第12話 クルス
クルスとシルフが攻撃をするが、キルは全てを避ける。
「クルス!!オレも手伝う!!」
シェイドがライフルを撃ちながら接近してきた。
やはり、キルには当たっていない。
「いくらでもかかってくるがいい・・・」
キルが笑みを浮かべる。
激しいビームを避け的確な反撃をするキル。
シールドで防ぐクルス。
「くっ・・・どうすれば・・・・」
クルスが呻く。
「先に邪魔者を排除するか・・・」
キルがマラサイカスタムに向き直る。
「うっ!?」
シルフが少し後退する。
依然として攻撃をするが、キルは回避しつつシルフ機に接近していく。
キルがライフルを撃つ。
当たり所が悪く、マラサイカスタムのシールドが破壊された。
いくつものビームが無防備になったシルフを襲う。
「あぁ・・・」
マラサイカスタムの全身をビームが貫く。
両腕、両足、頭部が破壊され、コクピットにもビームが命中していた。
「シルフっ!!」
クルスが呼びかけるがシルフの機体は爆発し、四散した。
「次は・・・」
キルがシェイドに向かっていく。
キルの攻撃をシールドで受けるシェイド。
接近してくるキル。
クルスの放つビームはかすりもせずにキルの機体の横を通り過ぎる。
シェイドがクルスの方に寄った。
キルが2人を追い詰める。
2人は防御することしかできない。
キルがシェイドに急接近し、蹴りで吹き飛ばす。
「ぐっ!!」
シェイドが衝撃に耐え、キルの方を向く。
そこには斬りかかってくるMk−UEXがあった。
「うわぁっ!!」
とっさに横ステップをしたのが良かった。
シェイドは生きていた。
しかし、シェイドの機体は頭部のすぐ左から縦に切断され、コクピットに当たっていなかったのが奇跡的だった。
「ぐあぁっ!!」
爆発し凄まじい衝撃がシェイドを襲った。
もはや、シェイドの機体は戦闘続行不可能だった。
そこにキルが斬りかかる。
シェイドにはそれすらも衝撃とディスプレーのノイズで見えていない。
「ふっ・・・死ね・・・」
キルのサーベルが振り下ろされた。
「・・・何っ!?」
そこにはクルスがいた。
シェイドの前でクルスはサーベルを受け止めていた。
「ばかな・・・」
キルが呻いた。
「貴様・・・・」
クルスの目つきが変わった。
「な・・なんてプレッシャーだ・・・こいつは・・・」
どっとキルの額に汗が噴き出す。
「これ以上やらせはしないっ!!!」
クルスがキルを弾いた。

「今までとクルスの動きが違うぞ・・・?」
エクスがかろうじて生きている通信機を使い、アーツに問いかけた。
「クルスが・・・キレた・・・あいつ死ぬぞ・・・」
アーツが応えた。
「どういうこと・・・?」
なんとかディスプレーのノイズがおさまり、シェイドも訊いてきた。
「クルスは昔、1度だけああなったことがある・・・」
今度はフレイアが応えた。
フレイアの話では1年戦争の時にも1度、卑劣な敵に出会い、キレたらしい。
「その時はオレらに構わず攻撃を続け、近づけなかった。もちろん、相手は数分でやられた。」
「ああなると、私たちでも止められないのよ。」
アーツが言い、フレイアが続けた。

キルがライフルを連射する。
クルスはそれを鮮やかに回避する。
「ばかな!?なぜ!?」
γガンダムはキルの放つビームを避け、接近していく。
キルは後退しながらライフルを連射している。

「速過ぎないか・・・?」
「機体制御をマニュアルにしたのさ。」
エクスの質問にアーツが答えた。
γガンダムの機体制御は普段はオートになっていて、姿勢制御を自動で行っている。
これをマニュアルにすると姿勢制御用のバーニアなどを全てコントロールしなければならない。
かなり扱いづらくなるが、その代わりに機体制御が敏感になり、機動性が上がるのである。

「動きが・・・読めない・・・?」
キルが呻いた。
クルスがサーベルで斬りかかり、キルが受ける。
「何も考えていないというのか・・・・!?」
クルスがキルを弾きすぐに接近する。
クルスのサーベルがキルの機体の右足を破壊した。
避けようと後退するキルにライフルを連射する。
「くるなぁっ!!」
キルの左腕に命中した。
キルがライフルを乱射する。
クルスがそれを避ける。
「ニュータイプなのかっ!?あいつはっ!?」
またもキルが呻く。
クルスの攻撃がキルを追い詰める。
形勢逆転である。
クルスが斬りかかり、キルの機体の左足を破壊する。
キルは反撃しながら逃げ惑っている。
「ここまで押されるなんて・・・・・」
キルが呟き、ライフルを乱射する。
クルスは避けながらライフルを撃つ。
クルスの放った1発のビームがキルの機体の頭部をかする。
メインカメラに少しノイズが走る。
キルはクルスのプレッシャーにより動揺し、思うように戦えていない。
むしろ、クルスがキルを超えた、と言った方が正しいかもしれない。
とにかく、今はクルスがキルを押している。
クルスがツインアームビームガンでMk−UEXの頭部を破壊した。
キルはバックパックのバーニアを全開にして撤退しようとした。
クルスは撤退しようとしているMk−UEXに接近していく。
キルは通信でなにやら叫んでいる。
「クルス!今、援軍を呼んだ、すぐに来る・・・おまえらに勝ち目は無い・・・」
キルがクルスのサーベルを受け止め、そう言った。
「おまえらに未来はないんだよ!!ハーハッハッハッ!!」
狂ったように笑うキル。
「消えろ。」
クルスは一言そう言い、右腕のサーベルでキルの機体を切り裂いた。
MK−UEXは爆発し、キルは死んだ。
「未来がないだと?未来なんかいくらでも切り開いてやる。」
クルスが言った。

クルスが全員を集めた。
もう落ち着いている。
「戦艦の方ですでに援軍が向かってきていると通信があった。」
クルスが全員に伝えた。
「シェイド、おまえとはここで別れる。」
「えっ?なんで!?」
「悪いな、おまえは死なせたくない。」
クルスがシェイドの機体を制御不能にし、コロニーの方に押し出した。
「クルスっ!?」
「おまえは戦わなくていい。」
エクスが言う。
「今、戦艦に戻っても修理はできない。死にに行くようなもんだ。」
アーツが言う。
「それはみんな同じじゃないかっ!!」
「私たちはどんな時も生き残ってきた・・・だから大丈夫。」
フレイアが言う。
「そんなの理由になってないじゃないか!!」
「オレらは死なない、絶対にな。言っただろ?オレたちは命を背負ってるんだ。死ぬわけにはいかない。」
クルスが言う。
「だったらオレも戦うよ!!」
「・・・・縁があったらまた会おう。じゃあな、シェイド。」
クルスはそう言って戦艦の方に向かっていった。
「クルスーーーーーッ!!!」
コロニーの方に流れていくγガンダムのコクピットでシェイドは叫んでいた。
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第13話 縁があったら