第1話 配属
 ジオン公国が地球連邦政府に宣戦布告を宣言してから数ヶ月。 地球の三分の二はジ オン公国の勢力下に置かれ、誰もがジオンの勝利を確信していた。
地球連邦政府はこの状況を打開するために、特殊部隊を編成し各戦地へと送り、反撃 を始めた。慣れないMS戦に苦戦しながらも、彼らは必死に戦い続けた。
その後戦況は変わり、戦場は再び宇宙へと変わり、特殊部隊の大半もこのとき宇宙へ と移った。しかし、地球からジオンが消えた訳ではなく、一部の部隊は戦闘を行って いる。
アジア方面に送られた第四特殊部隊もその一つである。彼らの実力はけして低くはな いのだが、思ったよりもジオンの抵抗が激しく、今まで長引いてしまったのである。 そんな中、1人の兵士が第四特殊部隊に配属された。



一人の青年がブリッジに入ってきた。歳は若いが、少尉の階級章をつけている。青年 は艦長らしき人物を見つけるとこう言った。
「マーベリック・フリューゲス少尉。ただ今到着いたしました。」
「御苦労だった。私が艦長のアトラス・シュタイン、階級は大尉だ。よろしく頼 む。」
と、アトラスは答えた。アトラスは見かけは気の良さそうな人物だが、戦士の持つ威 厳や風格も持ち合わせていた。
「今、部隊のやつらは任務に出てるんでな。しばらくすれば戻るから、艦の中でも見 ていてくれ。」
「分かりました。・・・では、失礼します。」
マーベリックはそう言うと、ブリッジを後にした。
「ふぅ・・・。特殊部隊とはいえ、他と全く違うわけじゃないんだな。」
実は、自分の次の配属先が特殊部隊と聞いて、少し不安だったのだ。
「さて、しばらくは部屋でゆっくりするかな」
そう思い自分の部屋に行こうとすると、「ズシン」と格納庫の方から音がして、艦が 少し揺れた。
「お、部隊のやつらが帰ってきたのか・・・。」
そのまま部屋に行こうとしたが、どんなやつらか気になり、格納庫の方へ向かって いった。

格納庫には五機のMSがあった。そのうちの四機は出撃していた物のようで、あちこち に傷や汚れがついていた。
(あとの一機はおそらく予備の物だろう。) そんなことを考えていると、後ろから声 をかけられた。
「あんた、見かけない顔だけど新入りか?」
振り返ると四人の男女がいた。声をかけたのは金髪の髪を後ろで束ねた十九、二十の 男だった。
「ん、俺はマーベリック・フリューゲス、階級は少尉だ。」
「歳は?」
「歳?二十歳だけど、それが何か?」
「おお、そうか!俺も少尉で二十歳だ!なんか奇遇だな!」
「名前は・・・?」
「おっと、忘れてた。俺はカストロ・リア・パーソン。よろしくな!」
「ああ、よろしく・・・」(騒がしいやつだなぁ〜)
「カストロ、そのあたりにしておけ。」
カストロの後ろから現れたその人物は身長が2m近くある男だった。
「はいはい、分かったよゲイル〜」
「おい!隊長と呼べといっとるだろうが!!」
「そりゃあ失礼しました。ゲイル。」
「お前〜〜〜っっ!!」
ゲイルと呼ばれた人物は、すっかりカストロに遊ばれている。
「あの・・・・」
「おっと、すまない。私は隊長のゲイル・メサイア中尉だ。よろしく。」
「よろしくおねがいします。」(これで本当に大丈夫なのか・・?)
「あとは、ロイ・ニコラス軍曹。」
「・・・・よろしく・・・・」
「よ、よろしく・・」(無愛想なやつ・・・)
「それにライア・ハーメット曹長だ。」
「女だからってなめんじゃないわよ?」
「は、はい。」(・・・・マジ?・・)
「これで全員だが・・・・」
隊長が何か言いかけたとき、放送が流れた。
「MSパイロットは至急ブリッジに集合せよ。」
「ん、なんだ・・・・なんかあったのか?」
「いいから行くぞ。カストロ。」
「へいへい、分かりましたよ。行けばいーんでしょ。行けば。」
「分かってるんならさっさと来い!!・・・あと、マーベリック。お前も来いよ。」
「え・・・は、はい!!」
すっかり彼らのペースになっていて、間の抜けた返事をしてしまった。
(それにしても、俺やっていけるのか・・・?)
別の意味の不安がマーベリックをおそったが、とにかくブリッジへ向かった。
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第2話 不安