第3話 遭遇
 パナマ基地に到着した5人の新人パイロットは、司令官室に任官挨拶のため通された。部屋の中には口髭をたくわえた重厚な体格の50代の男が革張りの椅子に座って待っていて、彼らが入ってくると立ち上がり机の前まで歩いてきた。
「私が中米方面防衛司令官兼パナマ基地司令官のエドゥイン・アシュール准将だ。諸君はコスタリカの前線に明日出発する事になっている。今日はゆっくり体を休ませたまえ。到着早々戦闘ということもあるかもしれんからな。」
「はっ!!」
 5人は敬礼をし、部屋を退出する。部屋の外には士官が待機しており、彼らを部屋へと案内した。
「ここが、貴官達の宿泊する場所です。6人部屋で少し狭いですけど、今日1日だけですから我慢して下さい。」
 伝達事項や注意事項などを話すと、士官は部屋を出ていった。
 部屋の中は3つのベッドが両側に置いてあり、窓際には机と椅子が1つずつ置いてある。5人は部屋に入り、自分のベッドに荷物を置いて一息入れた。
「さて、これからどうする?」
 ロベルトが他の4人の顔を見ながら口を開いた。
「まだ、夕食時まで時間があるし、特に何をしろと命令を受けてないし・・・」
「基地の中を見て回るか?」
 ジャンがベットから勢いよく立ち上がって提案した。全員その提案に賛成し、基地の中を夕食時まで巡り歩いた。明日前線へ行く為なのか皆気分が高揚していて、いつもよりもテンションが高く、食堂や宿泊部屋でいつもより会話がはずんでいた。5人ともベッドに入ってもなかなか眠ることが出来ずに、他人に話しかけるでもなく天井を見上げていた。いつしか、眠りにつき夜もふけていった。

  翌朝、食事をとり出発時間まで部屋で待機している間、全員落ち着かない態度で時間が来るのを待った。いよいよ、出発という時には幾分かは落ち着いたようだった。
 2機のミデアはパナマ基地を飛び立つと、太平洋沿岸沿いに飛行を続けていく。サンティアゴを経由し、チリキ湾沿いを順調に飛行中にパイロットが異常に気づいた。
「少佐!ミノフスキー粒子が戦闘濃度散布されてます!敵がこの付近にいるようです。」
「何!どこにいるか判るか?」
「いまのところ視認できません。」
「そうか・・・。貴官はMSに搭乗していろ!」
 機長は後ろを振り返り、ロベルトに声を掛ける。ロベルトはあわてて、格納庫に向かっていった。格納庫に降りていくと、ジャンがジムのコクピットに向かって話しかけていた。
「大変だ!敵がこの付近にいるらしいぞ!」
「なんだって?」
 ジャンは振り返り、マクマードはコクピットから体を乗り出した。
「少佐がMSに搭乗しろとさ」
「そうか、わかった!」
 ジャンとロベルトはジムに乗り込んだ。ちょうどその時、爆発音が聞こえ機体が揺れ、高度が下がっていった。2機のミデアは海中から攻撃を受け、被弾しながら不時着を試みていた。先頭のミデアは左側エンジンに被弾しながらもなんとか不時着に成功したが、後方のミデアは途中でミサイルが命中し空中で爆発、四散する。不時着と同時に海中から4機のMSがとどめを刺すために出現してきた。
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第4話 初陣