2.[zeon spirit]

                         12/30 pm4:35

       再び宙域に調査にやって来たジン。ディスクがあった場所を探している。

      ジン  「・・・・座標、X20、Y31・・・」

           座標の中心は、「シチリアアイランド」である。

      ジン  「・・・ここか」

           コロニーが正面に見える。それほど遠くは無い。あとは、無数のゴミしかない

           い。

           ふいに、何かが動く気配を感じた。MSなのか。

      ジン  「ん・・・?」

           ジンは10時の方向を向いた。

           そこには、たしかにMSがいた。だが、かなり遠くにいて、肉眼でも確認しづ

           らい。ミノフスキー粒子が濃いため、レーダーは役に立たなかった。そのため

           レーダーではMSの動きの観測はできなかった。

           だが、ジンには分かった。MSの動き 形までもがジンには見えていた。

           何故分かるのか。それはジンには分からなかった。

      ジン  「あれは・・・ガザDか」

           形はガザであった。しかし、背中に大きなレドームのようなものがついてい

           る。そのレドームが何なのか、ジンにはすぐに分かった。いつも格納庫で見

           ているブラックZの背中にも付いている、EWACレドームであった。

           ジンは、ガザがこちらに来るのだと思い、すぐに近くのゴミの影に身を隠した

      ジン  「来るかな・・・・」

           しばらく待ったが、ガザはこちらには来なかった。ガザは、コロニーの方に動

           いていた。

           ジンはガザの後を尾けた。

           ガザはコロニーの手前に来ると、しばらく停止して、また動き出した。ガザは、

           コロニーの内部へと入っていく。

      ジン  「・・・・コロニーに何かあるな」

           ジンはコロニーへと向かわせた。コロニーに近づいていく。

           しかし、コロニーの入港口をみたジンは、MSを止めた。

           入港口は、1つしか使えないようだ。

      ジン  「・・・MSでいくのはまずいな。見つかる可能性が高いか・・・」

           そこでジンは、ブラックZをコロニーの外壁の陰に隠し、MSを降りて、単独で

           コロニーへと向かった

                           12/30 pm4:40

           MSの入港口からコロニー内部に侵入する。MS運搬通路に沿って進んで

           いく。途中、入港口の管理室を発見し、中に入ってみた。そこには人は誰1

           人いなかった。コンピューターが自動で管理しているようだ。ジンはカメラを

           取り出し、管理室の内部を写真に収めた。そして再び、運搬通路からコロニ

           ーの奥へと向かった。

            運搬通路の出口を抜けると、コロニーの内部へと到着した。光が点々と見

           える。普通のコロニーならば、人工的に作られた太陽があって、今の時間帯

           ならば、コロニー内部には夕日のような光が照っているはずなのだが、この

           コロニーには太陽がないようである。

            点々とした光は、夜の街のようにも見える。だがこのコロニーは、だいぶ

前に稼動を停止させたはずである。なのに何故街があるのか。ジンはカメラ

のズーム機能を使い、街を見てみた。30倍くらいくらいしたとことで、光が微

妙に動いている事に気づいた。そして、70倍にしたところで、その光の正体

が何なのかが分かった。ネオジオンのMSである。しかも1機だけではなく、

10機か20機はあった。その他の場所の光をみると、やはりネオジオンのMSであった。

      ジン  「・・・まさかこの光は、すべてMSなのか・・・」

           だとしたら、大変な数である。点々とした光は、コロニー全体に広がっている

           のだから。ジンは、かつてない数のネオジオンのMSがここに集結していると

           とが分かった。

      ジン  「こんなに大量にいるのを見たのは、アクシズ軍の偵察に行ったとき以来だな

           ・・・いや、その時以上かもしれない」

           ジンは、無数のMSを写真に収めると、コロニーの外へ脱出し、ブラックZ

           へと帰還した。

                             12/40 pm5:00

        ブラックZに戻ったジンは、すぐにリバプールへの通信を開いた。通信に

           出たのはリンであった。

       リン 「おう ジン、何か収穫あたの?」

       ジン 「すごいスクープだ。まず写真を送る」

           ジンはカメラを通信機に繋ぎ、写真を転送した。写真はすぐに向こうに届い

           た。

       リン 「・・・・!!なにこれっ!この光ってもしかして全部・・・」

       ジン 「ああ、全部ネオジオンのMSだ。」

           すると、キタジマが通信に割り込んできた。

    キタジマ 「ほお、もしかして、「シチリア」にあったわけ?」

       リン 「急に割り込むなっ」

           リンがキタジマに左アッパーを食らわす。

    キタジマ 「アウっ」

           キタジマが倒された。

      ジン  「殴る事無いだろう・・・」

      リン  「・・・シチリアって、近くの廃虚コロニーでしょ」

      ジン  「そうだ。その中で撮ったんだ」

      リン  「フーン・・・もしかして、ここが残党たちの拠点かもしれないんだ」

      ジン  「・・・オッサン、どうした訳」

      リン  「寝てるよ」

      ジン  「ははは・・・気絶してるのか」

           後ろで、リックがキタジマを運んでいる

      ジン  「今から戻るよ」

      リン  「分かった」

           通信を切り、帰路へと着いた。

                                 12/30 pm5:10

        リバプールまであと15分ほどの距離

             ジンはふと、なにかが動く気配を感じた。それは、コロニー付近でガザ を見つけたときと同じような感覚だった。だが、レーダーには何も表示されていない。ジンは、他の機器の電源を切り、EWAC機能を全開まで起動させた。

              レーダーにMSが表示された。認識番号は「不明」であった。自機の後方にいる。かなり遠くにいるようだ。そのMSの進路は、どうやら「シチリア」のようだ。ジンは、MSのレーダー範囲のギリギリまで接近した。ようやく姿が確認できるところまで来た。そのMSはブラックZよりも一回り大きい。ジオン系MS独特のモノアイカメラと、手には大きなクローが付いている。色は、緑と黒である。

      ジン  「あんなMSは見たこと無いな・・・」

            突然、MSが動きを止めた。レーダーから、敵が通信を始めたのが分かった。ジンはEWACを切り、通信の傍受を始めた。

      ジン  「周波数は・・・」

            周波数は自動で操作される。そして、周波数が近い位置に数値になり、少しずつ声が聞こえ始めた。声は男のようだ。

       男  「・・・だ・・・から・・えると・ろだ。残念ながら収穫は無い。いや、しかたなかったんだ。彼らには居場所があるからな・・・・・・・なに、MSが・・・・・・・・連邦の

            MSなのか・・・・・・そうか・・・・・・・」

           「連邦のMS」というと、まさか自分のことなのだろうかと、ジンは少し動揺した

       男  「ああ、とにかく、いまからそちらに向かう。あと10分程度で・・・・・」

           突然男は黙り込んだ。5秒ほどのち、再びしゃべりだした。

       男  「いや、あと15分後になる。少し邪魔が入ったようだ」

           次の瞬間ジンは、何かが急接近しているのを感じた。すると、敵MSの方向から、ビームが飛んできた。ジンはぎりぎりのところで回避に成功した。

           ジンは敵MSに気づかれたのだ

      ジン  「くそっ何でばれたんだ!?」

           敵MSが急接近してきている。ジンは即座に腰からビームライフルを取り出し

           そして、ライフルを連射。だがその攻撃はすべて避けられた。敵MSはビー

           ムサーベルを取り出し、いっきに間合いをとった。ジンはあわてて回避する。

           敵がビームサーベルを振りぬいた。ビームライフルが一刀両断になった。

           ジンは敵の上方に逃げた。

      ジン  「戦うしかないか・・・」

           敵は手に付いた有線式クローを発射した。クローがジンのZを追う。クローからはビームが発射されている。ジンはZをウェイブライダー形態にした。追ってくるクローとビームを、旋回しながら回避する。

      ジン  「なんとか・・・間合いを・・・・」

           旋回しながら敵に接近する。距離が縮まり始めた。すると敵はクローをすばやく手元に戻した。Zは一瞬にしてMS形態になり、腰からビームサーベルを

           引き抜いた。サーベル同士がぶつかり合う。サーベルでの立ち回りが続く。

           ジンは接近戦が得意だったため、敵は若干押されている。と、ジンは、背中に何かが来ているのを感じた。同時に敵の左手のクローが無いのに気づい

           た。背中からクローが来ているのに気づいた。ジンは、即座に左手にある線を切断した。クローのことに気づかれた敵は、一瞬動揺した。ジンはその隙を

           逃さなかった。

      ジン  「もらった!」

           ジンは、敵MSの右腕を切り落とした。敵はあわてて逃走を試みた。だが、Zの機動力には追いつけず、すぐに捕らえられた。ジンは敵MSに通信を開いた

      ジン  「逃げられると思うなよ。お前はMSごと生け捕りだ。動いたら撃つぞ」

       男  「く・・・・」

           ジンは敵MSをワイヤーで巻きつけて、MSごと運んだ。

           ジンはリバプールに通信を開こうとした。しかし、なぜか通信はつながらない。

      ジン  「あれ、通信がつながらない・・・・」

           何度か試みたが、やはりつながらない。

      ジン  「・・・・ま、いっか。いつかつながるだろ」

           ジンは敵MSを連れて、リバプールへと向かった。

                            12/30 pm5:21

                リバプールまであと7分の距離

            ジンは、ネオジオンのMSのデータから、敵MSの検索をしていた。しかし、

           該当するMSは無い。そこでジンは、敵に通信回線を開いて、直接聞く事にした。

      ジン  「おい、聞こえるか」

       男  「・・・・・・」

      ジン  「お前の乗ってるMS、なんていうんだ?」

       男  「・・・・・・」

           さすがに答えるはずが無い。だがそんな事はジンにも分かっていた。

      ジン  「あっそ・・・・」

           ジンはあきらめて通信を切ろうとした。その時、男が口を開いた。

       男  「おいお前」

           ジンは少し驚いた。

      ジン  「・・・お前にお前なんていわれる筋合いはない」

       男  「ふん・・・ガキのくせに。」

      ジン  「ガキじゃねえよ、いい加減にしないと撃つぞ」

       男  「撃てばいいじゃないか」

      ジン  「なんだと・・・!!」

       男  「撃てよ。命乞いはしないぜ」

           男の声は自信に満ちている。まったくといっていいほど動揺がないのが分かった。

      ジン  「く・・・・」

           せっかく捕らえた敵のMSとパイロットを、本当に撃つ訳にはいかなかった。

           「動けば撃つ」というジンの脅しは、死を覚悟した男には通用しなかったのだ。

       男  「ははは・・・まだ甘いな、ガキ。自分の言ってる事くらいちゃんと考えろよ」

      ジン  「・・・・くそ!」

           ジンはイスを叩いた。通信を切ろうとした瞬間、また男は言った。

       男  「せっかく私よりいい素質があるってのに、こんなガキじゃあなあ・・・・」

      ジン  「素質?何のことだ」

       男  「ニュータイプのだよ」

      ジン  「はあぁ!?」

           ジンにはわけが分からなかった。なんで突然ニュータイプなんて言葉が出て

           来るのか この男は頭がおかしいんじゃないかと思った。

       男  「・・・まさかお前、未だに自分がオールドタイプだとか思ってんのか。」

      ジン  「俺はオールドタイプだよ!!」

       男  「ププッ バッカじゃないの!!普通自分で気づくだろうがっ」

      ジン  「だから、俺はオールドタイプだって言ってんだろ!!」

       男  「・・・・はぁ」

           男はあきれ返っている。

       男  「・・・・じゃあよ、俺の名前くらい分かるだろ」

      ジン  「あ!?ビショット・ジャクソンだろ!さっき言ってたじゃ・・・」

           ジンは、自分の言ってる事の矛盾に気づいた。男は自分の名前など1度も言ってはいない。ノリで出てきてしまった名前。何故出て来たのか。ジンは不思議な感覚に襲われた。

      ジン  「・・・・本当にこの名前なのか?」

   ビショット  「分かってるじゃないか、ジン・ワーウィック大尉。」

      ジン  「な・・・なんで俺の名前が分か・・・」

    ビショト  「私の階級は?」

      ジン  「少佐!」

   ビショット  「私のあだ名は?」

      ジン  10円安!

    10円安  「私の家族は?」

      ジン  「娘一人!」

    10円安  「私の撃墜数は?」

      ジン  「49機!!」

    10円安  「私の身長 体重」

      ジン  「184.2と76!!」

    10円安  「私の年齢は?」

      ジン  「キタジマのおっさんと一緒(47)!!」

    10円安  「私の趣味は?」

      ジン  「ハムスターと戯れる事!!」

    10円安  「私の持病は?」

      ジン  「切れ痔・水虫・ウオノメ・虫歯・ハゲ!!」

    10円安  「ははは・・・・よし、これで最後だ。今私が考えてる事は?」

      ジン  「今考えてる事・・・?」

    10円安  「分かるだろう?」

      ジン  「・・・・・・分かった!

「マジで切れ痔が痛てえ」だな!!

    10円安  「ファイナルアンサー?

      ジン  「ファイナルアンサー!

    10円安  「・・・・・」

      ジン  「・・・・ゴクッ(つばを飲み込む)・・・・」

    10円安  「・・・・正解!!」

      ジン  「オッシャア!!」

    10円安  「よく分かってるじゃないか」

      ジン  「当たり前だろう!だってお前が・・・・」

           ジンは我にかえった。

           自分は何故こうもポンポンと人のことを言えたのか、いまだに分かっていない

    10円安  「分かっただろう。お前はな、確かにニュータイプなんだ」

      ジン  「・・・・俺が・・・・いや、これはただの・・・・」

    10円安  「・・・・ニュータイプというのは、人の持つ情報や喜怒哀楽のいくつかを把握

することが出来るんだ。」

      ジン  「把握・・・・」

    10円安  「そしてニュータイプ同士は心が共鳴するから、心の中で会話できる」

      ジン  「心の中・・・?」

    10円安  「ははは・・・混乱して周りが見えてないようだな。今のこの会話だって、私は

           一切口には出していないぞ。お前もな。」

      ジン  「!!」

           ジンは現実にかえった。本当に心の中で会話をしてたのか?少し辺りを見回してみる。すると、通信機がOFFになっているのに気づいた。

    10円安  「・・・・ようやく分かってきたな、自分自身が」

      ジン  「・・・・俺は・・・・」

           ジンは、自分がニュータイプであることに確信を持ち始めていた。

だが実際のところは、まだ疑問が残っている

自分自身への疑問が・・・・

                            12/30 pm5:25

         リバプールが見えてきた。

           ジンは、自分のことに気になりつつも、再度リバプールと通信を行った。

           通信は無事につながった。通信に出たのは、ジュンだった。

      ジン  「!ジュンか」

     ジュン  「ジン君・・・あの、リン先輩と変わったんだけど、だめだったかな・・・」

      ジン  「あ、いや、全然OKなんだけど・・・とにかく、そろそろ帰還するよ。捕虜も一緒だから。格納庫、開けててくれよ。よろしく〜」

     ジュン  「了解・・・」

      ジン  「そういえば、さっきは何で通信がつながらなかったんだ?」

     ジュン  「あ・・・それは、話すと長くなるから、帰ってきたら話すよ・・・」

      ジン  「はあ、分かった」

     ジュン  「・・・・大丈夫、ジン君?」

      ジン  「え・・・何が?」

     ジュン  「!あ、いや・・・なんでもないよ・・・・じゃ、早く帰ってきてね」

      ジン  「わ、分かった。」

           通信を終えた。リバプールはもうそこだった。

その時、ビショットから通信が入った。

    10円安  「・・・残念だが、私は捕まるわけには行かない」

      ジン  「!!何・・・!?」

    ビショット 「私はジオンの兵だ。大義なく戦争をやっている連邦とは訳が違う」

      ジン  「何が言いたいんだ!」

    ビショット 「お前ら連邦に教えてやる事など、何一つ無い」

      ジン  「・・・・・!?」

           その時ジンの心は、ビショットの「死」への覚悟を感じとった。

           ジンは即座に、MSを縛っているワイヤーを切断した。

    ビショット 「最後にひとつ・・・・お前のようなニュータイプに出会えて、私自身いい経験になった。ジン・ワーウィック大尉」

           ビショットの最後の言葉は、ジンの心の中でしか聞こえなかった。

           MSは、まばゆい閃光を上げ、爆発した。自爆だった。

            ジンは、自分がニュータイプであると確信した。

           それは、自爆を予知できた事、心の中から声が聞こえた事

           そしてなにより、動揺ひとつ見せずに、ただジオンのためだけに自分の死を

           選んだ覚悟が、ジンにははっきりと感じとれたからだ。

                                        to be continued

3.[you're only lonely]

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