね。」
「……お、終わり?」
 眼に、ほんのわずかな希望を乗せて呟くシンジ少年。
「そう、終わりよ。…前置きわね!
 次は、このアタシの希望の衣裳よぉおお!!」
「…うあぁああぁあああっ!!助けて!だれか助けて!
 ミサトさん!リツコさん!綾波…!…母さん…父さん…
 助けて…だれか、助けてよ…」

 その時、ネルフ関係盗聴者以外にも、その悲痛な叫びを聞いたものはいた。
 窓の外には、屋上からラペリング〔ロープを使用した降下〕してベランダに潜ん
でいた、一つの細長いシルエットがあったのである。
 長髪、長身に彫りの深い顔立ち…ネルフの職員にして日本内閣情報調査局所属、
加持リョウジである。鋭い視線をドアの内側に注ぎつつ、その手を小刻みに素早く
動かし、なにか一心に作業を続けている。
 が、残念ながらシンジ少年を助けにきたのとはちょっと違う。
 おそらく…なにかの速記術でも使っているのだろうが、大きめのメモ帳に、凄ま
じい速さでびっしりと文字を書き込んでいるのだ。
 彼の得意分野は、隠密にすすめる諜報活動である。その卓越した技能を買われ、
スパイ先のネルフとスパイ元の内閣情報調査局の両方から、今晩のオペレーション
についてしっかりと観察し、克明な記録を持ち帰ることが彼の任務であった。
 年下の友人の、悲痛な叫びは、彼にも届いていたが、加持は、厳しい表情を浮か
べたまま、一心にメモを取り続けていた。これは…少年に対する試練である。
 そう、自己の意味を確立するとか、父親の存在をどう受けとめ、どう対処するか
という、世間一般に言われる少年・青年期の課題などよりは、よほど切実で、なお
かつ、この少年は数多く直面する試練だろう。それは自力で戦っていくしかない。
 あるいは、戦うことは完全に無理、と達観してしまうという手もあるが。
〔シンジ君…俺はここで、メモをとることしかできない。だが君には、君ならデキ
る、君にしかデキないことがあるはずだ。
 …ま、後悔のないようにな。〕
 いや、公開のないように、かな、と加持は、メモを取りながら一人ごちた。
〔しかし…なんか、気配が多いな…〕
 加持は、一瞬だけ手を止めると、耳を澄ますような仕草をして、首を傾げた。
 それもそのはずである。
 実は、この時、葛城家は、十重二十重の防御機構をかいくぐって、さまざまな情
報機関が潜入しシンジの[艶姿]を一目見ようと、激しく暗躍していたのである。
 エヴァやMAGIに対する諜報活動を一時、完全に停止し、その分の人員と予算
を全て注ぎ込んだ戦略自衛隊が、ソーコムが、SASが〔ほとんどが女性兵士であ
ったのは言うまでもない〕反対側の窓のカーテンや天井その他に場所を確保したり
していたのである。
 彼女たちが見守る中、シンジ少年に、最後の〔お色直し〕が迫ろうとしていた。

                                 続く

 ども、阿修羅王ッス。
 といわうけで、まだもう少し引きます〔馬鹿者〕
 皆様からの暖かい励ましのお便り、感謝のことばもありません。なお、作者の
殺人的過密スケジュールにより、お便りのお返事を出したつもりで忘れてるかも
知れませんので、『お手紙だしたのに返事がこない!』と言う方は、作者まで
ご一報くださいませ。
 十四章迄で完結にしようと思ってたのですが、ちょっと書き込みすぎました。よ
って、エピローグを含めてあと一、二章かかりそうです。
 では、次回にお会いいたしましょう。



ご多忙の中を阿修羅王さんが「とある少年〜」の第十二〜十四章を投稿してくださいました!

「バカシンジ、『にゃー』って言いなさい!」
ああ、また新たなセリフが、私の萌え語録に登録された…
猫グローブはやっぱり大きめなのが通ごのみですよね?(爆)
フレアミニの強制女装もいいですねー。
くつ下はやっぱり大きなボンボンの飾りがついたのが、ロリっぽく可愛くて良いナァ(笑)
誰か、今回のコスプレの数々を挿絵としてCG投稿して下さいな〜(熱望)。猫耳シンジや、フレアミニシンジ見たいの〜(爆)

最後は行きつくとこまで突き進むのかどうか、今からとても楽しみです。

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