第2話 不安
「ん、どうかしたのか。」
ブリッジに向かう途中にカストロが声をかけてきた。隊長達3人とは少し離れてい る。
「え・・・」
「いや、なんだか不安げな顔してたからな。悩みでもあんのか。」
どうやら顔に出ていたらしい。あわてて顔を引き締めたものの、遅かった。
「はは〜ん。さては、『こいつら、本当に大丈夫なのか』とか、『嫌なところに配属 になったもんだ』とか思ってたんだろ。」
「な、何でわかったんだ!?」
「え、マジかよ。適当に言ったんだけどな。そういう風に思われてたのかよ。俺 達。」
カストロの顔が険しくなる。
「わ、悪い。その・・・なんていうか・・・」
必死に弁解しようとするマーベリックだったが、言葉が出てこない。
「な〜んてな。冗談だよ。それぐらいじゃ気にしねえよ。俺も、ここの奴らもな。」
カストロの表情が一変して、今までと同じに戻った。
「でもな、いくら気にしないからって、ライアだけは別だ。あいつにそんなこと言っ てみろ、おもいっきり殴られるぜ。」
笑いながら、冗談っぽく言っていたが、おそらく自分が殴られたことがあるのだろ う。マーベリックはなんとなく分かった。
「まあ、時機になれるだろ。心配すんなって。」
そう言われたとき、「ただのお調子者じゃないんだな。こいつとはうまくやっていけ るかもしれない・・・・」
そう思った。
「とにかくがんばれよ。なんかあったら言ってくれ。」
「ああ、ありがとう。」
そんなやりとりをしていると、ブリッジに着いた。
ブリッジに入ると、艦長の所へ行った。
「艦長お呼びでしょうか。」
ゲイル隊長が言った。
「うむ。まずは任務御苦労だった。君達に集まってもらったのは、次の任務のことに ついてだ。」
「おいおい、俺達は今帰って来たところだぜ。少しくらい休ませてくれたっていい じゃねーかよ。」
「カストロ!私語を慎め!!・・・艦長、続きを。」
アトラスは咳払いをしてから続けた。
「次の任務だが、ポイントA−37にジオンのものと思われる基地を見つけた。これ を偵察してきてほしい。」
「敵に発見されてしまったら、殲滅しますか?」
「そうだな・・・。発見されてしまった場合は、出来る限り殲滅してくれ。しかし、 これはあくまで偵察が目的だ。そのことをよく覚えていて欲しい。」
「作戦開始時刻は本日22:30。今から5時間後だ。各員、十分に休んでおくよう に。以上だ。」
解散、とアトラスが言おうとしたとき、マーベリックがそれをさえぎった。
「あの、艦長。」
「なんだね、マーベリック。」
「私の搭乗するMSは・・・」
「その事なら問題ない。格納庫に1機余っている。念のため、メカニックチーフにメ ンテナンスを頼んでおけ。・・・それでは、解散。」
(さっき見たあの使われてないやつか・・・)ブリッジを出ると、そんなことを考えな がら、再び格納庫へ向かう。
「お〜い、まてよ〜。」
振り返ると、カストロが追いかけてきた。
「どうした、カストロ。」
「俺も格納庫に用があってな・・・。しかし、あの艦長は何考えてんだかな。帰って きてすぐに次の任務だとよ。まったく・・・。」
「そういうなよ。艦長だって大変なんだろ。」
「そうだろうけどよ・・・・・。」
まだ何かぶつぶつ言っていたが、気にせず格納庫へと向かった。
「それにしても、この艦は広いな。」
格納庫に着くと、改めてその広さを感じた。
「この、”サジタリウム”をなめてもらっては困るよ。」
不意に聞きなれない声がした。マーベリックは、声の主を確かめるため声のした方を 向く。
すると、15,6歳くらいの少年がいた。服は油かなにかで汚れている。
少年は続けた。
「この”サジタリウム”は連邦内でもトップクラスの戦艦でね。武装も充実してる し、大気圏突入も可能。かなり性能がいい。ま、この部隊だからこそ渡されたもんだ ね。」
マーベリックは不審がりながらも聞いた。
「きみは・・・?」
「俺?俺はサジタリウムメカニックチーフ、オーリン・バイノフ16歳。・・・あん たこそ誰だよ。」
「え・・・子供が、メカニック・チーフ!???」
マーベリックは再び不安におそわれた。
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第3話 カスタム機