第6話 敗北
「っ!!」
クルスの意識は、目の前にキルのMSが急接近し、サーベルが右脇腹に突き刺される瞬間に無くなった。
キルは不敵な笑みを浮かべて撤退した。
「クルス!」
アーツが呼びかける。
「だめだわ!通信不能になってる!」
フレイアが不安な表情で言う。
「死んでないよな・・・・?」
シェイドが呟く。
「とにかく!連れて帰還しよう!」
エクスがクルスの機体をかかえ、ブーストで帰路に着く。

・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・?

「・・・・」
「・・・・うっ・・・」
目の前が霞んでみえる。
「・・・・はっ!!!」
クルスが飛び起きる。
「クルス!気がついたのね!?よかった・・・・」
フレイアが目に涙を浮かべながらクルスを見る。
「つっ!」
全身に激痛が走る。
「まだ寝てて、大怪我だったのよ。五体満足なのが奇跡みたいなのんなんだから。」
フレイアがクルスを寝かせる。
「どのくらい経ったんだ?」
「10日間意識不明だったわ。」
そう言いながら通信機に向かうフレイア。
「クルスの意識が戻ったわ。」
通信機を使ってブリッジに言った。
「そうか、10日間も・・・」
医務室のドアが勢い良く開き、みんなが入ってくる。
「クルス!大丈夫か!?」
「・・・この状態で大丈夫だと思うか?」
アーツに対し、クルスが応えた。
「よかった・・・」
シェイドが言う。
クルスはしばらくみんなと話し、状況がつかめてきた。
クルスはキルの攻撃による右脇腹の爆発で、コクピットが変形し、全身に激しい衝撃を受けて気絶した。
コクピットをこじ開けた時、クルスは血だらけでシートに座っていた。
体は奇跡的にも五体満足だった。
そして即座に治療を施したが、10日間意識不明のままだったということである。
「だいたいわかった。」
「あの後、特殊部隊がどこに行ったかはまだつかめていないんだ。」
「そうか・・・」
ヘイトが言い、クルスが応えた。
「とにかく、ゆっくり休んで傷を早く治せ。」
エクスが言った。

3日後。 「あれ?クルス、もう大丈夫なの?」
シェイドが通路を移動してきたクルスに言う。
「ああ、まだ少し痛むが大丈夫だ。」
クルスはそう応え、MSデッキに向かった。
「どうだ?バーストガンダムは?」
メカニックチーフに訊く。
「もう使い物にならないな・・・」
「どうするんだ?」
「今、ガンダリウムγを使用して改造している。」
「ガンダリウムを?」
「ああ、ガンダリウムγはエゥーゴで有名なZガンダムに使用されている。極上の装甲だ。」
「それで、どこまで進んでる?」
「見ての通りさ。」
クルスの視線の先には内部構造むき出しのMSがあった。
「時間、かかりそうだな・・・」
「まぁね・・・5機も改造してしていればね。」
「エクスの機体も?」
「ああ、バーザムカスタムは分解して改造の材料の一部に加えさせてもらった。」
「わかった、ありがとう。」
クルスはMSデッキを出て行った。
「艦長、この後はどうするんだ?」
「クルスか、あの部隊の行方がわからないから追撃はできん。」
「他にティターンズの動きは?」
「ここのコロニーにティターンズが入港している。」
「叩こうにもMSは改造中で乗れない・・・。」
「そこで、コロニーに3人程入って、テイターンズのMSを奪って全滅させる。」
「なるほど、で、誰が行くんだ?」
「エクスとアーツに行ってもらう。クルス、行けるか?」
「着く頃には治ってるさ。行く。」
「よし、決まりだ。」

「よし、反対側の港に入港した。行ってこい。」
クルス、アーツ、エクスがコロニー内に入っていった。
「久しぶりだな、こういう景色見るのって。」
アーツが言う。
「あれが邪魔だな。」
エクスが見た方向にはジム・クゥエルが3、4機立っていた。
クルス達はジム・クゥエルの方に向かった。
その周辺に人だかりがあり、騒いでいた。
「なんだ?」
クルス達が近寄る。
人だかりの中心では、乱闘が起きていた。
ティターンズの制服を着た男に女性がやられていた。
「いったいどうしたんだ?」
アーツが近くにいる人に訊いた。
「元エゥーゴ兵らしいんだ、あの女。」
「それで、殴られたりされてんのか?」
「ひでぇよな、ティターンズって。ここもあいつらに占領された、エゥーゴとかに早く解放してほしいよ。」
「そうか・・・」
アーツが言う。
「どうする?クルス。元エゥーゴってことは味方だろ?」
「ああ、ちょっと待っててくれ。」
クルスが人ごみを掻き分けて中心に出た。
「あぁ?誰だテメーは?」
ティターンズの男が言う。
「エゥーゴの人間だ・・って言ったらどうする?」
クルスが応える。
「エゥーゴだと!?この場で殺してやる!」
男が殴りかかる。
クルスは殴りかかった腕をつかんで投げ飛ばす。
「ぐっ、この野郎・・・」
男が起き上がり、クルスに飛び掛る。
クルスが横に避け、着地した男の足を払い、バランスを崩したところに顔面にハイキックを浴びせる。
男は倒れ、気絶した。
「単純な奴だな・・。」
クルスが呟く。
見物していたやつらが歓声を上げる。
よっぽどこのティターンズの男が憎らしかったのであろう。
「おい、大丈夫か?」
クルスが元エゥーゴ兵に話しかける。
「な、なんとか・・・」
立ち上がりながら言う。
「エゥーゴにいたって?」
「まぁ、そうね。私はシルフ・カイラス。助けてくれてありがとう。」
「オレはクルス・ブランド。エゥーゴに所属している。」
そこにアーツとエクスが来た。
「はぁ〜、きつかった・・・」
「よっぽど嫌われてんだな・・・」
「ここにいるティターンズは住民から金を奪ったり、好き放題にやっていた。」
シルフが言った。
「で、なんでここに?」
アーツが訊く。
「ある部隊にやられて、私の居た部隊が全滅。私だけここに流れ着いていたって訳。」
「クルス、どうする?連れて行くか?」
「本人に訊いた方がいいだろ?」
エクスが訊き、クルスが応えた。
「オレたちはここのティターンズを叩くために潜入している。一緒に来るか?」
アーツが切り出した。
「そうだなぁ・・・よし、行こうか!」
気が強い感じである。
「待てよ?MSはどうするんだ。空きはないぞ?」
クルスが言う。
「後で考えればいいって!」
シルフが応えた。
「まぁ、いいか・・・オレたちの戦艦はティターンズの戦艦とは反対の港にある。アーツ、連れてってやってくれ。」
「OK、わかった。」
アーツが応え、シルフと共に戦艦に向かって行った。
クルスとエクスはティターンズの戦艦のある港の中に入り、人に気づかれぬように戦艦に接近して行った。
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第7話 それぞれの過去